計算材料科学 ー量子力学と熱統計力学の基礎ー

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Division of Process Control & Process Systems Engineering Department of Chemical Engineering, Kyoto University
無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
1 関西大学 サマーキャンパス 2004 関西大学 物理学教室 齊 藤 正 関大への物理 求められる関大生像 高校物理と大学物理 その違いとつながり.
基礎ゼミ:電子と光と物質 多元物質科学研究所 上田潔・奥西みさき・高桑雄二・虻川匡司・佐藤俊一 大学とは何か? 大学で学ぶとはどういうことか? 大学:人類の遺産としての知識の伝 達 未知のものへの挑戦! 基礎ゼミの特徴:学生が積極的に授業に参加する。 自分で考え、自分で工夫して調べ、教室で発表する。
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ニュートン重力理論における ブラックホール形成のシミュレーション
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電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
元素の周期表 教科書 p 元素を 原子番号 順に並べる 性質の良く似た元素がある周期で現れる 元素の周期律 周期表
医薬品素材学 I 3 熱力学 3-1 エネルギー 3-2 熱化学 3-3 エントロピー 3-4 ギブズエネルギー 平成28年5月13日.
熱力学Ⅰ 第1回「熱力学とは」 機械工学科 佐藤智明.
平成25年度 東京工業大学 大学院基礎物理学専攻
電子物性第1 第5回 ー 原子の軌道 ー 電子物性第1スライド5-1 目次 2 はじめに 3 場所の関数φ 4 波動方程式の意味
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
α α 励起エネルギー α α p3/2 p3/2 α α 12C 13B 12Be 8He α α α
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
原始惑星系円盤の形成と進化の理論 1. 導入:円盤の形成と進化とは? 2. 自己重力円盤の進化 3. 円盤内での固体物質の輸送
観測的宇宙物理学を講ずる。特に,基礎方程式の導出とその解法,観測との比較について詳細な講義を行う。 ***前半の講義内容 ***
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛
第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2015年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2014年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
Ⅰ 孤立イオンの磁気的性質 1.電子の磁気モーメント 2.イオン(原子)の磁気モーメント 反磁性磁化率、Hund結合、スピン・軌道相互作用
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
セラミックス 第4回目 5月 7日(水)  担当教員:永山 勝久.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
課題 1 P. 188.
非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard)
原子核物理学 第8講 核力.
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
前期量子論 1.電子の理解 電子の電荷、比電荷の測定 2.原子模型 長岡モデルとラザフォードの実験 3.ボーアの理論 量子化条件と対応原理
古典論 マクロな世界 Newtonの運動方程式 量子論 ミクロな世界 極低温 Schrodinger方程式 ..
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
Introduction to Soft Computing (第11回目)
材料強度学の目的 機械とは… 材料強度学 外部から力を加えて、人に有益な仕事をするシステム 環境 力 材料 材料の破壊までを考える。
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
光子モンテカルロシミュレーション 光子の基礎的な相互作用 対生成 コンプトン散乱 光電効果 レイリー散乱 相対的重要性
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
光電効果と光量子仮説  泊口万里子.
分子軌道理論(Molecular Orbital theory, MO理論)
半導体の歴史的経緯 1833年 ファラデー AgSの負の抵抗温度係数の発見
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 井上峻介 橋田昌樹 阪部周二 レーザー物質科学分科
学年   名列    名前 物理化学 第1章5 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
Numerical solution of the time-dependent Schrödinger equation (TDSE)
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 八尾 誠 (教授) 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
楕円型量子ドットの電子・フォノン散乱 1.Introduction 2.楕円型調和振動子モデル 3. Electron-Phonon散乱
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
福井工業大学 原 道寛 学籍番号____ 氏名________
3.ワイドギャップ半導体の オーム性電極材料開発
学年   名列    名前 物理化学 第1章5 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
物理学実験 II ブラウン運動 ー 第2日目 ー 電気力学結合系の特性評価 物理学実験II (ブラウン運動) 説明資料.
第29回応用物理学科セミナー 日時: 11月10日(木) 16:10 – 17:10 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
* Ehime University, Japan
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計算材料科学 ー量子力学と熱統計力学の基礎ー 物理工学総論,22/5/02 京都大学 計算材料科学 ー量子力学と熱統計力学の基礎ー 工学研究科・材料工学専攻 助教授 西谷滋人

金属材料の特性 高強度,高剛性 高信頼性 耐熱性 気密性(宇宙機では特に重要) 加工性(成型,溶接,切削) 軽量(Al系,Ti系)

役立つTi 航空機部品 ロケット部品(H-IIA) 自転車,眼鏡のフレーム, 時計,ラップトップパソコン

H-IIロケットエンジンLE-7 H-IIロケットエンジンLE-7

H-IIロケット8号機エンジンLE-7の破損状況 http://www.nasda.go.jp/Home/Press/Press-p/199912/h28_991207_f05_j.jpg

FTPインデューサ翼の破損状況 インデューサ欠損部の1つの破面(a2破面:写真2.1参照)が、疲労破壊であると判断された。疲労破面に特有に見られるストライエーション等の破面観察結果から、金属材料技術研究所では変動応力範囲と破断繰り返し数を以下のように算定した。 変動応力範囲:数百MPa 破断繰り返し数:105回程度http://yyy.tksc.nasda.go.jp/Home/Press/Press-p/200003/ h28_000317_f01_j.jpg

材料設計の指針 実験データ 知識データ 周期律表 状態図

周期律表

密度, 融点 Mg(1.74) 649K Al (2.70) 660K Ti (4.5) 1670K Fe (7.86) 1536K Cu (8.93) 1083K Au (18.86) 1063K

状態図(水) 融点,沸点 富士山の上で炊く飯がまずいのは低温で水が沸騰して生煮えになるため,圧力釜 三重点

状態図(炭素) -同素体- 準安定 溶融Ni触媒 ダイヤモンドの定圧合成

Tiに現れる(a) bcc, (b) hcp, (c) ω格子

状態図 (a) 水,(b) Ti

計算材料科学 量子力学と 熱統計力学

量子力学 前期量子論 シュレディンガー方程式 簡単な例(ポテンシャルとエネルギー準位) 化学結合の起源 ばねモデル Tiの第一原理計算結果

前期量子論 黒体輻射, 光電効果, コンプトン散乱 波動ー粒子の二重性(duality) (de Broglie,1923) 電子線回折(1927 Davisson & Germer) 物質波 Schrödinger方程式 (1926)

Schrödinger方程式 導出(各自トライ)

簡単な例(一次元調和振動子) ポテンシャル エネルギー準位

化学結合の起源(ポテンシャルと準位) Linear Combination of Atomic Orbitals 原子軌道の線形結合

固有値,永年方程式の解

結合,反結合準位

結合準位の距離依存性

ばねモデル

Tiの電子状態

Tiの結合エネルギーの体積依存 p=-dE/dV

熱統計力学 熱伝導,熱容量 分子動力学 モンテカルロシミュレーション アインシュタインモデル 比熱

熱伝導,熱容量 実験 ビタークラフト

分子動力学 Newtonの運動方程式 Lagrange力学 Hamilton力学 Nose-Hoover力学

モンテカルロ(MC)シミュレーション 初期状態から少しのエネルギー差を仮定して,出現する可能性の高い状態を次々と生成させていく 位相空間 応用(焼きなまし法) 巡回セールスマン 問題 CPU配置,配線

位相空間

MCのアルゴリズム (1) 配置a を仮定しE (a )を求める. (2) a からすこし違った配置a +da を作る. (3) DE = E (a ) - E (a )を求める. (4) DE < 0なら新たな配置を採用する. (5) DE > 0なら新たな配置を exp(- DE/T)の確率で受け入れる. (6) 手順2以下を適当な回数繰り返す.

アインシュタインモデル ポテンシャルの焼き直し

Energy計算 C=dE/dT

Einsteinモデルの計算結果 Diamond(θE=1320K) Dulong-Petitの法則

残された課題 bcc-Tiの安定性 相変態 組織形成 機械的性質 おまけ(数式処理ソフトについて)