申請だけではない! 臨床研究を効率化させるために CDISC ができること

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申請だけではない! 臨床研究を効率化させるために CDISC ができること 第16回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議 2016年9月19日 CDISC Japan User Group CDASH Team 山口 裕志

はじめに 現在公開されている「CDASH 標準モデル」について   その内容を紹介する。 臨床試験のデータ収集におけるCDASH標準モデルの   活用方法について紹介する。 CDASH活用における利点・考慮点を提示し、   現実的なアプローチを提案する。

目次 CDISCとは?  CDASHの概要 CDASHの活用 規制要件

目次 CDISCとは?  CDASHの概要 CDASHの活用 規制要件

CDISCとは? Clinical Data Interchange Standards Consortium 臨床データ交換標準コンソーシアム 1997年 ボランティア団体として米国で活動スタート 2000年 非営利団体として法人化 2016年 PMDA申請時要件 医学研究およびヘルスケア領域における世界共通のデータ標準を開発・    サポートする 情報システムの相互運用により医学や医療関連分野の研究を加速 グローバルかつプラットフォームに依存しないデータ標準      → より質の高い医学研究を通じて、患者の治療と安全性に関する情報を提供 現在のサポート会員は世界各国に400以上 アカデミア、製薬企業、ITサービス企業と多岐にわたる 標準開発は合意のもと進められ、アクセスフリー、オープンです! 出典:CDISC ホームページ - CDISC Mission and Principles (http://www.cdisc.org/about/mission)

CDISCのユーザグループ CJUG: CDISC Japan User Group CDISC User Networks 世界の各国・各エリアでのユーザーによるユーザーのための集まり 主な目的 CDISCの実装経験の共有 CDISC標準に対する意見交換 パブリックレビューへのコメント 現在、日本ではCJUG – CDISC Japan User Groupが 活動中 SDTM,ADaM,CDASH など、各標準ごとのグループ構成が主 世界的には、州やエリア、言語別のグループが活動中 参考 http://cdisc.umin.jp/(CDISC Japan) 出典:CDISC ホームページ - CDISC User Networks (http://www.cdisc.org/cdisc-user-networks)

目次 CDISCとは?  CDASHの概要 CDASHの活用 規制要件

Case Report Tabulation CDASHとは? Clinical Data Acquisition Standards Harmonization 収集すべき臨床データの標準:CRF&DB 臨床データと申請データの一貫性を保つための標準 Medical records Submission Database Case Report Tabulation CRF Statistical Reports CDASH Site SDTM ADaM CDASHにより、臨床試験で収集すべきデータやその形式を把握することができる 意味を変えずに情報を伝達する 後工程の標準モデルから作成された標準収集項目 トレーサビリティが保たれ、 原データからの一貫性が クリアになる Big Data 試験に依存しないデータの活用が意識されている

CDASHとは?:CDASH標準の構成要素 CRF収集項目は、関連するデータごとに「ドメイン」と呼ばれるデータセットに格納される。(アルファベット2文字で表記) CDASH V2.0で、下記のドメインがさらに拡張される予定。 Special Purpose Interventions Events Findings Demographics (DM) 患者背景 Prior and Concomitant Medications (CM) 前治療, 併用治療 Adverse Event (AE) 有害事象 Drug Accountability (DA) 薬剤使用記録 Laboratory Test Results (LB) 臨床検査結果 Comments (CO) コメント Disposition (DS) 試験対象被験者 の内訳 ECG Test Results (EG) 心電図検査結果 Physical Examination (PE) 身体所見 Exposure (EX) 薬物暴露 Medical History (MH) 既往症・合併症 Inclusion /Exclusion Criteria Not Met (IE) 不適合 選択基準/除外基準 Substance Use (SU) 嗜好品等 Subject Characteristics (SC) 被験者特性 Protocol Deviations (DV) 試験実施計画書 からの逸脱 Vital Signs (VS) バイタルサイン 臨床試験でよく使用される 16ドメインのCRF項目の標準モデル

CDASHモデル CDASH v1.1 Standard SDTM or CDASH Variable Name: Core: SDTM/CDASHの各項目につく変数名 Core: 項目の属性 CDASH Core定義 略号 Highly Recommended HR Recommended/ Conditional R/C Optional O CRF Completion Instructions: 項目の説明。収集すべきデータの詳細、注意事項 出典:CDASH User Guide v 1-1.1

Code Listの利用 CDISC 標準では、あらかじめ定義された選択肢のリストが用意されている。(Controlled Terminology) CDASH変数/CRF項目によって使用すべきControlled Terminologyが指定されているので、フリーテキストの入力を避けてCode Listからの選択式とする。 出典:CDASH User Guide v 1-1.1

目次 CDISCとは?  CDASHの概要 CDASHの活用 規制要件

Case Report Tabulation CDASHの活用 収集すべき臨床データの標準 臨床試験データと申請データの一貫性を保つための標準 Database CRF Case Report Tabulation Statistical Reports SDTM Submission ADaM Medical records Site CDASH

Case Report Tabulation CDASHの活用 収集すべき臨床データの標準 CRFの設計、収集項目の標準化を行う際に参照すべきモデル 電子、紙CRFを問わず使用可能。ベンダーやプラットフォームにも依存しない、汎用性を持った標準モデル 臨床試験データと申請データの一貫性を保つための標準 申請データデータトレーサビリティの出発点 医療情報を治験データに活用する際の入り口 試験データ収集・送信における、試験データベースのメタデータとして活用が可能 Database CRF Case Report Tabulation Statistical Reports SDTM Submission ADaM Medical records Site CDASH

Case Report Tabulation CDASHの活用 収集すべき臨床データの標準 CRFの設計、収集項目の標準化を行う際に参照すべきモデル 電子、紙CRFを問わず使用可能。ベンダーやプラットフォームにも依存しない、汎用性を持った標準モデル 臨床試験データと申請データの一貫性を保つための標準 申請データデータトレーサビリティの出発点 医療情報を治験データに活用する際の入り口 試験データ収集・送信における、試験データベースのメタデータとして活用が可能 Database CRF Case Report Tabulation Statistical Reports SDTM Submission ADaM Medical records Site CDASH

CRF設計への活用:Adverse Event (AE) ① 試験名:xxxxx 被験者識別コード:123 質問文 回答 有害事象はなかったですか?   はい     いいえ 有害事象名 グレード 発生日       年    月    日 転帰確認日 重篤・非重篤   あり     なし 重篤度分類   死亡   生命を脅かす   永続的・重大な障害   入院・入院期間の延長   先天異常   その他 その他処置

CRF設計への活用:Adverse Event (AE) ② !CDASH準拠を見極めるヒント! どの施設の情報? 試験名:xxxxx 被験者識別コード:123 あったら「はい」? なかったら「はい」? 質問文 回答 有害事象はなかったですか?   はい     いいえ 有害事象名 グレード 発生日       年    月    日 転帰確認日 重篤・非重篤   あり     なし 重篤度分類   死亡   生命を脅かす   永続的・重大な障害   入院・入院期間の延長   先天異常   その他 その他処置 意味を変えずに情報を伝達する必要性 意味を変えずに情報を伝達する必要性 消失日? 確認日?? 以外の意味は 「なし」 or 未確認? Controlled Terminologyを使用

CRF設計への活用:Adverse Event (AE) ③ 項目や選択肢を標準化 症例の特定が可能 試験名:xxxxx 実施医療機関名:CJUG-CDASH病院 被験者識別コード:123 質問文 回答 有害事象はなかったですか? 有害事象の有無   はい    いいえ   あり     なし 有害事象名 グレード 発生日       年    月    日 転帰確認日 転帰日 重篤・非重篤    あり     なし 重篤度分類   死亡   生命を脅かす   永続的・重大な障害   入院・入院期間の延長   先天異常   その他 その他処置 被験薬投与に関する処置   増量   減量   投与量変更せず   投与中断   投与中止        Yes, No をそろえる Question Text or Promptを使用 はい    いいえ Yes, No を確認 Controlled Terminologyから選択

CRF設計への活用:Concomitant Medications (CM) 例1:薬剤名(治療名)から収集 例2:特定の薬剤に関して収集 質問文 回答 薬剤はありましたか? ◯ あり   ◯ なし 薬剤名(または)治療名 開始日      年    月    日 継続中 ◯ はい   ◯ いいえ 終了日 投与量 単位 ◯ mg   ◯ g ◯ mL   ◯ IU 剤形 ◯ 錠剤   ◯ カプセル ◯ 輸液   ◯ 軟膏 頻度 ◯ 1日1回   ◯ 1日2回 ◯ 1日3回   ◯ 頓用 投与経路 ◯ 経口   ◯ 皮下 ◯ 経皮   ◯ 筋肉内 ◯ 吸入 理由 ◯ 有害事象   ◯ 予防 質問文 回答 Xyzal ◯ あり   ◯ なし 投与量 単位 ◯ mg   ◯ g 剤形 ◯ 錠剤   ◯ カプセル 頻度 ◯ 1日1回   ◯ 1日2回 ◯ 1日3回   ◯ 頓用 開始日      年    月    日 治験前から投与/実施 ◯ はい   ◯ いいえ 終了日 継続中 NSAIDs COUMADIN PLAVIX ! どちらもCDASHに準拠している !

両者間のすれ違いが試験のスムーズな進行の妨げに 収集項目の標準化:使用前 医療機関(医師、CRC・・)と データマネジャー(DM)の間では意見がすれ違いがち… 医療機関(医師、CRC・・) データマネジャー(DM) ■医師 ・とりあえずいろんな情報をとっておきたい。  ・医師によって収集項目のイメージがさまざま。 ・解析のことまではわからない。 ・画面を何度も開くのが面倒だから、入力項目を出来るだけ一つの画面に纏めてほしい。 ・CRFが固まらないから、プロトコルも固まらない。(???) ・現場のオペレーション(解釈)がDMに伝わらない。 ・DMの要望が理解できない。 ■CRC ・依頼者(プロトコル)によって、項目の収集方法、  基準、取り決めが統一されていない。 ・EDCの入力規則の認識がモニターによって異なると困る。 ・解析に関係のある項目だけを収集したい。 ・ドメインごとに画面構造を分けたい。 ・施設との認識のずれにより、やりとりに時間がかかる。 両者間のすれ違いが試験のスムーズな進行の妨げに

試験や依頼者によるバリエーションの最小化 収集項目の標準化:使用後 データ収集項目の標準化が進むことで… 医療機関(医師、CRC・・) データマネジャー(DM) ・CRF設計にかかる時間が短縮される。 ・データクリーニングや解析が容易になる。 ・解析のことがわからなくても、CDASHに準拠することで適切なデータを収集できる。 ・データの収集方法が統一される。 ・問い合わせの意図がわかり、対処が容易になる。 「何を収集するか」の可視化 試験や依頼者によるバリエーションの最小化 効率化! スピードアップ! 高品質! 不毛な駆け引きからの卒業♩

Case Report Tabulation CDASHの活用 収集すべき臨床データの標準 CRFの設計、収集項目の標準化を行う際に参照すべきモデル 電子、紙CRFを問わず使用可能。ベンダーやプラットフォームにも依存しない、汎用性を持った標準モデル 臨床試験データと申請データの一貫性を保つための標準 申請データデータトレーサビリティの出発点 医療情報を治験データに活用する際の入り口 試験データ収集・送信における、試験データベースのメタデータとして活用が可能 Database CRF Case Report Tabulation Statistical Reports SDTM Submission ADaM Medical records Site CDASH

Case Report Tabulation CDASHの活用 治験側の受け皿として、CDASHに基づくデータ構造を持つDBの活用が可能 医療情報と治験データの交換について、“CDASHは、データ交換の技術的側面には言及していない”。CDISCでは別のInitiativeを設定し、モデルを検討している → CDISC Healthcare Link 臨床試験データと申請データの一貫性を保つための標準 申請データデータトレーサビリティの出発点 医療情報を治験データに活用する際の入り口 試験データ収集・送信における、試験データベースのメタデータとして活用が可能 Database CRF Case Report Tabulation Statistical Reports SDTM Submission ADaM Medical records Site CDASH

CDISC Healthcare Link 目的 課題 方法 ソリューション 簡単に医師が臨床研究を行える 一度データ収集すれば、様々な下流部門で使える業界標準フォーマット データの質と患者の安全性を向上 課題 医療と臨床研究の相互運用性 電子カルテ(EHR)のデータを活用し、研究データのダブルデータ入力を排除することに焦点をあてて開発 方法 臨床研究医のワークフロー改善のため、既存アカウントの規制、プライバシーとセキュリティの問題に対して措置を 講じ、EHRベンダーと合同開発してユースケースを提供。  ・ヘルスケアリンクプログラム計画/ガントチャート  ・CDISC-IHEヘルスケアリンクプロファイルの一覧表  ・CDISCヘルスケアリンクの章(CDISCプライマーから更新)  ヘルスケアリンクで使用される他のCDISC規格についてはCDISC CDASH、プロトコル表現モデル、  研究デザインモデル-XMLおよびODMを参照。 ソリューション 異なるシステムのデータと連携する統合規格 CDISCとIHEにより、電子カルテ(EHR)と臨床研究システムの間にワーキングリンクを作成。 データ・キャプチャプロファイル用のフォーム(RFD)を取得し、CDISC/IHE統合プロファイルを開発。 安全性報告(およびBiosurveillance)、臨床研究、疾病レジストリなどの重要な二次利用のためのデータを、 CDISC標準に沿ってEHRからデータを収集するために使用。 すでにEHRに存在している臨床研究の重要なデータを取得するには、データ品質、相互運用性、データ共有の 適時性などがサポートされているEHRを通じることで担保され、複数のデータ収集ツールに入力して冗長化が可能。 この統合規格では、医療や臨床研究データのワークフローを接続する最初の「スティッキー部品」を作成。 IHEは、データキャプチャのプロフィールフォームを取得可能。 IHE: Integrating the Healthcare Enterprise 医療情報システムの相互接続性を推進する国際的なプロジェクト 出典:CDISC Healthcare Link

CDISC Healthcare Link:電子カルテ(EHR)とEDC ①フォーム選択  出力用ドキュメント作成 EHRからフォームとあらかじめ記入されている データをリクエストする ②マッピング フォームにあらかじめ記入  されているデータをマッピング EDCから部分的に完成したフォームを送る ①②③でHealthcare Link 統合プロファイルを使用 ③フォームの表示  電子カルテユーザが補足    等のデータ入力を実施 EHRから完全に完成したフォームを送る

CDISC Healthcare Link:想定される今後 これまで 今後 製薬会社毎に違う操作法、 別のEDC端末を利用 1台のEDC端末 ⇒全ての製薬会社に対応 医療機関 医療機関 各社独自EDC端末 CDISC標準対応EDC端末 各社EDC端末 の共通化 電子カルテ 電子カルテ 電子カルテに治験データ交換標準の インターフェイスがなく、独自にEDCと接続 電子カルテに治験データ交換標準の インターフェイスを作り、効率化 医療機関 医療機関 独自の仕様で接続 (高価・非効率) CDISC標準で接続 (ベンダー関係なく) CDISC標準対応 EDC端末 CDISC標準対応 EDC端末 電子カルテ 電子カルテ 電子カルテデータ の自動取得化

目次 CDISCとは?  CDASHの概要 CDASHの活用 規制要件

国内規制要件とCDISC 承認申請を行う品目を対象に申請電子データの提出が義務化 されます。 現状、電子申請の対象はSDTMとADaM。CDASHは対象ではない 申請電子データの受付は今年の10月1日に開始します。 スケジュール: 2016年8月2日:データ提出用システム「ゲートウェイシステム」稼働 2016年10月1日~ 2020年3月31日:経過措置期間 2020年4月1日:完全施行

Thank you for your attention, and おわりに CDASHはDe facto standardになれるか? 使って役に立つものが「標準」であるべき 規格が出来るだけで標準化は成り立たたない。使うことで より洗練され、なくてはならないものになる→標準! 標準化の普及を待ちの姿勢で迎えるのではなく、 その最前線で使ってみよう! Thank you for your attention, and Join! CJUG CDASH Team!!

Thank you for your attention, and 謝辞 本スライドは、CJUG CDASH Team、あり方会議サブチームで検討・作成しました。 メンバーのみなさまに感謝申し上げます。 上野 悟 筑波大学 医学医療系 加藤 仁 株式会社中外臨床研究センター 北島 浩二 大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)研究センター 北薗 幸子 第一三共株式会社 鈴木 萌 エイツーヘルスケア株式会社 孫 成華 DOTインターナショナル株式会社 田村 祐子 株式会社キャピタルメディカ 辻 歩 公益財団法人先端医療振興財団臨床研究情報センター 八嶋 智美 株式会社 三和化学研究所 吉田 和史 株式会社エスアールエル・メディサーチ Thank you for your attention, and Join! CJUG CDASH Team!!

Appendix

まとめ:効率化のためにCDISCができること Pros: CRFの品質向上・治験のスピードアップ データ入力負担軽減 転記ミス削減 データ収集の即時性 SDVおよび施設訪問削減 電子カルテシステムとCDMS/EDCシステム間のデータ交換 意味を変えずに情報を伝達する必要性 データの活用を意識した収集項目の標準化 Medical records 公開・新薬申請 Database Case Report Tabulation CRF Statistical Reports データ収集とDB化 Site 結果一覧表 解析結果 Improve: 実用可能なデータ共有の実現 システム間データ交換 意味的な普遍性・整合性をもったデータの収集 関連インフラ整備、投資可能なレベルへのコスト低下、集学的なデータ活用の意義・意識の普及 (様々な意見や立場を乗り越えてまとまろう、まとめようとする意欲) Big Data 試験に依存しないデータの蓄積

Case Report Tabulation 臨床データの流れ 医療機関にあるデータは、 試験データをまとめる上では バラバラの状態 申請時には 既定のフォーマットに整える Medical records Submission Database Case Report Tabulation CRF Statistical Reports CDASH Site SDTM ADaM :CDISCの標準モデル

Case Report Tabulation SDTMとは? Study Data Tabulation Model 申請用の試験データを格納するテーブルの標準モデル もっとも古くからあるCDISCの中心的な標準 データの構造や見出し、格納すべきデータについての取り決め PMDAでは申請時にSDTMフォーマットでの提出を要件としている データの統合解析を可能にすることで、横断解析が可能に 疾患領域の横断解析、安全性情報の集積に期待 Medical records Submission Database Case Report Tabulation CRF Statistical Reports CDASH Site SDTM ADaM