キンメダイの卵から仔魚期における分散過程 Dispersion/transportation of alfonsino, Beryx splendens, eggs and larvae 堀井善弘(都水試大島)・荒 高弘・小西雅人・田中祐志(東水大) 【目 的】 キンメダイ Beryx splendensの 卵稚仔は採集例が少なく、そ の初期生態は、ほとんど解明 されていない。そこで、キンメダ イ卵仔魚の分布特性を把握す るとともに、卵~仔魚の比重を 測定し、分散過程について検 討した。 キンメダイ卵仔魚の比重変化 遊泳力のないキンメダイ卵仔魚の受動的な分散過 程を把握するために、密度成層水柱を用いて、卵~ 後期仔魚の比重を測定した。 写真1 キンメダイ未成魚 C stage B stage 1 mm st 1.005 1.010 写真2 キンメダイ卵 1.015 Specific gravity 1.020 Depth(m) キンメダイ卵仔魚の発生段階別分布特性 1.025 伊豆諸島黒瀬海域において、 MTDネットを深度100m・200m・ 300mおよび密度躍層の4層を 同時に曳網し、卵の鉛直分布 を把握した。 Tokyo 1.030 Boso- Pen. 28 29 30 31 1 2 35°N Aug. Sep. Oshima 図3 C期卵~後期仔魚期 の比重変化 図4 黒瀬海域におけるCTD プロファイルと前期仔魚 の比重分布 Miyakejima 34° Kurose Bank Hachijo-jima 33° 卵~仔魚期の比重測定の結果から以下のことが明 らかになった。 ・ C期卵の比重は、表層海水と比較して小さい。 ・ 前期仔魚の比重は、孵化後増加傾向を示し、1日 で深度300m前後で中立となる浮力となる。 写真3 MTDネット 139° 140°E 図1 調査海域 Egg concentration (inds./100m3) 50 100 150 200 キンメダイの初期生活史 Surface Current Hatch out 100 B and C stage Sinking due to negative buoyancy Depth (m) 200 A stage 200m Prelarvae ? Spawning 300 図2 黒瀬海域におけるキンメダイ卵の発生段階別鉛直分布 ? Bottom 400m MTDネットによるキンメダイ卵の鉛直分布調査により、 以下のことが明らかになった。 ・ 採集した卵は、A期卵とB期後半からC期前半の卵の2 段階に分けられた。 ・ 深度 300 mで、発生段階の若いA期卵(桑実胚)を多く 採集した。 ・ 深度が浅くなるにつれて、発生が進んだB・C期卵が多 く採集される傾向がある。 図5 MTDによる分布調査および卵稚仔の比重測定 から推定したキンメダイ初期生活史 ・ 深度300m以深で卵が産出される。 ・ キンメダイ卵は浮上をしながら発生を進め、表層 まで浮上する。 ・ 表層で孵化した前期仔魚は海水の比重差により 深度300m前後まで沈降する。