キンメダイの卵から仔魚期における分散過程

Slides:



Advertisements
Similar presentations
5 章 標本と統計量の分布 湯浅 直弘. 5-1 母集団と標本 ■ 母集合 今までは確率的なこと これからは,確率や割合がわかっていないとき に, 推定することが目標. 個体:実験や観測を行う 1 つの対象 母集団:個体全部の集合  ・有限な場合:有限母集合 → 1つの箱に入っているねじ.  ・無限な場合:無限母集合.
Advertisements

頻度の分析 頻度データ 着果率,発芽率,生存率 離散量と離散量の比率である 頻度データに相当しないパーセント表記 のデータ 糖度,含水率 連続量と連続量の比率である.
計量的手法入門 人材開発コース・ワークショップ (IV) 2000 年 6 月 29 日、 7 月 6 ・ 13 日 奥西 好夫
1 PCB のムラサキイガイへの濃縮特性 に関する研究 京都大学大学院工学研究科 ○ 新海貴史、田中康寛、津野洋 兵庫県立健康環境科学センター 中野 武、松村千里 PCB をはじめとする POPs の監 視 背景・目 的 環境中で微量なため測定困 難 ムラサキイガイを用いた生物モニタリングが有 効 蓄積物質の単純比較.
日本近海におけるホシササノハベラの 遺伝的分化の解析 保全生態学研究室 川瀬 渡 2006 年 2 月 21 日 -日本沿岸域の環境保全のために-
気候 - 海・陸炭素循環結合モデルを用い た 地球温暖化実験の結果 吉川 知里. 気候 - 海・陸炭素循環 結合モデル.
生体情報論演習 - 統計法の実践 第 1 回 京都大学 情報学研究科 杉山麿人.
Wilcoxon の順位和検定 理論生態学研究室 山田 歩. 使用場面 2 標本 離散型分布 連続型分布(母集団が正規分布でない時など 効果的) ただパラメトリックな手法が使える条件がそ ろっている時に、ノンパラメトリックな手法 を用いると検出力(対立仮説が正しいときに 帰無仮説を棄却できる確率)が低下するとい.
配偶者選択による グッピー (Poecilia reticulata) の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究 生物多様性進化分野 A1BM3035 吉田 卓司.
第2章 なぜ発達心理学を学ぶのか? 道案内 1 準備 (0) 授業を始める前に * (1) 発達心理学とはどんな学問か? 2 知覚の発達 (3) 子供に世界はどう見えるか? 3 認知の発達 (4) 子どもはものごとをどう理解するか (5) 子どもは心をどう理解するか 4 感情の発達 (6) 子どもに愛情を注ぐこと.
降水セルから見た 甑島ラインの形成過 程. 諫早ライン 1997/07/11/16:00JST 2001/06/19/11:30JST 五島ライン 五島列島 甑島列島 長崎半島 甑島ライン 2002/07/01/12:20JST 長さ:約 80km 長さ : 約 70km 長さ : 約 150km.
統計学第10回 多群の差を調べる~ 一元配置分散分析と多重比較 中澤 港
熱帯太平洋における季節内スケールの 赤道波動特性の解析 5AOOM007 萩原 右理 指導  轡田 邦夫 教授.
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
○田中康寛、新海貴史、津野洋(京都大学) 松村千里、中野武(兵庫県立健康環境科学研究センター)
幼虫期の環境による クワガタの形質変化 弘前南高校 2年  東海 峻也.
個体識別したオオサンショウウオの 行動の追跡による生態解明
永井晴康、都築克紀(原研)、植田洋匡(京大防災研)
第8回 関連多群の差の検定 問題例1 健常人3名につき、血中物質Xの濃度を季節ごとの調べた。 個体 春 夏 秋 冬 a
第2章 なぜ発達心理学を学ぶのか?.
日本の東西での違い 経営学部経営学科 MG4410 野上 翔太
急性腎不全の鑑別 第3回埼玉内科専門医会 埼玉医科大学腎臓内科 岡田浩一
土木計画学 第6回(11月9日) 調査データの統計処理と分析4 担当:榊原 弘之.
中距離走におけるバウンディング トレーニングの有効性について
微粒子合成化学・講義 村松淳司
応用数理工学特論 期末発表 西口健太郎 渡邉崇充
Estimations of subsurface structures and dielectric properties of lunar mare regions from Lunar Radar Sounder (LRS) Observations 月レーダーサウンダー(LRS)による月面海領域の地下構造と電気的特性の推定.
1.標本平均の特性値 2.母分散既知の標本平均の分布 3.大数法則と中心極限定理
北海道駒ヶ岳火山の噴火活動史 の再検討 中長期予測 噴火履歴の精密復元 マグマ供給系の解明 現状の把握 吉本充宏 東京大学・地震研究所
北太平洋西部亜寒帯域における大型カイアシ類(Neocalanus Cristatus)のLagrangian Ensemble Model
技術コンサルタント 高須 知二 Tomoji TAKASU
100万トン水チェレンコフ検出器の開発研究 東京大学宇宙線研究所 金行健治 要求額:査定額:0円.
塩害促進条件の違いがRC床版の材料劣化に及ぼす影響
灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討
1.標本平均の特性値 2.母分散既知の標本平均の分布 3.大数法則と中心極限定理
標本分散の標本分布 標本分散の統計量   の定義    の性質 分布表の使い方    分布の信頼区間 
In situ cosmogenic seminar
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
BZO添加量の異なるErBCO 薄膜の磁束ピンニング特性
n型熱電変換材料Nd2-xCexCuO4の結晶構造と熱電特性
都市表面における 熱輸送速度の実験的研究 スケールモデルによる野外実験と風洞実験の比較 大久保 典明
アセチリド錯体を構成要素とする 分子性磁性体の構築と その構造及び磁気特性の評価
サーマルプローブを用いたイオン温度計測の新しいアプローチ
早稲田大学大学院商学研究科 2014年12月10日 大塚忠義
微細ショットピーニング加工による 金属部品の機械的特性の向上
風害後50年間の落葉広葉樹林の林分回復過程 主要12樹種について個体数動態、胸高直径と樹高の頻度分布、 考察 はじめに 調査地と方法 結果
準実大模型を用いた 都市の表面温度と気温分布 に関する野外実験
「アルゴリズムとプログラム」 結果を統計的に正しく判断 三学期 第7回 袖高の生徒ってどうよ調査(3)
学部生対象 地球水循環研究センター(一部)説明会 趣旨説明
目的  成人喫煙率は、東京都や長野県で男性喫煙率が30%台と発表されるなど、全体に減少傾向にはあるが、20代女性の喫煙率がこの10年で倍増するなど、若い女性や未成年者の喫煙増加が問題となっている。特に、妊婦の喫煙は、胎児に深刻な影響を与えており、有効な対策が急務である。そこで、洲本市における妊婦喫煙の実態と喫煙の害についての知識の調査を実施することとした。
ダスト-気候-海洋系のフィードバック 河宮未知生.
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
春季(5~6月)におけるカタクチイワシシラスの 予報対象海域(瀬戸内海東部)
屋外絶縁用高分子材料の 撥水性の画像解析に関する研究
MOIRCSサイエンスゼミ 銀河団銀河のMorphology-Density Relation
地球温暖化実験におけるヤマセ海域のSST変化- CMIP3データの解析(序報)
環境配慮型水田におけるイシガイ類の生息域及び 水管理による成長量の違い
ヤマセ海域のSST変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー
スケールモデルを用いた建物群周りの        気温分布の検討 藤原 孝三 指導教員  成田 健一.
散らばり 本時の目標 資料の傾向をみるときは、代表値だけでなく散らばりを考える必要があることを理解する。
電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験
Water Quality Problems in Reservoirs and Rivers
スケールモデルによる都市表面の熱輸送速度に関する実験
神戸沿岸海域における 有機フッ素化合物濃度及び組成の経年変化
海氷の生成を考慮した 流氷運動の数値計算 指導教官 山口 一 教授 船舶海洋工学科 80403 昆 純一.
マイクロ波測定により、プラズマ密度、揺動計測を行いプラズマ閉じ込めについて調べる。
Presentation transcript:

キンメダイの卵から仔魚期における分散過程 Dispersion/transportation of alfonsino, Beryx splendens, eggs and larvae 堀井善弘(都水試大島)・荒 高弘・小西雅人・田中祐志(東水大) 【目 的】  キンメダイ Beryx splendensの 卵稚仔は採集例が少なく、そ の初期生態は、ほとんど解明 されていない。そこで、キンメダ イ卵仔魚の分布特性を把握す るとともに、卵~仔魚の比重を 測定し、分散過程について検 討した。 キンメダイ卵仔魚の比重変化  遊泳力のないキンメダイ卵仔魚の受動的な分散過 程を把握するために、密度成層水柱を用いて、卵~ 後期仔魚の比重を測定した。 写真1 キンメダイ未成魚 C stage B stage 1 mm st 1.005 1.010 写真2 キンメダイ卵 1.015 Specific gravity 1.020 Depth(m) キンメダイ卵仔魚の発生段階別分布特性 1.025  伊豆諸島黒瀬海域において、 MTDネットを深度100m・200m・ 300mおよび密度躍層の4層を 同時に曳網し、卵の鉛直分布 を把握した。 Tokyo 1.030 Boso- Pen. 28 29 30 31 1 2 35°N Aug. Sep. Oshima 図3 C期卵~後期仔魚期 の比重変化 図4 黒瀬海域におけるCTD プロファイルと前期仔魚 の比重分布 Miyakejima 34° Kurose Bank Hachijo-jima 33°  卵~仔魚期の比重測定の結果から以下のことが明 らかになった。 ・ C期卵の比重は、表層海水と比較して小さい。 ・ 前期仔魚の比重は、孵化後増加傾向を示し、1日  で深度300m前後で中立となる浮力となる。 写真3 MTDネット 139° 140°E 図1 調査海域 Egg concentration (inds./100m3) 50 100 150 200 キンメダイの初期生活史 Surface Current Hatch out 100 B and C stage Sinking due to   negative buoyancy Depth (m) 200 A stage 200m Prelarvae ? Spawning 300 図2 黒瀬海域におけるキンメダイ卵の発生段階別鉛直分布 ? Bottom 400m  MTDネットによるキンメダイ卵の鉛直分布調査により、 以下のことが明らかになった。 ・ 採集した卵は、A期卵とB期後半からC期前半の卵の2  段階に分けられた。 ・ 深度 300 mで、発生段階の若いA期卵(桑実胚)を多く  採集した。 ・ 深度が浅くなるにつれて、発生が進んだB・C期卵が多  く採集される傾向がある。 図5 MTDによる分布調査および卵稚仔の比重測定 から推定したキンメダイ初期生活史 ・ 深度300m以深で卵が産出される。 ・ キンメダイ卵は浮上をしながら発生を進め、表層  まで浮上する。 ・ 表層で孵化した前期仔魚は海水の比重差により  深度300m前後まで沈降する。