乳幼児突然死 と タバコの関係
平成9年度厚生省心身障害研究「乳幼児死亡の防止に関する研究」報告(抄)
乳幼児突然死症候群(SIDS)対策に関する検討会報告 厚生省 平成10年6月1日 疫学(死亡数、好発年齢等) ・平成7年における死亡数は、579人 (男児341人、女児238人) ・平成8年における死亡数は、526人 (男児317人、女児209人) ・出生 1,000 対 0.44 人 の死亡率である(平成8年) ・当疾患による死亡の約9割が乳児期。乳児死亡の第3位となっている。 平成8年における全乳児死亡数 4、546人 1位 先天奇形、変形及び染色体異常 1、615人 (35.5 %) 2位 周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害 757人 (16.7 %) 3位 乳幼児突然死症候群(SIDS) 477人 (10.5 %) 4位 不慮の事故 269人 ( 5.9 %)
SIDSに関する諸外国の状況 厚生省心身障害研究において国内外のSIDSに関する文献を 検索した結果、いくつかの国において育児環境に関する介入 (キャンペーン)を行ったところ、SIDSの発生頻度が下がったと の報告があることがわかった。 具体的には、 (1)仰向け寝で育てる (2)妊娠中および周囲での喫煙を止める (3)母乳で育てる (4)児を暖めすぎない 等の項目をそれぞれの国で勧奨した。 うつ伏せ寝を止めることが発生頻度の低下に最も大きな影響を与え、 次に禁煙も発生頻度低下に関与しているとの報告がなされている。
発生頻度の各国比較、介入(キャンペーン)前後の変化 (平成6年度厚生省心身障害研究「小児の心身障害予防、治療システムに関する研究」による) *1; 1975年~1990年の平均 *2; 1991年~1992年の平均 (平成9年度厚生省心身障害研究「乳幼児死亡の防止に関する研究」による)
平成9年度厚生省心身障害研究「乳幼児死亡の防止に関する研究」報告(抄) SIDSの発症に対して、それぞれの要因が相対的にどれだけ危険であるかを 知るた めに、オッズ比と95 %信頼区間を求め、有意性の検討を行った。 (1)寝かせ方について 「うつ伏せ」によるオッズ比は、3.000( p<0.001,95%信頼区間 2.031 ~ 4.635 )であった。 すなわち、「うつ伏せ」は、「仰向け」に比して、約 3.0倍程度SIDS発症のリスクが高まる ことが示唆される。 (2)乳児期の栄養方法について 「人工栄養」によるオッズ比は、4.833( p<0.001,95%信頼区間 2.731 ~ 9.477 )であった。 すなわち、「人工栄養」は、「母乳栄養」に比して約 4.8倍程度SIDS発症のリスクが高まる (3)保護者等の習慣的喫煙について 「父母共に習慣的喫煙あり」によるオッズ比は、4.667(p<0.001,95%信頼区間 2.141~ 12.540 ) であった。すなわち、「父母共に習慣的喫煙あり」は、「父母共に習慣的喫煙なし」に比して 約 4.7倍程度SIDS発症のリスクが高まることが示唆される。
平成9年度厚生省心身障害研究「乳幼児死亡の防止に関する研究」報告(抄)
喫煙と乳幼児突然死症候群 (タバコは乳幼児を殺す) (タバコは乳幼児を殺す) 厚生省によると SIDS(乳幼児突然死症候群)の発症要因に関する調査で オッズ比を求め有意性の検討を行った結果、 「父母共に習慣的喫煙あり」は「父母共に習慣的喫煙なし」に比して 約 4.7倍(p<0.001,95%信頼区間 2.141~ 12.540 )であり、 SIDSとタバコの関連は明白である。 その他 「うつ伏せ」は「仰向け」に比して 約 3.0倍程度、 「人工栄養」は「母乳栄養」に比して 約 4.8倍程度、 それぞれSIDS発症のリスクが高まることが示唆されております。
SIDSに関する 外国の論文
乳幼児突然死の60%以上はタバコが原因である。 乳幼児が妊娠中もしくは出産後に家族のタバコの煙に曝露されると突然死の リスクが高まり、これは喫煙量と比例する。 Smoking and the sudden infant death syndrome: results from 1993-5 case-control study for confidential inquiry into stillbirths and deaths in infancy Peter S Blair BMJ 1996;313:195-198 (27 July)
喫煙量に比例して乳幼児突然死は増加する。 母がタバコを1日1箱吸うと乳幼児突然死は7.88倍になる。 父がタバコを1日1箱吸うと乳幼児突然死は3.50倍になる。 Dose-response effects of smoking on risk of sudden infant death syndrome. Odds ratio No (%) of No (%) of (95% confidence No of cigarettes smoked babies who died controls interval) -------------------------------------------------------------------------------------- Mother during pregnancy:(妊婦の喫煙) None (喫煙なし) 73 (37.4) 584 (74.9) 1.00 1-9 (タバコ本/日) 53 (27.2) 108 (13.8) 4.59 (2.71 to 7.77) 10-19 42 (21.5) 58 (7.4) 5.38 (2.96 to 9.75) >/=20 27 (13.8) 30 (3.8) 7.88 (3.87 to 12.26) Father:(父の喫煙) None 77 (39.5) 498 (63.8) 1.00 1-9 33 (16.9) 100 (12.8) 2.18 (1.28 to 3.69) 10-19 52 (26.7) 112 (14.4) 3.81 (2.31 to 6.29) >/=20 33 (16.9) 70 (9.0) 3.50 (1.86 to 6.56) Smoking and the sudden infant death syndrome: results from 1993-5 case-control study for confidential inquiry into stillbirths and deaths in infancy Peter S Blair BMJ 1996;313:195-198 (27 July)
SIDSは妊娠中の喫煙と貧血に強い関係がある。 Am J Dis Child 1976 Nov;130(11):1207-10 Sudden infant death syndrome. A prospective study. Naeye RL, Ladis B, Drage JS. The gestations that produced the SIDS victims were characterized by a greater frequency of mothers who smoked cigarettes and had anemia.
タバコを吸わないアメリカインディアンにはSIDSが少ない。米国 Am J Epidemiol 1991 Nov 1;134(9):958-64 Maternal smoking, low birth weight, and ethnicity in relation to sudden infant death syndrome. Li DK, Daling JR. the authors found that maternal smoking was independently associated with SIDS among White (OR) = 2.2, 95% CI 1.8-2.6), Blacks (OR = 3.1, 95% CI 1.7-5.9), Asians (OR = 2.7, 95% CI 1.1-6.6, and Hispanics (OR = 5.5, 95% CI 1.4-22.0), American Indians (OR = 1.4, 95% Cl 0.9-2.4). Understanding the reasons for the lack of a strong association between maternal smoking during pregnancy and SIDS among American Indians may enhance our knowledge of the etiology and pathogenesis of SIDS.
スウェーデン 最も効果的なSIDS対策は禁煙である。 スウェーデン 最も効果的なSIDS対策は禁煙である。 Am J Public Health 1990 Jan;80(1):29-32 Erratum in: Am J Public Health 1992 Nov;82(11):1489 Cigarette smoking as a risk factor for sudden infant death syndrome : a population-based study. Haglund B, Cnattingius S. Smoking doubled the risk and a clear dose-response relation by amount smoked was observed. Maternal smoking also seemed to influence the time of death, as infants of smokers died at an earlier age. In countries like Sweden, smoking may be the single most important preventable risk factor for sudden infant death syndrome.
喫煙する母親の母乳は受動喫煙と同様にSIDSを増加させる。 JAMA 1995 Mar 8;273(10):795-8 The effect of passive smoking and tobacco exposure through breast milk on sudden infant death syndrome. Klonoff-Cohen HS, Edelstein SL, Lefkowitz ES, Srinivasan IP, Kaegi D, Chang JC, Wiley KJ. RESULTS. Conditional logistic regression resulted in overall adjusted odds ratios (ORs) for SIDS associated with passive smoke from the mother of 2.28, the father of 3.46, other live-in adults of 2.18, and all sources of 3.50 (95% confidence interval, 1.81 to 6.75), while simultaneously adjusting for birth weight, sleep position, prenatal care, medical conditions at birth, breast-feeding, and maternal smoking during pregnancy. A dose-response effect was noted for SIDS associated with increasing numbers of cigarettes, as well as total number of smokers. Breast-feeding was protective for SIDS among nonsmokers (OR = 0.37) but not smokers (OR = 1.38), when adjusting for potential confounders.
タスマニアではSIDSの主な原因はタバコ Soc Sci Med 1989;29(8):1015-26 Sudden infant deaths in Tasmania, 1980-1986: a seven year prospective study. McGlashan ND. cigarette smoking by parents leading to passive smoking by the baby carries a high relative risk (RR = 3.0, P less than 0.001) sleeping in the prone position (RR = 1.9, P less than 0.01) as against sleeping in a lateral position. Tenants of Housing Department homes (RR = 2.6, P = 0.001).
SIDS対策には妊娠中と妊娠後の間接喫煙も含めて禁煙教育が 必要。これだけでかなりの数のSIDSが減少する。 ニュージーランド 必要。これだけでかなりの数のSIDSが減少する。 ニュージーランド Arch Dis Child 1998;79:386-393 ( November ) Case-control study of current validity of previously described risk factors for SIDS in the Netherlands M P l'Hoir We believe educational programmes are needed, including home based motivational counselling, to discourage smoking during pregnancy and postnatal passive smoking. Early identification should enable us to provide extra attention to these parents and help them to avoid pursuing unfavourable habits to combat stress. This might further decrease the incidence of SIDS.
ちょっとの喫煙・節煙・間接喫煙でも児は死ぬ。 喫煙10本未満でもSIDSは増え、家族の喫煙で児は死ぬ。 母親の喫煙 SIDS群 対象群 妊娠前 非喫煙者 40 (54%) 109 (74%) 喫煙10本未満 7 (10%) 11 (7%) 10本以上 27 (36%) 28 (19%) 妊娠中 非喫煙者 44 (60%) 121 (82%) 喫煙10本未満 12 (16%) 19 (13%) 10本以上 18(24%) 8 (5%) 産後 非喫煙者 44 (60%) 119 (80%) 喫煙10本未満 4 (5%) 13 (9%) 10本以上 26 (35%) 16 (11%) 父親等の喫煙 SIDS群 対象群 妊娠前 非喫煙者 32 (43%) 105 (71%) 喫煙10本未満 11 (15%) 11 (8%) 10本以上 31 (42%) 31 (21%) 妊娠中 非喫煙者 32 (43%) 108 (74%) 喫煙10本未満 11 (15%) 12 (8%) 10本以上 31 (42%) 27 (18%) 産後 非喫煙者 34 (46%) 112 (76%) 喫煙10本未満 8 (11%) 11 (8%) 10本以上 32 (43%) 24 (16%) Arch Dis Child 1998;79:386-393 ( November ) Case-control study of current validity of previously described risk factors for SIDS in the Netherlands M P l‘Hoir より
保健所等での タバコの害に関する調査 資料編
2001年2月14日(水) 西北五地区で妊婦の喫煙状況調査 妊娠中の喫煙が、早産や流産の危険性を高めることが指摘されているが、五所川原保健所 管内の西北五地方十四市町村(板柳町を除く)では、妊婦の四人に一人が喫煙していることが 同保健所の調査で分かった。夫や両親など、妊婦と同居している人の喫煙割合では、さらに 八割を超える高率で、胎児が煙の脅威にさらされている実態が浮き彫りとなった。 この調査は、妊娠時に届け出てもらう妊婦連絡票の記載項目のうち、喫煙の有無について 集計したもの。一九九九年度中に管内十四市町村で届け出のあった千二百三人の妊婦に ついてまとめた。それによると、たばこを「吸う」と回答した妊婦は三百三人に上り、喫煙率は 全体の二五・二%を占めた。市町村別にみると(1)市浦村(四〇・九%)(2)稲垣村(三九・三%) (3)車力村(三七・三%)-の順に高率だった。たばこによる胎児への悪影響は、妊婦による 直接的な喫煙だけでなく、周囲からの間接的な「受動喫煙」による ものも見逃せない。 夫や両親、兄弟など、妊婦と同居している家族の喫煙状況についても調査した結果、 千二百三人のうち、九百八十人の妊婦の同居者が喫煙していることが分かり、喫煙率は 八一・五%にも上った。 これを市町村で見ると(1)稲垣村(九六・四%)(2)金木町 (九〇・二%)(3)鶴田町(八八・八%)-の順となった。たばこについては、煙に含まれる ニコチンや一酸化炭素によって酸素の供給量が減り、胎児の発育が悪化することが指摘され ている。さらには胎児の発育障害や妊娠障害、分娩時の異常などが生じる危険性も高まる。 今回の調査は、西北五地方の乳児死亡率、新生児死亡率が県内でも高く、その改善に向け た実態把握の一環として行われた。同保健所の担当者は「禁煙を働き掛けるパンフレットなど を作製しているが、妊婦になる以前の女性を対象にした禁煙教室にも、さらに力を入れたい」と 話している。
喫煙妊婦の4割早産-黒石保健所 2000年3月21日(火) 妊娠中に喫煙を続けていた人の四割以上が早産(妊娠三十七週未満の出産)で、喫煙していない妊婦の早産率よりも高い割合を示したことが、黒石保健所が実施した妊婦の生活背景調査で分かった。早産は、同保健所管内に多い、体重二千五百グラム以下で生まれた低体重児の出生との因果関係が指摘されている。同保健所は今後、妊婦の禁煙指導に力を入れることで、妊娠中の異常の発生を抑えたり、早産率や低体重児出生率の低下に努めることにしている。平成十年中に同保健所管内で生まれた低体重児の母七十八人に面接調査を、正常体重児の母七十八人には自記式アンケート(無記名)を実施。病歴や妊娠中異常による治療状況、分娩の経過などを聞いた。このうち妊娠中の喫煙についての調査では、百五十八人中妊娠中も喫煙を続けていたのは二〇・三%(三十二人)で、その夫は全員喫煙者だった。喫煙妊婦のうち早産だったのは四三・七%で、喫煙していない妊婦で早産だった割合二一・四%を大きく上回った。また喫煙妊婦の約六割を占める十九人が、低体重児を出産していた。低体重群のうち、切迫流早産、妊娠中毒症、貧血など妊娠中の異常で治療を受けた妊婦は延べ九十五人と、正常体重群に比べ三十人多かった。一人で複数の異常が認められたのは低体重群に多く二十六人で、正常体重群のほぼ倍だった。このほか、低体重児出産歴や病歴がある妊婦、妊娠中に働いていた妊婦に低体重児出生が目立ったが、同保健所は喫煙と早産、そして早産と低体重児出生の因果関係に着目。「たばこを五本以上吸うと胎児に影響が出ると言われているが、 今回の調査では妊娠中の一人一日当たりの喫煙本数は八・六本と多かった」として今後、市町村や保健医療従事者と連携し、特に妊娠をきっかけに禁煙を考える妊婦には積極的に支援していく。 同保健所によると、平成十年の管内の乳児死亡は十人で、すべて低体重児だった。