A: 輻射強度 I とフラックス F 2006年10月2日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一

Slides:



Advertisements
Similar presentations
エリスワームホール時空における ダスト流解とそのシャドウ Yamaguchi University Takayuki Ohgami, Nobuyuki Sakai ブラックホール地平面勉強会 10 月 4,5 日 湯田温泉.
Advertisements

宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
1 運動方程式の例2:重力. 2 x 軸、 y 軸、 z 軸方向の単位ベクトル(長さ1)。 x y z O 基本ベクトルの復習 もし軸が動かない場合は、座標で書くと、 参考:動く電車の中で基本ベクトルを考える場合は、 基本ベクトルは時間の関数になるので、 時間で微分して0にならない場合がある。
計測情報処理論(4) レンズの基礎.
数理統計学(第ニ回) 期待値と分散 浜田知久馬 数理統計学第2回.
電子物性第1 第4回 ーシュレーディンガーの波動方程式ー 電子物性第1スライド4-1 目次 2 はじめに 3 Ψがあると電子がある。
三角関数演習問題 r b a [ 三角関数 ] θ 信号理論 (金田) 1演-1 (答は別紙の解答用紙に記入する)
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
コリオリ力の復習資料 見延 庄士郎(海洋気候物理学研究室)
天体物理学 I : 授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2013年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
平成25年度 東京工業大学 大学院基礎物理学専攻
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
学部:天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 講義の狙い=天体輻射の基礎的な知識を、 (1) 天文学の学習を始めた学部3年生 と、
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
第2課 黒体輻射とカラー 2.1. 黒体輻射の式 熱平衡にある振動数νの輻射を考える。 フォトンの個数は常に揺らいでいる
第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2015年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
重力レンズ効果を想定した回転する ブラックホールの周りの粒子の軌道
第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2014年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
ストークスの定理と、 渦度・循環の関係を 直感で理解する方法
物理学卒業研究 MOAデータベースを用いた 脈動変光星の周期解析
3次元での回転表示について.
中心力の仮想世界 逆二乗+逆三乗 ベルトランの定理を問う
授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
天体物理学 I : 授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
実習 「太陽の光球面のようすを調べよう」 「太陽の黒点の温度を求めよう 」
独立成分分析 1.問題は何か:例:解法:全体の見通し 2007/10/17 名雪 勲.
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
マイケルソン・モーレーの実験の検証 マイケルソン・モーレーの実験ではもう一つの往復光を垂直方向に分けて行った。
画像処理工学 2013年1月23日 担当教員 北川 輝彦.
電磁気学C Electromagnetics C 5/28講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
第8課 エディントン近似 平成17年12月12日 エディントン近似 Eddington Approximation
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
第9課: 恒星のスペクトル 2005年12月19日 授業の内容は下のHPに掲載されます。
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/30講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
メンバー 梶川知宏 加藤直人 ロッケンバッハ怜 指導教員 藤田俊明
J: 連続吸収 2006年12月18日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
3次元での回転表示について.
B: 黒体輻射 2006年10月16日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
実習その2 銀河までの距離を求める 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 修士課程2年 藤原英明.
変換されても変換されない頑固ベクトル どうしたら頑固になれるか 頑固なベクトルは何に使える?
パルサーって何? 2019/4/10.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/4講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/9講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁.
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
パイプ風鈴の振動理論 どの様な振動をしているか。周波数は何で決まるか。 (結論) ・振動数は棒の長さLの二乗に反比例する。
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
第4課 輻射の方程式 I 平成16年11月1日 講義のファイルは、
I:銀河系 単位名 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 授業の内容は下のHPに掲載される。
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
宇 宙 その進化.
K: 恒星スペクトル 2007年1月22日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
第5課 輻射の方程式 II 平成16年11月8日 講義のファイルは
F: エディントン近似 2006年11月13日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
誘導起電力は 巻数と 磁束の時間変化 に比例する.
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 学生番号 B02-014 伊藤 誠
電磁気学C Electromagnetics C 5/20講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁.
ここでは、歪エネルギーを考察することにより、エネルギー原理を理解する。
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
ベクトル関数の回転(カール、ローティション)
振幅は 山の高さ=谷の深さ A x A.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/7講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
Presentation transcript:

A: 輻射強度 I とフラックス F 2006年10月2日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 教官名     中田 好一 授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。 成績は「レポート+出欠」でつけます。 授業の内容は下のHPに掲載されます。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html A: 輻射強度

A: 輻射強度とフラックス 2006年10月2日 A.1.輻射強度(Intensity)の定義 光の強さをどう表現しようか? 光子(振動数、位置、方向)の分布の2つの表現法                 (1) 光子の分布関数(位置、運動量)       (2) 輻射強度(インテンシティー)       f(x, p)                 I (x, ν, Ω)          物理                             天文      

(1) f(x, p) dN=dN´dx =f(x,p)dxdp =位置dx、運動量dpの箱内 の光子の数 (2) I (x, ν, Ω) (1) f(x, p)   dN=dN´dx     =f(x,p)dxdp     =位置dx、運動量dpの箱内       の光子の数   (2) I (x, ν, Ω)     dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt =位置x、法線方向Ωの微小面              dSを通り、Ω方向立体角dΩ        に時間dt内に流れる振動数        dνの光子エネルギー f(x, p)=位相空間密度 x dE dΩ dx I (x, ν, Ω) =輻射強度 (Intensity) dN dN dpy dpx py px dN=f(x,p)dxdp dS dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt

dN´=f(x,p)dp=f(x,|p|,Ω)・p2dpdΩ x f と I をどうつないだらよいか? (1) 分布関数 f を絶対値・角度表示する。    dN´=f(x,p)dp=f(x,|p|,Ω)・p2dpdΩ x (2) dΩ方向に垂直な微小面をdSとする。    dn=dN´・c・dS・dt      =dt内にdΩ方向へdSを通る光子数 dΩ dx dN dp (3) dE=hν・dn     I (x, ν, Ω)dν・dΩ・dS・dt=hν・dN´・c・dS・dt                       =hν・f(x,|p|,Ω)・p2dp・c・dΩ・dS・dt (4) 光子に対して、hν=c・p だから、dp=(h/c)dν     I (x, ν, Ω)=(h4ν3/c2)・f(x,p)      輻射強度(Intensity)は基本的には       光子の位相密度関数 f を立体角表示したものである。

注1: 光子に対しては、ε=hν=c・p からdp=(h/c)dνなので     f(x, p)d3p=f(x,p)・p2dp・dΩ            =(h3ν2/c3)・f(x,p)・dν・dΩ     したがって、 g (x, ν, Ω)=(h3ν2/c3)・f(x,hν/c) とおくと、     dN´=g (x, ν, Ω)・dν・dΩ     I (x, ν, Ω)=ε・c・g (x, ν, Ω)     注2: したがって、輻射強度の変化は光子に対するボルツマン方程式で記述される。 これが輻射輸達方程式である。光子の吸収、放出はボルツマン方程式の衝突 項にあたる。吸収、散乱のない輻射は無衝突ボルツマン方程式に相当する。 その場合に成立する「位相密度f(x、p、t)は軌道に沿って不変である」という Liouvilleの定理は次に述べる輻射強度不変の法則に対応する。

A.2. 輻射強度不変の法則 dΩ´ R Ⅰ´ dS´ Ⅰ dS dΩ dE =Ⅰ´dS´dΩ´=ⅠdSdΩ dS=R2dΩ´     dS´=R2dΩ Ⅰ´R2dΩdΩ´=ⅠR2dΩ´dΩ よって、Ⅰ=Ⅰ´ dΩ´ R Ⅰ´ dS´ Ⅰ dS dΩ 吸収や散乱の無い時、輻射強度Ⅰは距離によって変化しない。

この光線の広がりを、光子の位相密度関数の立場で考えてみよう。 Ω Ωo So S X 左から右に進む光子の運動を考える。 位置空間を位置Xとそれに垂直な面 S で表す。運動量空間としては、運動量Pと 運動方向の広がりΩをとる。 面SoをΩoで出たN= no・So・Ωo 個の光子の集団が位置Xに達した。その時の 光子の空間的な広がりSはS=Ωo・X2で与えられ、方向の広がりはΩ=S/X2 で与えられる。 、

S1 S S0 X X1 Ω0 Ω1 Ω 実空間(S)で広がる。 ⇔ 運動量空間(Ω)で絞られる。(SΩ=一定) 実空間(S)で広がる。 ⇔ 運動量空間(Ω)で絞られる。(SΩ=一定) 光子の総数N=n・S・Ωは変わらず、SΩ一定であるから位相密度 n は 不変である。これが光子の運動の最も単純な場合に対するLiouvilleの定理 の一例である。 位相密度nは輻射強度Iに比例するから n=一定 は I=一定 を意味する。 つまり、光束が広がると角度が絞られ、光束が縮むと角度が広がる結果、 輻射強度 I は一定に保たれるのである。 S1 S S0 X X1 Ω0 Ω1 Ω 位相密度 f(x,p) は経路に沿って不変(Liouvilleの定理)

× × A.3. 表面輝度(輻射強度の別名) 等方的に光る壁A-Bを点Xから見る。 I(X,ωA) = I(A,ωA) 斜めに見ると光線が圧縮されるので濃く見える × I(A,ωA) 遠くなると光が弱くなるので壁の輝きが弱まる XからAを見ると、A点はI(X,ωA)=I(A,ωA)の強さで光って見える。この強さはXによらず、A点固有の量である。そこで、I(A,ωA)を、[ 天文では実際に測定するのはI(X,ωA)だが ] A点でのωA方向の表面輝度と呼ぶ。説明から分かるように表面輝度は輻射強度と同じである。 I(X,ωB) I(B,ωB) X B I(X,ωA)

黄色い部分は小さく見えるが、そこの色、明るさは変わらない 壁から離れた点 y、 z での輻射強度は? 輻射強度=表面輝度は距離で変わらない。 y z   点zから見た壁 黄色い部分は小さく見えるが、そこの色、明るさは変わらない 点yから見た壁 銀河の表面輝度は距離で変わらない。大きさが変わるだけ。

A. 4.フラックス(Flux) k 最初に定義を少し。(見にくいけれど太字はベクトル) dΩ(k) dΩ=kdΩ=Ω方向の微小立体角      (kはΩ方向の単位ベクトル) S=S k=法線ベクトルkの微小面    k k=Sの法線ベクトル(長さ1) S=Sk θ k´=kと角度θをなす単位ベクトル k k´ (k・k´)=cosθ  S

k k′ θ 単位時間にSを通る光子のエネルギーEを計算してみよう。 Sを通る光(Ω´方向)は法線k(Ω方向)に対し角度(θ)を持つ。 k´ cosθS S dΩ´=k´dΩ´=Ω´方向の微小立体角 Ω´方向の光がSを通過するときは、Sを斜めに見るので、その有効面積は    S・cosθ= (k・k´) S=(S・k´) Sを通り、dΩ´方向に流れるエネルギーdE´は、   dE´=I´(Ω´)(S・k´)dΩ´ = I´(Ω´)(S・dΩ´) したがって、   E=∫dE´=∫I´(Ω´)(S・dΩ´)          =S・∫I´(Ω´)dΩ´          =S・F k S=kS k′ θ dΩ´=k´dΩ ´

θ dS=kdS F=∫I(Ω)dΩ=輻射流束ベクトル=フラックスベクトル  Sを単位面積にしたときの F=(k・F)もフラックスというので注意。 I(k´) F(k)=(k・F)     =k・ ∫I(Ω´)dΩ´   =∫I(Ω´)(k・dΩ´)   =∫I(Ω´)(k・k´)dΩ´   =∫I(Ω´)cosθdΩ´ θ dΩ´=k´dΩ´ dS=kdS F(k)=k方向の面を通るフラックス =(k・F) =フラックス(輻射流束)ベクトルFのk方向成分

フラックスとインテンシティ              フラックス F       インテンシティ I       周波数表示   W/m2/Hz         W/m2/Hz/Str.     波長表示     W/m2/mμ        W/m2/mμ/Str. 全エネルギー表示   W/m2            W/m2/Str. と、フラックスとインテンシティの単位はStrで割っているかどうかであるが、 立体角の単位ははないので、実際にはフラックスとインテンシティは同じ 単位で表される。 天文では、ジャンスキー(Jansky)=Jyという単位が多用される。 星などの点光源に用いられるときはフラックスの意味である。しかし、 空の背景輻射など広がった天体の話で現れたら、インテンシティの意味で 使われているから注意が必要である。 中途半端な大きさの天体の時が危険。

A.5. 体積輻射率ε インテンシティ I のソースはどこか? 1) 壁                      I2=I1      I1 I2 2) 途中からの輻射の集積         I2 =∫dI     

A点でのインテンシティ I への、途中B点での微小区間dXからの寄与をもう少し 丁寧に考える。 長さ=dX,断面積=dsの微小体積dV=dsdXを考える。dV内で生み出される 光エネルギー率を、4πεdV とする。4πは後での記述の整理のために入れ た定数。ε=体積放射係数と呼ぶ。4πεdVのエネルギーはB点から四方八方に 放出される。その内でA点でのインテンシティに寄与する割合を考えよう。   B点 dω A点 ds=X2dω dS=X2dΩ dΩ X dX A点に微小面積dSを立てる。A点からB点のdsを見る立体角=dω=ds/X2                 逆に、B点からdSを見込む立体角dΩ=dS/X2

したがって、dV内で発生する輻射(4πεdV)のうち、(dΩ/4π)がA点でdSを通り、dΩの方向に流れていく。 ds=X2dω dS dΩ dX X したがって、dVからdSを通ってdΩに放出されるエネルギー率は、   (4πεdV)(dΩ/4π)=(4πεX2dωdX)(dS/ 4πX2)=εdXdSdΩ。 この式を見ると、dX部分からの I への寄与dIは dI=εdX であることが分かる。 したがって、2)の場合は  I=∫dI=∫εdx 注意: テキストによっては、dV内でのエネルギー放出率をεdVとしている。     この場合には dI=(ε/ 4π)dx I=∫dI=∫(ε/ 4π)dx となる。

A.6. 簡単な例 (a) 壁表面でのフラックス F (1) F =∫I cosθdΩ =∫∫I(θ、φ)cosθsinθdθdφ    F=2π∫0π/2 I (θ)cosθsinθdθ     =2π∫01 I (μ)μdμ  (μ=cosθ) (3) I(θ、φ)が一定 (等方) I=Io な場合、    F=2πIo∫0π/2cosθsinθdθ =2πIo∫01μdμ     =πI0 Fを求める際の立体角Ωは壁前面なので2πに渡る。しかし、Fの計算には Iにcosθの重みがかかる(F=∫IcosθdΩ)ので、<cosθ>=0.5のためF=2πIoでなく、F=πIoになるのである。

(b) 望遠鏡のF比 D f 星雲を焦点距離 f、口径Dの望遠鏡で撮影する。簡単のため、望遠鏡の収差は無視する。 (b) 望遠鏡のF比 星雲を焦点距離 f、口径Dの望遠鏡で撮影する。簡単のため、望遠鏡の収差は無視する。 星雲上の点Aの像が焦点位置Bにできたとする。Bに置いた画像検出器(写真乾板、CCDなど)が受ける輻射量、すなわち像の明るさを考えよう。  B IB IA 2η (tanη=D/2f)  A D f A点から輻射強度=IAで出た光は、Dを通り、輻射強度=IBでB点にまた集まる。 A.2.でやったようにIA=IBである。B点でのフラックスFは収束光の立体角をωとすると、 F=∫IBcosθdΩ≒IBω≒πIBη2≒πIA(D/2f)2 

前頁の式に出てくる f/D を望遠鏡のF比(F-ratio)と呼ぶ。 焦点距離f 大 焦点距離f 小 したがって淡い画像、例えば銀河の周りに広がる薄いエンベロープ、を検出しようとする際には口径の大きさよりもF比を重視しなければいけない。

画像の長さ L=f・θ 焦点距離 = f f θ L 像が大きい 像が小さい F比 = F tanη=D/2f=1/(2F) D η f 像が明るい 像が暗い

いくつかの例 すばる望遠鏡    口径=8m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=15m              F=15/8=1.9 岡山天体物理    口径=1.88m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=9.15m   観測所 F=9.15/1.88=4.9 1.88m望遠鏡 木曽観測所      口径=1.05m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=3.3m シュミット望遠鏡   F=3.3/1.05=3.1 ニコン          口径=36mm  焦点距離=50mm カメラ標準レンズ   F=50/36=1.4

(c) マゼラン雲内の恒星コラム数密度    光度(エネルギー総放出率)Lの星が数密度nで分布しているとする。    体積dV内の星の総数=ndVだから、 4πεdV=LndV     ε=Ln/4π    マゼラン雲の面輝度Bを測ったところ、B=10-5W/m2であった。    マゼラン雲内の星の光度を仮に全て太陽の光度Lo=3.85・1026W とし、途中の光吸収をゼロと仮定すると、    B=∫(Lo・n/4π)dx=(Lo/4π)(n・X)    N=(n・X)=(4π・10-5/3.85・1026)/m2          =3.26・10-31/m2          =3.26・10-31・(3.08・1016)2/pc2          =3・102/pc2    次ページに示すのは マゼラン雲バーの中心7.8分角のJHK3色画像で    ある。 マゼラン雲までの距離を50kpcとすると、113pc四方となる。    この画像に写っている星は大部分が赤色巨星で100Loよりは明るい。    星の数は1万程度はある。    初めに星の明るさの平均を太陽程度と考えたのは誤りで、面輝度には    赤色巨星が聞いていると考えるべきであった。赤色巨星の平均明るさ    を300Lo程度にとると画像中の星の数とよく合う。    

大マゼラン雲(LMC)

(d) オルバースのパラドックス オルバース(1758-1840)は、星が地球(太陽)の周りにどこまでも存在する宇宙を考えた。 (d) オルバースのパラドックス オルバース(1758-1840)は、星が地球(太陽)の周りにどこまでも存在する宇宙を考えた。 星の半径=Ro、明るさ=Lo、星の数密度=n とする。 dR dN=4πR2dR・n=球殻中の星の数 S=πRo2=一つの星の断面積 ω=S/R2=π(Ro/R)2       =一つの星の立体角 dΩ=ω・dN    =π(Ro/R)2・4πR2dR・n    =4π2Ro2・n・dR    =球殻内の星が空を覆う立体角 Ω(R)=∫0RdΩ=4π2Ro2・n・R     =地球から距離R以内の星全体       が空を覆う立体角 R 半径=R、厚み=dRの球殻 オルバースは、「宇宙が一様で無限であるならΩ(R)が4πとなり全天が太陽表面と同じ明るさで輝くはずなのに、なぜ夜空は暗いのか」という問題を提唱した。

この問題を輻射強度Iの言葉で表現してみよう。 例(c)で見たように、恒星数密度nの時ε=Lo・n/4π  だから、地球から距離R以内の恒星による輻射強度は、 I(R)=∫0RεdR=Lo・n・R/4π I(R)はRに比例するので、Rが無限大になるとI(R)も発散する。 前頁のΩを数値で当ってみると、簡単のためRo=6.96・108m、n=1/pc3 として、 Ω(R)=4π2Ro2・n・R=4π2(6.96・108/3.08・1016)2R(pc)                =4π2・5.11・10-16R(pc) Ω(R)=4πとなるのは、R=6.23・1014pc=2.03・1015光年 R=100億光年=1010光年とすると、 Ω=4π(1010/2.031015)=π・1.97・10-5=π・(4.43・10-3)2 1′=π/180=2.91・10-4なので、4.43・10-3=15.2′ 太陽の視半径=16′なので、太陽近傍の恒星密度で宇宙が100億光年まで一様 であったら、夜空は昼間と同じくらいにまでは明るかっただろう。

1.1.ある巨星表面の輝度分布Tを測った結果、 レポート問題1     提出10月16日                  レポートには、問題番号、学生証番号、学科、氏名                  を書くこと。 1.1.ある巨星表面の輝度分布Tを測った結果、     T(ω)=To [1-0.1(ω/ωo)2] という結果を得た。     ここにω=中心から測定点までの見かけの角度。     この巨星の表面での輻射強度 I(θ) を求めよ。 To T(ω) I(θ) θ T(θ) θ ωo

1.2.A点での輻射強度が図のように n I(θ)=Io (θ<θo) =0 (otherwise) で与えられる場合、A点でのn方向への     フラックスは、 F=πIo sin2θo     で与えられることを示せ。 n θo A