~起業家にとっての地方の魅力・メリット~

Slides:



Advertisements
Similar presentations
基礎セミナーA あなたが起業すると考えよう
Advertisements

日大製鋼社の工場再編と総合的経営革新戦略
産業界からの研究開発投資は海外流出傾向 民間企業の研究費支出先(2002年度実績) 国内大学 海外研究機関
女性起業は第3次ブーム 起業支援専門家の輩出は時代の要請 2006年6月新設.
中日発展商事は、 日本と中国の架け橋として・・・
共生モデル 創出プロジェクト 企画概要 2015年6月 リーダーシップフォーラム 幹事会.
M.E.ポーターの競争戦略論 M.E.ポーターの競争戦略論は、「競争優位」に関する理論的フレームワークを提示した基本的理論である。SCPパラダイムという考えをもとに持続的な競争優位を確立するための戦略である。 SCPとは、市場構造(structure)、企業行動(conduct)、業績(performance)の略語であり、市場構造と企業行動が業績を決めるという考えである。
「ワク インダストリーアカデミー」のご案内
第三章要約 りんご.
地質地盤情報協議会案 仮称・地質地盤情報協議会の提案
特産品販売促進委託事業 【大阪府能勢町】 ふるさと雇用再生基金事業 実績報告 産業振興分野 事業概要 委託先 事業実施 事業実績額 期間
ISOとドラッカーマネジメントの 良いとこ取りセミナー
平成28年度中間加工人材育成支援事業  「食」産業の充実・強化を図るため、食品加工従事者を新たに雇用して育成するとともに、中間加工分野の強化を図る取組を県が委託する事業です。 募集中 関心がある方は お問い合わせ ください 委託内容  新たな食品加工従事者を雇用して育成するとともに、中間加工分野の強化に取り組む業務を委託します。
④新規用途開拓による地域農林水産物の需要拡大、ブランド向上
大学発ベンチャー企業創出・発展への取り組みと課題
第二期受付(※) 平成21年9月頃(予定)(※)採択できる予算がある場合
(1)大 阪 産(もん)チャレンジ支援・表彰事業
教育情報の多変量解析 データの視覚化 データの分類 2変数群間の関係 その他.
6月26日 第9回発表 藤井 海太.
(民間企業等名)地域活性化モデルケース(地域産業)提案書(様式2)
事業の全体概要図イメージ例 事業区分:①新たなヘルスケアサービス創出支援事業 コンソーシアム等名称; 1-① 事業の背景・目的
「新・京都市産業振興ビジョン(仮称)」中間案-概要版-
えひめ中小企業応援ファンド 活力創出産業育成事業
健やか親子21中間評価のための 母性健康管理指導事項連絡カード認識率調査 ~自由記載分析~
地方におけるデータ活用人材の育成について
「教育工学をはじめよう」  第2章     学会発表に向けて     プロポーザルを書く 発表 菊池 陵  皂 智樹.
Q&A10項目 早分かり (学部教務委員会作成2009年)
被災地復興ソーシャルビジネスフォーラムについて
マーケティング戦略の決定.
人間性豊かな人材の養成を通じて、科学技術と人間社会の調和的発展に寄与する
大学発新産業創出プログラム(START)
賃金分析 -現行の賃金制度を客観的に分析する-
案内人になってから(3段ロケット) ~星空案内人®制度シンポジウムの報告~
労働経済学 安部由起子 10月24日 安部ゼミ説明会 労働経済学 安部由起子
大田区企業立地促進基本計画(第二次)の概要
管理的側面 管理者に必要な経営知識 経営学の基本 ①マネジメントと組織.
住民組織活動を通じたソーシャル・キャピタルの醸成・活用にかかる 研修の進め方
地域未来投資促進法に基づく千歳市基本計画及び支援策
成長産業の育成 府市一体となった成長の実現 〇 「イノベーション・エコシステム」を構築し、新たな需要を生み出すビジネスを創出
製造準備段階における 工程FMEAの実施と不具合未然防止
図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
大学発新産業創出プログラム(START)
平成19年度青年部会「第2回~第4回研修会」(人材育成研修会)実施計画書
管理的側面 管理者に必要な経営知識 経営学の基本 ②環境と戦略と競争優位.
組織論による特色ある カリキュラムの理論と実際 第11回 特色あるカリキュラムづくりの理論と実際 兵庫教育大学大学院 教授
『副首都・大阪』連携プロジェクト 成果発表会 「大阪の地場産業(伝統産業)」 「海外と繋がりを持っている企業」から 『副首都・大阪』を考える
イブニングサロンの基本理念と現況 山形大学 野長瀬裕二.
言語XBRLで記述された 財務諸表の分析支援ツールの試作
START for SUCCESS! → ちば → ベンチャー クラブ プレゼンテーションの場を提供します!
2001年参院選挙新潟選挙区における真島氏の当選理由の解明
排出量取引について ~日本から見る排出量取引の意義~ 早稲田大学 地球環境班 外山公一 柿澤和哉 佐々木圭 川谷絵美 川上かおり
全国6,000以上の図書館からリアルタイムの貸出状況を確認できる
しごと創生:農林水産品の輸出拡大等の農林水産分野
Unit9 閉鎖型の株式会社 新「会社法」は、所有と経営の分離を徹底しているのか? 会社法295条の意義
第3分科会要旨 テーマ: 新市場創造型商品の事例研究 発表者: 古橋 雅彦
【研究題目】 視線不安からの脱却に 影響を与える要因について
ストリートダンスの上手さの 要因について ━アンケート調査に基づく考察━
企画名:渋谷川再生企画 企画委員会:NPO法人アースディマネー・アソシエーション 発表者名:結城 歓
水田立地とコメ品質の関係 東京大学 山路永司 2019/5/1.
セマンテックWebを利用した加工工程決定支援システム
株式会社デュナミス コーディネータGrの 提供できることカタログ お客様の新事業への サポートを通じて 組織の成長をお手伝い。
【分野】 事業名 記載イメージ (左)事業実施体制のイメージ図をご記載ください。 (右)本事業での取組内容を具体的にご記載ください。
道市連携海外展開推進事業(ASEANマーケット開拓プロジェクト)
+ うつのみや産業振興ビジョン【概要版】 7章 施策の展開と支援体制の形成 1章 産業振興ビジョンの基本的な考え方について
2006. 9. 29 地域経済の展望と革新的企業        法政大学学事顧問               清成 忠男.
産学官連携フェア2016みやぎ「ビジネスマッチング展示会」
市区町村 富士市 創業支援事業者 概 要 特定創業支援事業 <全体像> 地域金融機関 静岡県富士工業技術支援センター 市立中央図書館
調査項目:(事業環境/健康投資/品質評価から選択) コンソーシアム等名称:
アイデアプラントは、 アイデア出しの代行サービスです。
(財)長野県テクノハイランド開発機構設立から30年の節目を迎え、地域産業の新たな発展方向を探る記念セミナーです
Presentation transcript:

~起業家にとっての地方の魅力・メリット~ 東北の起業家の地域に対する意識  ~起業家にとっての地方の魅力・メリット~ 2006年6月15日、16日 株式会社デュナミス NEDOフェロー  石井力重

問題意識 日々さまざまな起業家支援者や起業検討者に接する中で、「本格的にベンチャーをするなら、チャンスの多い東京圏へ行かないと。」といった声が時折聞かれる。 しかし、実際には地方にも優秀なベンチャー企業は存在する。一見不利に思える「地方」の、何が起業家を引き付けているのだろうか。 東北地域の起業家へのインタビュー調査データから、その意識に見られる「地方の魅力・メリット」を抽出・整理し、地方の独自性を生かした支援スキーム開発のための材料を得ることを試みる。

研究の方法 発表者が2005年度、東北大学の博士在籍時に行った東北地域の起業家に対する創業の要因についてのインタビュー調査記録から、『何が起業家を引きつけるのか』という情報を抽出し、KJ法にて分類した。

インタビューの内容 「創業に影響を与えたものは?」 産学官の具体的な10の要因(以下)を挙げてたずね、カテゴリー毎に自由回答も得た。 産:一次、二次、三次産業、 +自由回答 学:大学、高専、 +自由回答 官:経産、文科省系プロジェクト、 +自由回答 支:共研セ、TLO、インキュベータ、公設試、 +自由回答 今回の研究の 分析対象

インタビューの対象 対象地域:東北+新潟 選定指針:ベンチャー企業(※)+大学発ベンチャー 青森:2社・・・IT、部品 ※東北圏の経済団体の支援するベンチャー 青森:2社・・・IT、部品 岩手:2社・・・機械装置、部品 宮城:5社・・・ナノテク2、IT2、新素材 山形:2社・・・機械装置、新素材 福島:2社・・・機械装置、IT 新潟:2社・・・機械装置、ナノテク

分類の結果の構造 15社から、抽出した情報要素の数:30 小グループの数:7 +3 大グループの数:3 7つのグループ(2要素以上) 3つの単独要素(1要素のみ) 大グループの数:3 グルーピング グルーピング

7つの要因(小グループ) 1)人のつながり(10ポイント) 地域のネットワークキーマン、ネットワーク組織 2)生活環境(5ポイント) 故郷、豊かな生活の質 3)人材(3ポイント) 低い流動性、安い賃金 4)ライバルの少なさ(3ポイント) 事業機会の独占可能性、メディア効果、支援制度の採択可能性 5)土地・建物(2ポイント) 安価で拡張性に優れた土地、割安な建築費 6)地場の産品(2ポイント) 豊富な食材、伝統工芸品 7)サポート企業の存在(2ポイント) 試作製造外注、経営のメンター ※括弧の中は回答者数。複数回答。

3つの単独要素(小グループ) 1ポイントの回答には次のようなものもあった。 8)自県の市場構造、文化的土壌を良く知っていたこと 9)精密部品の加工にむく良質な気候 10)特定機関むけサービス事業に協力が得られたこと

3つの要因(大グループ) 地方で創業することの魅力・メリットは、、、、 「リスク・コストが低いこと」 3)4)5) (8ポイント) 「活用度のひくい良いリソースがあること」 6)7) (4ポイント) 「豊かな生活環境があること」 2)9) (6ポイント) 人材・人財・身体知 ストレスマネジメント

注:分類の除外 1,8,10は地方部だけでなく、都市部でも要因たりえるものゆえ除外  (10ポイント+1+1ポイント)

まとめ 『何が起業家を引きつけるのか。』この問いについては都市部と地方部では当然答えは異なる。 今回の調査データは“東北地域の”という限定つきではあるが、その多くは、他の地方部でも共通して見られると思われる要因である。 起業家・ベンチャー企業の輩出を通じて新産業創出を図る地域にとっては、通常の起業家支援活動に加えて、起業家の視点から見た地方部のポテンシャルを意識することで、地域独自の支援スキームを開発してゆくためのヒントが得られる可能性がある。本稿ではそうした議論の一材料を提供した。

参考文献 石井力重「大学発ベンチャー創出と地域環境に関する分析」『研究・技術計画学会第19回講演要旨集』、2004年10月 石井力重「大学発ベンチャー創出とビジネス環境因子の相関に関する分析」『産学連携学会第3回講演予稿集』2005年5月 石井力重「東北地域の技術型企業の創業と地域的要因に関する研究」『研究・技術計画学会第20回講演要旨集』、2005年10月