リフトバレー熱 (RVF: Rift Valley fever) 人獣共通 リフトバレー熱 (RVF) の識別(日大 泉對 教授訳)

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指定感染症について 1 鳥インフルエンザ(H7N9) 中東呼吸器症候群(MERS) 資料3. 2 指定感染症とは? 一類から三類感染症以外の既知の感染症であって、健康診断・就業制 限・入院・消毒等の措置が緊急に必要となった場合に一年間に限定し て指定する感染症(一年間の延長が可能。) 現在、指定されている感染症は、以下の2疾病。(今後、二類感染症.
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リフトバレー熱 (RVF: Rift Valley fever) 人獣共通 リフトバレー熱 (RVF) の識別(日大 泉對 教授訳) 反芻動物が主な感受性宿主で、とくに羊と牛での被害が大きい。ウイ ルスはいろいろな種類の蚊(Aedes属やCulex属など)によって媒介され、蚊の間では介卵伝達する。最も被害の大きいのは羊であり、妊娠羊は100%流産を起こす。仔羊に感染すると90%以上、成羊で20~60%の致死率。牛での致死率は10~30%であり、妊娠牛はほぼ100%流産する。リフトバレーの流行は流産嵐(Abortion Storm)と言われている。 人の感染は主として蚊に刺されることによるが、感染した動物の取り扱いによっても感染する。特に流産胎児が危険と言われている。人の潜伏期は2~5日であり、突然の発熱、激しい頭痛、筋肉痛、関節痛が起こる。大部分は比較的軽症で、2~7日で回復する。眼症状を併発する患者は2~0.5%であり、病変が黄斑にあるときには永久失明することもある。脳炎・髄膜炎症状や出血熱を併発する患者は1%以下であるが、出血熱を併発すると致死率は約50%である。 リフトバレー熱 (RVF) の識別(日大 泉對 教授訳)

リフトバレー熱ウイルス(RVFV)の特徴 Rift Valley fever virus RVFVはエンベロープを持つ他のウイルスと同様に脂質溶媒、界面活性剤、酸などに弱い。しかし、血液や血清などの蛋白の存在下では、RVFVは非常に安定である。4℃では4ヶ月以上感染性を失わない。また、56℃3時間以上の加熱でも感染性を保っている。 エローゾルとしても比較的安定であるため、このウイルスに感染した動物をと殺した血液からできるエローゾルは非常に危険である。実験室内の感染もまれではなく、クラス3の危険度のウイルスとして扱わなくてはいけない。 ブニヤウイルス科フレボウイルス属 Rift Valley fever virus 一本鎖マイナスRNAウイルスで、エンベロープがある。

歴史的経過 1931年 ケニヤのリフトバレーの農家の羊からウイルス分離。 1950-1951年 ケニヤで10万頭のヒツジが死亡。 1931年 ケニヤのリフトバレーの農家の羊からウイルス分離。 1950-1951年 ケニヤで10万頭のヒツジが死亡。 1977-1978年 サハラ砂漠を越えてエジプトに侵入。ナイル川沿いの25~50%のヒツジとウシが感染し、ヒトでも2万人の感染者と600人の死者が出た(致命率3%)。 1987年 セネガルのダム建設に伴いモーリタニアで西アフリカ初の発生。 1990-1991年 マダガスカルでウシおよびヒトの発生。 1997年 ケニアの北東地域で洪水が起こり、ヒトの出血性の疾病が発生し、ケニヤでは350~400人が、ソマリアでは80人が死亡した。 サハラ以南と思われていたが・・・ ケニヤのリフトバレー熱の発生 牛 ラクダ ヒツジ 山羊 244,131頭 309,492頭 497,140頭 456,016頭 143頭 831頭 1,602頭 1,130頭 0.06 0.27 0.32 0.25 飼養頭数 死亡頭数 % ケニア 歴史的経過 2000年 アフリカ大陸以外で初めて、サウジアラビアで736名の擬似患者が報告され、少なくとも106名が死亡した。感染源としてアフリカから輸入したヒツジが疑われている。同時期に隣国のイエメンでも1087名の患者と121名死者が出た。患者の75%(815名)は感染動物(流産胎子、食肉処理場などで)と直接接触があった。

WHOによる2000年までのRVF流行のとりまとめ 主な流行国 リスクが高い国 RVFの拡大 WHO: Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR)

OIEによる2000~2004年の家畜におけるRVF発生報告図 2001 2002 2000年の中近東への侵入は、RVFがアジアへ進出する危険性を示したものとして、世界的に注目された。そしてイエメンでは常在化してしまった。 2003 2004 OIE: Geographical Distribution of List A Diseases

Veterinary Microbiology 121 (2007) 249–256 ソマリアにおける1~2歳の羊とヤギの血清学的調査 この調査はベルギーとケニアのチームが行った。OIEへの報告がないのは、自国で調べることができないから・・・ Nugal Valley(2004): 農場単位では80% 陽性農場の個体別で50% Puntland(2003): 個体別で5% Somaliland(2001): 個体別で2% Veterinary Microbiology 121 (2007) 249–256

2006年以降の流行 サウジアラビア イエメン スーダン エチオピア マダガスカル ケニア コンゴ共和国 タンザニア マラウイ モザンビーク :発生あり :発生なし :未報告 2006年以降の流行 蚊の発生時期 東アフリカ 大雨季:3~5月  小雨季:11~12月 :未報告 :これまで発生なし :この期間の発生なし :感染/侵入 :臨床例あり :発生が数地区に限定 :現在流行中 2004年 2008年1~6月 2007年6~12月 2006年1~6月 2007年1~6月 2006年6~12月 サウジアラビア イエメン スーダン エチオピア マダガスカル ケニア コンゴ共和国 タンザニア マラウイ モザンビーク

疾病の発生に関わる様々な要因:生態系、気象、地勢、衛生状態、経済、政治、文化、風俗習慣、・・・ Rift Valley 北アフリカ 疾病の発生に関わる様々な要因:生態系、気象、地勢、衛生状態、経済、政治、文化、風俗習慣、・・・ 西アフリカ 中部アフリカ 東アフリカ 南部アフリカ 衛星画像 アフリカの地形(NASA) 国連による地域区分

伝搬の原因 ・経卵感染するヤブ蚊 (Aedes属) 。 ・多くの二次媒介蚊: イエカ(Culex)、ハマダラカ(Anopheles)、シマカ(Stegomyia)、 ヌマカ属(Mansonia)、Eremopoditeの数種。 ・機械的拡散: Culicodies spp.と他のサシバエ。 ・動物と動物の接触感染では伝搬しない。 ・感染した胎児やと殺された動物の組織からエアゾル化した血液によるヒトへの感染。 ・と殺された動物の肉。 ウイルスの活動は、通常以上に持続する激しい降雨の期間に関係してきた。 ケニアの雨期に増水した水たまり この降雨がアフリカ大陸各地で水溜りをつくり、Aedes属の1 回目の発生を起こす。反芻動物やラクダが水を飲んで感染する。水溜りが4~6週間続くと、第2代目の媒介動物である蚊が増殖し、大発生を起こす。これらの蚊が二次媒介動物として重要である。

: 発生継続 : 発生中断 蚊の発生時期 東アフリカ 大雨季: 3~5月 小雨季: 11~12月 2008年 1月~3月 2008年 4月~8月 2008年 9月~12月 2009年 1月~3月 2006年 1月~10月 2007年 9月~12月 2007年 4月~8月 2006年 11月~12月 2007年 1月~3月 蚊の発生時期 東アフリカ 大雨季: 3~5月  小雨季: 11~12月  降雨量は年によって違うことから、流行が雨季と完全に一致している訳ではないが、乾季で流行が一旦収まる傾向がある。  また、自然流行の要素以外に、国際機関の介入によって衛生状態の改善が図られていることも影響している。 : 発生継続 : 発生中断

Rift Valley fever (Power point) 感受性動物 家畜(羊、ヤギ、牛)、大型野生動物(ラクダ、水牛;軽い)、肉食動物(犬、猫)、齧歯類(ウイルス血症を起こす)、ヒト以外の霊長類 (通常は無症状)、馬(不明)。豚は人工的に接種すると感染する。家禽や野鳥はRVFに感染しない。 重度の病態、ウイルス血症、流産 死亡率 100% 重度の病態、流産、死亡 感染、ウイルス血症 感染 しにくい 子羊 子牛 子ヤギ 子犬 子猫 ケッシ類の一部 ヒツジ ウシ ヤギ ヒト サル ラクダ ラット リス ウマ ネコ イヌ サル ケッシ類 ウサギ 鳥類 Rift Valley fever (Power point) アイオワ州立大学

RVFの臨床症状 ・綿羊、ヤギ、ラクダの流産が広範囲に突然始まることが最も重要な兆候である。 ・5~6日齢以下の子羊の100%に至る死亡率。 ・成獣での高熱、リンパ節炎、鼻汁や目やにの排出。 ・おびただしい悪臭下痢便(しばしば出血性)。 ・嘔吐、激しい腹痛。 ・著しい意気消沈、泌乳低下、黄疸。 ・8~16週にわたる流行。 流産した羊の胎児

血液が混じった鼻汁の排泄と鼻孔の出血 RVFの臨床症状は、甚急性、急性、亜急性、不顕性の4つに分けられている。牛を例に取ると、 甚急性: 10日齢以下の仔牛はこの症状になり、ほとんど前兆を示さず20~24時間以内に死亡。 急性: 41.5~42℃の高熱、血色性膿性の鼻汁、食欲不振または廃絶、意気消沈が見られる。感染動物は数日間続くおびただしい量の悪臭を放つ出血性下利便を伴う腹痛を起こす。呼吸困難となり湿った咳をする。体表リンパ節は通常肥大し、必乳牛では乳量の異常低下が見られる。口や鼻からの出血も見られる。一般的には流産も起きる。発熱や嘔吐は3~10日間続き、その間に多くの牛が死亡する。黄疸が出て、それがひどい場合はその後死亡する。 亜急性: あまり明確な症状を示さず、膿様鼻汁、涙漏を伴った短期間の体温上昇、3~7日間にわたる乳汁分泌異常。発病初期から発症後6~8週まで流産。後遺症として光過敏症。 不顕性: アフリカ原産の牛は比較的抵抗性で、大部分は不顕性感染に終わり、乳量の低下等はあるものの、流産も少ない。 血液が混じった鼻汁の排泄と鼻孔の出血

羊流産胎児: 胸腔と腹腔に 大量の透明な淡黄色液が貯留 羊心臓: 心室心内膜に多数の出血 羊流産胎児: 重度の腎臓周囲の水腫 羊肝臓: 腫大した肝臓の割面は 灰白色で多くの点状出血がある

RVFの剖検所見 ・肝臓の肥大、始めは局所その後しばしば全体に広がる壊死 ・肝臓のうっ血. 赤褐色から黄色を呈する. ・全身の点状または斑状出血. ・しばしば重度の出血性胃腸炎. ・全身のリンパ節腫脹. ・肺水腫、肺気腫. ・胎児では自己融解を伴う同様な病理所見が見られる. 牛の流産胎児:胎便で皮膚が黄色 肝臓の出血と壊死 腸の漿膜表面の点状出血

沼沢でのサイクル 家畜でのサイクル ヒトの感染 経卵感染 イエカ(Culex) シマカ(Stegomyia) ヒトの感染 ヒト 人畜共通感染 野生動物 鳥? ネズミ? ケッシ類? 蚊 都市部に生息する蚊 経卵感染 蚊? 森での遭遇? ヤブ蚊 (Aedes spp.) 接触感染、飛沫感染、経口感染

ケニア、ソマリアおよびタンザニアでリフトバレー熱の流行 国名 患者数 (死亡患者数を含む) 死亡患者数 報告期間 ケニア 684名 155名 2006年11月30日~2007年3月12日 ソマリア 114名 51名 2006年12月19日~2007年2月20日 タンザニア 264名 109名 2007年1月13日~5月3日 致命率 22.6% 44.7% 41.2% この致命率は重症型についてのものであり、軽症例は含まれていない。 「総合的な疾病の広域調査と対処の計画(IDSR: Integrated Disease Surveillance and Response Program)」により組織されたRVF広域調査が行われている。計画には、動物衛生とヒトの公衆衛生面への介入と、一般住民および医療関係者での啓発・警告キャンペーンが含まれる。

アフリカ南部では、11~4月が暑い雨期、5~8月が涼しい乾期、9~10月が暑い乾期に分けられており、蚊の発生時期に影響している。 症例数 WHO: Weekly epidemiological record. 2007, 82 と殺禁止 No person-to-person transmission of Rift Valley fever virus has been documented, especially when standard health-care precautions are applied, but the risk of transmission from infected blood or tissue exists for people caring for infected patients during an outbreak.  ヒトーヒト感染に対する注意が必要! 家畜へのワクチン接種 アフリカ南部では、11~4月が暑い雨期、5~8月が涼しい乾期、9~10月が暑い乾期に分けられており、蚊の発生時期に影響している。 12月 1月 2月 2006~2007年のケニアにおけるRVF流行の推移: 発症した週

正確な情報が利用できた230名の中で140名(61%)は男性であり、21~30歳が多かった。 暴露情報を入手できた66名中2/3は、最近病気に罹った動物を所有していた。発病前2週間におけるリスク・ファクターは、未加熱生乳の飲用(72%)、湿地から100m以内に居住(70%)、罹患動物の所有(67%)、罹患動物乳の飲用(59%)、牧夫として労働(50%)、死亡獣の保有(50%)、動物のと殺(42%)であった。約9%の患者は別の病人と接触していた。 MMWR(CDC): Rift Valley Fever Outbreak; Kenya, November 2006-January 2007

スーダンでリフトバレー熱の流行 WHO 2007年11月22日 リフトバレー熱の流行-マダガスカル WHO 2008年4月18日 スーダンでは、過去2週間に患者221名以上が報告された。2007年11月21日時点で、死者161名を含むRVF患者436名が報告された。その他にハルツーム州では、死者3名を含む患者15名が報告された 。 患者のほぼ全例が、感染動物の血液や臓器への直接または間接的な接触に由来する。屠殺や食肉加工、動物出産の介助、獣医学的診療行為中や、動物の死骸や胎児の処分時にヒトに伝播される可能性がある。ヒトへの感染は、感染性の蚊族による刺咬からも生じる。また、感染動物からの未殺菌ミルクや加熱不十分な食肉の摂食でも感染しうる。 リフトバレー熱の流行-マダガスカル WHO 2008年4月18日 マダガスカル保健省は、2008年4月17日現在で、17名の死亡例(致死率4%)を含む418名のリフトバレー熱の疑い患者を発表した。 ヒトでのリフトバレー熱感染は、WHOのウイルス性出血熱協力センターであるマダガスカルのパスツール研究所と、グローバル感染症警報対応ネットワーク(Global Outbreak Alert and Response Network)に加盟しているパートナーによって、59名の確定患者が確認された。

Disease distribution maps サウジアラビア OIEによる半年毎の発生情報 ギニア :情報なし :過去に発生報告なし :この期間に未発生 :臨床例を確認 :現在流行中 ケニア マラウィ タンザニア マダガスカル コンゴ 2006 7~12 2007 1~6 常時どこかで発生しており、野生動物が関わる感染症の制御の困難さを示している。 スーダン モザンビーク 2007 7~12 2008 1~6 Disease distribution maps 南アフリカ

アジアへ飛び火する可能性は、常にある! 温暖化により熱帯蚊の生息域の北上も? Gambia, Senegal, Mauritania, Namibia, South Africa, Mozambique, Zimbabwe, Zambia, Kenya, Sudan, Egypt, Madagascar, Saudi Arabia, Yemen 風土病となっており、 相当数の発生がある国 少数の症例が確認され、断続的にウイルスが分離され、あるいは、血清学的証拠がある国 Botswana, Angola, Democratic Republic of the Congo, Congo, Gabon, Cameroon, Nigeria, Central African Republic, Chad, Niger, Burkina Faso, Mali, Guinea, Tanzania, Malawi, Uganda, Ethiopia, Somalia

出血熱の種類、感染経路、死亡率及び分布(海外生活総合情報) 病名 感染経路 致命率(%) 分布 エボラ マールブルグ ラッサ熱 リフトバレー熱 ベネズエラ出血熱 ブラジル出血熱 黄熱 腎症候性出血熱 クリミア・コンゴ出血熱 デング熱 オムスク出血熱 アルゼンチン出血熱 ボリビア出血熱 不明 蚊 ネズミ ヤブカ マダニ 50~85 50 30~70 約9~ 5~15 1~80 15~20 2~50 0~1 サハラ砂漠より南方の「熱帯南アフリカ」に分布 アフリカ、近頃、中東に侵入 熱帯アメリカ(温帯南アメリカ?) 熱帯南アメリカと熱帯南アフリカ ネズミの多い地域では、どこでも 中央アジア、ヨーロッパ中部草原 全世界 ロシア アルゼンチン ボリビア 国立感染症研究所  IDWR 感染症の話 目次 Infection control for viral haemorrhagic fevers in the African health care setting