第10回講義 文、法 経済学 白井義昌.

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終章 結論~迷走する経済学~ E班 堀口・石川・細野・武井・赤見・伊藤 デフレの原因はマネーサプライでもない!人工減少でもな い!ではデフレの正体は何か … この章ではその正体を含め、歴史的に見る経済低滞とデフレ の関係性、デフレの害悪、そして現在の経学の現状について も論じていく。 1.
1 II マクロ経済学のデータ. 2 第5章 国民所得の測定 マクロ経済学とは 国内総生産 = GDP ( Gross Domestic Product ) – 社会の経済的福祉を測定する尺度の1つ ミクロ経済学とマクロ経済学の違いについては、 pp. 40 – 41 も参照.
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
1 IV 長期における貨幣と価格. 第11章 貨幣システム 物々交換 欲望の二重の一致 1.貨幣の意味 貨幣の機能 – 交換手段 – 計算単位 – 価値貯蔵手段 富 流動性 貨幣の種類 – 商品貨幣 金本位制 – 不換紙幣.
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第 9 回 畑農鋭矢 1. 貨幣の役割 価値尺度 財の価値を表す共通の尺度 交換手段 物々交換⇒欲望の二重の一致 貨幣によって交換が容易に 価値の保蔵手段 安全資産としての保蔵手段.
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
貨幣について. 講義概要 貨幣の概念 名目と実質貨幣ストック 貨幣に対する需要 政府による金融政策.
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
マクロ経済学の基礎 1. マクロ経済の循環 1. 貯蓄の無い経済 2. 貯蓄・投資の存在する経済 3. 政府の存在・開放経済 2. 重要なマクロ変数 1.GDP ,失業率,物価 3. マクロ経済の経験的事実.
6: 失業とインフレーション/デフレーション
労働市場マクロ班.
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第11回 畑農鋭矢.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月16日
第1章 国民所得勘定.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
マクロ経済学初級II (秋学期) タイプIIクラス
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
第2章 バブル崩壊後における経済の長期停滞の原因をどうみるか
第2回講義 文、法 経済学.
経済学入門 13 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年7月26日
物価 モノの動き 輸出 輸出物価指数 輸入 生産 企業 CGPI 輸入物価指数 卸売 CGPI 小売 消費者 CPI.
<キーワード> 生産関数、労働、資本 限界生産物
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
第8回講義 文、法 経済学 白井義昌.
IS-LM分析 経済学B 第10回 畑農鋭矢.
7: 新古典派マクロ経済学 合理的期待学派とリアル・ビジネス・サイクル理論
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
短期均衡モデル(3) AD-ASモデル ケインジアン・モデルにおける物価水準の決定 AD曲線 AS曲線 AD-ASモデル
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
GDPに関連した概念.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年7月20日
第10章 失業と自然失業率 失業率はマクロ経済学においてGDP(5章)、インフレ率(6章)と並び重要な指標 各国の失業率(2012年、%)
6: 失業とインフレーション/デフレーション
硬直価格マネタリー・アプローチ MBA国際金融2016.
第4回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
マクロ経済学 II 第10章 久松佳彰.
マクロ経済学初級I 第4回.
マクロ経済学初級I 第5回講義.
マクロ経済学初級I (春学期) 2006年 白井 義昌 4月11日 マクロ経済学初級I.
国際経済学10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年1月18日
マクロ経済学初級I 第7回講義.
市場経済 商品を買 いたい人 商品を売 りたい人 市場 (いちば) 外国と交易し, 商品範囲を広げる 商人は 利得を拡大 客の要望 が増大.
デフレ・スパイラル 2009年以降の事例から 長谷川 正
貨幣の流通速度 貨幣が平均して1年間にいくつの経済主体 の間を移動するのかを表わす MV=取引総額(年間) Vは流通速度あるいは平均回転率.
VI 短期の経済変動.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
第5回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
経済学入門 13 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年7月26日
マクロ経済学体系のフローチャート 財 市 場 (IS曲線) IS・LM モデル 総需要 曲 線 所 得 と 物価水準 の 決 定 インフレと
マクロ経済学初級I (春学期) 2005年 白井 義昌 4月19日 マクロ経済学初級I.
貨幣供給・需要 専修大学 経済の世界 作間 逸雄.
第5章 貨幣と金融市場.
7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓
第6章 IS-LMモデル.
第6章 生計費の測定 生計費=生活費(cost of living) 生活水準の比較
第4章 貨幣数量説は正しいか リカードからクルーグマンまで
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
第3回講義 文、法 経済学.
第6回講義 文、法 経済学 白井義昌.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
マクロ経済学初級I 第12回 今学期のまとめ.
12章 貨幣量の成長とインフレーション 1.インフレーションの古典派理論 物価水準と貨幣の価値は逆数の関係
第5回講義 文、法 経済学 白井義昌.
IV 長期における貨幣と価格.
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第10回講義 文、法 経済学 白井義昌

第10回講義の内容 物価の変動のメカニズム および 失業の問題 10.1 物価指数と戦後日本の一般物価水準の推移   物価の変動のメカニズム    および 失業の問題 10.1 物価指数と戦後日本の一般物価水準の推移 10.2 ディマンドプル・インフレーション 10.3 コストプッシュ・インフレーション 10.4 インフレの費用 10.5 失業の概念と経験則

10.1 物価指数と 戦後日本の一般物価水準

CPIとWPI 一般物価水準を表す指標はいろいろある。 消費者物価指数(Consumer Price Index) 卸売物価指数(Whole Sale Price Index) WPI  原材料などの中間投入物に関する物価指数

戦後日本の物価変動 1973、74年の物価水準の高騰 第1次石油ショック 1970年代末から80年代初頭にかけての物価水準の上昇    第1次石油ショック 1970年代末から80年代初頭にかけての物価水準の上昇    第2次石油ショック 1980年代半ば以降低インフレ、WPIはマイナス 1990年代末から現在にかけてのデフレ

インフレの原因 マネタリストの考え方(貨幣数量説) ディマンドプルインフレ コストプッシュインフレ

10.2 ディマンドプル インフレーション 財市場における超過需要による インフレ

マネタリストの考え方 マネタリストは貨幣供給量が総需要を変化させるもっとも重要な要因と考える。 名目貨幣供給量の上昇率が実質国民所得の増加率を上回ることがインフレの原因であると考える。

貨幣数量説 貨幣需要は国民所得にのみ依存すると考える。 フィッシャーの交換方程式 MV=PT M貨幣の流通量 V貨幣の流通速度 P物価水準

貨幣数量説:ケンブリッジ方程式 名目取引総額PTは名目所得PYと比例的関係にある。 PT=PYとすると、 フィッシャーの交換方程式は              MV=PY              M=(1/V)PY M=kPY とあらわせる。k=1/Vはマーシャルのkと呼ばれている。

貨幣数量説によるマネタリストのディマンドプルインフレの説明 M=kPY 名目貨幣供給量Mの上昇率が実質国民所得Yの上昇率よりたかければ  財市場に超過需要がおこり、物価水準Pは上昇しなくてはならない。

利子率 LM IS LM’ r0 P上昇の効果 M拡大の効果 総生産 Y*

AS P AD’ AD P*’ P* F(K,L*)   Y* 総需要総供給分析でのディマンドプルインフレ

10.3 コストプッシュインフレ 費用の上昇が原因 のインフレ

費用と価格水準 製品一単位あたりの費用が上昇すれば製品価格も上昇する 経済全体の物価水準もそれに応じて上昇する

コスト上昇の原因 労働組合の圧力による過度の賃金上昇 天然資源に乏しい国では原材料価格の上昇(特に石油など)は費用の上昇をもたらす コストプッシュインフレはスタグフレーション(不況と物価上昇の並存)の説明に用いられる

AS’ AS P AD P’0 P0 Y*’ Y* F(K,L*) ケインズ派のケース

10.4 インフレの費用 予想されないインフレの費用 予想されたインフレの費用 インフレ税

予想されないインフレの費用 予期せぬ所得移転 不確実性の問題 生産計画、消費計画への予期せぬ影響 利子率の例 r=i-π 実質利子率 預金者から借入者への所得移転 賃金の例 w=W/P 実質賃金 労働者から企業への所得移転 不確実性の問題    生産計画、消費計画への予期せぬ影響

予想されたインフレの費用: 靴底コスト 予想されたインフレの場合預金保有にともなう所得移転はない しかし、現金保有の費用はかかる インフレが存在するときなるべく現金をもたないようにする したがって、預金の現金化を頻繁におこなうようになる。この費用が靴底コストと呼ばれる。

予想されたインフレの費用: メニューコスト インフレによって常に価格の変更をせまられる。この価格変更の費用をメニューコストという。

インフレ税 ハイパワードマネーの増大が貨幣供給の増大をもたらし、インフレをおこす。 ハイパワードマネーの増大は中央銀行の負債の増大である。インフレによってこの実質負債額が目減りすれば、その分中央銀行以外の貨幣保有主体がそれだけの損失を被ることになる。この損失がインフレ税である。

10.5失業の概念と経験則 失業の概念 オークン法則 フィリップス曲線

失業の概念 経済における人口は就業者、失業者、非労働力人口にわけられる。 就業者および失業者は就業意欲がある。  失業の概念 経済における人口は就業者、失業者、非労働力人口にわけられる。 就業者および失業者は就業意欲がある。 非労働力人口に入る主体には就業意欲はない。 失業率は     失業者数          就業者数+失業者数 によって定義される

Change in employment status in a typical month

非自発的失業 労働市場で定まっている実質賃金のもとで働きたいと思っている人が働けていない場合、この人は非自発的失業状態にある。

摩擦的失業 労働者と雇用者にはそれぞれの特性があり、双方の希望が折り合わないことが多々ある。双方の希望が折り合うような組み合わせを双方が探索する間、労働者は失業状態になる。これを摩擦的失業と言う。

構造的失業 慢性的に失業状態に陥っている人々が常にいる。(能力上の問題など) 産業構造変化、地域経済の衰退と活性化などにともなって労働力の配置換え(reallocation)がおこる。この間労働者が失業状態になる。 以上のように長期にわたって存在する失業を構造的失業とよぶ。

自然失業率 構造的失業と摩擦的失業からなる失業者から算出される失業率 現実の失業率と自然失業率の差は   cyclical unemploymentとよばれる

オークンの法則 Cyclical unemploymentと総生産の間に次のような関係がみられる Y:完全雇用状態での実質総生産 Y-Y =2.5(u-u) Y

Figure 3.16 Okun’s law in the United States: 1954-1998

フィリップス曲線 インフレ率と失業率の間にはトレードオフの関係が観察されている

インフレ率 失業率 0

Figure 12.01 The Phillips curve and the U.S. economy during the