福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇

Slides:



Advertisements
Similar presentations
例② ×× 病院 TEAM ×× 氏名 ① 氏名 ② 氏名 ③. 【症例】 51 歳、男性 【主訴】心電図異常 【既往歴】統合失調症( 25 歳時) 【現病歴】 20 歳台より肘、膝関節に皮下腫瘤を認め ていたが、経過観察となっていた。その後徐々に増 大してきたことから平成 X 年当院皮膚科を受診し、切.
Advertisements

糖尿病の診断 関東労災病院 糖尿病内分泌内科 杢保敦子 2007 年 10 月 21 日 第 2 回市民公開講座 2007 年 10 月 21 日 第 2 回市民公開講座 「糖尿病を知ってその合併症を防ぎましょう」 「糖尿病を知ってその合併症を防ぎましょう」
偽性低アルドステロン症と発達遅延を 合併した重症アトピー性皮膚炎の 1 症例 立川綜合病院小児科 太田匡哉 小柳貴人 遠藤彦聖 小林代喜夫 すこやかアレルギークリニック 田中泰樹 新潟大学医歯学総合病院小児科 小川洋平 齋藤昭彦.
小児の正常値 2003/05/14 - 第4学年 はじめに 患者の年齢によって正常範囲が異なる 通常、検査報告書に添えてある正常値 は成人のものである 医師が正常・異常を総合的に判断する.
本当にないか?内科の病気 ~精神科コンサルト前に~
三例の糖尿病性腎症導入例 仁和寺診療所 田中 貫一 仁和寺診療所.
A case of pneumatosis cystoides intestinalis attributed
同時性両側自然気胸に対する 一期的手術の1治験例
セルフマネジメントスキル獲得のための ヘルスアセスメントとマインドフル講座
体重減少 ◎食欲があるのに体重が減る ⇒糖尿病、甲状腺機能亢進症、吸収不良症候群などを疑う ◎食欲がなくて体重が減る ⇒その他の疾患を疑う
体重増加 短期間で 急に太った いつもと同じ食生活をしているのに… 定期的に運動をしているのに…
息苦しくてつらい 4年 佐野智子.
全身倦怠感 全身倦怠感はさまざまな病気にみられます 疲れやすい… だるい…
腹腔動脈を介した 右肺底動脈大動脈起始症に対する 胸腔鏡下 右下葉切除術の1例
初心者を対象とした 形態グループミーティング
ホルモンとは何か? 生体内のあらゆる細胞の代謝活性を調節する甲状腺ホルモンの分泌量をどのように制御すべきか?
動悸にはこんな種類があります 心臓の動きが 考えられる病気 動悸とは、心臓の動き(心拍)がいつもと違って不快に感じることをいいます。
横隔膜浸潤と胸水貯留から呼吸苦を訴えた9500gの 超巨大GISTの1例
関東地方会 症例検討(治療) 東京医科大学 乳腺科学分野     寺岡冴子.
大量free airにて 消化管穿孔を疑い緊急開腹術を施行 高気圧酸素療法が著効した 腸管嚢状気腫症の1例
甲状腺疾患 カイエー薬局 グループ発行 健康シリーズ 女性に多い 最近、テレビでも放送されましたが、いくつもの病院を
多彩な肝病変を呈した Rendu-Osler-Weber病の1例
慢性閉塞性肺疾患(COPD) 4年 加藤彩香.
1.職場における産業保健活動 (1) 産業保健は予防医学
第2回栄養セミナー 川崎医科大学 糖尿病内分泌内科 衛藤 雅昭 生活習慣病(肥満,糖尿病,高脂血症)の 食事療法
高血圧 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 二次性高血圧を除外 合併症 臓器障害 を評価 危険因子 生活習慣の改善
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
脳血管障害 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 緊急処置 一般検査 画像検査 治療 診断
自転車で転倒し    脾臓損傷した症例 ○○消防署 ○○救急隊  ○○○○.
糖尿病 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 検査 診断 治療
もしも子供を診るときは 県立広島病院 研修医 杉本智裕.
輸血の生理学 大阪大学輸血部 倉田義之.
第24回 呼吸運動療法症例検討会 「気管支拡張症」
運動療法の安全管理 医療法人社団 順公会 ウェルネス葛西             大 場 基.
埼玉医科大学腎臓内科/総合診療内科 岡田浩一
連携・連絡 (退院時まで) 術後連携の説明 □ 患者様用パス説明 手術後後遺症・再発等 発生時の連絡先 □ 確認の実施 ~ 2 ~
再発する早期胃癌に対し ESDを施行した一例
健診の腹部エコー検査で発見された 副腎腫瘤2症例の考察
これは症例発表テンプレートです 肝転移を伴った子宮頸癌の1例 関西医科大学 5学年 **番 ふじ たろう 患者ID:0020**XXXX
肥満の人の割合が増えています 肥満者(BMI≧25)の割合 20~60歳代男性 40~60歳代女性 (%)
メタボリックシンドロームはなぜ重要か A-5 不健康な生活習慣 内臓脂肪の蓄積 高血糖 脂質異常 高血圧 血管変化の進行 動脈硬化
メタボリック シンドローム.
Lカルニチン治療の血液透析患者の腎性貧血への効果
高血圧治療の目標 肺炎なら吸痰、UTIなら導尿、 高血圧なら、ベースの評価と二次性高血圧の除外。
演題発表内容に関連し、発表者らに開示すべきCOI関係にある企業などはありません。
症例1 53歳 女性 血性乳頭分泌を自覚 その後右乳房腫脹が著明となり近医を受診 右乳房の大部分を占める腫瘤 (130×120mm)を触知 腋窩リンパ節は非触知 【既往歴及び家族歴】特記事項なし.
小児に特異的な疾患における 一酸化窒素代謝産物の測定 東京慈恵会医科大学小児科学講座 浦島 崇 埼玉県立小児医療センター 小川 潔、鬼本博文.
●●●●により救命できた ●●●●を呈した ●●●●の一例
大宮ソニックシティー 足利赤十字病院 外科 戸倉英之
血液ガス分析の復習.
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
3枚の絵で症例をまとめる 全身の情報、過去の経過を プロファイルし なぜこの診断、治療方針を 決定したか? 治療の結果は?
蜂窩織炎として加療されていた両側ベーカー嚢腫破裂の一例   沖縄県立南部医療センター・こども医療センター総合診療内科 殿城秀斗、仲里信彦、山城俊樹、稲田誠 背景  ベーカー嚢腫の破裂により下肢の腫脹や疼痛を伴う偽性血栓性静脈炎(Pseudothrombophlebitis)は蜂窩織炎や下肢静脈血栓症の鑑別として挙げられる。
1. 糖尿病の自覚症状は あてにならない 2. 主な検査の種類 3. 検査値の意味と 基準値・コントロール目標 4.
血栓性血小板減少性紫斑病 TTP 溶血性尿毒素症候群 HUS
小腸カプセル内視鏡により 診断しえた小腸出血の一例
緊急輸血・大量輸血 山形大学輸血部 田嶋克史.
A-2 男性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
経過のまとめ 家族歴、基礎疾患のない14歳女性 筋力低下、嚥下障害を主訴としてDM発症 DMは、皮膚症状と筋生検にて確定診断
異所性妊娠卵管破裂に対する緊急手術中の輸血により輸血関連急性肺障害(TRALI)を発症した1例
病理学実習2:女性生殖器Ⅱ 卵巣の疾患・絨毛性疾患
糖尿病をよく知るための検査 ★血糖:けっとう、グルコース、Glu ★HbA1c:ヘモグロビンエーワンシー
日本乳癌学会関東地方会 教育セミナー 治療 2018・12・1    大宮ソニックシティ 自治医科大学 乳腺科   藤田 崇史.
肝細胞癌の1例 平成28年度 6班 36番 下島里音 肝臓で入院した患者の肝臓の状態を、今までの治療歴を踏まえ1枚の図にまとめています。
血管内コイリングで止血し得た 十二指腸潰瘍の一例
( sGOT ・ sGPT ・ Alp ・T bil ・ LDH )
A-3 女性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
脱水・ 循環血液量低下.
諏訪邦夫 (当時東京大学医学部麻酔学教室所属)
Presentation transcript:

福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇 糖尿病内分泌代謝内科学講座 教授試問 1週目 症例提示 福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇 2018年10月3日

症例 34歳 女性 【主訴】 四肢脱力 【既往歴】 32歳:卵巣嚢腫摘出 【生活歴】 喫煙歴:なし 飲酒歴:機会飲酒 【家族歴】 祖母:胃癌 【服薬歴】 特になし(健康食品・サプリメントなし) 【現病歴】 X-4年の健康診断で初めて高血圧 (160/100 mmHg) を指摘さ れたが放置していた。X年Y-1月頃から筋力低下や下肢のしび れを自覚するようになった。 X年Y月Z日に野外ライブイベントへ外出した際、会場内で四肢 脱力により体動困難となったため、A病院へ救急搬送された。

身体所見 身長 151 cm、体重 55.7 kg、BMI 24.4 kg/m2 血圧 164/98 mmHg、脈拍 74/分 体温 36.8℃ 呼吸数 22/分、SpO2 99% 意識清明 頭部:眼瞼結膜に貧血なく眼球結膜に黄染はない。 頸部:甲状腺に腫大はなく、圧痛も認めない。 胸部:心雑音やラ音は聴取しない。 腹部:平坦・軟で圧痛なし。 四肢:浮腫なし。近位筋有意に筋力低下を認める。 神経:四肢の粗大麻痺なし。深部腱反射減弱を認める。

血液・尿検査所見 【 血算 】 白血球 11400 79.5 1.3 0.2 12.3 6.7 赤血球 441万 Hb 12.9 血小板 /μL 好中球 79.5 % 好酸球 1.3 好塩基球 0.2 リンパ球 12.3 単球 6.7 赤血球 441万 Hb 12.9 g/dl 血小板 38万 【 生化学 】 AST 39 U/L ALT 33 LDH 239 ALP 175 BUN 7.1 mg/dL Cre 0.6 Na 142 mEq/L K 1.8 Cl 100 CK 985 CRP 0.21 血糖 128 HbA1c 5.5 % 【 血液ガス 】 pH 7.53 PaCO2 32.0 mmHg PaO2 98 HCO3 26.6 mM/L 【 尿 】 糖 (-) 蛋白 潜血 Na 60 mEq/L K 15.2 Cre 75.1 mg/dL

生理検査、画像所見 【 心電図 】 心拍数 72/分、正常洞調律、軸偏位なし(25度) 左室肥大を疑う所見なし、U波の出現を認める 【 胸部レントゲン 】 心拡大なし、肺野異常陰影なし、胸水貯留なし 【 腹部CT 】 左副腎に約15 mm の結節を認める (結節内部は低吸収域)

内分泌検査所見 低レニン・高アルドステロン血症を認めた TSH 1.17 FT4 1.47 FT3 2.83 レニン活性 0.3 μU/mL FT4 1.47 ng/mL FT3 2.83 pg/mL レニン活性 0.3 ng/mL/h アルドステロン 536 ACTH 10.4 コルチゾール 20.7 μg/dL 尿中ノルメタネフリン 0.22 mg/gCr 尿中メタネフリン 0.08 低レニン・高アルドステロン血症を認めた

問題点と検査・治療方針 【 問題点 】 #1. 四肢脱力、高CK血症、低カリウム血症 #2. 高血圧 #3. 左副腎結節 【 検査・治療方針 】 四肢脱力発作は、低カリウム血症によるミオパ チーと診断した。腎機能障害はなく、カリウム補 充を行い、速やかに脱力症状は改善した。 原発性アルドステロン症が疑われ、当科を紹介受 診し精査入院した。 負荷試験や蓄尿検査でまずは存在診断を進める。

入院後経過①:確定診断 【 立位負荷試験 】 【 カプトプリル負荷試験 】 【 生理食塩水負荷試験 】 【 蓄尿 】 負荷試験すべて陽性 尿中アルドステロン 36 μg/日 0分 120分 レニン活性 0.3 0.4 ng/mL/h アルドステロン 536 553 pg/mL 負荷試験すべて陽性 尿中アルドステロン高値 ↓ 原発性アルドステロン症と診断した。 0分 120分 レニン活性 0.1 0.2 ng/mL/h アルドステロン 430 541 pg/mL 0分 120分 レニン活性 0.1 0.2 ng/mL/h アルドステロン 454 433 pg/mL

入院後経過②:副腎静脈サンプリング 左副腎からアルドステロン過剰分泌があり、副腎結節も左側 PAC (pg/ml) コルチゾール F (μg/dl) PAC / F ACTH 負荷前 左副腎静脈 3720 13.5 275.6 右副腎静脈 620 27.7 22.4 下大静脈 227 7 32.4 ACTH 負荷後 14100 420 33.6 13300 2450 5.4 558 31 18.0 左副腎からアルドステロン過剰分泌があり、副腎結節も左側 → 左副腎アルドステロン産生腫瘍と診断、左副腎摘出術へ

入院後経過③:手術とその後の経過 副腎内分泌外科にコンサルテーションし、Y+1月に腹腔鏡下左副腎摘出術が施行された。 病理標本では副腎腺腫の所見であり、アルドステロン産生腫瘍に矛盾しなかった。

症例のまとめ 低カリウム性ミオパチーを契機に診断した原発性アルドステロン症 (PA) の若年女性である。 低カリウム血症の原因はアルドステロン過剰によるものであった。 静脈サンプリングによって左副腎からのアルドステロン過剰産生と局在診断し、責任病変に対して手術を行った。 術後にアルドステロンは正常化し、血圧・電解質とも改善を認め筋症状も消失した。