「鹿児島の食の安全を考える」 リスク・アナリシスと安全性向上の社会システム: 「食品の安全」は生命(いのち)をいただくマナーを基礎とする

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残留問題 2004~2012年の平均で、年間1,314件、27,393名の食中毒事故があった。9年間の死亡者は51名だったが、その内自然毒が27名を占め、細菌(24名)を上回った。 2004~ 2012年 年平均 件数 年平均 患者数 通算 死亡数 細菌 ウイルス 化学物質 自然毒 731件 343件.
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在宅医療施策の取組状況と今後の展開(案)
農場からフォークまでの食品の安全性: 放射線照射の役割
「リステリア」による食中毒を 防ぐために衛生管理を徹底しましょう
議論の前提 ある人獣共通感染症は、野生動物が感染源となって直接又は媒介動物を通じて人に感染を起こす。
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
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○ 大阪府におけるHACCP普及について S 大阪版 評価制度を設ける 大阪府の現状 大阪府の今後の方向性 《従来型基準》
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「鹿児島の食の安全を考える」 リスク・アナリシスと安全性向上の社会システム: 「食品の安全」は生命(いのち)をいただくマナーを基礎とする 鹿児島大学地域共同研究センター特別講演会 「鹿児島の食の安全を考える」 稲盛会館大ホール(鹿児島大学郡元キャンパス)、2005年12月5日 リスク・アナリシスと安全性向上の社会システム:  「食品の安全」は生命(いのち)をいただくマナーを基礎とする 農学部獣医学科獣医公衆衛生学教授 岡本嘉六  食品は動物や植物などの生き物であり、「命をいただく」感謝の気持ちを忘れてはならない。  命を粗末にする一方で「安心」を求めても、神仏は応えないだろう。

「BSE問題に関する調査検討委員会報告」 (2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会) 「食育基本法」 本年7月15日から施行 ・・・国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。・・・ 「BSE問題に関する調査検討委員会報告」 (2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会) 5)重要な個別の課題 ④ 食に関する教育いわゆる「食育」の必要性  今日の食品の安全性をめぐる事態に照らし、学校教育における食品の安全性や公衆衛生及びリスク分析などに係わる基礎的知識の習得・教育を強化する必要がある。農業や食品産業など、フードチェーン全般にわたる基礎的な知識および栄養や健康に関する教育も充実させる必要がある。  食品に、ゼロ・リスクはあり得ないこと、情報をもとに一人一人が選択していく能力を身に付けていくことの大切さの認識の普及が必要である。

● 日本における食中毒の発生状況 < 総合対策の基本 > パート1 ●  日本における食中毒の発生状況 < 総合対策の基本 > ● 健康弱者(70歳以上の高齢者、14歳以下の若齢者、病弱者)に対する特別措置   食品衛生法に規定を追加する ● 安全性レベルの選択による自己防衛   安全性レベルの認証・表示(HACCP) ● 安全性に関する正しい知識の普及   自然毒の脅威についての啓蒙

食中毒患者数の推移 患者数(細菌) 患者数 40,000 (自然毒) 35,000 (化学物質) 細菌 100 200 300 400 100 200 300 400 500 600 30,000 25,000 自然毒 20,000 15,000 化学物質 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 食中毒患者数の推移

原因物質別にみた食中毒による死者数の推移 ● 化学物質による死亡者はいない ● 患者数では細菌の100分の1であった自然毒だが、死亡数は細菌とほぼ同等。自然毒は 致命率が高い! 20 18 16 14 年間死亡数 12 :総数 :細菌 10 :自然毒 8 6 4 2 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 原因物質別にみた食中毒による死者数の推移

食中毒患者数および死者数の年齢別割合 死者数 人口 患者数 20 40 60 80 100% 15歳 50歳 70歳 :0~4 :5~9 20 40 60 80 100% 食中毒患者数および死者数の年齢別割合 :0~4 :5~9 :10~14 :15~19 :20~29 :30~39 :40~49 :50~59 :60~69 :70~

年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 累積死亡者数 年齢 (1996~2002) 4 2 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 累積死亡者数 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 ハイリスク者への特別対策 12 :動物性自然毒 :植物性自然毒 :大腸菌 :サルモネラ :ぶどう球菌 :腸炎ビブリオ 10 衛生教育 8 6 4 2 30~39 40~49 50~59 60~69 70~ 年齢 年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 (1996~2002)

自然毒の脅威との戦いが人類史の一側面 文化(Culture;耕す) ボツリヌス毒 破傷風毒 ジフテリア毒 パリトキシン テトロドトキシン 50%致死量 μg/kg mouse 産生・保有 ボツリヌス毒 破傷風毒 ジフテリア毒 パリトキシン テトロドトキシン サキシトキシン 0.00003 0.0001 0.3 0.6 8.7 10 細菌 イソギンチャク類 フグ、ヒョウモンダコ 二枚貝 ボツリヌス毒 文化(Culture;耕す)  人間が改良を加えてきた物心両面の成果、とくに西洋では精神的生活に関わるものを「文化」とし、「文明」と区別する。危害を取り除いて<安全に食べる>ことが文化であり、「ナチュラル=非文化」は危険です。 青酸カリ 10,000 ギンナン中毒: 国内で過去約80人の患者が学会報告され、うち約30人が死亡 ボツリヌス毒の1億倍食べないと死なない 青酸配糖体:アミグダリン(ウメ、アンズ、モモ)、ドーリン(イネ科) ファゼオルナチン(アオイマメ)、リナマリン(キャサバ) 青酸配糖体を含む生薬: キョウニン(杏仁)、トウニン、ショウキョウ

米国の食品規格コード(Food Code ) 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である 1-201 用語の定義と適用範囲 (44)高感受性集団(Highly susceptible population)とは、次の理由で、一般集団の人より食品媒介性疾患に罹りやすい人をいう。 (i) 免疫低下者、就学前児童、老人 (ii) デイケア施設、腎臓透析センター、病院または療養所、看護付老人ホームなどの健康管理または補助生活を受けている人。 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である

リスク管理と経費負担のモデル 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 衛生検査と監視に使われる税金 個人衛生 自主衛生管理 低  リスク・レベル   高 衛生教育に掛かる費用 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 法的規制 衛生検査と監視に使われる税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル

? 法的規制 リスク管理と経費負担のモデル 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 国民経済として 無駄な経費 個人衛生 低  リスク・レベル   高 衛生教育に掛かる費用  法的規制の水準を上げると、その分、衛生対策費と監視業務の経費を税金で賄わねばならない。赤字国債が問題となっている現状で、実行できますか? 法的規制 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 国民経済として 無駄な経費 ? 法的規制 衛生検査と監視に使われる税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル

パート2 ● 食品の安全性とは? あらゆる食品について、「ゼロリスク」はあり得ない! ● リスクレベルの決定=リスク・コミュニケーション ●  食品の安全性とは?    あらゆる食品について、「ゼロリスク」はあり得ない! 「食品の品質と安全性システム」 FAO: Food Quality and Safety Systems - A Training Manual on Food Hygiene and the Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System. 1998  「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。  不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何についても言えることだが)。」 ● リスクレベルの決定=リスク・コミュニケーション   リスク低減には費用が掛かり、国民負担との兼ね合いである。

危ない食品とそうでない食品があるのではない! 適度の量があり、それを外れると障害を起こす! 閾値がない 化学物質 (発癌物質、 環境ホルモン) ▲ 栄養素 閾値がある 化学物質 健康への悪影響 生活習慣病 ● ● 栄養失調 危ない食品とそうでない食品があるのではない! NOAEL 無有害作用濃度 適度の量があり、それを外れると障害を起こす! LOAEL 最小有害作用濃度 用量(摂取量) 世界保健機構 化学物質の用量・反応関係 化学物質の用量・反応関係 WHO: Hazardous chemicals in human and environmental health - A resource book for school, college and university students. 2000

カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率 0.25 100 :カンピロバクター、 :サルモネラ  肉食民族では、家畜との付き合いが長く、その分、動物由来感染症も多い。  安全性が高い日本で大騒動するのは、自然観、生命観の相違か? 0.2 80 10万人当り死亡率 10万人当り罹患率 0.15 60 0.1 40 0.05 20 0.0014 日本 英国 米国 日本 英国 米国 カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率

食肉センターにおけるサルモネラ汚染: 米国の基準 陽性サンプル数の上限 サンプル数 陽性率 子牛 肉牛 挽肉 豚 豚ソーセージ ブロイラー 1.0 2.7 7.5 10.9 NA 23.6 82 58 53 55 NA 51 1 2 5 6 NA 12 NA :基準策定のため調査中であり、将来設定する。 食鳥センターの基準は別の法律であるが、ここでは併記した。 これは、食肉センターにHACCPを適用する法律を作成するための事前調査に基づいて策定された基準である。

大規模施設における豚と体のサルモネラ陽性率 11%( 55頭中6頭)の基準を定める根拠となった1998-1999の調査 陽性率(%) 施設数 割合(%) 規制によって廃棄する割合が高くなれば、価格が高騰するだけでなく、絶対量が不足する可能性がある。 安全性に絶対(100%)はあり得ない。「どの程度の安全性をどの程度の価格で」が問題なのである。 0.0 – 5.0 5.1 – 8.7 8.8 – 11 11.1 – 15 15.1 – 20 45.0 – 50 全体 12 3 1 17 71 18 6 100 11%( 55頭中6頭)の基準を定める根拠となった1998-1999の調査

● 食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされている。 パート3 ●  食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされている。 ● 衛生対策の強化には、モノも労働も必要です。その経費を公正に負担する社会システムを皆で考え、作り上げよう。

食肉の安全性に関わる社会システム(1) リスクが減るのは2箇所だけ リスク・レベルのモデル 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 調理時の加熱は細菌を殺滅する。 しかし、食材や料理を室温での放置すれば、菌は増殖する。 輸送距離が延びるにつれ、細菌増殖に必要な時間も長くなる。 温度管理等の法的基準もない。 病気 動物薬残留 食中毒菌 薬剤耐性菌 と畜検査員による法律に基づく検査 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(1)

? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(2) リスク・レベルのモデル GAP QAP HACCP リスクは 残る! 農場 食肉センター 農場における 適正な衛生管理 病原体低減/HACCP Pathogen Reduction / HACCP 無菌の肉ができる訳ではない! リスク・レベルのモデル 解体処理工程など 食肉センターの 衛生管理 GAP QAP 消費者は ? ? HACCP リスクは 残る! 流通過程が 変わらなければ 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(2)

? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(3) 食品輸送衛生法 (米国、1990) Sanitary Food Transportation Act GHP: Good Handling Practice 流通業における適正取り扱い規範 リスク・レベルのモデル GAP QAP 消費者 教育 流通過程の 衛生基準 ? ? HACCP 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実施することによって、初めてリスクが小さくなる。 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(3)

リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌) 食品による健康障害の現状 食品Ⅱ~X 危害因子A 食品Ⅰ リスク・アナリシス リスクの低減目標 危害因子B~X 第三者による監視(モニタリング) リスクレベル 費用の発生 現状 改善後 生産段階 加工段階 流通段階 消費段階 処理段階 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証  フードチェーンにおける温度などの衛生管理が悪いと細菌が増殖し、発症菌数を超える場合がある。途中でリスクが増加しない化学物質と比べて、細菌のリスク管理にはより多くの経費が掛かる。 リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌)

*:洗卵、乾燥、検卵、重量選別、包装、出荷 環境負荷を減らす副生物のリサイクルも、生活環境の安全性向上に欠かせない! 鶏卵生産農場がGAPを実施するには、その上流にある種鶏場や孵化場、飼料工場が品質保証を出せる体制作りが先行しなくてはならない 育種用基礎系統群、系統造成群、 海外に依存 原原種鶏農場(GGP) 農場段階においても、一般農家だけで安全性向上を図れるものではない! 飼料工場 原種鶏農場(GP) 廃鶏:食鳥センター 種鶏農場(PS) 穀類 (大半は輸入) 動物性 蛋白質原料 孵化場 育雛場 食品工場 割卵工場 インライン方式* 鶏卵生産農場 (コマーシャル鶏) 飲食店 卵問屋 オフライン方式* 消費者 小売店 GPセンター *:洗卵、乾燥、検卵、重量選別、包装、出荷 環境負荷を減らす副生物のリサイクルも、生活環境の安全性向上に欠かせない! 鶏卵の安全性と関わる養鶏産業システム

● 食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされている。 パート4 ●  食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされている。 ● 衛生対策の強化には、モノも労働も必要です。その経費を公正に負担する社会システムを皆で考え、作り上げよう。

HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準 全国的に統一された 適性農業基準(GAP) 農畜水産物の安全性向上のための社会システム ○○地域における 適性農業基準(GAP) ●●地域における 適性農業基準(GAP) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準 ○○県食品安全推進会議 ●●県食品安全推進会議 全国的に統一された 適性農業基準(GAP) 生産者、消費者、流通業者ならびに専門家が参加する 全国食品安全推進会議 品質保証計画(QAP) 第三者としての民間の認定機関・試験機関

EU食品衛生規則を統合する提案に対する全面的な法令影響査定 CONTENTS(目次) Full Regulatory Impact Assessment on proposals to consolidate EU food hygiene legislation Friday, 05 November 2004 CONTENTS(目次) 1. Title of Proposals and Timetable(提案の名称と予定表) 2. Purpose and intended effect of the measure(提案の目的と意図する効果) 3. Negotiating line and Options(協議の方向性と選択肢) 4. Benefits(便益) 5. Costs(費用) 6. Consultation with Small Business(小規模業種との協議) 7. Competition Assessment(競合者査定) 8. Enforcement and Sanctions(施行と認可) 9. Monitoring and Review(モニタリングと再評価) 10. Consultation(協議) 11. Summary and Recommendation(要約と勧告) 12. Declaration(通知)

表3. 食品産業における実施費用の要約 記録には、人材教育、実際の記録・管理に要する労賃が掛かる 影響を受ける企業数/ 企業当りの費用 表3. 食品産業における実施費用の要約 影響を受ける企業数/ 企業当りの費用 1度限りの 業界費用 企業の 年間費用 要件/費用の要素 SFBBモデルの採用 SFBB情報―印刷資料 SFBB日誌 製造部門における記録管理 日誌が適していない非製造部門における記録管理 SFBB日誌の完成 第一次生産部門の費用 60万食品企業の費用総額 210,000/30,000円 105,000/8,000円 413,250/6,000円 7,000/131,200円 61,750/131,200円 413,250/17,600円 160,000/26,000円 63億円 8.4億円 71.4億円 24.6億円 9.2億円 80.5億円 35.8億円 42億円 192.2億円 記録には、人材教育、実際の記録・管理に要する労賃が掛かる SFBB: 「より安全な食品、より健全な業務(Safer Food, Better Business)」

食中毒発生を減らす便益とは? D. 国内の食品媒介性疾患に掛かる費用 食品媒介性疾患の費用 便益 = 現在支払っている費用の節約分  新しい食品安全規則の利点は、国内の食品媒介性疾患、すなわち国内で消費された食品による疾患を結果として低減させることにある。したがって、国内の食品媒介性疾患の低減による経済的節約は、規則の利点を計る指標となる。 便益 = 現在支払っている費用の節約分 食品媒介性疾患の費用 食品媒介性疾患疾病を含む病気の費用は2つの主要成分を含むと仮定することができる: (i) 個人、雇用者および国民健康保健に対する、損益としての、実際の病気の費用 当人と介護人が払った費用 (ii)  病気による個人の痛み(pain)、悲しみ(grief)および社会的苦痛(suffering)に対する追加的金銭価値 死亡や罹病のリスクを減らすために投じる個人の返済意志(WTP:willingness to pay)に基づく

(i) 病気の実際の価格/費用 2000年における国内食品媒介性疾患の総症例数: 1,338,77人 2000年における国内食品媒介性疾患の総症例数:  1,338,77人 その内: 一般開業医を受診した数:       368,516人 一般開業医を受診しなかった数:  970,256人 一般開業医を受診した患者 国民健康保健の費用=一般開業医 8,960円+病院 3,564円=19,400円 直接的個人費用= 3460円 患者と雇用者の生産活動停止費用=44,100円 平均実際費用=66,960円 一般開業医を受診した患者の全費用:  66,960円×368,516人=246億円 一般開業医を受診しなかった患者 直接的個人費用= 844円 患者と雇用者の生産活動停止費用=7,666円 平均費用=8,510円 一般開業医を受診しなかった患者の全費用:  8,510円 ×970,256人=82億円 食品媒介性疾患の総症例に対する全費用 246億円+ 82億円 =328億円

合計=2252.8億円 総額 2580.8億円 痛み、悲しみおよび社会的苦痛に対する 追加的金銭価値 ● 死亡症例における痛み等の金銭価値  痛み、悲しみおよび社会的苦痛に対する 追加的金銭価値 ● 死亡症例における痛み等の金銭価値 =人的損失+0.8×生産活動停止費用 =150,128,000円+0.8×78,716,000円=213,100,800円 480症例×213,100,800円=1022.8億円 (億円) ● 永久障害 ● 受診せず7日以内の症例 ● 受診せず7日を超える症例 ● 受診した7日以内の症例 ● 受診した7日を超える症例 480症例×377,740,00円=181.4 941,148症例×31000円=291.8 29,108症例×392,000円=114.2 221,110症例×31000円=68.6 146,446症例×392,000円=574.0 合計=2252.8億円 (i)実際の病気の費用=328億円 (ii) 痛み、悲しみおよび社会的苦痛に対する金銭価値=2252.8億円 総額 2580.8億円

表4. 食品衛生規則: 費用と便益に関する証拠の要約 費用対効果のまとめ 表4. 食品衛生規則: 費用と便益に関する証拠の要約 年 1 2 3 4 6 6~10 費用 264億円 192億円 便益(年3%)  90億円 180億円 272億円 352億円 456億円 註2: 便益は、国内の食品媒介性疾患が5年目までは年3%減少し、その後は一定であるという仮定で計算した。

(GAP;Good Agricultural Practice) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準例 適性農業基準とは (GAP;Good Agricultural Practice) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準例 チェックリスト 評価点 衛生管理コスト 認証マーク 非参加農場 50点未満 50点以上 60点以上 70点以上 80点以上 90点以上 無印 ★ ☆ ☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 適正価格で 自分に見合った 安全性を購入できる 市場価格 10%上乗せ 20%上乗せ 30%上乗せ 40%上乗せ 50%上乗せ

基調講演 「農場から食卓までの食の安全システムとは」 地域における取組み 地域における取組み=民間の自主的取組 基調講演  「農場から食卓までの食の安全システムとは」 鹿児島大学教授 岡本嘉六 生産者 食肉センター 食品工場 家畜保健衛生所 食肉衛生検査所 輸送・流通業 報道機関 保健所 小売業・飲食店 安全性の 正しい知識 第三者認証機関 消費者 安全性の評価・格付け フードチェーンの全段階で、安全性向上の責任を公平に負担する社会システム

食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされています。  食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされています。  衛生対策の強化には、モノも労働も必要です。その経費を公正に負担する社会システムを皆で考え、作り上げましょう。  安全性についての正しい知識と理解を広げることが、何よりも大切です。 <その他の視聴覚資料> 1.HACCP手法研修用教材 「基礎編」 (日本獣医師会 ) 2. HACCP手法研修用教材 「採卵鶏編」 (日本獣医師会 ) 3. HACCP手法研修用教材 「ブロイラー編」 (日本獣医師会 )  「養豚編」、「肉牛編」、「乳牛編」 を現在作成中