確率と統計2008 平成20年12月4日(木) 東京工科大学 亀田弘之.

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Q 1. ある工場で直径1インチの軸棒を標準偏差 0.03 の 管理水準で製造している。 ある日の製造品の中から 10 本の標本をとって直径を測定 したところ、平均値が インチであった。品質管理上、 軸棒の直径が短すぎるだろうか、それとも、異常なしと判断 して、製造を続けてもよいであろうか。
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確率と統計2008 平成20年12月4日(木) 東京工科大学 亀田弘之

復習

はじめにデータありき 5 9 2 8 1 6 1 1 4 2 7 社会調査や実験の実施 により得られる

データを全体として眺めるとき,集団として何らかの性質を持っている. =>統計的性質 この性質(分布の様子)を例えば,(算術)平均・中央値・モードなどのいわゆる代表値や,分散・標準偏差・範囲(range)などで数値的に捕らえた. 定義や計算方法が重要. 統計ソフトの利用も考えよう.

統計ソフトウェア EXCEL:お手軽? R:フリーソフトウェア(お勧め?) SPSS:本格的なソフトウェア(有償) 参考情報 統計ソフトウェア EXCEL:お手軽? R:フリーソフトウェア(お勧め?) SPSS:本格的なソフトウェア(有償) SAS:本格的なソフトウェア(有償) GnunPlot・Maximaなども便利 (いろいろと学んでください.)

基本的な統計量 平均 中央値 モード 最大値・最小値 範囲 分散 標準偏差 など

平均 定義 : m =(x1 + x2 + ・・・+Xn)÷n 意味:データ群の中心 考え方:データ群の中心で,データ群     を代表させる.(代表値) 特徴:量 の最小値を与える点.   (基準点としてふさわしい)

中央値 定義:データを大きさの順に並べたときに 中央にくるデータ値. 意味:順序的観点から真ん中辺り. 定義:データを大きさの順に並べたときに    中央にくるデータ値. 意味:順序的観点から真ん中辺り. 考え方:順序的観点から中庸を捉えている.     真ん中辺りを代表値とする. 特徴:飛び離れ値に影響されない.    量    の最小値を与える点.

モード 定義:度数(出現回数)がもっとも 多いデータ値. 意味:多数派がデータ群を代表する. 考え方:度数の多いもの程重要. 定義:度数(出現回数)がもっとも    多いデータ値. 意味:多数派がデータ群を代表する. 考え方:度数の多いもの程重要. 特徴:飛び離れ値に影響されない.    代表値として素直な定義.

データの散らばりも大切 分散 標準偏差 範囲

範囲(レンジ) 定義:R = 最大値 ー 最小値 考え方:データの存在範囲 (すべてのデータはこの 範囲内にある) 考え方:データの存在範囲     (すべてのデータはこの           範囲内にある) 特徴:計算が簡単    (工場などで実用されている)

分散 定義: 考え方:「各データの平均mからのずれ」に着目して,その平方数の平均を求め,データ全体の散らばりを捉える. 特徴:数学的に取り扱いやすい.

標準偏差 定義:分散の平方根(√分散) 考え方:分散をもとに,データと同じ 次元の量にする. 考え方:分散をもとに,データと同じ     次元の量にする. 特徴:データに対して,足したり    引いたりすることができる.

以上で,得られたデータ群の特徴をとらえることができるようになった.

さて,…

知りたい対象(母集団) 母集団 4 3 1 5 1 6 7

標本 母集団 4 5 1 3 1 5 3 1 1 6 7 無作為抽出

標本 母集団 4 5 1 3 1 5 3 1 1 6 7 統計的分析

標本 母集団 4 5 1 3 1 5 3 1 1 6 7 統計的推論

抽出法 無作為抽出法: どのデータも等確率で抽出されるようなサンプリング法.どの単純事象も等確率で取り出される抽出法.Laplaceの確率の定義参照.高校で習った確率の定義でOK. 詳しく知りたい人は,社会調査法などの勉強をしてください.(データは適切に集めなければ,分析しても意味がない.サンプル数の決め方なども重要です.)

分析法 統計的推定 統計的検定  この授業では「モデルに基づく分析」を主に取り扱っているが,近年モデルに基づかない分析法も重要になっている.(例:データマイニングの分野)

統計的推定 点推定 区間推定 信頼区間 信頼限界  興味のある人は,教科書p.136~p.142を参照のこと.

統計的検定 この授業では,まず,これを学んで欲しいと思っています. (理由:とにかく役に立つから.     そして,なれないと結構     難しいから.)

仮説検定の考え方 前提: 方法論: 調査や実験によりある事実Eが得られた. この事実からあることを主張したい. (これを仮説という.) モデルを仮定する(仮説設定:帰無仮説H0) その仮説が正しいとして,事実Eの生起確率pを計算する. pの値が異常に小さければ,仮説H0を棄却する. (誤謬法の考え方)

検定の考え方の例 実験:サイコロを600回振ったら,1の目が180回出た(事実E). 主張したいこと:1の目が出やすい. 仮説の設定:どの目も等確率で出る. Eの生起確率pの計算: p≒0 判断:出易い. 計算方法と判断の基準の理解が重要

(重要)確率分布の相互関係図

例題(教科書p.163例1)  ある市役所ではこれまで数年間銘柄Aの電球を購入していたが,銘柄Bの電球の方が価格が安いのでBへの切り替えを考えている.銘柄Bのセールスマンは自社の製品が品質においてAの製品と同じであると主張している.数年間の経験によれば,製品Aの平均寿命は1180時間で,標準偏差は90時間であった.

製品Bのセールスマンの主張をテストするため,その銘柄の電球100個を正規販売店から購入して試験をした.この結果,m=1140,s=80が得られた.電球の品質の尺度として平均寿命時間を考えるとすれば,どう結論すべきか?

問題の整理 事実:製品Bのm=1140,s=80 製品Aのm=1180,s=90 知りたいこと:Bの方が劣っている. 仮説:AとBは品質的に同等. 確率の計算:Bのデータの生起確率pを,平均μ=1180,分散σ2=90の母集団からの抽出として計算する. 危険率(有意水準)αを設定する. Α=10%とする.

確率の計算をしてみよう

理論的根拠(1) 標本平均の平均mは母平均と等しい. 標本平均の分散σm2は母分散のn分の1倍.(nは標本の大きさ) つまり, E(m) = μ E(σm2)=σ2/n

理論的根拠(2) xが平均μ,分散σ2 の任意の分布に従うとき,大きさnの無作為標本に基づく標本平均mは,nが限りなく大きくなるとき,平均 μ,分散 σ2 /n の正規分布に近づく. 中心極限の定理 (統計学で1番重要な定理) 教科書p.130 定理2

計算 標本平均の分散: 90/√100 = 9 標準化: Z = (1140 – 1180) / 9 = -40/9 = -4.4 標準正規分布表(教科書p.295 表IV):  Zがー∞~-4.4の範囲の値をとる確率は,p≒0.

判断 確率p≒0 < 0.1 (10%) . おきにくい事が起きたのではなく,仮設が間違っていると考えて,仮設を捨てる. 最終結論:有意水準10%において,      銘柄BはAよりも劣っている.

コメント 確率の計算方法を理解するためには,数学の勉強が必要であるが,検定をすることが目的の場合,基本的考え方と手順をしっかりとマスターすればよい. 理論的なものは,必要に応じて,必要になったものだけを一生かけて勉強してください.

χ2検定 いろんな場面で使えて便利な検定法. (先ほどのサイコロの例を再び取り上げてみる.)

1の目が出る回数 他の目が出る回数 実測値A 180 420 600 理論値B 100 500 (A-B)2/B 64 64/5 合計 76.8 自由度φ= 2-1=1

結論:有意水準1%のもとで,1の目は出やすい. χ2 = 76.8 > χ02 = 6.6(有意水準1%) 結論:有意水準1%のもとで,1の目は出やすい. 手法は異なっても結論は同じ

2つの平均の差の検定 先の電球A,Bの品質の差の問題を再度取り上げる.これは2つの平均同士に差があるかどうかの検定と考えることもできる.これを「2つの平均の差の検定問題」という. 教科書p.172~p.176

定理 x1,x2がそれぞれ独立に平均μ1,μ2,標準偏差σ1,σ2の正規分布に従うとき,変数x1-x2 は 平均 μ1ーμ2, 標準偏差 σx1-x2 = √(σx12+ σx22) = √(σ1/n1 + σ2/n2) の正規分布に従う.

Zがー3.3以下か+3.3以上になる場合の正規分布曲線の面積を求めると,表VIより,p≒0 結論:AとBの平均の差は同じではない. 計算: 変数x1-x2は, 平均 = 0 標準偏差 = √(90*90/100 + 80*80/100) = 12 の正規分布に従う. Z=(1140-1180)/12=-40/12=-10/3=-3.3 Zがー3.3以下か+3.3以上になる場合の正規分布曲線の面積を求めると,表VIより,p≒0 結論:AとBの平均の差は同じではない.

コメント 「2つの平均の間に差があるのか?」はしばしば問題となるので,この検定方法は役に立つ. ただし今の場合,母分散σ1,σ2が既知である.これらが既知でない場合はもう一工夫が必要となる.(t検定を導入する必要がある.)

練習問題

Problem1 さいころを180回投げて、1の目の出る確率が28回以上、34階以下である確率を求めよ。

ヒント B(n,p)の二項分布は、nが十分大きければ、平均np, 分散np(1-p)の正規分布で近似できる。 N(μ, σ2)の正規分布は、標準化変換 Z = (X – μ)/σ により、標準正規分 N(0, 1)に変換される。

Problem2 1つのさいころを120回投げたら以下のようになった。このさいころは正しく作られているか? 有意水準5%で検定せよ。 目の数 1つのさいころを120回投げたら以下のようになった。このさいころは正しく作られているか? 有意水準5%で検定せよ。 目の数 1 2 3 4 5 6 合計 出現回数 19 31 17 23 11 120

Problem3 ある町で無作為に選ばれた618名に対して、とある伝染病の予防接種の効果を調べたら、以下のようになった。この予防接種は有効といえるか?有意水準5%で検定せよ。 罹病   健康  合計 予防接種した 予防接種せず  4   354  9   251  358  260    計 13   605  618