川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第2章(pp.12-22)

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川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第2章(pp.12-22) 微小振幅波の理論その1 川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第2章(pp.12-22)

波峰(wave crest):波形の最高水位 波谷(wave trough):波形の最低水位 波高(wave height)H:波峰と波谷間の鉛直距離 波長(wave length)L:相続く波峰間(波谷間の)水平距離 周期(wave period)T:海面上のある固定点を相続く波峰(波谷)が通過              に要する時間 波速(celerity)C:波形の進行速度(位相速度)、C=L/T 水深(wave depth)h:水底面と平均水面間の鉛直距離 波峰 波長L z x 平均水面(静水面) z=0 波高H 水深h 波谷 w 波の進行方向 u 水底面 z=-h

波の理論的取り扱い 波は水面が変形する. 波の振幅が小さい場合 波の振幅が大きい場合 微少振幅波(small amplitude wave) 有限振幅波(finite amplitude wave) 微少振幅波理論  線形波(エアリー波) 有限振幅波理論  ストークス波  クノイド波  ソリトン(孤立波)

流体運動の支配方程式 ・x-z平面で考える. ・非圧縮性流体 ・完全流体 連続の式 X方向運動方程式 (オイラーの式) 流体運動の非線形性 z方向運動方程式 (オイラーの式) 流体運動の非線形性 上記方程式系を適切な境界条件のもとで解けばよいが波動場解析では,次のようにして解析を行う.

波動場は非回転(渦度がない)流れとして取り扱い可能 速度ポテンシャルFが存在する. 渦度に代入してみる. 連続の式に代入してみる. ラプラスの式 波動場ではラプラスの式を適切な境界条件のもとで解くことになる.

水表面の境界条件 水表面は形状が自由に変化する(自由水表面とよばれるゆえん). z h x 静水面から水面までの距離をh(x,t)とする.hは場所xと時間tの関数である. 水表面の境界条件としては,水表面上で圧力が0であることを用いるが,水表面の位置hが未知量である. したがって,まず水表面がどこにあるのかを表す必要がある.

t+dt z t h(x, t+dt) h(x, t) x 水面上の流体粒子はつねに水面上に存在する 運動学的境界条件(kinematic boundary condition) 水面上の流体粒子はつねに水面上に存在する t+dt z t h(x, t+dt) uh:水表面におけるx方向流速 wh:水表面におけるz方向流速 h(x, t) x

初期に水表面に存在した流体粒子は時間が経過しても水表面に存在する. x,y二次元平面では

力学的境界条件(dynamic boundary condition) 流速は,ラプラスの式を解いて速度ポテンシャルが求まればそれを微分することで求まる.それでは圧力はどうすれば求まるのか? 水理学Ⅰで学習した拡張されたベルヌイの定理(圧力方程式)を用いる. :圧力関数 :質量力ポテンシャル

新たに書き直したFはラプラスの式を満足する. 水表面(z=h)では圧力0(ゲージ圧)なので ここで と書き改めると上式は 新たに書き直したFはラプラスの式を満足する. x,y二次元平面では

その他の境界条件 底面あるいは固体壁面: 底面あるいは固体壁面に対して垂直bな方向の流速成分は0である.

ラプラスの式 自由水面における境界条件 流体運動の非線形性 流体運動の非線形性 圧力方程式 流体運動の非線形性

微少振幅波理論 前ページの水表面の境界条件はz=h(水表面)で与えるべきものであるが, hそのものが未知量なので取り扱いは複雑・困難である. 上記境界条件をz=0の回りでテーラー展開する. この式はz=0(静水面)で成立する式である.

hを微少と仮定する.水面近傍の流速も微少となる. 運動学的条件は静水面(z=0)で以下のように与えられる. 微少振幅波理論による運動学的境界条件

上記境界条件をz=0の回りでテーラー展開する.

hを微少と仮定する.水面近傍の流速も微少となる.流速の積はさらに微少になる. 力学的境界条件は静水面(z=0)で以下のように与えられる. 微少振幅波理論による力学的境界条件

静水面に境界条件を与えるので,取り扱いが容易になる. 微少振幅波理論による波動場の支配方程式 ラプラスの式 z=hからz=0になったことに注意. 静水面に境界条件を与えるので,取り扱いが容易になる. 自由水面における境界条件 圧力方程式 流体運動の非線形性はなくなり,すべて線形の微分方程式となった. この方程式系から誘導される波は線形波と呼ばれる.

:波数 :角周波数 波動の基本解として上記の余弦波を考える.ラプラスの式および境界条件は線形なので,変数分離法を用いて速度ポテンシャルを求めることができる. 速度ポテンシャルをこのようにおいてラプラスの式に代入する. 類似の形

ラプラスの式から次の常微分方程式が得られる.これを与えられた境界条件の下で解く. 一般解 境界条件を満足するように係数A,Bを決める. 最終的に次式が得られる.

これらを使用して重要な関係式を以下のように得ることができる. これは角周波数と波数(周期と波長)の関係を表すものである. 水面の波は周期と波長はそれぞれ好き勝手にはとれないことを意味する. 上式を分散関係式(dispersion relation equation)という.

速度ポテンシャルは分散関係式を用いて次のように書き換えることができる.

波速 分散関係式を変形する. を代入して 波長が決まれば波速も決まる.

浅海波(h/L<1/2) 深海波(h/L≧1/2) 深海波では となる. 極浅海波(長波)(h/L<1/25) 長波では となる.

双曲線関数