Energy Partitioning During an Earthquake title Energy Partitioning During an Earthquake Hiroo Kanamori and Luis Rivera AGU monograph, 170, 3-13, 2006 担当: 桑野 修 地震研究所 D3
0. Overview エネルギー収支から地震の物理の理解 放射 非放射 断層の伸展 や と の割合 地震学のダイナミクスに影響する量。 や と の割合 地震学のダイナミクスに影響する量。 地震学的手法(+モデル)、地質学的手法から求められる。
1. INTRODUCTION 地震の物理の理解 ▽ 放射エネルギー KEY: エネルギー収支 ▽ 破壊エネルギー ● ポテンシャルエネルギー (主に弾性歪、重力) ▽ 熱エネルギー 固体の破壊の問題として考える Griffith エネルギーバランス Barenblatt 凝着力
1. INTRODUCTION 地震学 岩石力学 構造地質学 実際の地震では様々な物理過程が関与 @クラック端、周囲 ● ▽ 実際の地震では様々な物理過程が関与 @クラック端、周囲 ▽ 熱エネルギー、潜熱 溶融 : シュードタキライト(mm~cmの幅の領域) 間隙水圧上昇 ▽ 破壊エネルギー off-fault cracking 地震学 ガウジ 地震の物理の理解 岩石力学 構造地質学
2. BASIC RELATIONS Kostrov [1974] (eq. 1) 放射エネルギー ● 遠地でのエネルギーフラックスから求められる 放射エネルギーと等価。 Rudnicki and Freund [1981] ● 地震学において は 有限媒質、地球の3次元構造に起因する複雑な伝播の効果を補正して求められてきた。
2. BASIC RELATIONS Kostrov [1974] (eq. 1) ポテンシャルエネルギーの変化分 弾性 + 重力 放射エネルギー 表面エネルギー 言葉通りクラック先端での破壊エネルギーと考えると ほとんどの地震で無視できる。 は のオーダー 断層面上でなされた仕事
3. SIMPLE MODEL ここではeq. 1 の解釈を容易にするために 簡単なモデルを考える。 (eq. 1) 断層面上(面積 A) 応力、すべり量・・・一様 破壊表面エネルギー・・・ゼロ (eq. 2)
3. SIMPLE MODEL (eq. 2) ポテンシャルエネルギー変化分 (図のAODC) (eq. 3) Radiation Friction (図のABC) 図の+,-の部分
3. SIMPLE MODEL (eq. 3) Available Energy Radiation Friction ● In some simplified seismological practice… を放射エネルギーとすることが多いので Radiation Friction は無視されていることが多い。 (高周波の寄与の問題はあるものの) ● の見積もり ・遠地でのエネルギーフラックスや ・断層面上の応力、すべり この場合Radiation Frictionも含まれている。
4. SLIP-WEAKENING MODEL すべり弱化モデル ・ を求めるのは難しい。 ● ● ( より下の部分) ・ を求めるのは難しい。 ・散逸エネルギー (非放射エネルギー ) の内訳も明らかでない。 ● ( より下の部分) 解決するために単純化 ● すべり弱化モデル 応力はすべり量Dcでピーク値 から一定値 へ落ち、 その後滑っている間は のまま。
4. SLIP-WEAKENING MODEL ● 散逸エネルギーの分配を理解するため、 剪断応力が から に落ちる場合を考える。 ● 散逸エネルギーの分配を理解するため、 剪断応力が から に落ちる場合を考える。 ● もし、 クラックがクラック端での抵抗なしに伸展する場合・・・ ▽ 瞬間的に → ▽ 散逸エネルギーは (図のCBDO) →摩擦エネルギー と解釈できる。
4. SLIP-WEAKENING MODEL ・available energy ● ・余分に消費されるエネルギー ● 断層運動に関与するなど様々な物理過程が含まれる。 (マイクロクラック、摩擦溶融、間隙圧上昇 etc.) 通常の破壊力学の破壊エネルギーとは違う。 (Fracture EnergyではなくRupture Energy ) 破壊伸展(とくに破壊伝播速度)を支配する基本的な量。
5. THEORETICAL MODEL V.S. REAL FAULTS ● 理論的なモデル(eq.1)・・・一枚の面 ● 実際の地震・・・断層周囲の体積でも散逸のプロセス (理論的な取り扱いでは面上での仕事に含める) ● すべり弱化モデル 摩擦エネルギー 破壊のダイナミクスへの影響なし 破壊エネルギー 破壊伸展のダイナミクスに直接影響 断層運動に関与するなど様々な物理過程が含まれる。 (マイクロクラック、摩擦溶融、間隙圧上昇 etc.)
6. OVERSHOOT AND UNDERSHOOT すべり弱化モデルをほんの少し現実的に ● Overshoot Madriaga (1976) 円形クラック断層 ● Undershoot
7. FRICTIONAL ENERGY 地震学的データだけでは について ほとんど何も分からない。 ▽ 地震学的データだけでは について ほとんど何も分からない。 ←単純な地震学的手法では絶対応力レベル の情報が得られない。 ▽ Kanamori and Heaton [2000] すべり領域が非常に薄ければ(<10mm [Sibson, 2003] ) 大きな地震(Mw>7)での断層運動時の摩擦力は非常に小さいと考えられる。 ▽ Kano et al. [2006] 車龍埔断層(台湾集集地震で4mのすべり)の掘削孔で温度測定。 温度異常小 → 断層運動時の摩擦係数 ~0.08 非常に小さい。 ▽ Boullier. [2001] 野島断層のシュードタキライトは15km以深で形成。 溶融温度1200℃。 Mw=7の地震ですべり領域の厚み1cmとすると溶融に必要な剪断応力は10MPa。非常に小さい。 ● ダイナミックな摩擦レベルは低いことが示唆される。
8. ENERGY-MOMENT RATIO AND RAIATION EFFICIENCY ● モデルと地震のデータを結びつける巨視的パラメータ :地震モーメント :放射エネルギー Scaled Energy が含まれていないので 巨視的過程と微視的過程を 結び付けて考える目的では、より有用。 Radiation Efficiency :available エネルギー(使用可能)
8. ENERGY-MOMENT RATIO AND RAIATION EFFICIENCY ● Scaled Energy ▽ 断層面積とすべり量で規格化された放射エネルギーに比例 ▽ 大きな地震と小さな地震、異なるテクトニクス環境の地震の 動的特性の比較に有用なパラメーターとして用いられている。
8. ENERGY-MOMENT RATIO AND RAIATION EFFICIENCY ● Radiation Efficiency ▽ すべり弱化モデルを用いて 地震学的手法で見積もり可能 → 地震の動的特性の研究 (e.g. スケーリング) 地震学的手法では 見積もれない Seismic Efficiency 決定できない
8. ENERGY-MOMENT RATIO AND RAIATION EFFICIENCY ● を地震の物理に関連図ける際に注意すべきこと・・・ 何が仮定されているか? すべり弱化モデル OS/US は通常考慮されていない Fig.1の時点での簡略化。 時間、空間的に均一と仮定されたパラメーター
8. ENERGY-MOMENT RATIO AND RAIATION EFFICIENCY ● Overshoot / Undershoot を考慮した場合 Radiation Efficiency available Energy Overshoot Undershoot ▽ (eq. 9)
9. RUPTURE SPEED AND EFFICIENCY ● 単純なモデル(Fig.2) 仮定: クラック進展はクラック端近傍の応力集中による。 ● 断層の剪断におけるエネルギーの伝搬速度 ・・・弾性波速度 S波速度 レイリー波速度 (P波速度 ) ● 破壊伝播速度 ・・・上限あり もし摩擦力以外の抵抗が無ければ(Fig.2b) すべりによる応力変化が到達した瞬間にクラック端での破壊が進む。 実際の地震は不均質な構造、プロパティをもった媒質中で起こるのだが 仮定より、エネルギー散逸がない( )ので 破壊進展にエネルギーが必要な場合、 は遅くなる。 準静的な破壊の場合・・・・・・・・・・・・・・
9. RUPTURE SPEED AND EFFICIENCY 実際の地震は不均質な構造、プロパティをもった媒質中で起こるのだが ● エネルギーに基づく単純な考察から
10. FAULT-ZONE STRUCTURE AND SEISMOLOGICAL PARAMETERS ● 断層ガウジから総破壊エネルギーを見積もる ● 考えること インタクトな地殻構成岩石のブロック。 複数回の断層すべりによるガウジの生成。 ▽ ガウジ層 厚さ T 粒子半径 a 断層 長さ L , 幅 H (面積 S = HL) ▽
10. FAULT-ZONE STRUCTURE AND SEISMOLOGICAL PARAMETERS ▽ ガウジ層 厚さ T 粒子半径 a 断層 長さ L , 幅 H (面積 S = HL) 1粒子の体積 表面積 ▽ ▽ ガウジが充填された層の体積 V = TS ▽ この中の粒子数 ▽ 全粒子の総表面積 ▽ ● 総破壊エネルギー :粒子の形状を 補正する パラメータ λ=6.6 Willson et al. 2005
10. FAULT-ZONE STRUCTURE AND SEISMOLOGICAL PARAMETERS ● ● :経験的な定数 ● (eq. 14)
10. FAULT-ZONE STRUCTURE AND SEISMOLOGICAL PARAMETERS ● 断層の観察から巨視的な地震学的パラメータを見積もる。 ガウジからの破壊エネルギーの見積もり。 ●地質学 Willson et al. 2005 Chester et al. 2005 ●地震学 Venkataraman and Kanamori. 2004
10. FAULT-ZONE STRUCTURE AND SEISMOLOGICAL PARAMETERS 注意 多くのパラメータ (代表的な物性値、経験的な定数) 粒子径を一様と仮定 主観的判断に基づく断層の構造
10. FAULT-ZONE STRUCTURE AND SEISMOLOGICAL PARAMETERS を放射効率の見積もりに適用する前に考慮すべきこと 摩擦仕事によるガウジ生成の分を差し引く。 断層帯の岩石を壊すのに使われた仕事が入っていない。 (ダメージゾーンの分) ヒーリングが起きているので最小の見積もりでしかない。
11. CONCLUSION (eq. 15) ● 測定可能 ● 測定不可能 さらなる仮定なしにはどうにもならない。 遠地でのエネルギーフラックス or 断層面上での応力・変位 正確な測定は困難だが、意味は明確。 ● 測定不可能 さらなる仮定なしにはどうにもならない。
11. CONCLUSION 非放射エネルギーを2部分に分ける (eq. 16) ● 摩擦エネルギー ● 破壊エネルギー 断層面のすべり抵抗に対してなされる仕事 ● 破壊エネルギー 断層端で断層の進展に使われるエネルギー 含:塑性変形、クラック、潜熱(メルティング、間隙圧上昇)
11. CONCLUSION ● Available Energy (eq. 17) (eq. 18) ● ・・・地震学的データからに求めることが出来る。 ● の見積り
11. CONCLUSION ● 地震学的に求められた は とともに 様々なフィールド観察、測定から推定された値と比較。 断層ガウジ は とともに 様々なフィールド観察、測定から推定された値と比較。 断層ガウジ シュードタキライト 熱流量 温度変化 etc.
11. CONCLUSION ● 地震学的に取り扱いやすくするために単純化して考えた。 断層面上での変位、応力は単純に平均化して用いた。 ・・・実際には不均一 応力・すべりの関係を単純なすべり弱化モデルで考えた。 ・・・実際の応力は複雑に変化 断層面上のすべりで散逸するエネルギーと 断層の進展かかわるプロセスでの散逸の区別は 一般的にそう単純ではない。 モデルに依存。単純化の妥当性には議論の余地。
11. CONCLUSION Studies in progress / 現在進行中のホットな研究 放射エネルギーの見積もりの高精度化 ←3次元構造、減衰構造 断層面上での応力、変位のマッピング →より良い粗視化のスキーム 熱力学過程の研究 ・・・間隙圧上昇、摩擦溶融 → エネルギー収支への影響 断層ガウジの特性 ・・・生成、変形、ヒーリング コサイスミックにすべる領域の厚み →温度、地震時の摩擦 断層形状の複雑さ →エネルギー散逸の空間分布
11. CONCLUSION Studies in progress / 現在進行中のホットな研究 シュードタキライトの特性 地震環境下での固体の摩擦特性 ←高封圧、高すべり速度 実験室、制御下での破壊過程の研究 →破壊伝播速度、方向に与える断層の構造、幾何学的形状の効果 水で飽和した物質のエネルギー散逸 →ゆっくり地震、サイレント地震のエネルギー収支 エネルギー収支からみた地震の多様性 大きい地震 vs. 小さい地震 成熟した断層 vs. 若い断層 地殻内地震 vs. 沈み込み帯の地震 浅部の地震 vs. 深発地震 ゆっくり地震 vs. ふつうの地震
1. INTRODUCTION 11. CONCLUSION 地震学 地震の物理 岩石力学 構造地質学