これからの音楽教育に 求められるもの 義務教育課 秋山 哲夫
山梨県では 第47回 関東音楽教育研究会 山梨大会 大会主題 「音楽大好き!」 ~音楽のよさや美しさを 感じたり表現したりしよう~
音楽大好き! ポイント 関音研山梨大会の特徴は,児童生徒自らが音楽を感受する活動に ● すべての音楽活動を支え,生涯にわたって音楽を愛好する心情につながる, 最も大切にすべき心の働き ● 発達段階に応じて設定された目標実現に向けて,課題を主体的に解決しよう とすることなども,この「心の働き」に支えられてはじめて可能になること ● このような子供の姿は音楽教育に携わるすべての教師が目指す共通の願いで あり,今もこれからも続く重要な課題 ポイント 関音研山梨大会の特徴は,児童生徒自らが音楽を感受する活動に 重点を置いたことや授業のねらいの焦点化を図り,一時間の授業で 子供たちが「わかった」「できた」と学びを実感できる活動を多く 取り入れたこと。 このことを再確認していきたい。
基礎学力向上やまなしプラン “今”山梨の子供たちに 身に付けさせたい音楽の力 「音楽のよさや美しさを感じ取り, 自ら表現しようとする力 自ら表現しようとする力 ―音楽を楽しみ愛好する心情― 」 具体的なめあてとして・・・ 「音楽を聴く力」 「音楽を表現する力」 「音楽をあわせて楽しむことができる力」
「音楽を聴く力」 「音楽を表現する力」 「音楽をあわせて楽しむことができる力」 主体的・創造的な音楽活動を展開していくためには,音楽を構成している諸要素 を曲想と関連付けて感じ取る力が必要である。「音楽を聴く力」は様々な聴く活動 を通して,子供が身に付けていく主体的・創造的な音楽活動を展開していくために 必要な,音楽美を感受し享受できる力である。 「音楽を表現する力」 豊かな音楽表現は,子供が音楽的な表現の工夫を生かす様々な音楽学習を通して 身に付けることができる表現の技能に支えられている。「音楽を表現する力」は, 子供が自らイメージをもって,創意工夫をしながら表現できる力である。 「音楽をあわせて楽しむことができる力」 コンピュータで一人で音楽を楽しむことができる時代にこうした学び合いができ ることは,学習指導要領の目標及び内容にも直接的・間接的に示されている,学校 音楽の特性の一つと言える。音楽学習の中で合唱・合奏・アンサンブル活動などは, 互いの演奏を聴き合い,自分の考えや感想を出したり友達の意見を聞いたりするな ど,人とかかわり学びあう活動だと考える。「音楽をあわせて楽しむことができる 力」は音楽を通して 他のよさを認め,互いを尊重しあえる豊かな心である。
平成18年度の中巨摩大会は,関音研山梨大会の研究と 基礎学力向上やまなしプランをベースに研究をすすめてい ました。 ポイント 基礎学力向上やまなしプランは,教育課程研究委員会での検討を ベースとしながらも,県内のすべての学校から集まった意見を集約 してできたもの。 学習指導要領の実現を目指しながら,本県の実態にあわせて提案 した,音楽科における指導重点としての意味合いが深い。 平成18年度の中巨摩大会は,関音研山梨大会の研究と 基礎学力向上やまなしプランをベースに研究をすすめてい ました。 これに加えて, 平成19年度は中央教育審議会の答申や 学習指導要領の改訂を にらんだ大会となります。
中教審で審議されている音楽科の課題と改善の方向性(検討の叩き台) 平成18年7月28日(金)教育課程部会 芸術専門部会(第4回)議事録より 課題1 感性を高め,思考・判断し,表現する一連のプロセスを働かせる力,生涯にわたって音楽に親しみ,芸術文化のよさを味わったり,生活や社会に生かしたり豊かにしたりする態度の育成が求められている。 ◆改善の方向性 1 表現や鑑賞の活動を通して,感性を働かせて音や音楽を感じ取り,思いや 意図をもって表現したり味わって聴いたりする力を確実に育成し,豊かな情 操を一層養う。 2 多様な音楽及び音楽と生活とのかかわりに関心をもち,生涯にわたって音 楽文化に親しむ態度をはぐくむ。
課題2 音楽を表現する技能と鑑賞する能力の育成においては,児童生徒が,音や音楽を知覚し,感性を働かせて感受(感じ取り)することを重視することが求められている。 ◆改善の方向性 すべての音楽活動の支えとなる指導内容を[共通事項]として示し,感性を働かせて 音や音楽を感じ取り,思考・判断する力の育成を一層重視する。 ポイント 表現の技能,鑑賞の能力を身に付けさせるには,まず児童生徒が自ら音や音楽を 感じ取る活動を重視することが言われている。 児童生徒自身の感受やそれに基づく表現の工夫,学習指導要録に記載する音楽の 第2観点で見取ろうとする力がこれに当たる。
課題3 歌唱の活動に偏る傾向があり,表現の他の分野と鑑賞の学習が十分でない 状況が見受けられる。特に,創作と鑑賞の充実が求められている。 課題3 歌唱の活動に偏る傾向があり,表現の他の分野と鑑賞の学習が十分でない 状況が見受けられる。特に,創作と鑑賞の充実が求められている。 ◆改善の方向性 歌唱,器楽,創作,鑑賞ごとに指導内容を示すとともに,創作については, 学校・学年段階に応じ,音を音楽へと構成していく過程を大切にする観点から,「音楽づくり」(小学校),「作曲」(中学校・高等学校)の学習として示す。 ポイント これまで「表現」「鑑賞」の2領域に分けて示されていた内容が,内容まとまり ごとに整理されるということ。つまり歌唱と鑑賞だけではなく,器楽・創作を教育 課程内にこれまで以上に明確に位置付ける必要がでてくる。現時点ではわからない が,国語科の書写のように教育課程全体の○○%というような形で提示されること も考えられる。
課題4 我が国の音楽文化に愛着をもち,他国の文化を尊重できる態度等を養うため,長く歌い継がれ親しまれてきた日本のうたや,和楽器などの伝統音楽の学習の充実が求められている。 ◆改善の方向性 音によるコミュニケーションを通して,生活や社会と豊かにかかわる態度をはぐくみ, 生活を明るく潤いのあるものにする音楽の役割を実感させるような指導を重視しては どうか。 ポイント 音楽として独立して授業を行うだけでなく,生活科や総合的な学習の時間との 関連を図りながら,児童生徒の音に対する感覚を養うとともに,音や音楽から生 活や環境,文化について関心を高めさせるような方向にあると考える。
以上のことから考えて これからの音楽教育に求められることは 児童生徒が自ら音楽を感じ表現する力の育成 前述の中教審教育課程部会の叩き台でだされた「課題2」にあるように,音楽を 表現する技能と鑑賞する能力の育成においては,児童生徒が,音や音楽を知覚し, 感性を働かせて感受(感じ取り)することを重視することが求められている。 そのためには・・・ ◆児童生徒が音楽を形づくっているさまざまな要素(例えば, リズム,旋律,強弱,速度,音の重なりなど)の働きが生み 出す雰囲気やよさを感じ取ったり,音楽に関する記号や用語 を音楽活動と関連付けながら理解したりする場を,授業の中 に位置付けていくことが必要 子供が「音楽がわかった」「できるようになった」と実感できる授業の創造