有田焼のできるまで
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) やきものの種類 種類 土器 陶器 磁器 原料 土 土 石 焼く 温度 約800℃ 約1000℃~ 約1300℃ 約1300℃~ 約1400℃ やきものは原料や焼く温度によって、土器(どき)、陶器(とうき)、せっき、磁器に大きく分かれます。 特徴を比較すると、まず原料が石か土かが大きく違い、製品になった時の地の色に大きな違いがあります。 土器は釉薬(ゆうやく)を使わない縄文式土器、弥生式土器、かわらけなどを一般にいいます。1000度以下の低い温度で赤茶色に焼きます。 陶器は、粘土に釉薬をかけて1000度以上の高温で焼いたもので、唐津焼や萩焼、信楽焼などが産地です。 せっきは、陶器と磁器のちょうど中間的な硬さで1200度~1300度の高温で焼き、釉薬をかけなくても水漏れがしないほど焼き締めます。備前焼や常滑焼などが主な産地です。 磁器は1300度以上の高温で焼き、白くて硬く焼きしまっています。有田焼や九谷焼が主な産地です。 その他にも、最新の技術を利用したファインセラミックスと呼ばれるものもあります。 ファインセラミックスは、とくべつな原料(化学原料)を混ぜることにより、より高度な製品になります。熱に強い、電気を通す、電波を受け取るなどさまざまな機能をもった製品をつくりことができます。 特徴 水をすいやすく、たた くと鈍い音がする。 焼きかげんによっては、 水を通すこともあり、たた くとにごった音がする。 色が白く、水を通さず、たたく と固い澄んだ金属音がする。 製品例 縄文時代の器 唐津焼 有田焼
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 有田焼の歴史と特徴 有田焼は、だれが、いつごろから作り始めたのですか。 朝鮮人の陶工たち(やきものをつくる人)によって、1610年代に有田ではじめて作られたといわれています。 有田焼とはどんなやきものですか。 有田焼は原料の陶石を用いて作った、白くてかたいやきもの(磁器)をいいます。 1610年代以前は、日本では磁器を焼くことがだれもできませんでした。朝鮮人の陶工(やきものを作る人たち)が佐賀県有田町で原料の陶石を発見し、有田焼がはじめて作られたといわれます。陶工たちは当時の佐賀のおとの様からとても大事にされ、やきものの作り方を佐賀の人たちに教えてくれました。さいわいなことに有田の山には原料の陶石や、それをくだいて粉にする「うす」を動かす水や、窯をたくまきになる木がたくさんありました。さらに日本全国に出荷するための港は伊万里市にあり、そこからたくさんの有田焼が運び出されていきました。 有田焼の良さは、どんなところですか。 じょうぶで白く、また赤や黄や青のもようがきれいなところです。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 有田焼の歴史と特徴2 泉山磁石場(有田町) 有田の山には原料の陶石や、それをくだいて粉にする「うす」を動かす水や、窯をたくまきになる木がたくさんありました。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 有田焼の作り方 有田焼をつくり工程を原料の石を採掘する工程から、お店で販売されるまでの工程を紹介します。 有田焼の作り方の特徴は、作るまでの工程が多く、一つの製品ができるまでに多くの人たちが関係します。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 原材料 掘り出された陶石 有田焼の主な原料は陶石です。磁器をつくるのに適した、良質の泉山陶石(有田町)と天草陶石(熊本県天草地方)が掘り出されています。コシの強い、粘り気のある陶土を作ることができます。陶石は白いほど良質で等級があり、有名な陶芸家の方は最上級の陶石を利用されることもあります。 白い良質の陶石をさらに不純物を取るために表面を削ります。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 陶土工程 スタンパー すいひ フィルタープレス 真空土練機 陶石を加工してやきものを作る陶土を作る作業です。 水洗いした陶石を、クラッシャーという機械であらく砕き、スタンパーという機械で細かく砕いて粉末にします。 水槽へ移して不純物を取り除き上澄み液をつくります。 沈殿が終わった後の上澄み液をフィルタープレスという機械に入れ、左右から圧縮して四角い陶土の板ができます。 この四角い陶土板を真空土練機にかけ、粘り気のある良質の円柱状の陶土を作成します。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 成形工程 手ろくろ ローラマシン 機械ロクロ 型成形 成形には、手でつくるもの、機械を利用するもの、型をりようするものなど形状・デザイン、大量生産向けなどにより様々な方法があります。 手ろくろ 手ろくろは伝統的な技法で長い体験と技術が必要です。丸物とよばれる湯呑や茶碗、皿などを作るときの技法です。 ローラマシン・機械ロクロ 皿や碗物を大量に作るときに利用します。電動で回転する機械を利用して、短時間で同じものを作ることができます。 型成形 流し込み成形、押し型成形等があります。まず石膏の型を作り、陶土を泥状にしたもの(でいしょう)を流し込み作ります。多角形の皿やマグカップ、人形・動物などを作るときの技法です。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 乾燥仕上げ・素焼き 削り仕上げ 削り仕上げ 成形されたばかりの素地(きじ)を完全な製品にするために削り仕上げを行います。削りカンナと言われる刃先が直角に曲がっているものを使い、素地を仕上げていきます。表面、縁、高台(底の部分)などを削り仕上げを行い、素地をさらになめらかにするため、木綿布などで水拭きをして仕上げます。 素焼き 削り仕上げの後、彫りなどの装飾を施す場合もありますが、一般食器などはこのあと室内で十分に乾燥させたのち、素焼きします。窯も中に入れておよそ900度ぐらいの温度で焼き、かたく引きしめます。最近ではガス窯で焼くことが多く、焼成に約10時間、さましに約10時間で合計約20時間ほどかけて素焼きを行います。 素焼き
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 下絵付け・施釉 下絵付 ゴム判 下絵付 素焼きした素地に絵付けをしていきます。有田焼の特徴である呉須という青色の染料を使用します。まず細筆で線描きを行います。何枚も同じ絵を描いたりする場合は、型紙やゴム判を利用して下絵を写すこともあります。線描きで輪郭線を描き、線の内側をダミ筆と呼ばれる太い筆でムラなく塗ります。 施釉 釉薬(ゆうやく)は、やきものの表面にかける不透明な液体で、焼くと溶けてガラス質の透明な膜になり水を通さず、汚れにくくなります。釉薬を掛けると模様は見えなくなりますが、この後、焼くことにより鮮やかに発色します。 底の部分の釉薬は、焼く時に棚板とくっつかないように拭き取ります。 施釉
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 本焼成 窯積み 窯入れ 本焼成(ガス) 本焼成(薪) 本焼きは素焼きの時よりも高温で焼き1300度ぐらいまで温度を上げます。 一回にたくさんの製品を焼くために、何段も重ねて積み上げます。 このときに製品と棚板の下に敷くハマと呼ばれるものを使い、底がゆがんだり、棚板にくっつかないようにします。 素焼きのときと同じで、急激に温度を上げるのではなく、徐々に温度を上げていき、冷ますときも長い時間をかけます。 最初に窯の中の水分を無くすために600度くらいで焼き、次に空気をたくさん入れ900度ぐらいまで上げます。 次に空気を少なくして1300度まで上げます。これを攻め焚きといいます。これによりうわぐすりが溶けて、つややかな表面になり下絵付けた絵が表れます。 現在では、電子制御により温度調整と時間調整を行うことにより焼成での失敗が少なくなっています。 また、単窯で燃料に薪を使用して焼成するところもあります。火力を窯の上から出る炎の大きさで判断したりして、薪の量を調節します。 ここで製品になるものもあります。(下絵付だけの製品)
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 上絵付 上絵付 下絵付をして本焼き後に上絵を行います。上絵は下絵と異なりガラス質の表面に赤、黄、緑など多くの絵の具を使用して色をつけます。 白磁に上絵付けしたものを赤絵といい、下絵付のしたものの上に上絵付したものを染錦といい、有田焼の伝統的技法でつくり出された代表的なやきものです。 現在では、同じものをたくさん作る時には、転写技法を使うこともあります。転写は、絵の具を付けた転写紙を大量にコピーして作り、柄部分をはさみなどで切り抜き、貼り付けていきます。 上絵付が終わったらよく乾燥させて、再度低温(約800度)の窯で短時間で焼きます。また、金などの絵付をする場合は、この後に金色を付けて再度焼きます。 転写
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 梱包・流通 箱製造 箱詰め ワラ荷造り 流通・販売 上絵の窯焼きが終わったものは、検査を行い問題がないものは製品として出荷されます。出荷されるときには、専用の箱に詰められ販売店や小売店に出されます。 現在は、化粧箱として紙箱と木箱が主流で産地内で製造されることが多いようです。 昔は、大物の輸送梱包としてワラを使っている時期もありましたが、時代とともに無くなってきています。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 窯の移り変わり1 野焼き 縄文~弥生時代 薪で窯を焚いていた 穴窯 古墳~室町時代 薪で窯を焚いていた
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 窯の移り変わり2 CG のぼり窯 江戸~大正時代 薪で窯を焚いていた 単窯 昭和時代 石炭がもちいられるようになり、重油さらにガス に変わり、最近は電気窯もよく用いられる。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 窯の移り変わり(現代) ガス窯 トンネル窯 単窯 のぼり窯 現代でよく使われる窯は、ガス窯と電気窯です。本焼き(約1300度)の時は、ガス窯を利用して、上絵付後の窯には電気窯がよく使われます。 生産量が多い場合や、いくつかの窯元が共同で運営するとき、24時間稼動させるときはトンネル窯を使用します。 トンネル窯は、台車にのった製作中の焼き物がトンネル入り口より入り、数十時間後出口に出てくるころには製品になっています。 伝統的な技術を使って窯を焚いているいるところは、今でも薪(まき)を燃料として単窯で炊いているところもあります。 のぼり窯で有田焼を焼くところはほとんど少なくなりましたが、4袋や5袋の窯が連なり作品としてもおもしろいものができるようです。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 燃料の移り変わり 窯焚きに使う燃料は、年代とともに変化してきており、最近はガスが主流となっています。
産業協力授業プロジェクト(DAIARITA) 平成15年度 産業協力授業プロジェクト 制作・著作:大有田焼振興協同組合