Liverpool Care Pathway(LCP)日本語版の概要 東芝病院 緩和ケア科 茅根義和
クリティカル パス 定義:一定の疾患や疾病を持つ患者に対して、入院始動、患者へのオリエンテーション、検査、ケア処置、検査項目、退院指導などをスケジュール表のようにまとめてあるもの 歴史:1980年代後半、アメリカにおいてDRG/PPSが導入されたことに呼応してNew England Center for Medicineで看護教育者をしていたKaren Zanderが、もともと生産工程管理に使われていたクリティカルパスの手法を医療現場に導入した「Care Map」から始まっている。アメリカにおいてクリティカルパスは1)在院日数の短縮、2)医療の質の保証、3)業務の効率化を導入目的としているが、導入の歴史から一次的目的は1)の在院日数の短縮にある。 一般に医療の現場で使用されているクリティカルパスパスが、看取りのケアになじむのか?誰もがもつ疑問だと思われる。 クリティカルパスはスライドにある通り、「一定の疾患や疾病を持つ患者に対して、入院始動、患者へのオリエンテーション、検査、ケア処置、検査項目、退院指導などをスケジュール表のようにまとめてあるもの」と定義されます。歴史的にはアメリカで、もともと生産工程管理に使われていたクリティカルパスの手法を医療現場に導入した「Care Map」から始まっている。 アメリカにおいてクリティカルパスは1)在院日数の短縮、2)医療の質の保証、3)業務の効率化を導入目的としているが、導入の歴史から一次的目的は1)の在院日数の短縮にある。 日本でもクリティカルパスは広く医療の現場で導入されているが、一般に使われている「スケジュール表」が看取りのケアになじむとは思いにくいことも事実である。
Liverpool Care Pathway(LCP) Dr. John Ellershaw(Marie Curie Center Liverpool)により2003年に提唱された看取りのクリティカル・パスである チェック・リスト形式のパスで、患者を看取るまで、そして看取り後の治療とケアの手引きとなり、経過記録を支援することを目的として作られているIntegrated Care Pathwayである LCPを導入することによって看取りのケアの標準化が図られ、必要なケアがもれなく行われることができるようになる 今回紹介するLCP日本語版は、英国でDr. John Ellershaw(Marie Curie Center Liverpool)により2003年に提唱された看取りのクリティカル・パスであるLCPを基にしている。 これはチェック・リスト形式のパスで、患者を看取るまで、そして看取り後の治療とケアの手引きとなり、経過記録を支援することを目的として作られている LCPを導入することによって看取りのケアの標準化が図られ、必要なケアがもれなく行われることができるようになる
看取りのパス Palliative Care for Advanced Disease Liverpool Care Pathway 作成者:Beth Israel Medical Center Department of Pain Medicine and Palliative Care 参照website http://www.stoppain.org/services_staff/pcad1.html Liverpool Care Pathway 作成者:Royal Liverpool University および Marie Curie Center Liverpool 参照website http://www.mcpcil.org.uk/liverpool-care-pathway/index.htm 看取りのパスはLCPだけではない。 左はLCPのセクション1のオリジナルをのせている、右はBeth Israel Medical Centerが作成した看取りのパスのシートである。これもチェックリスト形式になっている。 この他にもいくつかの国で看取りのパスが作られ、運用されているが、歴史的にはLCPが一番はじめの看取りのパスであり、これをベースに作成されているパスが多い。
LCPの普及・教育プログラム 2004年にはThe Marie curie Palliative Care Institute LiverpoolにThe LCP Central Team UKが置かれ、LCPの普及、教育にあたっている。 The LCP Central Team UKにより10 Stepsの普及・教育プログラムが用意され、このプログラムによりLCPの導入から、施行、LCPに関する教育、地域における終末期ケアのResearchが組織的に行われている。 英国ではLCPはただそれぞれの臨床現場で使用されているだけでなく、スライドにあるように普及、教育の専門チームがおかれており、組織的に看取りのケアの支援と教育、リサーチが行われている。
英国におけるLCPの位置づけ NHS end-of-life care programme(2004年) LCPは、 primary careとcere homeにおける終末期ケアの重要なframeworkとして、位置づけられている。 その結果、英国ではLCPは全国的に急速に普及しており、2004年のNHSの終末期ケアプログラムにおいてもLCPは最後の48時間のケアを支援すると書かれていて、終末期ケアの重要なframeworkとして、位置づけられている。
Gold Standards Framework(GSF)とLCP Primary Care settingでの終末期ケアを総合的にサポートするframeworkである、Gold Standards Framework(GSF)では、Action planの7つのKey Taskの一つである臨死期のケアにおいてLCPを使用が推奨されている また、GSFでは特にCare Homesでの臨死期ケアにおいてLCPの使用が推奨されている また、英国のプライマリ・ケアでの終末期ケアを総合的にサポートするframeworkである、Gold Standards Framework(GSF)でも、臨死期ケアにおいてLCPの使用が推奨されている
LCPの概要 看取りへのケアにおける治療の手引きを示し、経過記録を支援することを目的としている。 チェックすべき項目は「目標」として記載されており、それぞれの目標を達成するために必要な介入も記載されている。 症状緩和のアルゴリズムと屯用指示が別に用意されており、具体的な症状緩和について使用できるようになっている。 LCPはクリティカルパスであるため、治療者は専門職としての判断に基づきパスが指示する以外の診療を自由に行うことができるが、パスと異なった診療行為についてはバリアンスとして記載する。 LCPの概要はスライドにある通りで 看取りへのケアにおける治療の手引きを示し、経過記録を支援することを目的としている。 チェックすべき項目は「目標」として記載されており、それぞれの目標を達成するために必要な介入も記載されている。 症状緩和のアルゴリズムと屯用指示が別に用意されており、具体的な症状緩和について使用できるようになっている。 LCPはクリティカルパスであるため、治療者は専門職としての判断に基づきパスが指示する以外の診療を自由に行うことができるが、パスと異なった診療行為についてはバリアンスとして記載する。
LCPの構成 パスの使用基準 Section 1 Section 2 Section 3 バリアンス分析シート 初期アセスメント Section 2 継続アセスメント Section 3 死亡診断と死後のケア バリアンス分析シート 症状緩和のアルゴリズムと屯用指示 痛み 悪心・嘔吐 喘鳴 呼吸困難 鎮静 LCPは「看取りのパス」であるため、通常のパスのように入院と同時に開始するわけには行かない。 いよいよ看取りが近づいてきたと判断される時期から開始される これはLCPの大きな特徴である。 そのため、LCPのはじめにはパスの開始を判断するための使用基準が示されている。 LCPが開始されるとまず、セクション1で開始時に必要なアセスメントを行う。 そしてLCPが開始されると毎日セクション2の継続アセスメントを繰り返し行っていく。 最終的に看取りとなった時にはセクション3の死亡診断と死後のケアの部分を確認して終了となる。 LCPはチェックリスト形式になっているが、あくまでもパスであるため、それぞれの項目において、パスの内容が達成されていない場合にはバリアンスとなる。 バリアンスとなった項目については必要な対処を行い、その結果を評価する必要がある。 そのためのバリアンス分析シートがパスの最期に準備されている。 看取りの時期に頻発する症状としては、痛み、悪心・嘔吐、喘鳴、呼吸困難、せん妄が挙げられる。これらに対してそれぞれの施設で準備されているマニュアル、手順に従って症状緩和をすることになるが、もし、具体的な症状緩和のマニュアルがない現場あれば巻末のアルゴリズムを屯用指示を使うことでどこでも終末期のケアが困らないような準備がされている
LCP日本語版使用上の注意点 LCPはがん末期の看取りのためだけのパスではありません。がん末期以外の疾患でも適用は可能です。 現在、英国ではLCP ver.12が運用されていますが、LCP日本語版はLCP ver.11を翻訳したものです。従いまして、The Marie curie Palliative Care Institute LiverpoolのホームページからオリジナルLCPの情報を得ようとすると、ver違いによる齟齬が生じますので、ご注意ください 最後にLCP日本語版を使用していただくにあたっての注意点を2点示します LCPはがん末期の看取りのためだけのパスではありません。がん末期以外の疾患でも適用は可能です。 ただし、開始時期の判断は慎重に行ってください。 現在、英国ではLCP ver.12が運用されていますが、LCP日本語版はLCP ver.11を翻訳したものです。従いまして、The Marie curie Palliative Care Institute LiverpoolのホームページからオリジナルLCPの情報を得ようとすると、ver違いによる齟齬が生じますので、ご注意ください
バリアンスについて LCP日本語版はクリティカルパスですので、バリアンスは集積して、解析をすることも重要です。 ご協力いただける施設は、事務局またはyoshikazu.chinone@toshiba.co.joまでご連絡ください。 また、LCP日本語版をより良いものにするためにはバリアンスを施設単位でなく、全体で集積・分析することも重要です この結果からLCP日本語版の改訂すべき点が明らかになることもありますので、是非ご協力をお願いします。