化学工学基礎 −後半の後半− 第1回目講義 (2009年7月10日) 1 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室

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質量 1kg 重力 ( 重さ )9.8N 〇重力加速度 地球の重力によって生じる加速度を重力加速度(通 常は,記号 g を用いて表す)と呼ぶ。高校物理のレベル では,一定の値とし, 9.8m/s 2 を用いる。中学校理科の レベルでは,重力加速度を直接的に問題にすることは ないが,それをおよそ 10m/s.
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Computational Fluid Dynamics(CFD) 岡永 博夫
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第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2014年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
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前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
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相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
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化学工学基礎 −後半の後半− 第1回目講義 (2009年7月10日) 1 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室 第1回目講義 (2009年7月10日) 化学工学基礎 −後半の後半− 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室 e-mail : thfutam@ipc.shizuoka.ac.jp http://cheme.eng.shizuoka.ac.jp/~tatemotolab/classese.htm

第2章 流 動 − 層流と乱流 − ・Reynolds(レイノルズ)数 [−] ・相当直径(De [m]) <前回の復習> 2 第2章 流 動     − 層流と乱流 − ・容器(円管)内における流体の動きを制御する ・そのために、容器(円管)内における流体  (気体や液体)の動きを解析する ・容器(円管)に流体を通すために必要な  考え方や原理を学ぶ(エネルギーについて考える) ・Reynolds(レイノルズ)数 [−] ・相当直径(De [m])

・Reynolds(レイノルド)数 (Re [−]) <前回の復習> 3 ・Reynolds(レイノルド)数 (Re [−]) Re = DUρ/μ 粘性(摩擦エネルギー)と運動エネルギーの比 層流では粘性、乱流では運動エネルギーが支配 2300 4000 D :管の直径 [m] 層流 過渡範囲 乱流 U :流体の平均速度[m s-1] ρ :流体の密度[kg m-3] μ :流体の粘度[Pa・s] = [kg・m/s2・1/m2・s] = [kg m-1 s-1] ・相当直径(De [m]) 流路の断面が円でないものを円とみて直径を算出する De [m] = 4 × (流路の断面積[m2]) / (流路の濡れ辺長 [m])

課題1.1 4 幅0.4 m、高さ0.3 mの長方形断面を持つダクトを293K (20℃)の水が0.24 m3/sで輸送されている時の流れは、層流か乱流かを相当直径を利用しRe数を求めた上で識別せよ。また、層流にするためには、体積流量を何倍にすればよいか。

5 課題1.2 内径Dの平滑円管内を密度ρ、粘度μの流体が平均速度Uで 流れている。管内壁面の摩擦応力τwを次元解析によって求め、 その結果からRe数とは、何を表しているのかを説明せよ。 なお、単位系はSIを用いるものとする。  (注)摩擦応力(管内壁単位面積にかかる摩擦力のこと)

第2章 流 動 − 円管内の流れ− ・速度分布(Hargen-Poiseuilleの定理) ・摩擦(Fanning) 6 第2章 流 動 − 円管内の流れ− ・容器(管)内における流体の動きを制御する ・そのために、容器(管)内における流体の動きを解析する ・速度分布(Hargen-Poiseuilleの定理) (ハーゲン・ポアズイユ) ・摩擦(Fanning)

円管内の流れ w = ρUS = ρQ = 一定(定常流) ρU1S1 = ρU2S2 = ρQ = 一定(定常流) 7 ・連続の式 時間が経過しても変化しない流れを定常流という。 単位時間に流れる質量(質量流量 w [kg/s]) ① ② U1 U2 S1 S2 w = ρUS = ρQ = 一定(定常流) ρ:密度 [kg/m3] U:速度 [m/s] S:断面積 [m2] Q:体積流量 [m3/s] 密度ρが一定の流体を非圧縮性流体と呼び、 以下の式が成立する。 ρU1S1 = ρU2S2 = ρQ = 一定(定常流)

円管内の層流速度分布 8 物体に力が作用すると流れが生じ、 流れを持続するために、力を作用し続けなければならない。    流れを持続するために、力を作用し続けなければならない。 円管内に流れる定常流(=非圧縮性)に、     どのような力が作用し、       速度がどのように分布しているのか・・・     を知る必要がある。 ある地点における速度を表現する式が必要になる。 考え方として、    Hargen-Poiseulle(ハーゲン・ポアズイユ)の法則を利用する

τW = ーμ(du/dr) ……..① と表現される。 9 管内における層流の流れイメージ図 流体の流れ  管 壁  Umax(最大速度) R(距離) 管壁から最も遠い場所(中心)が 最も早い速度となっている。 剪断力τW 剪断力τW(上の層と下の層の間に働く力)は、 流体の速度(u) に比例し 中心からの距離(管径(r))に半比例する τW = ーμ(du/dr) ……..① と表現される。 比例定数μ(この比例定数を粘度[Pa・s]と定義している)

流体(流速U[m/s])の中に、両端が閉じた筒が入っていて、 静止していると考える 10 半径 = R 平均速度 U [m/s] 半径 = r 長さL [m] 筒にかかる力のバランス(静止している)を考えると τW P1 P2 P1 × πr2 = P2 × πr2 + 2πrL × τW ΔP = (P1 - P2) [Pa] (ΔP:圧力損失) ΔP × πr2 = 2πrL × τW ……..② (押す力と摩擦力が釣り合っている)

τW = 11 ΔP × πr2 = 2πrL × τW rΔP 2L ……③ ②の から ① = ③より rΔP 2L du dr -μ ∫ ΔP 2Lμ du dr = - r ΔP 4Lμ = - r 2 u + C’ r = R のとき u = 0 (壁に密着するため) より C’ = - ΔP 4Lμ R2 u = ΔP 4Lμ (R2- r2) R2{1- r R } ( )2 から 層流における速度分布の式 …④

τW = 速度分布の式 12 u ( r)= ΔP 4Lμ R2{1- r R } ( )2 …④ U ( )2 …④ U (半径Rの円管の中心から距離rの地点での 流体の速度、管長L、粘度μ) Umax R r r = 0の時、最大速度umaxとなるので、 umax = ΔP 4Lμ R2 umax = 2U (層流においてumaxは平均速度Uの2倍)なので 4Lμ 8Lμ ΔP = umax から ΔP = U …⑤ R2 R2 ( ΔP:圧力損失) ③と⑤式から τW = 4 μU 8 μU D = (R :半径、D:直径) R

τW = Fanning の摩擦係数(f ): 乱流における摩擦応力の求め方 13 摩擦応力τW は、単位体積当たりのエネルギー         乱流における摩擦応力の求め方 13 円管壁上に生じる摩擦応力は、流体の運動エネルギーと比例関係にある (摩擦応力) = (運動エネルギー) × f と記述できる 摩擦応力τW は、単位体積当たりのエネルギー 運動エネルギー[J] = 1/2(kg・m2/s2)も単位体積当たりにすると、 K =1/2(kg・m2/s2) / m3 = 1/2(kg/m3)・(m2/s2) τW = 2 ρU2 ・f で表される(f : 摩擦係数) 層流の場合、 f = 16/Re 乱流の場合、 Moodyチャートなどを利用

14 摩擦係数(f)は粗度(ε(粗滑度) / D(管径))とReで決定される 粗度

15 講義名 日付 学年 学籍番号 氏 名 課題番号を記す事 丁寧に書く 鉛筆の使用可 講義に対するコメント (裏面でも可)

16 課題1.3 層流状態における流体の平均速度Uは最大速度umaxの 半分であることを示せ。