PESの有効性 交通班 石井 板倉 斎藤 佐藤
論文の要約 PESが拡大するための3つの障害 ①需要サイドの限界 ②供給サイドのインセンティブの認知不足 ③PESの概念がわかりにくい ①需要サイドの限界 ②供給サイドのインセンティブの認知不足 ③PESの概念がわかりにくい この論文では、供給サイドの問題を扱う
論文の内容 1. PESの定義 真のPESであるための条件 ①強制しない ②売買されたモノをはっきりさせる ③サービスの購入者が最低一人はいる ④提供者も最低一人はいる ⑤支払いはサービスの継続的な支給を条件とする 2 .PES効果の評価 ベースラインの設定の重要性 (a) static baseline (b) declining baseline (c) improving baseline
3. PESの効率と公平性 支払い(PES)に見合う見返り(保全)が見込めるものがベスト! ⇔公平性? 4 .経済的分析の必要性 PESを適用すべきかの決定、PESの価格交渉において、 サービスの供給レベル、機会費用などを考慮 ⇒戦略的にPESを適用する場所を決定できる。 競争的な価格設定が可能。 5 .PESの受納者 受納者を決める上で重要な点 ①value-added chain②不安定な土地保有権(tenure)③違法な資源利用に対する不当なインセンティブの恐れ
PESとは? 経済活動でカバーできない環境サービスの保全 森林のサービス =社会負担増加 コスト負担のアプローチ 林業 木材生産 ①公共部門 ②PPP(汚染者負担原則) ③BPP(受益者負担原則) 森林のサービス 林業 木材生産 水涵養 浸食防止 社会負担 保健 生物多様性 その他
受益者負担の『環境サービスに対する支払い』=PES登場 ①公的資金の限界 →充分な環境サービスの確保困難 ②環境サービス分野では所有権の問題が存在 →適用に限界 ③が環境サービスに対する支払の有効性が高い 受益者負担の『環境サービスに対する支払い』=PES登場
PESとは? PES 支払 供給者 (森林所有者等) 受益者 (住民、産業等) ・環境サービスの経済外部性を内部化させる ・自発的な支払い 経済財 PES 支払 供給者 (森林所有者等) 受益者 (住民、産業等) ・環境サービスの経済外部性を内部化させる ・自発的な支払い ・経済・社会状況、ルール等に依存
PESの例~日本の場合~ 住民 森林管理者 環境・サービス (受益者) (供給者) 森林管理税 補償 (直接、公共事業) 地方自治体 目的:森林環境の維持 洪水や山崩れの防止 日本では自治体の自主的な政策
PES Efficiency and Fairness アマゾンの仮説的な例 設定 10万㌦のPES資金(国際生物保護団体より) 3者のPES供給者のうち1者のみ選択可能 A 大規模農場=大豆栽培 高い収益性→急速に農地拡大 B 小規模牧場 収益性低い・ゆっくり拡大 C 遊牧民 自然と調和・環境被害をもたらさない *それぞれ環境保全の意思あり 登場人物
C 遊牧民 A 大豆農場 B 牧場 rapidly slowly Brazilian Amazon
PES Efficiency and Fairness 一見すると・・・ 公平性の観点から、C遊牧民が妥当? 環境を脅かしていないので保全効果もゼロ しかし 効率性の観点からは・・・ A大豆農場=環境被害大! 機会費用が高すぎる(10万㌦で保全できる面積が小さい=効率悪い) しかし 支払いに見合う保全(面積)が得られるB牧場がもっとも効率的!
PES Efficiency and Fairness この例から言えること ①PESにおいては・・・ 短期的利益と公平性を満たす必要がある →さらに公平性は保全の永続性につながる ②十分に環境に配慮した開発を行っている場合も、環境破壊に関わらないほど貧しい場合も、PESの供給者として適さない。 破壊を行っている方が補助金を受けられるのは不公平か? →破壊活動をしていなければ、過去の開発による保全費用もかからないので公平である。
問題提起① > ◆筆者の考えは・・・ し か し ◆長期的に見ると・・・ トータルでは破壊増⇒環境効率悪い! →短期的には効率◎ STOP! 牧場 大豆栽培 > →短期的には効率◎ し か し ◆長期的に見ると・・・ 大豆栽培 牧場 CONTINUE STOP! トータルでは破壊増⇒環境効率悪い!
問題提起の分析① 牧場主より環境負荷が大きいにもかかわらず大豆農家は農地の拡大をやめない →PESの導入は環境負荷の増大を止められない 環境損害 大豆農家の環境損害曲線 トータルの環境損害曲線 トータルな環境損害は増加! 牧場主の 環境損害曲線 時間 PESの導入時点 牧場主より環境負荷が大きいにもかかわらず大豆農家は農地の拡大をやめない →PESの導入は環境負荷の増大を止められない
問題提起② 「長期的にみると機会費用(OC)は変動する」ということが考慮されていない! 仮に・・・ ※森林による環境サービスは非弾力的 PES WTP 仮に・・・ 保全面積↓ OC↑ ※森林による環境サービスは非弾力的 ⇒PESの有効性は疑問
問題提起② PESが有効なケース EX.水資源の場合 ※価格弾力的 機会費用の変動による環境サービスの減少が少ない ⇒有効である可能性が高い PES WTP 環境サービス EX.水資源の場合 ※価格弾力的 機会費用の変動による環境サービスの減少が少ない ⇒有効である可能性が高い
Conclusion PESは 増加 破壊 森林保全に関してはPESは有効でない! 減少 保全 参考文献 『環境サービスに対する支払いメカニズムとしての森林環境税に関する研究』 ベスピャトコ・リュドミラ・ユリイブナ(名古屋大学大学院環境学研究科 博士)