心理学概論Ⅱ 第4講 2011年10月18日(火) 担当:岡田佳子
2.態度と態度変容
1-1.態度とは 態度:一般に周囲の様々な事物・事象、あるいは個人や集団に対して一定の行動を生じさせる働きをする心的傾向。 態度の構成成分 ①感情的成分:対象に対する好きー嫌い ②認知的成分:対象への良いー悪いの判断 (信念、意見とよばれることもある) ③行動的成分:対象への接近―回避の行動傾向 ⇒これらの3成分は、方向(正か負)と程度(強度)において一貫性をもつ。 ⇒すなわち、「好きな」対象は「良い」ものであり、「接近したい」と思う。
1-2.態度が変わるとき 1-2-1.承諾を得るための要請テクニック フット・イン・ザ・ドア・テクニック:段階的要請法 ドアにつま先を入れる、の意味 いったん小さな要請を承諾した人は、そのあとより大きな要請をも承諾する傾向がある ⇒セールスマンの営業などで応用されている「話だけでも聞いてみて下さい」
フット・イン・ザ・ドア実験 L.フリードマンとS.C.フレージャー(Freedman & Fraser,1966) フット・イン・ザ・ドア実験 L.フリードマンとS.C.フレージャー(Freedman & Fraser,1966) 「交通安全の市民会」の者と称し戸別訪問。「気をつけて運転しましょう」と書かれた看板(大きくて、字も下手)を玄関に1~2週間設置させて欲しいという大きな要請を行う。
結果 A:はじめから大きな要請をする群(統制群) いきなり看板設置の要請⇒承諾率16.7% いきなり看板設置の要請⇒承諾率16.7% B:事前に小さな承諾を得てから大きな要請をする群(実験群) 事前に(2週間前)に「交通安全地域協会」と称して「安全運転」と書かれた10センチ角のシールを車か窓に貼ってもらうという小さい要請⇒Yes⇒看板設置の要請⇒承諾率76%
なぜ? 最初の小さい要請に応じることで、自分はそのような要請に応じるという方向に態度が変化する。 二番目の要請を断ることは認知的不協和を起こすとも解釈可能。
フット・イン・ザ・ドア以外の方法 譲歩的要請法(door-in-the-face technique) 誰もが拒否するような大きな要請を出しておいて実際に拒否させ、次に目的とする(相対的に小さな)要請を出す方法。 例) 「家賃滞納、3か月分24万円今すぐ払って」 「今すぐそんなにたくさん無理です」 「じゃぁ、1か月分の8万だけでいいからすぐに払って」「わかりました」
フット・イン・ザ・ドア以外の方法 承諾先取り法(low-ball technique) 最初に非常によい条件をつけた上で選択させ、後に何らかの理由をつけてそのよい条件を取り除いてしまい、その上でもう一度選択させる ←キャッチボールの誘いが由来。低いボールしか投げないからやろうよ!と言って始まると高い球、速い球も結局ありになる。
フット・イン・ザ・ドア以外の方法 利益付加法(that’s-not-all(TNA) technique) 最初に商品と価格を呈示し、その後に「別の小さな商品をつける」「あなただけ安くする」などと言って有利な条件を付加する方法。 例)テレビショッピング ・・・お値段なんと9800円!さらに、いまならなんと!もう1つお付けします! (ってゆーか、2つで9800円じゃん、笑) ・・・パソコンがいまならんとプリンターとスキャナーもついて、17万円!分割金利・手数料は○○が負担!
1-2-2. 認知の一貫性による態度変容 (外部からの)説得以外にも自ら態度変容が起こる場合がある 態度変容の理論を2つ紹介します
バランス理論(balance theory) ハイダー(Heider,1958)が提唱した態度理論 認知者(P)と相手(O)と認知対象(X:第三者あるいは事物)の3者関係 ●「均衡状態(バランス)」:符号の積が+ ●「不均衡状態(インバランス)」:符号の積が- ⇒不快な感情を生む。不快さを低減してバランスのとれた状態へ戻ろうとする
こんな経験ありません? ちょっと気になってる男の子が「K1」とか「PRIDE」が大好き。よく楽しそうに話をしている。私は正直、野蛮な感じで好きじゃないし、殴り合いなんかなにが面白いのかわかんない。そんな時・・・ 1.「K1」なんて好きなの?それ聞いてちょっと引いた。彼への好意が薄れていく・・・ 2.そっかぁー、○○君が好きなら、今度テレビ見てみようかな。少し詳しく知りたいな→意外と「K1」の選手とかも、カッコいいなぁ。悪くないなぁ。
K1の例の場合(インバランス) 〔+〕×〔+〕×〔-〕= 〔-〕 + O X (K1) (気になる彼) - + P (自分)
+ - - K1の例の場合(バランスー1) O X P 〔-〕×〔+〕×〔-〕= 〔+〕 (K1) (気になる彼) 彼をそれほど好きではないと考える P (自分)
+ + + K1の例の場合(バランスー2) O X P 〔+〕×〔+〕×〔+〕= 〔+〕 (K1) (気になる彼) 自分もK1を好きになる (自分)
- - + K1の例の場合(バランス-3) O X P 〔+〕×〔-〕×〔-〕= 〔-〕 (K1) (気になる彼) (自分) 実は彼もそれほどK1を好きではないと考えたり、K1が嫌いになるように働きかける - O X (K1) (気になる彼) - + P (自分)
身近な人間関係の中から、バランス理論で理解できると思われる例を考えてみよう
認知的不協和理論 (cognitive dissonance theory) フェスティンガー(Festinger,1957) 矛盾する2つの認知(理解・知識)があると、「認知的不協和」が起こる。認知的不協和は不快感を起こすためこの不協和を解消したり、不協和が増大するような状況を回避したりするように動機づけられていると仮定した。
例)喫煙者 「喫煙は健康を害する」という認知 不協和⇒不快感 「自分はタバコを吸う」という認知 演習3 演習3 この場合、不協和を低減するにはどのような方法があると思いますか?
認知要素X 認知要素Y 不協和 認知要素Yと認知要素Zとの協和的な関係を重視する 認知要素X の変化 認知要素Y の変化 喫煙は肺ガンの原因になる 私はタバコを吸っている 不協和 認知要素Yと認知要素Zとの協和的な関係を重視する 認知要素X の変化 認知要素Y の変化 認知要素Yと協和的な認知要素Zを加える 例)喫煙が肺ガンの原因だというのはまだ証明されていない 喫煙をやめる 例)喫煙すると仕事がはかどる 例)多少健康に害があっても、仕事の方が重要である
第3講 社会心理学の基礎(2)
授業で取り上げる主な内容(予定) 1.社会的認知/態度と態度変化 (個人・対人レベル)1回 (個人・対人レベル)1回 ⇒人をどのように理解・判断するか?態度が変化するのはどのようなとき? 2.社会的影響(集団ベル)2回 ⇒集団や社会、多人数者の意見からどのような影響をうけるか? 3.他者への関わり(対人レベル)1回 ⇒人を助ける心理とは・近くに人がいることの影響・・・他? 4.集団と個人(集団レベル)1回 ⇒なぜ、集団間にステレオタイプや偏見、差別がうまれるのか?
社会的影響(social influence) わたしたちの信念、態度、行動は 他者の存在のあり方やコミュニケーションによって どのように影響をうけるのか?
なんでこんなことが起こるのでしょう? (サラリーマン編) ここ数年でクールビズが話題になったが、そもそも日本のサラリーマンはなんであんなに暑い真夏にありえないぐらい暑いスーツとネクタイをするんだろう?(かわいそうでなりません) (繰越している人は)有給休暇が年間40日も余っているのに、なんでみんな休みをとらないんだろう?(かわいそうでなりません)
なんでこんなことが起こるのでしょう? (大学生編) 体育会系サークルでは、イッキ飲みってなんでみんなやるんだろう? どうして授業中に一度私語が始まるとだんだんと大きくなってゆくのだろう・・・自分たちだけが話していることに気づくと静かになるのはなぜだろう?
今日はなぜこのような現象が起こるのかについて、社会心理学の立場から見ていきたいと思います。
1-1.集団規範(group norm) 集団内の成員に期待される標準的な考え方や行動様式。その集団において成員がとるべき行動に関する基本的な枠組みを提供する。 規則として成文化されたもの 例)校則や法律など(車内ではマナモードに設定し、通話はおやめ下さい) 暗黙のルールあるいは判断基準(こちらが多い) 例)常識や掟など(電車で化粧しない。会社勤めの人はスーツを着るものだ。会社にジーパンで行ってはいけない。夏でもスーツを着るものだ)
このような規範はどのような過程を通して作り出されるのだろう? 実験的に検討したのがシェリフ(1936)