全米数学教師協議会による 数学教育指針の中の確率・統計教育

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全米数学教師協議会による 数学教育指針の中の確率・統計教育 第1回 統計教育の方法論ワークショップ 2005. 3. 5 統計数理研究所 全米数学教師協議会による 数学教育指針の中の確率・統計教育 K-1からK-12,そしてK-16を通しての統計教育の接続性 宮崎大学教育文化学部 藤井 良宜

概要 日本の統計教育の問題点 全米数学教師協議会による数学教育のガイドライン 今後の課題 学習指導要領での統計分野の扱い 2つの調査結果から感じること 全米数学教師協議会による数学教育のガイドライン 今後の課題

学習指導要領における統計の扱い 学習指導要領の改訂 統計分野の削減や選択科目への移行 例:小学校6年での度数分布表の扱いが削除 統計は、数学だけでなく、いろいろな教科で取り扱うことができるはずである。 総合的な学習の時間の活用することで、統計教育ができるはずである。 学校教育の中で、明確な位置づけがなく、みんなが無責任な状態となっているのではないか

TIMSS 「発芽条件実験」の課題 花子さんは、トウモロコシを発芽させる実験をしました。 花子さんは、次のような結果を得ました。 TIMSS とは、第3回国際数学・理科教育調査(Third International Mathematics and Science Study) の略称。平成7(1995)年2月に調査が行われた。 花子さんは、トウモロコシを発芽させる実験をしました。 花子さんは、次のような結果を得ました。 ① 湿ったトウモロコシの種子は明るいところで、発芽した。 ② 湿ったトウモロコシの種子は暗いところで、発芽した。 花子さんの結果からどのようなことが言えますか。 正答:「湿ったトウモロコシの種が発芽するためには、光は必要ではない」 日本の中学生の正答率: 67.3% (正答率1位)

もう少し細かく見ると 正答の中での分類 ほぼ正答どおりの解答 (26.7%) その他の正しい説明 (40.7%) 19位 ほぼ正答どおりの解答  (26.7%) その他の正しい説明   (40.7%) 課題文に示された事実の関係づけや推論によって解答したのではなく、自分の記憶している内容をもとに解答した生徒の存在が指摘できる。 (大場、中山他、2004)

化学の勉強で、実験や観察をすることが好きですか? 19181 19181 19181 平成14年度高等学校教育課程実施状況調査より 調査人数  19、181人

平成14年度高等学校教育課程 実施状況調査 調査対象 抽出方法 国・公・私立高等学校(全日制課程)(中等教育学校の後期課程を含む。)の第3学年 抽出方法 1科目1問題冊子当たり, 全員が履修している(した)科目の場合で, 1万6千人の調査対象を得ることとして, 国立教育政策研究所において対象学級を無作為抽出し, 当該学級の調査対象科目履修者全員を対象とする。  

自分の考えで、予想をして 実験や観察をしていますか 知識や技能中心の教育で、データの分析の考え方の教育には、力が入れられてこなかったのではないか?

Principles and Standard for School Mathematics 2000年4月に全米数学教師協議会(National Council of Teachers of Mathematics)が発表したガイドライン 各州が設定するカリキュラムの枠組みや各学校区が定めるカリキュラムとその実行を評価するための基準あるいは拠り所となる 訳本 「新世紀をひらく学校数学」 筑波大学数学教育学研究室

概要 学校数学のためのビジョン 学校数学のための原則 学校数学のスタンダード:幼稚園入学前から第12学年まで 幼稚園入学前から第2学年のためのスタンダード 第3学年から第5学年のためのスタンダード 第6学年から第8学年のためのスタンダード 第9学年から第12学年のためのスタンダート ビジョンを達成するためにともに働く

10項目のスタンダード データ解析と確率 内容スタンダード 過程スタンダード 数と演算 代数 幾何 測定 問題解決 推論と証明 コミュニケーション つながり 表現

第12学年までに 次のことを身につける データを用いて扱いうる問いを定式化する。それに答えるために、関連するデータを収集し、整理し、表示する。 適切な統計的方法を選択し、使う。 データに基づく推測と予測を立て、評価する。 確率の基礎的概念を理解し、応用する。 Students need to know about data analysis and related aspects of probability in order to reason statistically—skills necessary to becoming informed citizens and intelligent consumers.

カリキュラムの特徴 すべての学年にカリキュラムを配置する 高等学校が修了するまでに、初等統計のある程度の知識を身につけるために、段階を追って概念や方法を洗練されたものにしていく。 生徒がデータを直接取り扱うことを強調している。 確率や統計を学ぶことによって、そのほかの数学の概念をその他の教科と結びつけたり、日常生活と結びつけたりすることができる。 1989年版で、指導教材の開発や教師のための教育プログラムなどのある程度の基礎作りはできている。

1の内容について(抜粋) 小学校2年まで 小学校3-5年 小学校6年ー中学校2年 中学校3年ー高校3年 身の回りのものに関して、問題を設定し、データを集める 小学校3-5年 問題に取り組むための調査を計画し、データの収集方法がデータの本質にどれくらい影響するかを考えること 小学校6年ー中学校2年 2つの母集団に共通の特徴や1つの母集団内での異なる特徴についての問題の定式化、調査の計画、データの収集を行う。 中学校3年ー高校3年 さまざまな調査の種類における相違や、そこからどのような妥当な推測が得られるかを理解すること

小学校2年生まで 生徒の服装のポケットの数を調べる。 自分のポケットの数を数える。 クラスの生徒の名簿を作り、いくつポケットがあるのかを尋ね、それぞれの名前の横に数を記す。 すべての生徒のポケットの数をグラフで表す。 ポケットの数とその人数をグラフとしてまとめる。

小学校3-5年 生徒自身あるいはその環境、学校や地域社会の論点、いろいろな教科で勉強している内容に対しての問いを考える。 データの収集方法 生徒自身でデータを集める 学校や市町村がすでに集めたデータを用いる 公的な調査などの現存する他のデータを用いる インターネットでアクセス可能なデータを集める 観察または測定を行うことが適当かどうかを調べる。 データが集められた方法を考慮し、評価する

小学校6年~中学校2年 2つの母集団の比較、1つの母集団内でのある特徴と別の因子の関係を調べる。 例 紙飛行機の飛行距離 例 紙飛行機の飛行距離 鼻先に紙クリップを1つつけた場合と、2つつけた場合で飛行距離にどう影響するか? 比較可能性を確保するために必要なことを考慮させる。   飛行機の投げ方の違い   風の状態              など

中学校3年~高校3年 次のような問いを考慮して、調査、観察研究や実験をデザインできることを目指す。 課題や問いは明確で、あいまいではないか? 母集団は何か? 標本はどのように選ばれるべきか? 標本は層別して選択されたほうが良いのか? 標本の大きさはどれくらいにすべきか? 調査におけるバイアスを理解し、無作為化などによるバイアスを減らす方法について理解しておくべきである。

主な統計的手法 小学校2年以前 小学校3年から5年 小学校6年から中学校2年 中学校3年から高校3年 具体物、絵グラフ 棒グラフ、折れ線グラフ、中央値 小学校6年から中学校2年 ヒストグラム、箱ひげ図、散布図、平均、四分位偏差、幹葉表現 中学校3年から高校3年 平行箱ひげ図、基本統計量、回帰分析

データに基づく推測と予測を立て、 評価する。 小学校2年まで クラスによって結果が違うことを認識させるなど、この概念の準備を行う。 小学校3-5年 データに基づいて議論をしたり、仮説を立てさらにデータを集めるなどの経験を積ませる。 データセットがより大きな母集団の標本であることを意識させる。 小学校6年ー中学校2年 観察ー>推測ー>予想ー>新しい問題の開発 頻度を意識させる  約○%は○○である。 多くのデータセットを図に表し、関係を探る。(散布図の活用を強調) 中学校3年ー高校3年 モデルによる予測を行い、その限界を認識する 標本誤差を意識する。 標本の数と統計量のばらつきの関係を認識する。

日本の現状との比較 統計的な手法についての知識については、ほとんど日本の教育でも行われている内容である。 しかし、データ解析の考え方については… 調査を計画したり、実際に実施してはいるが、そこで到達すべき目標を教師側がしっかり把握できているのか疑問である。 どのようなアドバイスをすると良いのか、などが十分に検討されているのか?

Cobb(2000) より 数字を使って 何かをすること ある現象を理解したり 判断を下すために データを見る 現実的なデータを分析する データを一般化するプロセスについて話し合う 道具としてのコンピュータの活用 教師と生徒がデータについて議論する

今後の課題 日本の学習内容に合わせた、統計教育の目標作りが必要である。 総合的な学習の時間の活用も含めて、教育方法の改善が必要である。 知識・技能から考え方へ

参考文献 大場、中山他(2004) TIMSS 理科の論述形式課題に対する回答に見る日本の児童・生徒の特徴(6)-実験計画と結論導出に関する課題ー 日本科学教育学会 年会論文集28、pp. 539-541 猿田(2001) 文章や図を用いて自然事象を説明する能力に関する分析的研究 国立教育政策研究所 p.54 Cobb, P. (2000) The importance of a situated view of learning to the design of research and instruction. Multiple Perspectives on Mathematics Teaching and Learning, Westport, CT: Ablex Publishing, pp.45-82