チェルノブイリ 2005/4/3
事故の概要 1986年4月26日(土)午前1時23分 ウクライナ社会主義共和国のキエフ州内の非軍事原子力発電所で発生 公式発表で死者31人
ソ連の原子力産業 ソビエトの宣伝によると、この国の原子力産業は「事故を起こさない」ものだった。しかも、事故は「起こり得ない」ものとされていた。 →防護服もガイガーカウンターも、事故発生時の行動規定も持たない
安全文化の欠如 きわめて重要な安全装置の取り外しが個々の作業者に任される 発電所の屋根に燃えやすいアスファルトが重ねてある 危険な施設で働くための適切な訓練を受けていたのは、地位の高い管理職だけ 『七つの巨大事故』ミッチェル 創芸出版
安全文化 IAEA国際原子力機関の事故調査で、 1.設計における多重防護といった安全認識の欠如 2.運転現場における規則違反 がチェルノブイリで見られた。 安全確保を最優先するという意識とその実践を個人と組織に徹底するという原子力安全文化 最大の教訓:安全文化の重要性
設計上の欠陥 低出力の状態では、出力が増加するとさらに核分裂が増加する特性がある 制御棒の挿入速度が遅く、緊急停止に関する設備に不備がある 気密耐圧型の格納容器が設置されていない 『原子力安全白書』平成12年版 原子力安全委員会編
RBMK型原発 制御系が複雑 格納容器がない 緊急対応マニュアルがない 停止システムの問題
事故情報 ソ連の公式発表は、チェルノブイリ原発で原子炉の一つが破損し、複数の被災者が出た、政府委員会が調査に乗り出す、という簡単なものだった UPI電が80人即死、2000人が病院へ運ばれる途中死亡と報じた タス通信は死者は2人と発表 日本の新聞は、死者2000人を重視
情報の犠牲 事故を起こした原子炉は爆発炎上したため、消火作業に大勢の消防士がかけつけた。彼らは、大量の放射線を浴び、次々と死亡していった。 周辺の住民の避難も事故の2日後 事故の様子を撮影した映画スタッフまで放射能の犠牲になる 『科学報道』柴田鉄治 朝日新聞社
当局が情報を流そうとしない 1.住民のパニックを避けようとした 2.加害産業に本来備わっている「自己防衛」メカニズム 3.責任の重大さ (公式に報告されるチェルノブイリの死亡者数がいつまでも31人である)
スリーマイル島原子力発電所 1979年4月28日午前4時発生 運転条件に違反して運転が継続 警報が判断を混乱させた(137の警報灯) 運転員の誤動作(→炉心の損傷) 人的要因が複雑にからむことにより、設計上の対策を超えて炉心が重大な損傷を受ける可能性があることを現実に示した
TMI原発事故の情報 メトロポリタン・エジソン社は、事故の12時間後最初の記者会見時に放射性微粒子が大気に漏れだしていることを認識していたらしいが、公表は控えた。 人々は騙されたのに気づいた後は、会社のどんな情報も受け入れなかった。 電力会社が情報を与えなかったので、原子力に反対する側の情報源から、メディアは情報を得た
JCO臨界事故 平成11年9月30日 茨城県東海村で、濃縮ウラン溶液の均一化作業中、臨界量以上のウラン溶液を注入したことにより、臨界状態が20時間にわたり継続した 作業者2名死亡
臨界事故の教訓 臨界事象に対する危機意識の欠如 「原子力の安全神話」、観念的な「絶対安全」の標語を捨て、 「リスクを基準とする安全の評価」へ意識を転回する
原子力安全委員会 内閣府に設置 原子力の安全確保について、内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告できる (内閣府に食品安全に関する新独立機関「食品安全委員会」(仮称)を設置する方針を固めた) 『読売新聞』2002.5.24
原子力安全委員会 新興する側 ↓ ↑ チェックする側 この両者を分離する 行政と司法の分離 執行役員とそれを監査する部門 ↓ ↑ チェックする側 この両者を分離する 行政と司法の分離 執行役員とそれを監査する部門 NTSBも行政からの独立に至った
原発建設 米国では30年ぶりに原発建設を再開する準備を進めている 中国やインドは、政策的に原発の新設を進める 中国は、2020年までに原発の設備能力を2003年末の6倍弱の3600万kWに引き上げる方針 フィンランドでは西欧では10年ぶりに原発の新設を決めた 日経2004.10.18