対応のある共分散分散行列の同時分析 ーー 震災ストレスデータの同時分析 ーー 対応のある共分散分散行列の同時分析 ーー 震災ストレスデータの同時分析 ーー 狩野+豊本+服部+山田+島井 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
因子構造の時間変化を捉える 多母集団の同時分析 経時データでの共分散行列の比較 独立サンプル(被験者間) 男女比較,国間比較,関東 vs 関西 有用なレシピがある 経時データでの共分散行列の比較 対応のあるサンプル(被験者内) 時点間比較 有用なレシピがない(多母集団の同時分析をしてはならない) 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
震災ストレスの経時変化 多変量縦断的データ 子供が受けたストレスを3年間5回にわたり測定 ストレスの経時変化を性別や学年などを共変量として分析したい 第一ステップとして尺度化(簡易スコア化)が必要 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
自分を知ろうチェックリスト 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
山田他(19 98 日本健康心理学会 予稿集. (1998) 146-147 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
因子構造の不変性 尺度化後にANOVA等を実行するためには,各時点での構造に変化がないことが前提 因子構造の時間に対する不変性を吟味 する必要 経時データでの共分散行列の比較 1回目と5回目の因子構造を 統計的に比較する方法を提示 本講演の目的 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
1回目と5回目とを併せた質問項目の 共分散行列 対応があるデータの共分散行列 1回目と5回目とを併せた質問項目の 共分散行列 1回目の項目 5回目の項目 1回目の項目 5回目の項目 Σ12は1回目と5回目の共分散 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
三相データ分析のアプローチ データの構造は三相である 三相データの分析モデル 項目×時点×被験者 加法モデル(検証的因子モデル or MTMM) 乗法モデル(直積モデル) PARAFAC(交互作用モデル) 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
加法モデル 時刻Tでのモデル 時刻T’でのモデル e1 e2 e3 e1’ e2’ e3’ X1 X2 X3 X1’ X2’ X3’ F1 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
乗法モデル 時刻Tでのモデル 時刻T’でのモデル e1 e2 e3 e1’ e2’ e3’ X1 X2 X3 X1’ X2’ X3’ F1×T1 F1×T2 F2×T1 F2×T2 X4 X5 X6 X4’ X5’ X6’ e4 e5 e6 e4’ e5’ e6’ 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
PARAFACモデル 時刻Tでのモデル 時刻T’でのモデル e1 e2 e3 e1’ e2’ e3’ X1 X2 X3 X1’ X2’ at21 bt21 ct21 ct11 bt11 at11 F1 F2 dt12 et12 ft12 dt22 et22 ft22 X4 X5 X6 X4’ X5’ X6’ e4 e5 e6 e4’ e5’ e6’ 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
これらのモデルの特徴 基本的に Σ12に仮定する構造の選定は難しい Σ12に飽和モデル(構造を設定しない)を 採用するのが一案 時刻T の項目に因子モデル 時刻T’の項目に因子モデル 因子負荷量の間に関連がある場合もある 時刻Tと時刻T’の項目の共分散Σ12の構造が モデルごとに異なる モデルが大きくなると適合度が悪くなる Σ12に仮定する構造の選定は難しい Σ12に飽和モデル(構造を設定しない)を 採用するのが一案 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
対応があるデータの同時分析 1回目の項目 5回目の項目 1回目の項目 5回目の項目 Σ12は1回目と5回目の共分散 Σ12に構造を設定しない 1回目の項目 5回目の項目 1回目の項目 5回目の項目 Σ12は1回目と5回目の共分散 Σ12に構造を設定しない 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
提案するモデル e1 e2 e3 e1’ e2’ e3’ X1 X2 X3 X1’ X2’ X3’ F1 F1’ F2 F2’ X4 X5 cov(e1,e1’)=* cov(e1,e2’)=* cov(e1,e3’)=* cov(e1,e4’)=* cov(e1,e5’)=* cov(e1,e6’)=* cov(e2,e1’)=* cov(e2,e2’)=* cov(e2,e3’)=* cov(e2,e4’)=* cov(e2,e5’)=* cov(e2,e6’)=* … cov(e6,e1’)=* cov(e6,e2’)=* cov(e6,e3’)=* cov(e6,e4’)=* cov(e6,e5’)=* cov(e6,e6’)=* 提案するモデル e1 e2 e3 e1’ e2’ e3’ X1 X2 X3 X1’ X2’ X3’ F1 F1’ F2 F2’ X4 X5 X6 X4’ X5’ X6’ e4 e5 e6 e4’ e5’ e6’ 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
震災ストレスデータ 今回扱うのは 1回目(被災から2ヵ月後)と5回目(3年後)の、不安、うつ、精神的混乱の3因子21項目 愛他性因子(Q18,Q23,Q24)は除いて分析 n=320 (5回とも回答した被験者) 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
同時分析 各時点で検証的因子分析モデルが適合するか 配置不変:パス(因子負荷)の位置が一致 測定不変:パス係数(因子負荷の値)が一致 配置不変:パス(因子負荷)の位置が一致 測定不変:パス係数(因子負荷の値)が一致 強因子不変:パス係数(因子負荷の値)と 因子間相関の値が一致 1行目「各時点で共通の因子分析モデルが適合するか」のほうがよい? 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
個別分析結果の比較 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
配置不変な モデル 配置不変でない 配置不変なモデルへ 小修正 それぞれの因子負荷が時点間で等しいという モデルからスタート 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
同時分析 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
「1回目+5回目」の同時分析 …測定不変について 「1回目+5回目」の同時分析 …測定不変について 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
時点間の制約の検定 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
モデル修正のまとめ 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
Wald検定 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
最終モデルの推定値 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
最終モデル 配置不変は成立しない 測定不変は成立しない 上記の因子負荷では,5回目の方がすべて 小さくなっている 配置不変は成立しない 測定不変は成立しない 上記の因子負荷では,5回目の方がすべて 小さくなっている 両時点での因子構造は非常に似ている 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
尺度化について -1 下位尺度「うつ」の構造は 一元性を示しており, この尺度に問題ない Q16は「うつ」に分類すべき かもしれない 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
尺度化について –2 これらの項目の構造は近い 不安尺度の妥当性はこの分析からはみえない 更なる分析が必要 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
対応のある共分散行列の 同時分析のまとめ -1 多母集団の同時分析を直接適用する のは誤り 時点間の相関を誤差相関により導入する 多母集団の同時分析のごとく,母数の 等値性を検討 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
対応のある共分散行列の 同時分析のまとめ –2 ここで提案したモデルをベースモデルとして,加法モデル・乗法モデル・PARAFACモデルの適切性を検討できる 因子平均を導入することで,時点間の平均差を評価できる 時点(条件)の違いを因子平均で記述できる 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
補足 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
自分を知ろうチェックリスト 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
等値制約をおく価値とおかない価値 -1 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
等値制約をおく価値とおかない価値 –2 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
尺度化について –2’ 下位尺度「不安」は,他の下位尺度との 分離がうまくいっていない 山田氏(大阪看護大学)によると Sample selection に問題 5回とも調査を受けた回答者を分析対象としている.彼らは被災の程度が比較的小さい 全サンプルを対象に分析できないか? 一般論として,日本人は,これらの概念の分離が うまくできていない 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
相関行列と共分散行列 多母集団の同時分析を行うとき,相関行列 (標準解)ではなく,共分散行列の分析を行い,非標準解をみる 相関行列の分析は,因子の影響の強さ (信頼性)を比較 共分散行列の分析は,因子の影響の大きさを 比較 標準化すると,等式制約を置いても,推定値が 等しくならない 多母集団の同時分析に対応した標準解の計算方法がある.しかし,ソフトでは出力しない 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
標準解と非標準解 非標準解 標準解 母集団1 母集団2 F1の影響 誤差 F1の影響 誤差 F1の大きさは同一 F1の強さは異なる 分散1 非標準解 標準解 母集団1 母集団2 分散1 F1の影響 誤差 F1の影響 誤差 F1の影響 誤差 F1の影響 誤差 F1の大きさは同一 F1の強さは異なる 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
平均値の調整 属性により、反応得点の平均点に差がある場合、それぞれの属性において平均が0になるように値を調整する方がよい 物理的にデータをいじる 二値独立変数の導入 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
個別分析から同時分析へ 配置不変は成立しない 配置不変が成立するようにモデルを小修正 一方にのみあるパスを他方にもひく 最終モデルに次のパスを加える 1回目: (Q2-うつ) 、(Q12-不安)、 (Q20(V19)-混乱) 5回目:(Q4-うつ) 、(Q9-うつ)、(Q11-うつ) (Q21(V20)-混乱) 「LM検定での」という表現は適切なのだろうか 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
解析の流れ(一般論) 因子分析を行い「不安・うつ・混乱・愛他」構造の確認・次元縮小 簡易尺度化を行い,各尺度ごとに経時 変化の分析を行う 各回ごとに因子分析(5回) 因子構造の変化がないか 簡易尺度化を行い,各尺度ごとに経時 変化の分析を行う 分散分析 潜在曲線分析 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月
流れ 個別分析(検証的因子分析) 配置不変となるようモデルを小修正 同時分析 LM検定、Wald検定 因子負荷は時間を通して等しいと制約した モデルからスタート 「配置不変を満たすモデル」という“節”をあえて作っているわけではない(個別分析の終わりに含んでいる)のですが、配置不変を満たすモデルが同時分析のスタートだよ、ということを示す意味で加えてみましたが・・・・。 日本行動計量学会:東京大学 平成12年10月