小出裕章公開講座・松本、第5回 2017年12月20日(水) 未来に対して果たすべき 私たちの責任 小出 裕章 1
原発はトイレのないマンション 原子力を利用しようとすると、ウラン鉱山から始まって様々な放射能のゴミを生む。また、原子炉を動かせば、核分裂生成物などの放射性核種を作ってしまう。でも、それを消す力を人類は持っていないし、その始末の方策を知らない。 2
私たちの世代は 膨大な核分裂生成物を作った 広島原爆に換算した 核分裂生成物生成量 発電量 [万発] [兆kWh] 累積発電量 累積核分裂生成物 生成量 当該年度に残存している量 セシウム137として減衰を補正 1966年 日本初の原発 稼働開始
中世の錬金術と現代の錬金術 中世のヨーロッパでは、錬金術が盛んに取り組まれた。 それは現代の化学のほとんどすべての基礎を作ったと言ってもいいほどの研究だった。 しかし、元素を変えることはできないとの結論になり、錬金術は敗れた。 しかし、ウラン235を核分裂させれば、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131など多種類の核分裂生成物が生まれる。ウラン238に中性子を当てれば、プルトニウム239ができるというように、現代では、錬金術ができることが分かっている。 原子力利用で生み出した核のゴミも、現代の錬金術を使えば、無毒化できる可能性が原理的にはある。
消滅処理、核変換処理は見通しが立たない! 米国は1942年に人類初の原子炉を作った。その時から、大量の放射性物質を人類が自ら作り出す時代に入った。それからすでに75年の歳月が流れた。 原理的にはできることが分かっている、現代の錬金術を使って核のゴミを無毒化しようとする研究もこれまでずっと続いてきた。 科学が進歩すれば、いつかはなんとかなると思い続けてきたが、いまだに無毒化できないし、75年研究を続けてきて出来ないということは、壁が猛烈に厚く高いことを示している。
高レベル廃物の隔離処分 地層処分しか残されていない 宇宙処分 海洋底処分 氷床処分 地層処分 技術的に難しい ロンドン条約 南極条約 6 6
会社という組織の長さ (2017年) 51年 66年 131年 300年 315年 7 日本で原子力発電が動き始めて(1966年)から 現在の9電力会社ができて(1951年)から 66年 日本初の電力会社(東京電灯)ができて(1886年)から 131年 低レベル放射性廃物のお守り (現在青森県六ヶ所村に埋め捨てにしている) 300年 忠臣蔵の討ち入り(1702年)から 315年 7 7 7 7
国家という組織の長さ (2017年) 149年 241年 2,677年 1,000,000年 8 明治維新(1868年)から アメリカ合州国建国(1776年)から 241年 邪馬台国(卑弥呼)から 約1,800年 神武天皇(?)即位から 2,677年 1,000,000年 高レベル放射性廃物のお守り (現在、埋め捨て場所すらない) 8 8 8 8
現在の科学は核のゴミ埋め棄ての安全も保証しない 無毒化できなければ、生命環境から隔離するしかないとして、宇宙処分、海洋底処分、氷床処分など様々な案が提案されてきた。しかし、技術的、社会的、政治的な理由でそれらすべては放棄された。 現在では、地層処分が唯一の方策だとして、日本ではすでに法律でも、そうすることが定められている。しかし、隔離を求められる時間の長さは10万年から100万年。 この時間の長さは、個人の時間スケールはもちろん、国家や社会の時間スケールすら超えている。世界一の地震国・日本にそんな長期にわたって科学的に安全を保証できる土地はない。 自分で始末できないごみを生む行為は為してはならない。私たちは今、未来に対する犯罪を犯している。
地球 地球 命が根付けた稀有の星 10
人類の進化 ??? 11
人類のエネルギー消費の歴史 厖大なエネルギーを 使い始めたのは三〇〇年前 産業革命 数百万年 百年 12
460m 美術館 あがた・講堂 13 13
0.03mm 刹那的歴史の時間の長さ 70cm 地球誕生、 46億年前:460m 初期ヒト族誕生、 700万年前: 地球誕生、 46億年前:460m 初期ヒト族誕生、 700万年前: 70cm ホモサピエンス誕生、20万年前: 2cm 産業革命、 300年前: ? 0.03mm 14 14
種の絶滅 15
ねずみ算 普通の方眼紙 対数方眼紙 16
すでに危うい日本の環境 太陽エネルギーの0・2%の部分は風・波・空気の対流等、いわゆる自然現象を引き起こすために使われている。 10倍 日本全土への太陽エネルギー入射量 10% 1% 0.2% エネルギー総供給量実績 17
日本人の寿命 日本人は何歳まで生きられたか? 18
世界の寿命 世界各国のエネルギー消費量と 平均寿命の関係 エネルギー浪費国家群 エネルギー 窮乏国家群 19
エネルギー消費の格差 世界平均
4人の子どもに 10個のクッキーを分けさせる 不公平な分け方をしているのは誰か?
22 事態はこれほど酷くはならなかったはずである。 もし誰かが何かを為したなら、あるいは為さなかったなら、 人間が種をまき、育てたものである。 飢餓は地平線の彼方から訪れた苦しみではない。 三留理男さん 22
不夜城 http://veimages.gsfc.nasa.gov/1438/earth_lights_lrg.jpg 23
しかし、太陽エネルギーにしても無制限に使える訳ではない。生命環境を破壊しないように慎重に使うしかないし、何よりも大切なことはエネルギーを使わずに幸せに生きられる社会を作ること。 再生不能エネルギー資源は、地球が四六億年の歴史をかけて蓄えてきた。 太陽は、そのすべてを合わせたものの一〇倍以上のエネルギーを毎年地球にくれている。 最後は太陽に縋るしかない! 1年毎に地球に到達する太陽エネルギー (5400) 世界の年間総エネルギー消費 究極埋蔵量 0.4 確認埋蔵量 石炭 オイルシェール タールサンド 天然ガス 石油 ウラン 310 24.7 20.6 18.0 7.4 22.3 8.6 10.2 3.3 再生不能エネルギー資源の埋蔵量 数字の単位は1×1021 J 上段が「究極埋蔵量」、下段が「確認埋蔵量」 24
少欲知足 地球は有限で、現在の地球の人類がすべて「工業文明諸国=エネルギー浪費国家」並みのエネルギーを使おうとすれば、地球の生態系は破壊される。 命が根付くことができたこの地球という稀有の星の生態系を維持しようと思うのであれば、エネルギーの浪費を抑える以外に道がない。 エネルギーは人間にとって大切である。「エネルギー窮乏国家」では、エネルギーを使えないがために、人々が死んでいく。 一方、「工業文明諸国=エネルギー浪費国家」が使っているエネルギーは命を支えるためではなく、享楽的生活を支えるために使われている。我々こそ、消費を抑える責任がある。 エネルギーを大量に使用せず、それでも、豊かに、健康に、快適に生きることができる社会を作ることこそ必要なことで、それを100年後までに実現しなければ、おそらく世界は破たんする。 25
終わります ありがとうございました 26