積層はりの減衰特性評価における 支持条件の影響について 中村 良太 (北海道工業大学大学院)
H.I.T. Intelligent Design LAB. 研究背景 繊維強化複合材料(FRP)は,多くの機械構造物に用いられている.しかし,減衰特性評価に関する研究はあまり見受けられない. 本研究室ではFRP積層構造物の減衰評価に関する研究を実施しているが,数値計算結果と実験結果が必ずしも一致しない場合がある. 本研究では,作製した試験片において自由振動実験を行い,試験片の支持条件が減衰振動に及ぼす影響を検討する. 本研究の背景としまして,繊維強化プラスチック(FRP)は高い比強度,比剛性を有しているため,近年多くの機械構造物に用いられています.このFRP積層構造物が固有振動数に及ぼす影響についての研究は報告されているものの,減衰特性に関する研究はあまり見受けられません. 本研究室では,これまでにFRPの減衰特性に関する研究を実施してきましたが,実験結果と数値計算の結果で必ずしも一致していません.さらに,これまでに作製された試験片には,見た目ですが確認できるなどの粗さが目立ち,実験データのばらつきも非常に大きいものでした. そこで本研究においては試験片の作製方法を再度検討し,より良い試験片を作製したうえで自由振動実験を行います.得られた結果を比較検討し,本実験における諸条件の影響を検証します. H.I.T. Intelligent Design LAB.
プリプレグシートを積層し 加熱することで硬化させる 振動波形から固有振動数 対数減衰率を算出する 研究手順 プリプレグシートを積層し 加熱することで硬化させる 積層はりを切り出して 試験片を作製する 片持ち支持し,自由振動実験を行う 振動波形から固有振動数 対数減衰率を算出する 支持条件の影響を検討する H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 試験片の作製(1) FRPプリプレグシート 三菱レーヨン製 (130℃キュア)CFUDプリプレグ [02/902]sym. 例. 0° 90° [02/902]sym. , [(0/90)2]sym. [902/02]sym. , [(90/0)2]sym. 積層形態 実験に用いる試験片の作製について,試験片の素となるFRPプリプレグシートですが,本実験においては三菱レーヨン製・(130℃キュア)CFUDプリプレグを使用し,その積層形態はこのように0°90°0°と,これの対称に6枚積層します. 次に積層した物をこのようにアルミ板等で上下から挟み,シャコ万力で四箇所を加圧します.このときの加圧トルクを本実験のパラメータの一つとしますので頭の隅に記憶しておいてください. H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 試験片の作製(2) 加圧トルク : 5Nm アルミ板 スペーサー シリコンゴム(2mm) 離型シート テフロンシート 積層プリプレグ 積層プリプレグの加圧方法ですが,これまでのものをJISの資料等を参考に改善しました.基本的な挟み方ですが,積層したプリプレグに離型シートを重ね,スペーサーで枠を囲いそれらをアルミ板で上下から挟むといった方法です. 今回改善した点につきましては,まずスペーサーの厚さを2mmから1mmにしました.スペーサーは積層プリプレグを過熱した際に流れ出る樹脂をせき止めるためのもので,JISの資料によると積層プリプレグより若干薄いものがよいとのことから変更しました. 次に,離型シートをクッキングシートからテフロンシートに変えました.クッキングシートを使用すると,仕上がりの表面にざらつきが見られるため,表面に凹凸の少ないテフロンシートを使うことにしました.また,スペーサーと離型シートの位置関係もJISの資料を参考にこのように変更しました. 以前は購入したプリプレグシートを常温で保管していましたが,今回はプリプレグシートの劣化を防ぐため,購入後すぐに20cm四方にカットして冷凍保存しました. H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 試験片の作製(3) 恒温槽 ISUZU製「こすもす」 Time Temperature 90℃×60min 130℃×90min 試料台 次に加圧した積層プリプレグを恒温槽の中に入れ,加熱して硬化させます.その際,恒温槽にはISUZU製の「こすもす」を用いて, 130℃で90分間加熱します.加熱後およそ24時間自然冷却により硬化させます. 次に硬化した積層板より20mm幅の積層はりを切り出して,これを試験片とします.なお積層板のカッティングにおいては道立工業試験場の施設を利用しました. H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 試験片の作製(4) 0.2m (北海道立工業試験場の施設を利用) 板片 GFRP CFRP アルミ なし H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 自由振動実験装置 データ収集装置 (サンプリング周期:10μs) 電源 試験片 レーザー変位計 (サンプリング周期:512μs) レーザーアンプユニット 締付トルク 固定端 (サンプリング周期:512ms) これが本実験に使用した自由振動実験装置です.まず試験片の両側を金属片で挟みシャコ万力で締付けます.その際の締付トルクは,先ほどの加圧トルクと同様に本実験でのパラメーターとしますので記憶しておいてください.そして細いてぐすにより試験片をはりの厚さほどに変形させます.それを初期変位としてライターでてぐすを焼き切り振動させます. レーザー変位計により試験片にレーザーをあてて振動を計測します.計測したデータはレーザーアンプユニット,データ収集装置を介してパソコンで読み取ることができます. (サンプリング周期:10ms) H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 自由振動実験 本実験における諸条件 試験片作製時の加圧トルク[Nm]: 5 支持部の締付けトルク[Nm]: 5,10,15,20,25,30 試験片の寸法[×10-3m]: 200×20 プリプレグシートの積層形態: [02/902]sym. , [(0/90)2]sym., [(90/0)2]sym. , [902/02]sym. 本実験における諸条件はこのように・・・ 試験片作製時の加圧トルクと試験片名の対応は・・・ H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 考察 固有振動数 対数減衰率 支持部の締付けトルクが に及ぼす影響 支持部に挟む材料が に及ぼす影響 プリプレグシートの積層形態が に 及ぼす影響 数値計算結果と実験結果の比較 固有振動数 対数減衰率 固有振動数 対数減衰率 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 実験結果[1/3] 支持部の締付けトルクの影響 固有振動数[Hz] 対数減衰率 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 実験結果[2/3] 支持部に挟む材料の影響 固有振動数[Hz] 対数減衰率 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 実験結果[3/3] プリプレグシートの積層形態の影響 固有振動数[Hz] 対数減衰率 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 数値結果と実験値の比較 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. ここまでの結論 支持部の締付けトルクは,固有振動数に比べて 対数減衰率に大きな影響を与える. 対数減衰率においては,支持部に挟む板片の 有無によって結果が大きく異なる. 板片の有無による対数減衰率への影響は, 積層形態の違いによって大きく異なる. 試験片を板片で挟むことによって,振動数の高い ものほど顕著に減衰が低下する. H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 今後について 計測精度 サンプリング周期 空気抵抗 データ分析方法 FFT解析 モード解析 有限要素解析 支持部の板片を含めた解析 H.I.T. Intelligent Design LAB.
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H.I.T. Intelligent Design LAB. 実験結果 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 数値計算結果と実験結果 平成13年度北海道工業大学修士課程修士論文より H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 実験データの処理 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 固有振動数の評価 H.I.T. Intelligent Design LAB.
H.I.T. Intelligent Design LAB. 対数減衰率の評価 X1 X2 対数減衰率:δ 2 1 ln X = d H.I.T. Intelligent Design LAB.