pp-wave上の共変的超弦の場 における低エネルギー作用

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pp-wave上の共変的超弦の場 における低エネルギー作用 お茶大 知崎 陽一 (立教大の矢彦沢氏との共同研究) 基研研究会『場の理論と弦理論』 2009.7.6.

『背景場のある共変的な超弦の場の理論について』 §1. イントロダクション 『背景場のある共変的な超弦の場の理論について』 背景場中の超弦の場 一般にさまざまな背景場がある場合、 共変的な超弦の場の理論に矛盾は無いか? 重力場、反対称テンソル場、ディラトン場、・・・ 通常、超弦の場は平坦な時空で用いられるが、 ブラックホール内部の理解やAdS/CFTの理解には、 背景場中の超弦の場の理解が重要である。 AdSでチェックできれば非常におもしろいが、非常に難しい。 まずは、単純なNS-NS pp-waveでチェックする。 背景場中の超弦の場の理論の第一歩となるだろう。

チェックの方法 ①以前の研究(NS-NS pp-wave上の超弦の第一量子化した一般解)を用いて、 共変的な超弦の場の作用を定義する。(低エネルギー部分に注目する) ②一方、超重力作用を背景のNS-NS pp-waveから2次摂動展開する。 ③具体的にこれら超弦の場の作用と超重力場の2次展開作用を比較し、 両者の一致を示す。 一致するか? NS-NS pp-wave上の超弦の場の作用 (NS-NSセクターの低エネルギー) NS-NS pp-wave上の超重力2次展開作用

§2 NS-NS pp-wave上の超弦の一般解のモードと低エネルギー状態 この背景場中の超弦の一般解 (その他の成分は略) 自由フェルミオン場 ツイストボソン場 ツイストフェルミオン場 すべて自由モードでだけで展開できるが、それらは時空のモードを表していない

モードの定義 モードの一例 このように複雑な相互作用を含んでいるが、低エネルギーの場合、 期待値をとると相互作用はほとんど消えて、次の座標依存性だけが出る。 モードに座標依存性が 登場することが重要!! (微分に注意が必要) モードは量子化されており、期待値は時空の計量(pp-wave)となる。

NS-NSセクターの低エネルギー状態 重力場、反対称テンソル場 “ディラトン”場 補助場 平坦時空の超弦の場と同様の構成だが、モードに座標の依存性を含んでいる。 また、モードを対称・反対称に組まず、場の対称・反対称で定義する。

§3. NS-NS pp-wave上の超弦の場の作用 簡単のため、弦の場の相互作用は考えないが、 状態やBRSTチャージは、背景場に依存している。 BRSTチャージは、NS-NS pp-wave上で厳密に量子化されている。 今、低エネルギーに注目すると次の項が効いてくる。 このような演算子的なアノマリーは最終的に消える 作用は、期待値をとるとモードの生成消滅の関係から残るものが決まっており、 ゴーストモードの計算を先に行うと、作用は次のようになる。 ただし、最終的に部分積分して同類項になるものは、あらかじめ、 まとめておくことにする。(全微分は落とす。)

補助場の運動方程式の解は青色部分で、補助場の運動方程式の解を代入すると 作用は次の形にまとめることができる。 ただし、次のようにおいておく ヴィラソロ演算子と超ヴィラソロ演算子についてみてみよう。

ヴィラソロ演算子、超ヴィラソロ演算子は次の形にできる これらの演算子が場やモードにかかったときの振る舞いが重要となる。 特にモードの座標依存性や        との関係、最終的な期待値の計算が重要。

計算のポイント(重要な例) ヴィラソロ演算子の中の2階微分の所 微分はモードに対して1回ずつかかる。 このため、作用に重力場等の2階微分以外に1階微分や微分の無いものが登場する。 (背景場のクリストッフェル記号や共変微分と関係する) 超ヴィラソロ演算子の中の一階微分も同様

モードの微分 右モードも同様 (符号程度異なる) さらに        との交換関係も重要 についての交換関係は同様である。ただし右モードのときは符号が変わる 期待値は次式で計算する

ヴィラソロ部分 超ヴィラソロ部分 も同様 それぞれの期待値を計算した後で、場    の対称・反対称に注目して、作用を重力場と反対称テンソル    と相互作用に分解する。 (次ページに計算の一例を示す)    

計算の一例 すべての項が[反対称]  ( は同様) (対称) [反対称] 重力場と反対称テンソルでは登場する項が異なる

のみの部分 黒はヴィラソロからの寄与、赤は、超ヴィラソロ からの寄与 青は両方の合計からの寄与 ただし、この時点では、まだ重力場のトレース項は登場しないが あとでディラトンの置き換えから登場する。 これについては後で説明する

のみの部分 黒はヴィラソロからの寄与、赤は、超ヴィラソロ からの寄与 青は両方の合計からの寄与 相互作用部分 (2階微分のところは逆符号で自然に消える)

“ディラトン”を含む部分 ディラトン のうち   をゲージ変換の自由度を使って消去する すべての場のゲージ変換については現在チェック中だが、 少なくともディラトンについてのゲージ変換は確認した。 作用は、超ヴィラソロの寄与だけから来る ここで、次の置き換えをすると重力場のトレース項が登場する

§4. 超重力作用の2次摂動展開(NS-NS部分)との比較 この作用にNS-NS pp-waveの背景場を代入し、共変微分を計算して すべて成分表示したものと、超弦の場の低エネルギー作用は厳密に一致した。

まとめ “低エネルギー”の超弦の場の作用と2次摂動展開した超重力場の作用は、NS-NS pp-wave上で厳密に一致することを確かめた。 背景場中の超弦の一般解による、第一量子化の方法をもとにして、超弦の共変的な場の理論の構成ができる。