重力崩壊型超新星における 磁気回転不安定(MRI)

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重力崩壊型超新星における 磁気回転不安定(MRI) 澤井 秀朋 東京理科大学  共同研究者 山田 章一  (早稲田大学) 鈴木 英之  (東京理科大学) 第25回理論懇シンポジウム 2012年12月24日

1.導入 磁気駆動超新星 Velocity direction → 過去10年間よく研究されてきた. & Density cm Velocity direction & Density 磁気駆動超新星 → 過去10年間よく研究されてきた. ✓ 強磁場と高速回転の組み合わせ  により、磁気力が爆発を助ける.   (Symbalisity 84, Yamada & Sawai 04)   圧縮と作動回転による磁場の増幅.    Egrv  Erot  Emag  Ekin ✔ 必要な磁場と回転    Bin ~ 1013 G BPNS~ 1015 G  (通常のパルサー: BPNS~ 1012 G )    Pin ~ 1 s PPNS~ 1 ms cm B-field direction & Pm/P

✓化石起源仮説 Ferrario & Wickramasinghe 05 :マグネター強磁場は主系列時代の化石. Zhang et al. (2000) マグネター磁場の由来は謎 ✓化石起源仮説 Ferrario & Wickramasinghe 05   :マグネター強磁場は主系列時代の化石.   崩壊前のコアはすでに強磁束を持つ.   - これまでの磁気超新星の数値計算では    これを仮定.   - 観測:マグネター級の磁束を持つ可能性の    ある主系列星                 O star: θOrion C, HD191612     B star: ξCMa, V2052 Oph, ωOri, ζ Cas ✓Convection, 磁気回転不安定(MRI) Thompson & Duncan 93, Akiyama+ 03   :マグネター強磁場はコア崩壊後に増幅されてできたもの.   - このシナリオに基づいた数値計算はほとんど例がない.      MRI: Obergaulinger+ 09, Masada+ 12 Convection: Obergaulinger+ 11

先行研究:MRIによる弱磁場の増幅 Obergaulinger+09, Masada+12 : 2D, 3D Local Simulation L ~ km, Δx ~ 1-10 m BPNS,0~ 1012 -1013 G, ρ ~ 1012 -1013 g/cc Local Simulation ✔長所  - 解像度を稼げる.    3Dの計算も可能. ✔問題点  -適切なBackground を用意するのが難しい.  -グローバルなダイナミクスを調べられない. グローバルな数値計算は今のところ例がない.

今回の研究 重力崩壊型超新星における弱磁場(sub-magnetar class)からの                MRIについて初めてのGlobal simulationを行う. ✔Motivation 弱磁場・高速回転のコアの崩壊において磁場の進化や役割を調べる.   - MRIは起こるか?   - Magnetar-classの磁場はできるか?   - 増幅された磁場はダイナミクスに効くか?

2. 計算方法とモデル ◆MRI数値計算に必要な解像度 ◆計算領域 PNSの外側の一部を計算領域に取る.    50 < (r / km) < 500 空間2次元軸対称・赤道面対称 ◆初期条件と境界条件 半径4000kmのコアの崩壊を解像度の粗い 計算(basic run)でバウンス後100ms程度追う. ✓バウンス後5msのデータをMRI 計算領域にマッピング. ✓各時刻におけるbasic runのデータを境界の情報に用いる. 計算領域 re=500km rs=50km Basic runのデータ から

◆数値コードと方程式 2D-resistive MHD code (Yamazakura) High resolution central scheme (Kurganov & Tadmor 2000) 時間3次、空間2次精度 Constraint Transport scheme (divB=0の保証) - Shen の状態方程式 Ye: 密度の関数 (Liebendorfer 05) ニュートリノの効果は取り入れない. 基研のSR16000で最大2048並列計算 球対称重力

✓Progenitor: 15 Msun (Woosley ‘95) ✓磁場: Dipole-like ◆計算モデル ✓Progenitor: 15 Msun (Woosley ‘95) ✓磁場: Dipole-like Bc,in = 1.0×1011 G  B(ρ=1011g/cc) = 9.0×1012 G (Em/W)in =5×10-5 % ✓回転: 高速回転   Ω0,in = 3.9 rad/s (T/W)in = 0.5 % ✓空間解像度 ( Δrmin , Nr×Nθ)   Δrmin = 13 m (8900×6400) Δrmin = 25 m (4700×3200) Δrmin = 50 m (2500×1600) r0=1000 km ゆるい差動回転 Δrmin = 100 m (1200× 800) Δrmin = 200 m ( 600× 400)

3. 結果 Δrmin = 25 m ポロイダル磁場の強度分布 log[G] z cm

3. 結果 Δrmin = 25 m ポロイダル磁場の強度分布 log[G] z cm

ポロイダル磁場エネルギーの時間進化 Δrmin=13 m 25 m B ∝ 50 m 100 m 200 m BG: ~700 m

Δrmin = 13 m 線形理論の 最大成長時間スケール 最大成長波長を     覆うグリッド数 t = 4 ms Log[s]

増幅された磁場は、局所的にはダイナミクスに効く程度の強さを持つ. ◆磁場のダイナミクスへの影響 Δrmin = 13 m 磁気エネルギー飽和後 (71 ms) ポロイダル磁場の強度分布 磁気圧と物質圧の比 log[G] log[pm/p] 増幅された磁場は、局所的にはダイナミクスに効く程度の強さを持つ.

◆Local simulation との比較 指数関数的増幅期 Global simulation 2D (This work) Local simulation 2D (Obergaulinger+09) t = 11 ms log[G] Δrmin = 13 m

◆Local simulation との比較 Local simulation 2D (Obergaulinger+09) Global simulation 2D (This work)

4. まとめ 弱磁場を持ち、高速回転するコアの崩壊後のダイナミクスを2D-axisymmetirc MHD simulationで追った.  ✓ Sub-magnetar class ( BPNS~10^13 G )の磁場からのMRIを対象とした    初めてのglobal simulation.  ✓ 磁場はMRIにより指数関数的に増幅され、マグネター級の磁場がつくら    れる.  ✓ 増幅された磁場は、局所的にはダイナミクスに効く. ✓ Local simulation で得られていたものとはMRIの振る舞いが異なる. 今後  ✓ 他のパラメタ(磁場・回転)での計算.  ✓ 境界の位置をより内側に取った計算.  ✓ 非軸対称計算(3D-simulation).  ✓ 対流による磁場増幅の計算.

Δrmin = 13 m ポロイダル磁場の強度分布 初期 (1 ms) 磁気エネルギー飽和後 (71 ms) log[G] log[G] マグネター級の磁場がつくられた.

増幅された磁場は、局所的にはダイナミクスに効く程度の強さを持つ. ◆磁場のダイナミクスへの影響 Δrmin = 13 m 磁気圧と物質圧の比 初期 (2 ms) 磁気エネルギー飽和後 (71 ms) log[pm/p] log[pm/p] 増幅された磁場は、局所的にはダイナミクスに効く程度の強さを持つ.