新学習指導要領に対応した 子どもの学びを高める授業づくり 新学習指導要領に対応した 子どもの学びを高める授業づくり 　　中学校理科 子どもの学びを高めるために、日々の授業をどのようにつくっていけばいいのか、ポイントを説明する。

資質・能力を育成できたかを適切に評価するための手立てを準備する。 授業づくりのステップ １ 育成すべき資質・能力を明確にする。 ・「何ができるようになるか」を意識した指導が求められ、活動を行うねらいやゴールイメージを明確にする。 ・「何ができるようになったか」を適切に把握するための評価の在り方が重要になる。（ねらいとまとめの整合性） ２ 資質・能力を育成できたかを適切に評価するための手立てを準備する。 ３ 多様な考えを引き出し、解決したいという意欲を高めるような課題を設定する。 ・子供たちが能動的に学びに向かうような課題設定が重要になる。解決に向けた多様な見方や考え方が生まれるような課題、他者との学び合いによって解決できそうな課題を設定する。　 ４ 学習する児童生徒の具体的な学びの姿を考え、多様な意見を認め、お互いに共有しながら解決に導くような場を設定する。 ・子供たちが主体となり、多様な表現を通じて対話し、それによって思考を広げ深めていくような授業への質的転換を図る。適切な学習形態を取り入れ、学び合いを活性化させる。 子どもの学びを高める授業づくりのステップについて、１～５の順番で授業づくりを行うことを説明する。 ※　１と２を１つにして、大きく４段階となる。 １、２…本時の目標を設定し、そのゴールイメージを明確にする。ねらいとまとめを設定し、整合性を図る。 ３子供たちが能動的に学びに向かうような学習課題を設定する。 ４…学習課題を解決するための手立てを設定する。 ５…振り返りの場面の仕方を設定する。 実際の授業づくりでは、この１～５が、途中で行ったり来たりして、修正を図りながら作られることになる。 ５ 学びの過程やその成果を振り返らせ、次の学びにつなげる手立てを工夫す る。 ・一時間の授業だけでなく、単元を通じたまとまりの中で、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるような場面を適切に設定する。

授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント １ 育成すべき資質・能力を明確に する。 ２ 資質・能力を育成できたかを適 １　育成すべき資質・能力を明確に　 　する。 ２　資質・能力を育成できたかを適 　切に評価するための手立てを準備 ３　多様な考えを引き出し、解決し　 　たいという意欲を高めるような課　 　題を設定する。 ４　学習する児童生徒の具体的な学 　びの姿を考え、多様な意見を認め、 　お互いに共有しながら解決に導く 　ような場を設定する。 ５　学びの過程やその成果を振り返 　らせ、次の学びにつなげる手立て　 　を工夫する。 個々の教師の授業に対する チェックポイント １　子供一人一人の理解度を１単位時間　 　の授業の中で評価し、定着や習熟を図　 　る時間が確保されているか？ ４　教師の指示や発問は的確で、子供に　 　伝わっているか？（音量、話し方も） ３　授業内容は子供の実態にマッチ　 　しているか？（平均をやや下回る 　子供も理解できる内容か？） ２　指導内容が精選されており、テ 　ンポや間に配慮して授業を進めて 　いるか？ ①１～５の順番で行う授業づくりのステップと、４つの授業に対するチェックポイントを当てはめる。 　チェックポイント１、３、２、１となり、４の「教師の指示や発問は的確で、子供に伝わっているか？（音量、話し方も）」は、すべての段階で関わる。 ②４つのチェックポイントの１つの見方として説明する。 １　子供一人一人の理解度を１単位 　時間の授業の中で評価し、定着や 　習熟を図る時間が確保されている 　か？

正答率 32.１％ 正答率の低いＢ問題 (答) 深さを深くしても、浮力 の大きさは変化しない。 みやざき中学校学習状況調査から みやざき中学校学習状況調査から　 正答率の低いＢ問題 みやざき中学校学習状況調査のＢ問題（活用）を使って、授業を提案する。 正答率 32.１％ (答)　深さを深くしても、浮力　 　 の大きさは変化しない。

○ 水中にある物体にはたらく浮力の大きさは、 物体の上面と下面の水圧の差によって生じ、 深さに関係しないことを説明できる。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント １　育成すべき資質・能力を明確に　 　する。 １　子供一人一人の理解度を１単位時 　間の授業の中で評価し、定着や習熟　　　 　を図る時間が確保されているか？ 本時の目標 ○　水中にある物体にはたらく浮力の大きさは、 　物体の上面と下面の水圧の差によって生じ、 　深さに関係しないことを説明できる。 　　　　　　　　　　　（科学的な思考・表現） 「１　育成すべき資質・能力を明確にする。」については、 本時の目標を、科学的な思考・表現を観点として、 「水中にある物体にはたらく浮力の大きさは、物体の上面と下面の水圧の差によって生じ、深さに関係しないことを説明できる。」 と設定した。

○ 学習問題を振り返って、学習問題に対して適切な 結論をまとめる。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント ２　資質・能力を育成できたかを適 　切に評価するための手立てを準備 　する。 １　子供一人一人の理解度を１単位時 　間の授業の中で評価し、定着や習熟　　　 　を図る時間が確保されているか？ 結論（表現・伝達） ○　学習問題を振り返って、学習問題に対して適切な 　結論をまとめる。 　物体が全部水中にあるとき、（物体の上面と下面の水圧の差は深さに関係なく同じなので、）深さを深くしても、浮力の大きさは変化しない。 「２　資質・能力を育成できたかを適切に評価するための手立てを準備する。」については、 結論として、 「物体が全部水中にあるとき、（物体の上面と下面の水圧の差は深さに関係なく同じなので、）深さを深くしても、浮力の大きさは変化しない。」 と設定した。

○ 物体が空気中、半分水中、全部水中にあるときの ばねばかりが示す値から、浮力について次のことを 見いだす。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント ３　多様な考えを引き出し、解決し　 　たいという意欲を高めるような課　 　題を設定する。 ３　授業内容は子供の実態にマッチし 　ているか？（平均をやや下回る子供 　も理解できる内容か？） 　自然事象に対する気付き （前時までの学習） ○　物体が空気中、半分水中、全部水中にあるときの 　ばねばかりが示す値から、浮力について次のことを 　見いだす。　 ○　物体にはたらく水圧のようすを模式図で 　表す。　 ・　物体の水中にある体積が大きいほど浮力は大きい。 ・　浮力の大きさは物体の重さには関係しない。 「３　多様な考えを引き出し、解決したいという意欲を高めるような課題を設定する。」については、 前時までの学習において、実験の結果から ・　物体の水中にある体積が大きいほど浮力は大きいこと。 ・　浮力の大きさは、物体の重さには関係しないこと。 を見いだし、まとめる。 このような学習の中で、「ばねばかりの使い方」や結果の表の見方を指導しておく。 また、物体にはたらく水圧のようすを模式図で表すことを学習する。

物体が全部水中にあるとき、深さを深くすると浮力の大きさはどのように変化するのだろうか。 授業づくりのポイント 個々の教師の授業に対する チェックポイント ３　多様な考えを引き出し、解決し　 　たいという意欲を高めるような課　 　題を設定する。 ３　授業内容は子供の実態にマッチして 　いるか？（平均をやや下回る子供も理 　解できる内容か？） 自然事象に対する気付き　→　課題の設定 （本時の学習） ○　浮力について、前時までの学習を振り返 　らせる。 ○　全部水中にある物体の深さをだんだん 　深くしていく事象を提示する。 ○　疑問をもとに、課題を設定する。 「３　多様な考えを引き出し、解決したいという意欲を高めるような課題を設定する。」については、 前時の学習を振り返らせる。 （自然事象に対する気付き）→（課題の設定） 全部水中にある物体を、だんだん深く沈め、このとき浮力はどのように変化するのかという疑問から、学習課題を設定する。 「物体が全部水中にあるとき、深さを深くすると浮力の大きさはどのように変化するのだろうか。」 物体が全部水中にあるとき、深さを深くすると浮力の大きさはどのように変化するのだろうか。

○ ３つの予想を提示し、既習の知識や経験をもとに した根拠を示しながら、グループの予想を立てさせ る。 〔個人→班→全体〕 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント ４　学習する児童生徒の具体的な学 　びの姿を考え、多様な意見を認め、 　お互いに共有しながら解決に導く 　ような場を設定する。 ２　指導内容が精選されており、テン　 　ポや間に配慮して授業を進めている 　か？ 予想・計画・実験 ○　３つの予想を提示し、既習の知識や経験をもとに　 　した根拠を示しながら、グループの予想を立てさせ 　る。　〔個人→班→全体〕 ○　自分たちの予想が正しければ、実験の結果がどの 　ようになるかについての見通しをもたせる。 ○　全部水中にある物体の深さを変えたときの、ばね　 　ばかりが示す値を調べ、結果を記録させる。 浮力の大きさは　①大きくなる　②変化しない　③小さくなる 「４　学習する児童生徒の具体的な学びの姿を考え、多様な意見を認め、お互いに共有しながら解決に導くような場を設定する」については、 ３つの予想を提示し、既習の知識や生活経験をもとに、根拠を示しながら予想をさせる。個人の予想をグループ内で交流させ、グループの予想を決めさせる。 自分たちの予想が正しければ、実験の結果がどのようになるかについての見通しをもたせて、実験を行わせる。 「浮力の大きさは大きくなる・・・ばねばかりが示す数値が小さくなる。」 「浮力の大きさは変化しない・・・ばねばかりが示す数値は変化しない。」 「浮力の大きさは小さくなる・・・ばねばかりが示す数値は大きくなる。」 実際に実験を行わせ、結果を記録させる。結果に納得できない生徒がいた場合は、再度実験を行わせ、再現性や実証性を確認する。

○ 実験結果から浮力を求め、浮力の大きさが変わったかどうかを検討させる。 〔個人→班→全体〕 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント ４　学習する児童生徒の具体的な学 　びの姿を考え、多様な意見を認め、 　お互いに共有しながら解決に導く 　ような場を設定する。 ２　指導内容が精選されており、テン 　ポや間に配慮して授業を進めている 　か？ 結果の処理・考察 ○　実験結果から浮力を求め、浮力の大きさが変わったかどうかを検討させる。 〔個人→班→全体〕 　・　実証性、再現性、客観性 　・　見通しとの比較 ○　予想と実験の結果を比較しながら考察させる。 　・　予想が間違っていたのか、実験の方法等に問題 　　があったのかを検討させる。 　・　必要に応じて実験計画の見直しや再実験を行わせる。　 「４　学習する児童生徒の具体的な学びの姿を考え、多様な意見を認め、お互いに共有しながら解決に導くような場を設定する」については、 各班の実験結果をまとめ、個人→グループ→全体で、検討させる。 考察を行うときに、「浮力が大きくなったり小さくなったりしたグループ」の結果について、他のグループの結果と比べさせ、再実験をさせるなどして、データの検証を行わせ、妥当性を吟味する。 また、予想と実験の結果を比較しながら考察させる。もし、予想と結果が異なったときには、予想が間違っていたのか、実験方法等に問題があったのか検討させる。必要に応じて実験計画を見直したり、再実験を行わせたりする。

○ 物体にはたらく水圧のようすを模式図で表し、浮 力の大きさが深さに関係しないことを説明させる。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント ５　学びの過程やその成果を振り返 　らせ、次の学びにつなげる手立て　 　を工夫する。 １　子供一人一人の理解度を１単位時 　間の授業の中で評価し、定着や習熟　　　 　を図る時間が確保されているか？ 表現・伝達　→　日常化 ○　物体にはたらく水圧のようすを模式図で表し、浮 　力の大きさが深さに関係しないことを説明させる。 ○　浮力が関係している日常生活の中の事象から、新　　 　たな疑問を見つけさせる。 「５　学びの過程やその成果を振り返らせ、次の学びにつなげる手立てを工夫する」については、 振り返りとして、物体にはたらく水圧のようすを模式図で表し、浮力の大きさが深さに関係しないことを説明させる。 浮力が関係している日常生活の中の事象から、新たな疑問を見つけさせる。 例えば、 「鉄でできた船は、なぜ浮くのだろうか。」など。 （例）　鉄でてきた船は、なぜ浮くのだろうか。

資質・能力を育むために重視すべき学習過程のイメージ （中央教育審議会答申） 中央教育審議会の理科ワーキンググループにおける審議の取りまとめにおいて、 資質・能力を育むために重視すべき学習過程のイメージが示された。

正答率 32.１％ 正答率の低いＢ問題 (答) 深さを深くしても、浮力 の大きさは変化しない。 みやざき小中学校学習状況調査から みやざき小中学校学習状況調査から　 正答率の低いＢ問題 これを先ほどの、みやざき中学校学習状況調査のＢ問題（活用）を使って、授業を流してみる。 正答率 32.１％ (答)　深さを深くしても、浮力　 　 の大きさは変化しない。

○ 水中にある物体にはたらく浮力の大きさは、 物体の上面と下面の水圧の差によって生じ、 深さに関係しないことを説明できる。 問題解決の能力を育成する学習過程 本時の目標 ○　水中にある物体にはたらく浮力の大きさは、 　物体の上面と下面の水圧の差によって生じ、 　深さに関係しないことを説明できる。 　　　　　　　　　　（科学的な思考・表現） 本時の目標

○ 物体が空気中、半分水中、全部水中にあるときの ばねばかりが示す値から、浮力について次のことを 見いだす。 Ⅰ　課題の把握 ①　自然事象に対する気付き （前時までの学習） ○　物体が空気中、半分水中、全部水中にあるときの 　ばねばかりが示す値から、浮力について次のことを 　見いだす。　 ○　物体にはたらく水圧のようすを模式図 　で表す。 ・　物体の水中にある体積が大きいほど浮力は大きい。 ・　浮力の大きさは物体の重さには関係しない。 ①　自然事象に対する気付き

物体が全部水中にあるとき、深さを深くすると浮力の大きさはどのように変化するのだろうか。 Ⅰ　課題の把握 ②　自然事象に対する気付き　→　課題の設定 （本時の学習） ○　浮力について、前時までの学習を 　振り返らせる。 ○　全部水中にある物体の深さをだん 　だん深くしていく事象を提示する。 ○　疑問をもとに、課題を設定する。 ②　自然事象に対する気付き　→　課題の設定 物体が全部水中にあるとき、深さを深くすると浮力の大きさはどのように変化するのだろうか。

○ ３つの予想を提示し、既習の知識や経験をもとに した根拠を示しながら、グループの予想を立てさせ る。 〔個人→班→全体〕 Ⅱ　課題の探究 ③　予想 ○　３つの予想を提示し、既習の知識や経験をもとに　 　した根拠を示しながら、グループの予想を立てさせ 　る。　〔個人→班→全体〕 浮力の大きさは　①大きくなる　②変化しない　③小さくなる 前の学習で、半分水中のときより全部水中のときの方が、深さが深くて、浮力は大きかったから、大きくなると思うよ。 浮力を模式図で表すと水圧が大きくなっても、上と下の水圧の差は変わらないから、浮力は変わらないと思うよ。 深さが深くなると、物体の上にある水の量が多くなるから、浮力は小さくなると思うよ。 ③　予想

○ 自分たちの予想が正しいければ、実験の結果がど のようになるかについての見通しをもたせる。 Ⅱ　課題の探究 ④　実験の計画 ○　自分たちの予想が正しいければ、実験の結果がど 　のようになるかについての見通しをもたせる。 　＜浮力が大きくなると予想したとき＞ 　 ・　ばねばかりが示す値は、ア→イ→ウ→エの順に小さくなる。　　 　＜浮力が変化しないと予想したとき＞ 　 ・　ばねばかりが示す値は、イ、ウ、エがすべて同じになる。 　＜浮力が小さくなると予想したとき＞ 　 ・　ばねばかりが示す値は、ア→イ→ウ→エの順に大きくなる。 　※　見通しをもたせるときに、実験結果をまとめる表の見方も指導しておくと、考察しやすくなる。 ばねばかりの示す値〔N〕 ア（空気中） イ ウ エ 物体Ａ 物体Ｂ ④　実験の計画

○ 全部水中にある物体の深さを変えたときの、ばね ばかりが示す値を調べ、結果を記録させる。 Ⅱ　課題の探究 ③　実験の実施 ○　全部水中にある物体の深さを変えたときの、ばね　 　ばかりが示す値を調べ、結果を記録させる。 ⑤　実験の実施

○ 実験結果から浮力を求め、浮力の大きさが変わっ たかどうか検討させる。 〔個人→班→全体〕 ・ 実証性、再現性、客観性 Ⅱ　課題の探究 ⑥　実験結果の処理・考察 ○　実験の結果を表にまとめさせる。 ○　実験結果から浮力を求め、浮力の大きさが変わっ　 　たかどうか検討させる。 〔個人→班→全体〕 　・　実証性、再現性、客観性 　・　見通しとの比較 ○　予想と実験の結果を比較しながら考察させる。 　・　予想が間違っていたのか、実験の方法等に問題 　　があったのかを検討させる。 　・　必要に応じて実験計画の見直しや再実験を行わせる。　 ⑥　実験結果の処理・考察

○ 学習問題を振り返って、学習問題に対して適切な 結論をまとめる。 Ⅲ　課題の解決 ⑦　結論（表現・伝達） ○　学習問題を振り返って、学習問題に対して適切な 　結論をまとめる。 ○　物体にはたらく水圧のようすを模式図で表し、浮 　力の大きさが深さに関係しないことを説明させる。 　物体が全部水中にあるとき、（物体の上面と下面の水圧の差は深さに関係なく同じなので、）深さを深くしても、浮力の大きさは変化しない。 ⑦　結論（表現・伝達）

○ 浮力が関係している日常生活の中の事象から、新たな疑問を見つけさせる。 Ⅳ　新たな課題 ⑧　振り返り ○　浮力が関係している日常生活の中の事象から、新たな疑問を見つけさせる。 （例）　鉄でてきた船は、なぜ浮くのだろうか。 ⑧　振り返り

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