-有機フッ素系界面活性剤を巡る国際動向と

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-有機フッ素系界面活性剤を巡る国際動向と ストックホルム条約新規追加候補物質 -有機フッ素系界面活性剤を巡る国際動向と 化学領域での取り組み状況報告ー (独)国立環境研究所 化学環境研究領域 柴田康行

フッ素系界面活性剤研究 キックオフ会合 平成20年10月16~17日 (独)国立環境研究所 地球温暖化研究棟 交流会議室

日本における化学物質管理:化審法のしくみ 化学物質の製造並びに審査等に関する法律 (1973~) 第1種特定化学物質: 製造、輸入、使用の原則禁止 15: POPs+PCN, TBTO, Dicofol etc. 残留性 Persistent 生物濃縮性 Bioaccumulative 毒性 Toxicity 生態毒性 Ecotoxicity 新規化学物質 >10トン 製造・輸入 使用 No Persistent Suspected toxicity (Eco-toxicity) 第2種/第3種監視化学物質 Several hundreds Confirmed toxicity (eco-toxicity) 第2種特定化学物質: 製造、利用の届け出 23: CCl4,、organotins etc

ストックホルム条約  “Mindful of the precautionary approach as set forth in Principle 15 of the Rio Declaration on Environment and Development, the objective of this Convention is to protect human health and the environment from persistent organic pollutants.”  “予防原則に留意しつつ、残留性有機汚染物質(POPs)から人の健康並びに環境を保護することを目的とする”

ストックホルム条約の構成 第3条 意図的製造・使用からの環境放出の削減・廃絶 第5条 非意図的製造・使用からの環境放出削減、廃絶 第6条 ストックパイル、廃棄物からの放出削減、廃絶 第7条 国内実施計画策定 第8条 対象化学物質の追加規定 第9~11条 情報交換、公開、教育、研究等 第12~14条 支援(技術的、資金的) 第16条 有効性評価 ..... 付属書 POPsの対象物質、定義等  A 廃絶リスト  B 限定使用リスト  C 非意図的生成物リスト  D POPs追加候補の必要情報とクライテリア  E リスクプロファイル書に必要な情報  F 社会経済的考察のための情報

残留性有機汚染物質 POPs:Persistent Organic Pollutants :残留性 :濃縮性 :長距離輸送性 :生物毒性 残留性有機汚染物質  POPs:Persistent Organic Pollutants :残留性  :濃縮性  :長距離輸送性  :生物毒性 *すべて有機塩素系化合物 *農薬類+工業製品+非意図的生成物質 意図的:  工業製品:PCB  農薬類並びに原料:DDT, HCB, クロルデン、ヘプタクロル   アルドリン、ディルドリン、エンドリン、マイレックス   トキサフェン 非意図的:  ダイオキシン、フラン、(PCB, HCB)

新規POPs化合物の追加; POPRC POPs Review Committee  1)第8条の規定に基づき締約国会議(COP)の下に設置  2)いずれの締約国も、新規POPs提案を行える  3)POPRCは提案書に対して以下の作業を推進   i) 提案化合物がPOPsのクライテリアを満足するかどうか     (Annex D)を判定しCOPに報告   ii) COPが認めた物質について、さらにリスクアセスメント     を実施(Annex E)   iii) COPがリスクありと認めた物質について、リスク管理     評価を推進   iv) リスクアセスメント、リスク管理に基づき、COPで追加     の是非を判断

8条 New POPs 締約国会議. COP-1 1st BATBEP 1st POPRC COP-2 1st TWG 2nd BATBEP 16条 Effectiveness Evaluation 5条/AnnexC Unintentional POPs 8条 New POPs May 2005 COP-1 Nov 2005 Nov 2005 May 2006 1st BATBEP 1st POPRC Oct 2006 COP-2 Nov 2006 Nov 2006 1st TWG 2nd BATBEP 2nd POPRC Jan 2007 May 2007 2nd TWG COP-3 PeBDE, HxBB, PFOS, g-HCH, Chlordecone Oct 2008 4th POPRC Regional Report May 2009 Global Report OcBDE, PeCB, short-chain chlorinated paraffins, a-/b-HCH COP-4 Basis for the following evaluations 20xx 2nd Effectiveness Evaluation Endosulfan, HBCDD COP-x

現在のPOPs; *工業製品:PCB *農薬類並びに原料:DDT, HCB, クロルデン、ヘプタクロル   アルドリン、ディルドリン、エンドリン、マイレックス   トキサフェン *非意図的:ダイオキシン、フラン、(PCB, HCB) 新規候補物質; 2005 PBDE、HBB、クロルデコン、γ-HCH、PFOS   :いずれも条約追加がふさわしいと結論 2006 OBDE、PeCB、短鎖塩素化パラフィン、α-/β-HCH   :短鎖塩素化パラフィンを除き、第2段階までクリア 2008 エンドスルファン、HBCDD 新規提案 難燃剤: PBDE、HBB、SCCPs、HBCDD フッ素系界面活性剤: PFOS、PFOSF

PFOS (Perfluorooctane sulfonate) *3M: 1950代~  ECF法(PFOSF経由)   max ~3,000 t /y (2000) *主な用途:  撥水・撥油加工、洗剤   セメント添加剤、泡消火剤など *PFOS 26週カニクイザル投与試験:   LOEL 0.03mg kg-1/day *PFOS ラット二世代毒性試験:   N(L)OAEL 0.1(0.4) mg kg-1/day [Chemical Properties of PFOS] * Vapor pressure 3.31x10-4 Pa (20 C) * Water sol. 519 / 25 mg/L (pure water(20 C) / seawater) * Henry’s Law Const. 3.1x10-9 atm・m3/mole * BCF 2,796 (Blue gill)

The Works of Dr. Donald R. Taves (Univ. Rochester) * Nature 211, 192 (1966) 血清中フッ素濃度~0.7mM (0.013ppm) 従来の1/10 * Nature 217, 1050 (1968) 血清中にはフッ素イオンの他に非交換型 フッ素(恐らく有機体フッ素)が存在する * Nature 220, 582 (1968) 非交換型フッ素は電気泳動でアルブミンと 挙動を共にする ……………………….. * ACS Symposium 28 (1976) 19F-NMRの測定による人血漿中の     有機フッ素化合物の構造推定

W.S. Guy, D.R. Taves, W.S. Brey, Jr: Organic fluorocompounds in human plasma: prevalence and characterization, “Biochemistry involving carbon-fluorine bonds”, ACS Symposium Series 28, Amer. Chem. Soc. (1976) 117

PFOA標準 PFOS・K標準 血漿抽出物

Perfluorochemicals (PFCs) PFOS Amides Sulfonic acids S O OH CF3(CF2)n S O N CF3(CF2)7 R CH2CH2COOH Alcohols S O N CF3(CF2)7 R CH2CH2OH (CH2)m OH CF3(CF2)n Carboxylic acids S O N CF3(CF2)7 R H C O OH CF3(CF2)n *界面活性剤(撥水撥油性)=>蓄積状態、場所の違い *ターゲット PPARa (Peroxisome Proliferator Activated Receptor) => 脂肪酸酸化酵素系誘導

表  1997年における顧客並びに末端ユーザーの PFOSのWaste Stream推定(3M) Waste Stream 販売過程  使用   廃棄 大気 1.2トン 1.5トン 排水 51トン 82トン 固形廃棄物 27トン 171トン 572トン

都内河川調査(都内河川PFOS濃度:2004年夏) 50 40 30 20 10 ng/L 高澤、西野他(2005)

下水処理場C 高澤、西野他(2006)

タイムカプセル化事業の二枚貝採取地点

Specimen Banking Procedure of Biological Samples Long-term preservation under Liq N2 Vapor (-160 C) Particle Size Check Homogeniety Check Mussels Cryo-homogenization

Mussel Watch for monitoring Fluorosurfactants 二枚貝中のPFOS濃度分布

PFOA 濃度分布

PFdDA 濃度分布

*国環研でのPFCs関連研究  :分析法開発    ・大気、水  高澤    ・テロマーアルコール 高澤    ・生物試料(二枚貝、昆虫等) 吉兼  :環境モニタリング    ・水  高澤、西野、佐々木    ・二枚貝、昆虫等  吉兼

JW Martin et al., Env. Tox. Chem., 22, 196 (2003) ニジマスにおけるペルフルオロアルキルカルボン酸PFAsの BCFの鎖長依存性

受容体(PPAR)結合=>特異的作用発現 部分フッ素化化合物 パーフルオロ化合物 ホルモンかく乱作用 TCAサイクル阻害 その他生化学反応 フッ素系塗料 機能性膜 HFその他 毒性物質 生成(PFIB) 農薬類 医薬品 フッ素系媒体:オイル フッ素樹脂 液晶材料 ペルオキシゾーム 増殖活性 PFOS・PFOA 受容体(PPAR)結合=>特異的作用発現

部分フッ素置換 パーフルオロ化合物 *フルオロカーボン HCFC,HFC 計123,488トン(H14) *農薬類  :トリフルラリン  187トン  :フルトラニル 124トン  :フルアジナム 103トン  :シハロフォップブチル 74トン *医薬品  :オフロキサシン 24.7トン  :他ニューキノロン類 2~4トン  :テガフール(5-FU類) 3~66トン *液晶材料 *フッ素樹脂  :22,894トン(H15:国内10,976トン) *フッ素ゴム    2,500トン(H14) *フッ素塗料 *フッ素系機能性膜  :電気分解、燃料電池 *フッ素系媒体・オイル  :ポンプオイル、潤滑剤(HD等) *フッ素系界面活性剤   23トン

Toxicities of OFs (1)Volatile Low MW OFs 1) Toxicity through HF production  :specific production  C6H5SF3, SF4, S2F10, COF2 …  :non-specific production  other OFs

Toxicities of OFs (1)Volatile Low MW OFs 2) Other mechanisms (CF3)2C=CF2(PFIB), CF2-CF=CF-CF2 CF3CCl=CHCF3 ...

× × 有機フッ素化合物の毒性発現機構(2) 個別生化学過程の阻害 dTMP TCA サイクル FCH COOH Co-A FCH 5-フルオロ ウラシル FCH COOH モノフルオロ酢酸 2 Co-A FCH CO-Co-A 2 × CH 2 COOH HC-COOH CHFCOOH フルオロ クエン酸 dTMP TCA サイクル × アコニターゼ CH 2 COOH C-COOH CHCOOH アコニット 酸

suicide substrates/inhibitors 有機フッ素化合物の毒性発現機構(2)続 suicide substrates/inhibitors Inhibition of pyridoxal phosphate-dependent decarboxylases

* Trifluralin(Herbicides) : Cortisol, Insulin, Estradiol ↑ : LH ↓ 有機フッ素化合物の毒性発現機構(3)環境ホルモン様作用 * Bisphenol AF :estrogenic (MCF-7 assay) Environ Health Perspect (1998) 106:167-74      Estradiol Bisphenol A Bisphenol AF  受容体 1 0.00056 0.01  結合能 * Trifluralin(Herbicides) : Cortisol, Insulin, Estradiol  ↑  : LH  ↓   J Toxicol Environ Health (1998) 54:21-36 * Diflubenzuron(Pesticides) : Ecdysteroid level affected Gen Comp Endocrinol (1989) 76:350-6