保育園児とそれを見守る大人への科学の話しかけ

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保育園児とそれを見守る大人への科学の話しかけ 富田晃彦 Tomita Akihiko 第1回 教育学部学部談話会 2008年12月2日(火) 12:30-13:00、お昼を取りながら 於 教育学部第2会議室 教科専門の者が、教科教育的なネタに挑戦した例 しかし、妙なことに深く悩んでしまった… この点はあまり人の興味を引かないようだが、 富田は個人的にとても考え込んでいる。

銀河の生い立ちを遡る「タイムマシン」 私の、教科専門としての研究課題は何か? 問題は解けなさそうに思えるが、 遠方を見れば過去が見える、ではなく、 近傍を覗き込んで過去の記憶を抽出する、方法。 >> この方法に批判が強く、賛同者は少数 << 問題は解けなさそうに思えるが、 「穴」が開いていると「直感」している。 それを探し当てて、いつの日か、 私はタイムマシンに乗る、予定である。

教科専門の者が教科教育的ネタに手を出したのは、 「ものわかりのよさ」を示すためではありません、全く。 (天文学研究を通して会得した)基礎科学の方法の 相対視に興味があったからであり、また「異国の地」での 課題探索というあてもない旅に出る楽しみを味わいたい から、である。 さて、富田は「ものわかり」が悪かった。 「外国語」の勉強には謙虚に取り組んだが、 多くの研究者が示す「自信」は何なのか、分からない…

富田がうらやむ「自信」とは? どうして、明るく「理科の振興」ができるのか? どうして、「面白かった」「だけ」で評価できるのか?

発表資料抜粋 保育園児とそれを見守る大人への科学の話しかけ R3-4 − 科学の普及活動でのひとつの挑戦 − 富田晃彦(和歌山大学教育学部、天文学) atomita@center.wakayama-u.ac.jp http://www.wakayama-u.ac.jp/~atomita/ 平成20年度日本理科教育学会近畿支部大会 「知識基盤社会における新しい教育課題と理科教育」 2008年11月29日(土)、神戸大学百年記念館 発表資料抜粋

この研究は: ひかり保育園というところに毎月訪問し、 「うちゅうのおはなし」を行っている。  ひかり保育園というところに毎月訪問し、  「うちゅうのおはなし」を行っている。  保育園児、保育者(および保護者)の「宇宙・空」への  興味(の持ち方)が大きくなったか、を評価。 報告 報告 発表者(富田)が、議論の中で、何かを得たいと思う点:  (1) 科学の教育普及活動を、なぜするのか?    「うちゅうのおはなし」はこの点で、よい活動?  (2) 「うちゅうのおはなし」の評価方法、これでよい?

科学の方法、見方* を、多くの人と共有したいから 科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 科学の方法、見方* を、多くの人と共有したいから * 直接体験だけにとどまらず、もっと大きく世界を見る。   誰も納得するやり方で情報交換し、「資産」を増やす。 多くの人と「資産」を持ち合いたい (大学教員# が教育普及活動に出かける際、その大義名分を  何とするか、少なくとも5種類を聞いてきた。)  # ただし、富田が出会った範囲内。

実践していること いつ どこで だれが なにを なにで ほぼ毎月1回、毎回30分程度(時々40分)  ▶ 2006年12月開始、2008年11月までに20回 保育園(ひかり保育園、大阪府藤井寺市、  地域の中核的な園)、3,4,5歳児(90人)  ▶ 単発渡り歩き型ではなく、一ヶ所継続型 富田(専門:天文学)と学生(教員養成の課程)  ▶ ゲストとして → 園全体からの協力不可欠 うちゅうのおはなし(星座、地球史、雲、空) おはなし(PowerPoint紙芝居)+しつもん

「これは なんだ?」 「せいざのおはなし」 「くも」 毎月のお誕生会にあわせ 黄道十二宮の神話をもとに 夜空に「気づく」・夜空を見上げる (教員養成課程の学生研究としても) 夜空に「気づく」・夜空を見上げる きっかけに も 「くも」 雲や空の楽しみ方案内 昼空に「気づく」・昼空を見上げる きっかけに 「これは なんだ?」

という自然観も伝えたい(科学という乗り物で、頭が空を飛ぶ) 天上界と台所では、同じ理が働いている、 という自然観も伝えたい(科学という乗り物で、頭が空を飛ぶ) わた雲といえば、綿 (見たことある?) 虹は部屋の中にもあるぞ! 小さな水の粒は買い物中にも 顔を出すぞ! 雨雲が来れば雨。雨粒が 作る輪はどんな風に広がる?

事前・事後の活動 次回以降の活動の事前協議(事前の議論) これまでの活動の振り返り(事後の議論) 毎月訪問という形を利用し、  次回以降の活動の事前協議(事前の議論)  これまでの活動の振り返り(事後の議論) が毎回できることになる。 30分の実践(コアタイム:10:30-11:00)のその日、昼休み後に、 園長、主任保育士、3,4,5歳児クラスの担任、富田と学生、 以上7人で、園の事務室で協議会を持っている(約30分間)。 園長、主任保育士と、富田と学生は、これを含め2時間議論。 担任保育士は、実践の後、園児と復習もして下さっている。

協議会での議論点 (2のうち1) 話の脚色(学生担当)、 スライドの意匠の工夫は: 公開天文台ネットワーク (PAONET) の画像活用 ▶ 園児に分かりやすい? 納得? ▶ 言葉選び: てんびん? うろこ?

協議会での議論点 (2のうち2) 気付きの力、科学的見方・考え方の基礎(と私は考える) ものごとに興味を示すということを表現し始めたり、 園児同士が興味(解釈)を話し合う、ということが見える。 気付きの力、科学的見方・考え方の基礎(と私は考える) 普段あまり話さない園児が、よく質問するようになる。* 普段の園生活で、雲や虹を探すようになる。* 大人と一緒に星を見るようになる。* 冷凍庫を開け閉めで「白いもの」を何度も確認する。* 窓に「はー」をやって、くもりを何度も作ってみる。* 解釈しようとして、すっきりしないと「難しい」と表現する。 毎回読み切り話を、一貫した構成に作ろうとしているらしい。 夜は太陽はどこに行ったのか、園児どうしが激論することも。 人間はどこから生まれたのか、園児どうしが激論することも。  * 保育者・保護者の支援の影響が大きいもの。

ま と め 課題:絵本の制作(他の実践者と題材を共有するために) 違う環境の園での実践(多くの人と宇宙を旅するために) だれに: 園児、そして園児を見守る大人の層に なにを: 科学(そら)への興味(気づき)、      あれこれ考え、情報交換する態度の育成を なにで: ゲストとして「うちゅうのおはなし」で どうだったか: 2年の実践で(なにを、に対して)効果を感じた       by 担任保育士の観察+ゲストの観察、そして協議会 どうしてそうなったか: 園児を見守る大人*による支援の存在       * 保育者, 保護者, ゲスト 活動継続の秘訣: この研究に大変協力的な園の存在        園長先生, 主任保育士, 担任保育士, 園を紹介下さった音楽教育教員 課題:絵本の制作(他の実践者と題材を共有するために)    違う環境の園での実践(多くの人と宇宙を旅するために)

この実践は、 世界天文年2009 公認プレイベントです。

新展開:ハワイの保育園との交流 国立天文台ハワイ観測所 outreach scientist との連携による Kaumana Keikiland とのビデオメッセージ交換(まず一往復済)

時間が余った時のための、資料のおまけ

協議会の際のノートの例 (2008年10月の訪問)

科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 a, b 両方にアプローチできる場所:保育園(および幼稚園) 保育園や幼稚園での実践、にとどまらず、 「b」へのアプローチも考えたところに、新規性がある。  なぜ「b」? → 「b」の「a」への影響 そして、「b」の対象としての興味

科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 子どもにも大人にも、宇宙は人気分野 頭の上は、誰にでも手に入る大自然 (宇宙 = 頭の上、雲と雲の向こう) 頭の上は、誰にでも手に入る大自然 (しかも、よく見れば、いろいろ見える) おとぎの世界へも接続 (天文屋にとって、これは幸運なことである。) 保育園や幼稚園での科学のお話そのもので先行するものは たくさんあるが、宇宙の話をやってみようという点に、 新規性がある。

保護者参加 企画にも参加 来年度からは 「宇宙の切り絵」 シリーズ開始予定 ゲストと保護者の 信頼関係構築のために 今年度の「たなばたまつり」での出しもの