リンパ脈管筋腫症 (Lymphangioleiomyomatosis:LAM)

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リンパ脈管筋腫症 (Lymphangioleiomyomatosis:LAM) The Japanese Respiratory Society 社団法人日本呼吸器学会 教育用DVD - DVDで学ぶ実践呼吸器病学 - Ⅱ-28-1 リンパ脈管筋腫症 (Lymphangioleiomyomatosis:LAM) 順天堂大学医学部 呼吸器内科講座 瀬山 邦明

内容 リンパ脈管筋腫症(LAM)とは 主要症状と臨床所見 胸部高分解能CT 肺外病変 診断 治療 経過と予後 参考文献

リンパ脈管筋腫症 (Lymphangioleiomyomatosis:LAM)とは

に発症し,診断時の平均年齢は 約34歳前後である.ただし,閉経後の女性に診断される 場合もある1~4). リンパ脈管筋腫症(LAM)とは 【リンパ脈管筋腫症とは-1】 に発症し,診断時の平均年齢は 約34歳前後である.ただし,閉経後の女性に診断される 場合もある1~4). 肺,体軸リンパ系(縦隔,後腹膜,骨盤腔リンパ節)に病変を 形成する.肺では,びまん性,不連続性に が多数形成 され,呼吸不全を生じる1~4) . 2つの臨床病型がある1~4). リンパ脈管筋腫症(sporadic LAM) に合併するリンパ脈管筋腫症(TSC-LAM) 生殖可能年齢の女性 嚢胞 孤発性 結節性硬化症

癌抑制遺伝子 ( あるいは 遺伝子)の異常により腫瘍化した平滑筋細胞様の腫瘍細胞( )がクローン性増殖して生じる疾患である5). リンパ脈管筋腫症(LAM)とは 【リンパ脈管筋腫症とは-2】 癌抑制遺伝子 ( あるいは 遺伝子)の異常により腫瘍化した平滑筋細胞様の腫瘍細胞( )がクローン性増殖して生じる疾患である5). LAM細胞は,癌細胞とは異なり形態学的には良性であるが,転移して新たな病巣を形成しながらゆっくりと進行する. LAMは である5) . LAMの病変ではリンパ管新生とともに (LCC)がリンパ流に放出され,LCCにより転移すると考えられる6,7). TSC1 TSC2 LAM細胞 腫瘍性疾患 LAM cell cluster

主要症状と臨床所見 6

【LAMの主要症状と臨床所見3)】 胸郭内病変による症状および所見 (74%) * (53%) 労作性呼吸困難 咳 (32%) (74%) * (53%) 咳 (32%) 痰(少量) (21%) (8%) (7%) 胸郭外病変による症状および所見 (5%) 後腹膜腔〜骨盤腔の . に伴う諸症状   (腹部膨満感,腹痛・腹部違和感,血尿など) 下肢のリンパ浮腫 労作性呼吸困難 気胸 血痰 乳糜胸水 乳糜腹水 リンパ脈管筋腫 腎血管筋脂肪腫 *カッコ内は厚生労働省LAM全国疫学調査(平成15~16年)からの初期における症状頻度.

胸部高分解能CT 8

【LAMの肺病変(高分解能CT画像)】 HRCT1 HRCT2 正常肺実質との な,壁の ,丸みを帯びた が,両側肺に, に,広範に,認められる.嚢胞の数も大きさも症例によりさまざまで ある.嚢胞の描出にはスライス厚1~2 mmの高分解能CTが推奨される. 境界が明瞭 薄い 嚢胞 不連続性

【肺内の嚢胞は経時的に増加していく】 嚢胞の増加とともに, (DLCOの低下), (1秒率の 低下,%1秒量の低下)が進行する. 拡散障害 胸部高分解能CT 【肺内の嚢胞は経時的に増加していく】 26歳 → 2年6か月後には → 29歳 嚢胞の増加とともに, (DLCOの低下), (1秒率の 低下,%1秒量の低下)が進行する. 拡散障害 閉塞性換気障害 10

肺外病変 11

. lymphangioleiomyoma 後腹膜腔や骨盤腔の リンパ節に生じる. 腎血管筋脂肪腫 肺外病変 【リンパ脈管筋腫症の肺外病変】 . renal angiomyolipoma . lymphangioleiomyoma 後腹膜腔や骨盤腔の リンパ節に生じる. 腎血管筋脂肪腫 リンパ脈管筋腫 12

診 断 13

【LAMの診断4)】 病理組織学的にLAM細胞の存在を証明することが推奨される 経気管支肺生検(TBLB) 胸腔鏡下肺生検(VATS) 軽症例(10頁左HRCT)では嚢胞が少ないのでTBLBでは診断できない可能性があり,VATSが推奨される. 一方,進行例(10頁右HRCT)はTBLBで病理診断を確定できた. LAMと鑑別すべき疾患 . 慢性閉塞性肺疾患(COPD) における肺病変 リンパ球性間質性肺炎 アミロイドーシス 空洞形成性転移性肺腫瘍 ランゲルハンス細胞組織球症 Birt-Hogg-Dubé症候群 シェーグレン症候群 14

【LAMの病理組織像-1】 A B (A) 平滑筋細胞様のLAM細胞が結節状に増殖し, スリット状の が認められる(HE染色). リンパ管腔 診断 【LAMの病理組織像-1】 A B (A) 平滑筋細胞様のLAM細胞が結節状に増殖し, スリット状の が認められる(HE染色). (B) LAM細胞はα-smooth muscle actin陽性. リンパ管腔 15

【LAMの病理組織像-2】 C D (C) LAM細胞は, である. HMB45陽性 診断 【LAMの病理組織像-2】 C D (Kumasaka T et al: Lymphangiogenesis in lymphangioleiomyomatosis: its implication in the progression of lymphangioleiomyomatosis. Am J Surg Pathol 2004; 28: 1007-16より許可を得て転載) (C) LAM細胞は, である. (D) LAM細胞結節内の管腔はVEGFR-3陽性のリンパ管内皮細胞で被われたリンパ管で,内部にLAM細胞クラスター( )を認める. HMB45陽性 16

【LAM細胞クラスター(LCC)】 A B C D 診断 (Kumasaka T et al: Lymphangiogenesis-mediated shedding of LAM cell clusters as a mechanism for dissemination in lymphangioleiomyomatosis. Am J Surg Pathol 2005; 29: 1356-66) C D (A) LCCは, や 中に検出され,LAMの診断に有用である. Papanicolaou染色では立体的な球状の細胞集塊. (B) 内部はα-smooth muscle actin陽性, (C) ならびに,HMB45陽性のLAM細胞. (D) 表面はpodoplanin陽性のリンパ管内皮細胞により被われている. 乳糜胸水 腹水 17

治 療 18

治療 【リンパ脈管筋腫症の治療8)】 有効性の確立された治療法はない.しかし,病態が進行するLAM症例では,症状緩和と合併症の予防や治療に加えてホルモン療法が行われているのが現実である.日本では筋注プロゲステロン製剤がないため, 療法が第一選択で行われることが多い. GnRH Ⅰ.ホルモン療法 gonadotropin-releasing hormone analogue (GnRH)による . 偽閉経療法 Ⅱ.息切れや呼吸不全に対する治療 気管支拡張剤,在宅酸素療法(酸素濃縮器,液体酸素) Ⅲ.乳糜胸水や腹水の治療 制限食,胸膜癒着術,シャント術 脂肪 Ⅳ.気胸に対する治療 エアリーク部の嚢胞切除 気胸再発防止策(OK432や自己血などによる内科的癒着術,壁側胸膜切除による 癒着,臓側胸膜被覆術,カバリング術(全肺胸膜被覆術), など) Ⅴ.肺移植 19

経過と予後 20

【経年的FEV1の変化】 LAMの 進行速度は 様々である 経過と予後 【経年的FEV1の変化】 FEV1(L) - 8 - 4 4 8 12 16 20 year 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 LAMの 進行速度は 様々である 経年的FEV1の悪化は-75~-118 mL前後と報告されるほど進行の早い群(上段図)もあれば,無治療で経過観察していてもあまりFEV1の悪化しない症例(下段図)もある. - 8 - 4 4 8 12 16 20 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 year FEV1(L) (Seyama K et al: Longitudinal follow-up study of 11 patients with pulmonary lymphangioleiomyomatosis: diverse clinical courses of LAM allow some patients to be treated without anti-hormone therapy. Respirology 2001; 6: 331-40) 21

【日本人のLAM患者の予後(呼吸不全班全国調査)3)】 経過と予後 【日本人のLAM患者の予後(呼吸不全班全国調査)3)】 全体 初発症状別 1.0 1.0 5年 91% 0.9 0.9 10年 76% group B (気胸発症) 0.8 0.8 group C (その他) 生存率 生存率 0.7 0.7 15年 68% 0.6 0.6 0.5 0.5 0.4 0.4 0.3 0.3 0.2 0.2 group A (息切れ発症) 0.1 0.1 5 10 15 20 25 30 35 5 10 15 20 25 30 35 観察期間(年) 観察期間(年) LAMの予後は初発症状により異なる 22

参考文献 23

参考文献 Arnold S et al: Lymphangioleiomyomatosis. In: Marvin I, Schawarz TEKJ(eds), Interstitial Lung Disease, 4th ed. BC Decker Inc, London, 2003, 851-64. Ryu JH et al: The NHLBI lymphangioleiomyomatosis registry: characteristics of 230 patients at enrollment. Am J Respir Crit Care Med 2006; 173: 105-11. Hayashida M et al: The epidemiology of lymphangioleiomyomatosis in Japan: A nationwide cross-sectional study of presenting features and prognostic factors. Respirology 2007; 12: 523-30. リンパ脈管筋腫症Lymphangioleiomyomatosis(LAM) 診断基準.厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業,呼吸不全に関する調査研究,平成18年度研究報告書.2007,23-5. Carsillo T et al: Mutations in the tuberous sclerosis complex gene TSC2 are a cause of sporadic pulmonary lymphangioleiomyomatosis. Proc Natl Acad Sci USA 2000; 97: 6085-90. Kumasaka T et al: Lymphangiogenesis in lymphangioleiomyomatosis: its implication in the progression of lymphangioleiomyomatosis. Am J Surg Pathol 2004; 28: 1007-16. Kumasaka T et al: Lymphangiogenesis-mediated shedding of LAM cell clusters as a mechanism for dissemination in lymphangioleiomyomatosis. Am J Surg Pathol 2005; 29: 1356-66. 林田美江ほか:リンパ脈管筋腫症Lymphangioleiomyomatosis(LAM)の治療と管理の手引き.厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業,呼吸不全に関する調査研究,平成18年度研究報告書.2007,19-22. Seyama K et al: Longitudinal follow-up study of 11 patients with pulmonary lymphangioleiomyomatosis: diverse clinical courses of LAM allow some patients to be treated without anti-hormone therapy. Respirology 2001; 6: 331-40.