人工知能と法情報の知識表現 -法知識データベースとデータモデル 市民公開シンポジウム 「情報倫理と人工知能・ロボット-その課題を考える」 主催:日本情報倫理協会(JANL) 2018年3月25日(日)京都女子大学 田中規久雄(大阪大学 法学部)
法情報の知識表現 - 法知識データベースとデータモデル - 阪大法学. 52(3,4) P.259-P.284,2002-11 -30 (https://core.ac.uk/download/pdf/38 260018.pdf) ・法律人工知能論は1980年代~ →吉野一『法律人工知能』2000
はじめに 条文DB,判決DB:結局専門的知識が必要 全文検索→知識ベース(knowledge-base)へ 古典的AI(Expert System)
1.計算機表現と法律判断 計算機:データ構造 ⇔ アルゴリズム 人間 :知識 ⇔ 推論(inference), 論理(logic) 計算機:データ構造 ⇔ アルゴリズム 人間 :知識 ⇔ 推論(inference), 論理(logic) 法分野:法情報 ⇔ 理由づけ(reasoning) 知識表現:法律要件→法律効果(if then rule) 「法律条文の標準構造(1)-自然言語による法知識処理をめざして-」NL[97- 12]1993 Resoning: heuristic, abduction ←決して,logicではない 例)民法709条(不法行為)「故意又は過失によって他 人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、こ れによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 Prolog : 不法行為(賠償責任(X, Y, Z)):- ((故意(X); 過失(X)), ((権利侵害(Y); 法益侵害(Y)), 損害発生(Z), 因果関係1(X, Y), 因果関係2(Y, Z))
SWISHによる教育実践 (参考)プログラミングによる法学基礎教育」,JSISE26回全国大会2001 田中・松浦編著『法学新入門』2017,角田執筆部分より
補足 上記のような考え方は,80~90年代の構成主義的AIであり,レガシーAIと いわれる。 今日では,ビッグデータを「知識」に,ディープラーニングを「推論」機 構とするのが主流。→データの知識構造がよくわからない上に,推論機構 がほぼ脳をエミュレートするような感じで,ニューラルネットワークが結 局何をやっているのか人間にはよくわからない点で批判されたように,エ クスパートシステムとしては有用(チューリングテスト)であるが,AIと いえるのか?CI(Computer Intelligence)では? 私的には興味なし→何をやったのかを,人間に分かるように出力できるな らAIで面白い。(インプリとしては,ハイブリッドもあり。) 囲碁,将棋→完全情報ゲームー>そもそも知能なのか?(技能?) レガシーAIは法律家の頭の中を整理するのに有益→実用より,研究・教育 に有益 (参考)角田篤泰「人工知能の発展と企業法務の未来(1)~」NBL2017~
2.データモデル :フレーム理論 Definition: 法情報とは,リテラルな「条文」と 「判決文」が基本 2.データモデル :フレーム理論 Definition: 法情報とは,リテラルな「条文」と 「判決文」が基本 1975 M.ミンスキー: フレーム→スロット(山本敬 三) フレーム:条文(常に真)has a ~ スロット:判決(確定したものは常に真)is a ~ ・Civil Law(大陸法,制定法系) 複数の判決が矛盾しているように見えてもどち らも真→これを両立させるのが「法律学」(実際 は政策議論に陥りがちではあるが→判例変更もあ り。)
“行動フレーミング”で習慣化を狙えhttps://book. mynavi “行動フレーミング”で習慣化を狙えhttps://book.mynavi.jp/wdonline/detail_summary/id=52365 スロット
2.データモデル :オブジェクトモデル 1980代~オブジェクトデータモデル(Alan Kay?) 2.データモデル :オブジェクトモデル 1980代~オブジェクトデータモデル(Alan Kay?) フレーム:概念→事実(プラトニック: idea) オブジェクト:事実→概念(アリストテレシィック: eidos) オブジェクト:個々の事件 クラス:条文 インスタンス:判決文 →カプセル化 Common law (英米法,判例法系) PS. Prologとsmall talkは使い様(*^▽^*)←要は箱もん
モデリングカフェhttp://www. ogis-ri. co モデリングカフェhttp://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/others/ModelingCafe/02posting.html
アテネの学堂
オブジェクトモデリングの例 オブジェクト(事件):マイセンの店で30万と書 いてあった商品を手に取ってみたが,うっかり落 としてしまい,割ってしまった。 クラス(条文):前記,民法709条 インスタンス(判決):「うっかり」は「過失」 に,価格は「損害」に,商品の破壊は「権利侵 害」に,30万という価格は「損害」に該当し, 「うっかり」は「商品の破壊」に対し因果関係が あり, 「商品の破壊」は「損害発生」との因果関 係がある。→賠償責任の発生 オントロジー工学からの批判:私的にはあまり成 功しているようには思えない。
おわりに 上記したような作業 例)民法709条を情報科 学技術で自動化できないのか? 法律要件 事実認定 証拠 過失 うっかり 上記したような作業 例)民法709条を情報科 学技術で自動化できないのか? 法律要件 事実認定 証拠 過失 うっかり 自白(故意である証拠はない) 権利侵害 商品破壊 自白or店員の目撃 損害 価格無効 値札(実質審査あり) 因果関係1 うっかり→商品破壊 因果関係2 商品破壊→価格無効 値札