1968年      十勝沖地震について.

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    1968年      十勝沖地震について

地震の概要 概要    1968年(昭和43年)5月16日09時48分、青森県東部と北海道南西部を中心に震度5以上の地震が襲い、同10時20分ごろから三陸沿岸を中心に津波が襲来した。この地震による被害の特徴は、前日まで三陸沖に停滞した大型低気圧による大雨で地盤がゆるんでいた青森県下のシラス地帯で被害が大きく出た事の他、築後日の浅い近代的鉄筋コンクリート構造物の破壊、石油ストーブ転倒による出火の多発、津波によるタンカーの損傷による重油の流出など、今後の大地震の際に発生が懸念される近代的震災の各種が展示され、防災対策に貴重な教訓を与えたことである。    しかし、幸いにして採暖期を過ぎ農耕期に入ろうとする時期の食事時をはずれた昼間であったため、社会的には大きな混乱もおこらなかった。農業用施設の被害も多くのものは応急復旧により農耕に大きな支障もおこさず、また津波は干潮に向かったときであり、サケ・マス漁船のような大型漁船は出漁した後で、小型漁船は前記低気圧による大しけのため揚陸してあったものが多く、かきその他の養殖用のいかだの流失による被害は大きかったが、人命や船舶の損害はわずかで済んだ。

震源   本震の震源の深さは、地震記象が複雑でS相の験測が困難であったが、0kmと計算された。  発震時 5月16日09時48分             53.0±0.5秒   震央  E143°35′±3′        N 40°41′±1′   深さ 0km規模   マグニチュード 7.9

被害    陸上    この地震による震災が青森県で多発した原因の一つは、県東部のシラス地帯に前日までの3日間に100mm以上の大雨が降り、地盤が軟弱になっていたため、山くずれというより地すべり形式の緩傾斜の崩壊が多かったようである。このため、斜面崩落による耕地埋没のほか、むつ市で農業用の貯水池1、ため池1が決壊、十和田市で農業用導水路破壊などにより農作業に影響を与えた。木造家屋の倒壊も八戸市などで発生したが、地盤などとの関係は従来からいわれていた条件を変えるものではなかった。近代的な鉄筋コンクリート建築物が各地で被害を受け、特に公共建築物が修復不能なまでに破壊されて、世人の驚きを呼んだ。

  沿岸    津波は引潮時に最大波高となったところが多く、八戸市から釜石市にかけてと、浦河・函館など北海道沿岸の海岸では浸水したところがあったが、陸上には特別な被害は生じなかった。被害がすくなくてすんだ原因の一つとして、チリ津波の経験により三陸沿岸の各港に設けられた防潮堤や高地への住宅の移転などが挙げられる。    海上においては冒頭に述べたように船舶の被害が少なくて済んだが、在港中の船舶も敏速に避難して被災をまぬがれたものが多く、平常の津波防災訓練の効果を具現している。以上のように、引潮時に最大波高という幸運もあったが、それ以上に1960年のチリ地震の経験により、この地方の人々が津波防災に積極的な努力をしたことによる効果が大きい。

被害の概要 今回の地震被害の著しかった地域は、人口密度の低い地方であったにもかかわらず50人の死亡者と多数の負傷者を出しているが、死亡者は数人を除いて青森県内において生じたものである。しかも、それらの大部分は、山くずれによって埋没したり、流動化して崩壊する盛土のなかに落ちこんだりしたためのもの、すなわち、いわゆる地盤被害による死亡者である。このような被害の顕著なものは、青森県の東南部、すなわち、青森県八戸市・十和田市・三沢市・三戸郡及び上北郡(三八上北地方と通称する)に集中して発生している。

人的被害 死傷者数719人を数え、その内訳は、死者46人、行方不明2人(のち、遺体となって発見された)重傷者121人、軽傷者550人となっている。過去の著名な大震災の死傷者数に比較すると少ないが十勝沖地震に限ってみた場合は、本県と同じないしは本県より大きな震度を記録した北海道など一部地域よりはるかに多くの犠牲者を出している。これは、尻内から五戸に至る山間部で地すべり、山くずれが各地におこり、多くの犠牲者が出たためである。しかし、地震の発生が日中であったこと、地震による火災件数が29件に達したが大事に至らなかったこと、さらには津波の最強時がちょうど干潮であったことなどは不幸中の幸いであった。このようなことがなかったならば、惨害はさらに増大し、死亡者はもとより負傷者も著しくふえていたであろう。

建物被害 今回の地震による被害はほぼ県下全域にわたって被害が発生しているが、地域によりいろいろ様相が異なっている。被害は、6市38町村に及び、住家の被害は54,265棟、非住家の被害は3,663棟 となっている。 青森県は地震による被害は今まで少なく、一部に津波による被害があり、太平洋岸に大きかった。それだけに地震に対する不安心感、恐怖感それに対する対策は、他県に比べ非常に乏しいものがあった。また、被害地域は13日から3日間、120mmの近来にない大雨が降り、さらにこの地方の地質は洪積層の火山灰でそのうえに軽鬆土「黒ボク」と呼ばれる軽石を含んだ黒土があり、この土に雨水がしみこんで飽和状態になった時点に地震がきて一段と振動がはげしいものとなったとおもわれる。

被害は、地震により倒壊したもの、半壊したもの、一部破損したもの及び床上・床下浸水したものなどであるが、このほか、商店や一般住家などにおいてガラスや戸あるいは塀などに破損を受けたものは、数え切れないほどあった。県南の八戸市では、市庁舎などの高層建築物をはじめ、商店街の建物が軒並みにこわされ、八戸市周辺市町村においても、学校や庁舎などの鉄筋コンクリート造りの建物の被害が大きく、五戸地方では、家屋の倒壊がひどかった。 右の写真はむつ市役所である。この、三階向かって左側がくずれ落ち、天井も窓ワクもメチャメチャになっているのが伺える。

RC構築物のせん断破壊 鉄筋コンクリート造建物において、写真に示すように柱が極めてもろく破壊する、いわゆるせん断破壊が数多く発生した。柱にせん断破壊が生じると、ある階全体が瞬時につぶれる恐れがあるので、人命確保の観点からも必ず避けなければならない。そこで、1971年の建築基準法の改正および日本建築学会の鉄筋コンクリート構造計算規準の改定の際には、そのようなもろいせん断破壊を防止するために、帯筋の間隔を狭くしたり、たくさん入れるようにせん断設計の方法が強化された。