ミクロ経済学I (12)生産者余剰と市場の効率性 2017/6/28 ミクロ経済学I (12)生産者余剰と市場の効率性 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年6月28日
復習 この価格ならば買っても良いと考える金額が支払い意欲 消費者余剰は支払い意欲と実際に支払った金額の差 ミクロ経済学I 12 復習 この価格ならば買っても良いと考える金額が支払い意欲 消費者余剰は支払い意欲と実際に支払った金額の差 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 価格の下落によって消費者余剰は増える 元から買っている消費者は価格下落分だけ利益を得る 新たな買い手の消費者余剰は価格下落分よりも小さい 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
企業の儲けと生産 アルバイトをするとアルバイト代が貰えて嬉しい しかし,疲れたり他の活動ができなくなる 産業経済学B 4 2016/12/12 企業の儲けと生産 アルバイトをするとアルバイト代が貰えて嬉しい しかし,疲れたり他の活動ができなくなる 企業は財を販売することによって収入を得る しかし,財を生産するには費用がかかる ここで考えている費用は既に学んだ機会費用の概念で捉えたもの 生産のために諦めたものの価値が機会費用 収入が費用を上回れば生産を行う 真央のアイスショーの費用が2000円とする 収入が4000円出演する.1000円だと出演しない 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
生産者余剰 収入から費用を差し引いた残りが企業の利益 この残り即ち余剰が生産者余剰 真央はアイスショーを一回出演するか考えている 産業経済学B 4 2016/12/12 生産者余剰 収入から費用を差し引いた残りが企業の利益 この残り即ち余剰が生産者余剰 真央はアイスショーを一回出演するか考えている アイスショーの価格が収入になる アイスショーの価格が7000円ならば真央の余剰は 7000-2000=5000 (円) この5000円が真央の生産者余剰だ 真央の他に羽生,鈴木明子,高橋大輔,村上佳菜子 各々の費用は違うときに販売の決定や余剰は? 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
アイスショーの売り手と費用 売り手 費用(円) 真央 4000 羽生 5000 鈴木明子 6000 高橋大輔 7000 村上佳菜子 8000 産業経済学B 4 2016/12/12 アイスショーの売り手と費用 売り手 費用(円) 真央 4000 羽生 5000 鈴木明子 6000 高橋大輔 7000 村上佳菜子 8000 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
アイスショーの費用のグラフ 明子の 大輔の費用 費用 羽生の 費用 村上の費用 真央の 費用 費用を 低い順に並べる 費用(円) 枚数 1 産業経済学B 4 アイスショーの費用のグラフ 費用(円) 枚数 1 2 3 4 5 明子の 費用 大輔の費用 羽生の 費用 村上の費用 8000 真央の 費用 7000 費用を 低い順に並べる 6000 5000 4000 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
アイスショーのチケットは何枚売れる 各人の費用を小さい額から並べた 価格>費用→ 販売を増やす 価格<費用 → 販売を控える 産業経済学B 4 2016/12/12 アイスショーのチケットは何枚売れる 各人の費用を小さい額から並べた 価格>費用→ 販売を増やす 価格<費用 → 販売を控える 価格が高ければ沢山販売できる 実際に売れる枚数(数量) → 価格=費用 価格が5500円だったら何枚売れる? 売り手の費用から供給表を作る 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 跡見学園女子大学 丹野忠晋
価格帯 費用 売り手の数 売り手 8000以上 8000 5 真央,羽生,明子,大輔,村上 8000から7000 7000 4 産業経済学B 4 2016/12/12 価格帯 費用 売り手の数 売り手 8000以上 8000 5 真央,羽生,明子,大輔,村上 8000から7000 7000 4 真央,羽生,明子,大輔 7000から6000 6000 3 真央,羽生,明子 6000から5000 5000 2 真央,羽生 5000から4000 4000 1 真央 4000未満 いない 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
価格と販売量 価格から販売量が分かる 供給曲線と同じ機能 大輔の費用 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 2枚は売る 真央の 費用 産業経済学B 4 価格と販売量 価格から販売量が分かる 供給曲線と同じ機能 大輔の費用 費用(円) 枚数 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 2枚は売る 8000 真央の 費用 7000 価格は5500円 6000 5500 5000 4000 3枚は売らない 1 2 3 4 5 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
費用と供給量 大輔の費用 真央,羽生が供給 費用曲線の枠線が供給曲線 羽生の 費用 織田の費用 真央の 費用 価格は5500円 供給量 産業経済学B 4 費用と供給量 大輔の費用 真央,羽生が供給 費用曲線の枠線が供給曲線 費用(円) 枚数 羽生の 費用 織田の費用 8000 真央の 費用 7000 6000 価格は5500円 5500 5000 4000 供給量 1 2 3 4 5 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
供給曲線=限界費用曲線 最後の一個の費用が収入(価格)よりも下回る或いは等しいときに販売する 産業経済学B 4 供給曲線=限界費用曲線 最後の一個の費用が収入(価格)よりも下回る或いは等しいときに販売する 価格と費用が一致している費用を持っている売り手は限界的売り手.その販売個数が市場での供給 価格=費用→販売量 これは供給曲線と同じ.販売しようとする数量 この費用曲線は各数量から1単位増えたときに増加する費用.これは限界費用と同じ.限界費用曲線ともいう 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
生産者余剰 生産者余剰は売り手の収入から生産のための費用を差し引いた額である 生産者余剰=収入ー費用 産業経済学B 4 生産者余剰 2016/12/12 生産者余剰は売り手の収入から生産のための費用を差し引いた額である 生産者余剰=収入ー費用 生産者余剰を英語で Producer Surplus と言う 生産者余剰を記号 PS で省略して表す 真央の生産者余剰を正確には個別生産者余剰という 市場全体の生産者余剰を総生産者余剰と呼ぶ 生産者余剰は個別生産者余剰と総生産者余剰の両方の意味でしばしば使われる どちらなのか自分で判断 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
費用と生産者余剰 大輔の費用 真央のPS=5500-4000=1500 羽生のPS=5500-5000=500 明子の 費用 羽生の 費用 産業経済学B 4 費用と生産者余剰 大輔の費用 真央のPS=5500-4000=1500 羽生のPS=5500-5000=500 費用(円) 枚数 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 総生産者余剰 8000 真央の 費用 真央 のPS 羽生 のPS 7000 6000 価格5500円 5500 5000 4000 供給曲線 供給量 1 2 3 4 5 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
生産者余剰の計算 価格が5500円の時のPSの計算 真央の個別生産者余剰=5500-4000=1500 産業経済学B 4 2016/12/12 生産者余剰の計算 価格が5500円の時のPSの計算 真央の個別生産者余剰=5500-4000=1500 羽生の個別生産者余剰=5500-5000=500 総生産者余剰=1500+500=2000 個別を全て足し合わせると総生産者余剰になる グラフにおいて生産者余剰は供給曲線と価格線及び縦軸の間の領域で表現できる 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
産業経済学B 4 供給曲線と収入/2 価格 供給曲線 5500 四角の面積=収入 数量 2 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
産業経済学B 4 供給曲線と費用 価格 供給曲線 5500 台形の面積=費用 数量 2 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
産業経済学B 4 生産者余剰=収入ー費用 収入 - 費用 生産者余剰 = 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
産業経済学B 4 供給曲線と生産者余剰 価格 供給曲線 生産者余剰 5500 数量 2 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
価格の上昇の効果 時給が上がると嬉しい.生産者余剰でどう表現? アイスショーの価格が6500円に上昇した 産業経済学B 4 2016/12/12 時給が上がると嬉しい.生産者余剰でどう表現? アイスショーの価格が6500円に上昇した 真央のPS=6500-4000=2500 真央の生産者余剰は1500円から1000円分増加した 羽生のPS=6500-5000=1500 .PSは1000円分増加 既存の売り手は価格上昇分だけ余剰が増加 新たに鈴木明子が販売する 鈴木明子のPS=6500-6000=500 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
価格上昇と生産者余剰 大輔の費用 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 生産者余剰 大輔の生産者余剰 真央の 費用 新しい価格6500円 産業経済学B 4 大輔の費用 真央の生産者余剰の増加 費用(円) 枚数 明子の 費用 羽生の 費用 羽生の生産者余剰の増加 織田の費用 生産者余剰 大輔の生産者余剰 8000 真央の 費用 7000 新しい価格6500円 6500 6000 5500 元の価格5500円 5000 4000 供給曲線 新しい供給量 1 2 3 4 5 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
価格の上昇は既存と新規の生産者への効果をもたらす 産業経済学B 4 2016/12/12 価格の上昇は既存と新規の生産者への効果をもたらす 既に売っている人には均等に価格上昇分だけの生産者余剰が増える 価格上昇によって新たな生産者が現れる 新たに発生した生産者余剰は価格上昇分よりは小さい 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
価格上昇,供給曲線,生産者余剰 既存の売り手の生産者余剰の増加 新たな売り手の生産者余剰の増加 供給曲線 新価格 P’ 元価格P Q Q’ 産業経済学B 4 価格上昇,供給曲線,生産者余剰 既存の売り手の生産者余剰の増加 新たな売り手の生産者余剰の増加 価格 供給曲線 D E 新価格 P’ 元価格P C B A 元の生産者余剰 数量 Q Q’ 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
消費者余剰と生産者余剰 消費者余剰 P 生産者余剰 Q 価格 供給曲線 需要曲線 数量 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 産業経済学B 4 消費者余剰と生産者余剰 価格 供給曲線 消費者余剰 P 生産者余剰 需要曲線 数量 Q 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
経済厚生 需要曲線と供給曲線の交わる点である完全競争市場の均衡では総余剰が最大化される 経済学では自由な競争は効率をもたらすと考える 産業経済学B 4 経済厚生 経済学では自由な競争は効率をもたらすと考える 価格制限は余剰や不足をもたらした.そのような事態がないだけでなくある種の優れた点を持つ 経済厚生あるいは総余剰とは取引をしている全ての主体の望ましさを表す 買い手と売り手がいた 総余剰は消費者余剰と生産者余剰の和 政府がある場合はそれに政府税収をさらに加える 需要曲線と供給曲線の交わる点である完全競争市場の均衡では総余剰が最大化される 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
産業経済学B 4 総余剰あるいは経済厚生 価格 総余剰 供給曲線 P 需要曲線 数量 Q 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
市場経済の効率性 経済全体を考える総余剰はお金のやり取りは問題ではない 消費者余剰=買い手の便益-支払った金額 産業経済学B 4 市場経済の効率性 2016/12/12 経済全体を考える総余剰はお金のやり取りは問題ではない 消費者余剰=買い手の便益-支払った金額 生産者余剰=受け取った金額-売り手の費用 総余剰=消費者余剰+生産者余剰 =買い手の便益-支払った金額+受け取った金額-売り手の費用 =買い手の便益-売り手の費用 経済全体では費用を上回る便益が創出されたかどうかが重要である 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
効率と公平 総余剰が最大化された状態を効率的という 反対に非効率的であれば経済主体の間で取引をすることによって余剰を増やす余地がある 産業経済学B 4 2016/12/12 総余剰が最大化された状態を効率的という 反対に非効率的であれば経済主体の間で取引をすることによって余剰を増やす余地がある 言い換えればこれ以上取引をしても利益がもう生まれない状態が効率的な状態である 様々な価格は所得分配を変える 他に公平性(衡平性)を考える事もある 効率性はパイをどれだけ大きくするか 公平性はパイをどのように平等に分けられるか 公平性を評価する方が難しい 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
均衡価格と取引量 大輔の費用 イチロー,ダル,マー君が需要 真央,羽生,明子が供給 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 需要曲線 真央の 産業経済学B 4 均衡価格と取引量 大輔の費用 イチロー,ダル,マー君が需要 真央,羽生,明子が供給 費用(円) 枚数 1 2 3 4 5 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 需要曲線 8000 真央の 費用 供給曲線 7000 均衡価格6000円 6000 均衡点 5000 4000 均衡取引量 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
均衡点の総余剰 イチローCS=2000 ダルCS=1000 マー君CS=0 真央PS=2000 羽生PS=1000 明子PS=0 産業経済学B 4 均衡点の総余剰 イチローCS=2000 ダルCS=1000 マー君CS=0 真央PS=2000 羽生PS=1000 明子PS=0 総余剰=2000+1000+2000+1000=6000 大輔の費用 費用(円) 枚数 1 2 3 4 5 明子の 費用 羽生の 費用 織田の費用 8000 真央の 費用 7000 価格は5000円 6000 5000 4000 取引量 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
均衡取引よりも過小 イチローCS=1000 真央PS=3000 ダル,マー君は購入しない.羽生,明子は供給しないとする 総余剰=4000 産業経済学B 4 均衡取引よりも過小 イチローCS=1000 真央PS=3000 ダル,マー君は購入しない.羽生,明子は供給しないとする 総余剰=4000 競争均衡の総余剰 よりも小さい 大輔の費用 費用(円) 枚数 1 2 3 4 5 明子の 費用 価格7000円 数量一枚 羽生の 費用 織田の費用 8000 真央の 費用 7000 価格は5000円 6000 5000 4000 取引量 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
均衡取引よりも過大 大輔の費用 イチローCS=3000 ダルCS=2000 マー君CS=1000 内村CS=0 真央PS=1000 産業経済学B 4 均衡取引よりも過大 大輔の費用 イチローCS=3000 ダルCS=2000 マー君CS=1000 内村CS=0 真央PS=1000 羽生PS=0 明子PS=-1000 大輔PS=-2000 総余剰=4000 競争均衡の総余剰 よりも小さい 費用(円) 枚数 1 2 3 4 5 明子の 費用 価格5000円 数量4枚 羽生の 費用 織田の費用 マイナス 8000 真央の 費用 7000 価格は5000円 6000 5000 4000 供給量 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
競争均衡の総余剰は最大化される 競争均衡は総余剰を最大化させるという意味で望ましい性質を持っている 競争均衡の総余剰=6000 産業経済学B 4 2016/12/12 競争均衡の総余剰は最大化される 競争均衡の総余剰=6000 過小な生産の時の総余剰=4000 過大な生産の時の総余剰=4000 他の取引量でも競争均衡の総余剰を上回ることはできない 競争均衡は総余剰を最大化させるという意味で望ましい性質を持っている 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
総余剰あるいは経済厚生 取引量を減らした時の総余剰 便益が費用を上回る から生産を増やした 便益 方が良い 費用 P1 P Q1 Q 価格 産業経済学B 4 総余剰あるいは経済厚生 価格 取引量を減らした時の総余剰 需要曲線 供給曲線 P1 便益が費用を上回る から生産を増やした 方が良い 便益 P 費用 数量 Q1 Q 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
総余剰あるいは経済厚生 便益が費用を下 回るから生産 を減らした 方が良い 総余剰 費用 P2 P Q2 価格 需要曲線 マイナス部分 便益 産業経済学B 4 総余剰あるいは経済厚生 便益が費用を下 回るから生産 を減らした 方が良い 価格 需要曲線 総余剰 マイナス部分 P2 P 便益 費用 供給曲線 数量 Q2 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
なぜ均衡点で総余剰は最大か? 需要曲線と供給曲線の交点では便益(支払意欲)と費用が等しい これは総余剰を最大化させている.なぜか? 産業経済学B 4 2016/12/12 なぜ均衡点で総余剰は最大か? 需要曲線と供給曲線の交点では便益(支払意欲)と費用が等しい これは総余剰を最大化させている.なぜか? 均衡取引量よりも過小な生産では,便益が費用を上回る.増産は総余剰を増やすことを意味 均衡取引量よりも過大な生産では,便益が費用を下回る.減産は総余剰を増やすことを意味 均衡点では生産量を増やしても減らしても総余剰は増えない.よって総余剰は最大になっている 2017/6/28 ミクロ経済学I 12 丹野忠晋
産業経済学B 4 復習/1 価格 供給曲線 消費者余剰 総余剰 P 生産者余剰 需要曲線 数量 Q 2017/6/28 ミクロ経済学I 12
復習/2 消費者余剰は取引による消費者の利益 生産者余剰は取引による生産者の利益 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 産業経済学B 4 消費者余剰は取引による消費者の利益 生産者余剰は取引による生産者の利益 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間 価格の上昇によって生産者余剰は増える 元から売っている生産者は価格上昇分だけ利益を得る 新たな売り手は価格上昇分よりも小さい生産者余剰が発生する 総余剰は消費者余剰と生産者余剰の和 均衡点では総余剰が最大化される 2017/6/28 ミクロ経済学I 12