研究倫理 サイバーセキュリティ基礎論
CITI Japan の教材を参考利用 CITI Japan とは Collaborative Institutional Training Initiative 科学研究および医学教育のためのeラーニング・プ ログラム 研究倫理教育
目次 責任のある研究活動 研究における不正行為 共同研究 利益相反 オーサーシップ ピア・レビュー(Peer review)
研究倫理=責任のある研究活動 研究とは 共通して持つべき価値観 既存の知識の中に感じた疑問点を拾い上げ、それに対し て科学的な実験を行ない、その結果を踏まえて新たな知 見を得る 共通して持つべき価値観 正直さ 情報を正直に伝え、誠心誠意を尽くす。 正確さ 得られた所見を誤りなく正確に伝える。 効率 資源を無駄なく有効に使う。 客観的 事実をそのまま表現する。個人的な所見を加えない。
責任のある研究活動のためのルールは存在しない - 事例 - 科学者の行動規範 (日本学術会議) 「科学者は、自らが携わる研究の意義と役割を公開 して積極的に説明し、その研究が人間、社会、環境 に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その 結果を中立性・客観性をもって公表すると共に、社 会との建設的な対話を築くように努める」 研究活動の不正行為に関する特別委員会報告 (文部科学省) 「研究成果の発表とは、研究活動によって得られた 成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示し つつ、研究者コミュニティーに向かって公開し、そ の内容について吟味・批判を受けることである」
アメリカと日本とで異なる政府による規制 アメリカ 日本 研究者の問題を議会が把握し、議会が規制を設ける 明確な罰則規定 行政と研究者の議論を通じて研究の規制を決める 曖昧な罰則規定 日本は、研究の不正行為防止のための規制は、本人の倫理観に依存した緩やかなものになっている。
研究における不正行為 捏造・改ざん・盗用 捏造とは、存在しないデータ、研究成果等を作成す ること。 改ざんとは、研究資料、機器・過程を変更する操作 を行い、データ、研究活動によって得られた結果等 を真正でないものに加工すること。 盗用とは、他の研究者等のアイディア、分析・解析 方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研 究者の了解又は適切な表示なく流用すること。
疑わしい研究行為の例 研究過程や結果を研究ノート(含・電子ファイル)に(正確に)記録し ない。 研究ノート、重要な研究データ、研究資料を既定の期間、保管しない。 既に発表した研究記録や、他の研究者にとって有用な研究記録を後日見 返せるように保管しない。 研究成果への貢献がないのに共著者に加える(ギフト・オーサーシッ プ)。 研究成果への貢献があるのに共著者に加えない(ゴースト・オーサー シップ)。 研究不正の調査に対して、研究ノート、重要な研究データ、研究資料の 提供を拒否する。この場合、拒否行為自体が研究不正行為そのものだと 判定される可能性は大きい。 研究指導教員の学生・大学院生への研究指導を十分にしない。 研究室の指導教員が、学生・大学院生のデータ・研究成果を搾取する。 先行研究を適切に引用しない。
(企業との)共同研究 共同研究で起き得る問題 個々の研究者で異なる姿勢 領域内および領域をまたがった際の研究スタイルの 違い 研究データや成果の共有に関する大学と企業の姿勢 の違い 企業戦略と研究者の経済的ニーズの違い
共同研究を行うときの注意 研究開始に先立つ徹底調査 コミュニケーション 役割分担とその流動性についての認識を共有して おく オーサーシップ(論文著者となる資格)について 事前に話し合っておく データや研究資材、試料の取り扱いについて事前 に話し合っておく リーダーシップを確立する 各研究者が担う責任を明確にしておく
利益相反 (りえきそうはん) 利益相反とは 金銭やその他の個人的な利害を考慮することによっ て、専門家として行う判断に妥協もしくは偏向が生 じ、またその客観性が失われる可能性のある状況
個人レベルで生じ得る利益相反 学問上の思い入れ(形を有さないもの)による 場合が多い。 持論を証明したいという願望。 本人が信じる仮説に合致しないデータの黙殺。 特定の理論に対する過度の信頼。 自分が好むグループが唱える理論に対する特別な思 い入れや偏重。 成果を得なければならない、という内外からのプ レッシャー。
オーサーシップ オーサーシップのルール(医学雑誌編集者国際委員 会International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE)の例) 研究の構想・立案、データの収集、あるいはデータの解 析および解析結果の解釈のいずれかに実質的に貢献して いる。 論文の原稿を書くか、その論文の内容に関わる極めて重 要な校正・改訂作業(リバイズ)にかかわっている。 掲載される最終版の原稿の中身を理解し、承認している。 論文のあらゆる側面について、論文の正確性・真正性に 疑義が寄せられたときに適切に説明することができる。
オーサーシップとして認められない例 研究資金の獲得、研究グループのとりまとめ、 業務補助全般や執筆補助、技術的な編集作業や 言語面における編集や校閲作業のいずれについ ても、それのみでは、オーサーシップに値する 貢献とは認められない。 謝辞に書くべき
ピア・レビュー(Peer review) 同じ分野の専門家による査読・審査 科学研究では同じ分野の専門家同士が互いに査 読・審査し合うことが最も質が高く、公平な評 価に至るものとして、今日広く受け入れられて いる。 査読 シングル・ブラインド 著者には査読者の名前を伏せる ダブル・ブラインド 著者・査読者が互いに誰であるかを知らされない
査読者の倫理 守秘義務 建設的な批判 適格性 不偏性・公正性 利益相反の開示 即応性
小テスト:以下の説明で研究倫理ともっとも関係の薄いものを選んで下さい。 評価の時に自分の予想に近いデータのみを選ん だ。 予算を流用して別の目的で使用した。 他人の結果を写して論文を作成した。 共同研究先の企業の売上を無視して自分のやり たい研究のみを行なった。
小テスト:以下の説明で利益相反にあたるものを2つ選んで下さい。 入札で、自分のセンスに合わない企業に悪い点 をつけた。 査読で自分が信じていない証明を用いた論文に 悪い点をつけた。 株を所有している企業が参加する競争の審査員 になった。 時間がなかったので査読の審査を慎重にしな かった。
小テスト:研究行為としてふさわしくないものを3つ選んで下さい。 研究のデータを公表しない。 研究資金を獲得した先生を共著に入れなかった。 参考となる研究に言及しない。 研究指導した先輩が、後輩の作ったデータを勝 手に使った。
小テスト:研究の不正行為が昔に比べて多くなった理由として最も適切なものを1つ選んで下さい。 世の中が不景気になった。 研究者が注目を浴びるようになった。 世の中のグローバル化が進んだ。 昔よりも情報が多くなったから。
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