不規則抗体の意義・ 検査法 名古屋大学輸血部 山本晃士
不規則抗体のスクリーニングと同定 Ｌａｎｄｓｔｅｉｎｅｒの法則に従わない血液型関連抗体を不規則抗体という。 妊娠・出産や以前に受けた輸血などにより、ＡＢＯ血液型以外の血液型抗原に感作されて抗体が産生され、溶血性副作用を起こすことがある。 種々の抗原を持つＯ型赤血球に対する検体血清の凝集能により、これらの抗体をスクリーニングし、検出された場合には、相手の抗原を同定する。
不規則性抗体スクリーニング検査 血球試薬 使用するスクリーニング用血球は臨床的に重要なすべての抗体に対応する抗原を持っていることが必須 注意点 ①不規則性抗体スクリーニング検査によってすべての抗体を検 出している訳ではない．パネル血球はすべての抗原が含ま れていない（低頻度抗原は含まれない場合がある） ②抗体検査時に抗体が存在していなかったり，検出不可能な低 力価の抗体，輸血後に出現する抗体は検出できない（遅発 性輸血副作用を引き起こす原因となる） ③すべてに反応が認められた場合は冷式抗体，連戦形成，自 己抗体，反応増強剤による反応などが疑われるので精査し なければならない
不規則抗体スクリーニングに使用する血球 Cell 2 Cell 1 患者血清 患者血清 O D，cc，EE Fyb, Fyb Jka, Jka ・・・・ O D，CC，ee Fya, Fya Jkb, Jkb ・・・・ + 患者血清 + 患者血清
不規則性抗体同定の意義 不規則抗体スクリーニング検査において陽性反応（凝集，溶血）が認められた場合、その特異性を同定しなければならない。その結果、抗体の臨床的な重要性（輸血副作用・新生児溶血性疾患の原因・適合率）を確認できる。
不規則性抗体同定検査（１） 試薬血球 通常は市販の抗体同定用パネルを使用する．検査法は抗体スクリーニング検査で陽性反応を示した方法を中心にして行う． ※被検血漿が充分量を確保出来ない場合はスクリーニングで推定される抗体に対する血液型抗原陽性3種類と陰性32種類パネルを使用する（反応が一致したときその抗体の確率は95％となる）
不規則性抗体同定検査（２） 同定検査において抗体の特異性を確認するための方法 ①反応相の注意（低温，37℃，低温〜37℃，検査法） ②反応強度に応じた検査結果の見直し ③追加パネル血球の選択 ④判定用抗血清による患者血球のタイピング ⑤吸着解離試験 ⑥交差処理赤血球の利用 ⑦ＡＥＴ他ＤＴＴによる抗原の不活化 ⑧低頻度抗原に対する抗体解離 ⑨患者の情報：輸血歴，妊娠歴，既往歴，使用中の薬剤などの 情報
直接抗グロブリン試験、間接抗グロブリン試験 抗ヒトグロブリン試薬 ＋ ＋ 患者血清 抗赤血球抗体 (IgG or C3) ＋ 患者赤血球 O型赤血球 赤血球表面の抗赤血球抗体を検出する方法 血清中の抗赤血球抗体を検出する方法