○仲摩 翔太 1,上野 孝司 2,西野 貴裕 2, 高橋 明宏 3, 北野 大 1

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大気中有機フッ素化合物の 一斉調査について 東條俊樹 ( 大阪市立環境科学研究所 ) 竹峰秀祐 ( 兵庫県環境研究センター ) e- シン ポ.
・北野 圭介 ・阿手 貴皓 ・杉森 哲也 ・市村 祐樹 ・得野 翔太. はじめに 金沢高等学校科学部の過去の研究 ・高校化学実験におけるホルムアルデヒド汚染と その 除去(東他 2000)。 明らかになったこと HCHO樹脂や銀鏡反応等で高濃度のHCHO の発生 する。還元剤としてブドウ糖を代用するとよい。
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
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○仲摩 翔太 1,上野 孝司 2,西野 貴裕 2, 高橋 明宏 3, 北野 大 1 都内地下水、湧水における 有機フッ素化合物の汚染実態 Research for the pollution of PFCs in the groundwater and spring water in Tokyo  ○仲摩 翔太 1,上野 孝司 2,西野 貴裕 2, 高橋 明宏 3, 北野 大 1 1 明治大院理工, 2 (公財) 東京都環境科学研究所, 3 現・東京都下水道局

PFOS,PFOA と合せて 13 類縁物質の分析を 研究目的 ① PFOS 2009年5月にPOPs条約に追加 用途限定 PFOA 2006年よりEPAによる排出量や製品中の 含有量を抑制する管理プログラムを策定 河川等の表流水と異なり、地下水は流れが緩慢で一度 汚染されると回復しにくい 都内地下水でも、PFOS が高濃度で検出された事例1)がある まずはじめに、研究目的です。PFOS,は2009年5月にPOPs条約に追加され、用途限定で規制されています。また、PFOAは2006年よりアメリカ環境保護庁による排出量や製品中の含有量を抑制する管理プログラムを策定しております。これらにより、PFOS,PFOAの濃度は減少傾向になってきましたが、河川等の表流水と異なり、地下水は流れが緩慢で一度汚染されると回復しにくいです。また都内地下水でもPFOSが高濃度で検出された事例があります。本研究では、PFOS,PFOAと合せて13類縁物質の分析を行い、都内水環境における実体調査を行いました。 PFOS,PFOA と合せて 13 類縁物質の分析を 行い、都内水環境における実態調査 1)Michio M. et al. (2009)Environ. Sci. Technol., 43, 3480-3486

都内地下水・湧水調査地点 ② 期間:平成 23年 8 月~ 9 月 地点: 湧水 43 地点 地下水 57 地点 対象に採取・分析 都内地下水、湧水の調査地点です。 期間は平成23年8月~9月、地点 湧水 43地点、地下水57地点を対象に採取・分析を行いました。 期間:平成 23年 8 月~ 9 月 地点: 湧水 43 地点      地下水 57 地点 対象に採取・分析

分析方法 ③ 分析方法です。水試料に内標準混合溶液を添加し、pHを4に調整します。その後必要に応じて濾過し、超音波抽出、固相抽出を行います。 そして、ギ酸水溶液、ギ酸酸性メタノール溶液で洗浄後、1%アンモニア含有アルカリ性メタノールで溶出し、以下、5mlに濃縮、1ml定容後、LC/MS/MSで分析を行います。

分析条件 ④ HPLC 部 装置 Waters 製 Alliance 2695 カラム CERI 製 L-column 2-ODS (φ 2.1 mm × 150 mm. 粒径 3.5 μm) 移動相 10 mM 酢酸アンモニウム溶液 アセトニトリル (55:45)      流速 0.2mL / min カラム温度 40 ℃ 試料注入量 10 μL MS 部 装置 Waters 製 Quattro Premier XE 分析条件です。移動相には酢酸アンモニウム溶液、アセトニトリルを用いました。 HPLC部 流速2ml/min、カラム温度40℃、試料注入量10μL MS部  測定モードMRM、イオン源モード 120℃ 脱溶媒温度 350℃ です。 イオン化法 ESI (ネガティブモード) 測定モード MRM イオン源モード 120 ℃ 脱溶媒温度 350 ℃

結果と考察① ⑤ 地下水中 PFCs 分析結果 湧水中 PFCs 分析結果 区部 多摩地域 業態による排出物質の相違 事業所の業種により主成分を占める 物質が異なり、業態ごとの特徴がある2) 結果と考察です。 左に地下水中PFCs分析結果、右に湧水中PFCs分析結果の表を示します。 赤文字が都内区部、青文字が多摩地域を示しております。 この結果から多摩地域で高濃度検出、地点により高い濃度の物質が異なっていました。 この事から事業所の業種により主成分を占める物質が異なり、業態ごとの特徴があり、業態による排出物質の相違であると考えられます。 業態による排出物質の相違 2) 西野貴裕ほか:都内水環境における有機フッ素化合物の 汚染源解明調査,東京都環境科学研究所年報,pp3-9 (2009)

地点により直鎖体と分岐異性体の比率が大きく異なっていた PFOS のピーク形状について ⑥ また、PFOSのクロマトグラムに注目しました。こちらがそのクロマトグラムとなっています。 Aが西東京市地下水、Bが新旭橋河川水、Cが小金井市湧水、Dが港区湧水です。手前のピークがPFOS直鎖体ピーク、後ろのピークが分岐異性体ピークとなっています。これらから、地点により直鎖体と分岐異性体のピークが逆転する地点がありました。地下浸透の過程で、土壌に対する親和性の違いだと考えました。 逆転する地点あり 地点により直鎖体と分岐異性体の比率が大きく異なっていた 地下浸透の過程で、土壌に対する親和性の違いと考察

土壌カラム浸透実験 ⑦ 赤玉土 50ppb PFOS 1mL+水 19mL 水 20mL ・ ・ 0.5ppb PFOS 20ml ・ 土壌カラム浸透実験  ⑦ ① PFOS が工場から、雨水や河川水に  より地下水に浸透するケース       ② PFOS が工場から継続的に   流出するケース       赤玉土 50ppb PFOS 1mL+水 19mL 水 20mL     ・     ・  0.5ppb PFOS 20ml     ・ 土壌カラム浸透実験です。カラムに関東ローム層を形成している赤玉土を詰め条件を変えて実験を行いました。 ①の条件はPFOS が工場から、雨水や河川水により地下水に浸透するケースで、50ppb FFOS1mlに水19mlを混合した物を流し、以下水20mlの水を流し続け、20mlごとにフラクションとしました。 ②の条件はPFOS が工場から継続的に流出するケースで、0.5ppb PFOS 20ml を流し続け、20mlごとにフラクションとしました。       20mL ごとに フラクションとする 20mLごとにフラクションとする

結果と考察② 変化する可能性のあることが示唆 ⑧ PFOS クロマトグラムの変化 土壌浸透の過程で、PFOS の直鎖体と異性体の比率が 分岐異性体ピーク 直鎖体ピーク 結果と考察です。左が先ほどの①の条件結果、右が②の条件結果となっています。この結果から、両方の条件で、フラクションを積み重ねる事で、分岐異性体が最初に出て、徐々に直鎖体のピークが現われてくる傾向にあります。 このことから、土壌浸透の過程で、PFOSの直鎖体と異性体の比率が変化する可能性が示唆されます。 図 4 PFOS クロマトグラム 左図:①の条件結果 右図:②の条件結果 土壌浸透の過程で、PFOS の直鎖体と異性体の比率が 変化する可能性のあることが示唆

まとめ 都内地下水、湧水の汚染実態 土壌カラム浸透実験 ⑨ 業態による排出物質の相違 地下浸透の過程で、土壌に対する親和性の違い ① 地点により最も濃度の高かった物質が異なっていた 業態による排出物質の相違 ② 地点により直鎖体と分岐異性体の比率が大きく異なる 地下浸透の過程で、土壌に対する親和性の違い 土壌カラム浸透実験 まとめです。都内地下水、湧水の汚染実態では、地点により最も濃度の高かった物質が異なっていたことから、業態による排出物質の相違、また地点により直鎖体と分岐異性体の比率が大きく異なっていました。地下浸透の過程で、土壌に対する親和性の違いだと考え、土壌カラム浸透実験を行い、PFOSの直鎖体と異性体の比率が変化する可能性のあることが示唆されます。そのことによって、 現在のその地点の汚染状況を把握する事ができ、あとどのくらい汚染が続くかの汚染期間を推測することに有効となります。もう少し詳しくお話しますと、 土壌浸透の過程で、PFOS の直鎖体と異性体の比率が変化する 可能性のあることが示唆 汚染状況・汚染期間の把握に有効

⑩ 汚染状況把握 汚染期間予測 浸透の流れ 土壌カラム浸透実験 ②の条件 土壌カラム浸透実験 ②の条件 汚染状況把握 汚染期間予測 左がさきほどの土壌カラム浸透実験結果の②の条件のクロマトグラム、右のクロマトグラムが左上からA:多摩川日野橋河川水、B:小金井市湧水、C:港区湧水のクロマトグラムとなっています。 こちらの土壌カラムでは先ほどの結果からフラクションを積み重ねるごとで土壌の浸透の流れが分かりました。 A,Bのクロマトグラムではフラクション46に相当し、Cではフラクション46に相当しています。この事から、現在の汚染状況を把握する事ができ、今後どのくらい汚染が続くのかの汚染期間を予測する事が出来るという結論になります。 浸透の流れ

・水中に生息する生物に含まれる有機フッ素化合物の調査 ⑪ 今後の予定 ・水中に生息する生物に含まれる有機フッ素化合物の調査 PFCs 難分解性 生物蓄積性 河川・海 発生源 ヒトへの影響 食物連鎖 今後の予定です。 工場などのPFCs発生源から難分解性、生物蓄積性の特性から河川・海等に含まれ、水中の生物の食物連鎖、生物濃縮によりヒト健康への影響が考えられため、今後は水中に生息する生物に含まれる有機フッ素化合物の調査を行う予定です。 生物濃縮