高低点法・ビジュアルフィット法・最小自乗法 高低点法・ビジュアルフィット法・最小自乗法は過去のデータを用いる ・ 判断よりも確かな証拠(過去のデータ)に基づいている。 ↓ 工学的分析手法より客観的である ・ 1期間のコストと活動より多くの情報を利用 勘定科目分析より客観的である ただし、これら3つの方法では多くの過去のコストデータが必要となるので、勘定科目分析や工学的分析がコストビヘイビア測定の主要な方法であることにかわりはない
問題点と注意事項 製品・サービス・技術・組織はグローバル競争の激化に応じて急速に変化 ・ 問題点 製品・サービス・技術・組織はグローバル競争の激化に応じて急速に変化 ・ 問題点 ・ 十分な過去のデータを収集するまでに、データが陳腐化 ・ 組織の変化→生産工程の変化→製品の変化 ・ 注意事項 ・ 予測しようとしている将来の環境は、データが得られた過去の 環境と同じままであるかどうか ・ 過去のデータには、分かっていれば無くせたはずの過去の不能 率が隠れていることにも注意
例示のための過去データ 高低点法、ビジュアルフィット法、最小二乗回帰法を説明するに当たっては、前述のParkview Medical Centerの施設メンテナンス部門費の、過去データを利用する 以下の表は、施設メンテナンス部門費と19x8年度に提供した患者日数について収集した月次データを示す
高低点法 HIGH-LOW METHDO 過去のコストデータから線形の原価関数を測定する3つの方法のうち 最も簡単 第1ステップ 高低点法 HIGH-LOW METHDO 過去のコストデータから線形の原価関数を測定する3つの方法のうち 最も簡単 第1ステップ ・ 過去のデータの点をグラフ上にプロット → 高低点法では、最高の活動の点と最低の活動の点に着目
高低点法 (続き) 第2ステップ ・最高の活動の点と最低の活動の点を直線で結ぶ 高低点法 (続き) 第2ステップ ・最高の活動の点と最低の活動の点を直線で結ぶ 注:どちらかの点の1つが「外れ値」であれば、次に高い次動点か次 に低い次動点を用いる
高低点法 (続き2) 第3ステップ ・先ほどの直線を、グラフの縦(Y)軸線まで伸ばす 高低点法 (続き2) 第3ステップ ・先ほどの直線を、グラフの縦(Y)軸線まで伸ばす → このとき延長部分は、コストが正常操業圏外では線形でないか もしれないことを示すために点線になっていることに注意 ・直線とY軸が交差する点は、固定費の見積額をしめす 傾き:V 切片:F
高低点法 (続き3) 高低点法で切片と傾きを知る最も明確な方法は、代数を利用する 傾き:1患者日当たりの変動費 高低点法 (続き3) 高低点法で切片と傾きを知る最も明確な方法は、代数を利用する 傾き:1患者日当たりの変動費 =コストの変化量÷活動の変化量 =(47,000-17,000)÷(4,900-1,200) =30,000÷3,700 =8.1081㌦
高低点法 (続き4) 切片:月間固定費(F) =準変動費総額-変動費総額 X(高点):F=47,000-8.1081×4,900 高低点法 (続き4) 切片:月間固定費(F) =準変動費総額-変動費総額 X(高点):F=47,000-8.1081×4,900 =7,270㌦ X(低点):F=17,000-8.1081×1,200 従って、高低点法で測定した施設メンテナンス費関数は Y=7,270㌦+(8.1081㌦×患者日数)
高低点法 (続き5) 高低点法の良い点・悪い点 ・良い点: ・容易に利用できる 高低点法 (続き5) 高低点法の良い点・悪い点 ・良い点: ・容易に利用できる ・コストドライバーの変化がどのように総コストを変化させるか容易 に説明できる ・悪い点: ・信頼性が低い ・データ点を多く収集しても、2期の原価実績を利用するので、非効 率な情報利用となる
ビジュアルフィット法 ビジュアルフィット法は ・ 利用可能な全てのデータを利用できる ・ 高低点法よりも信頼性が高い
ビジュアルフィット法 (続き) 第1ステップ ・利用可能な全ての点をプロットする
ビジュアルフィット法 (続き2) 第2ステップ ・目分量で直線を当てはめる
ビジュアルフィット法 (続き3) 第3ステップ ・ 直線をグラフの縦軸と交差するところまで伸ばす F=10,000ドル
ビジュアルフィット法 (続き4) 原価関数 ・ Y=F+VX (Y:総額 F:固定費 V:変動費 X:日数におけるコストドライバー活動) ビジュアルフィット法 (続き4) 原価関数 ・ Y=F+VX (Y:総額 F:固定費 V:変動費 X:日数におけるコストドライバー活動) ・ F:固定費 グラフより F=10,000㌦ ・ V:変動費 1:ある活動量(例えば1,000患者日)を選択 2:その活動量における総原価($17,000)を見る 3:変動費(=総コストー固定費)を活動量で割る 変動費=($17,000-$10,000)÷1,000患者日 =$7/患者日
ビジュアルフィット法 (続き5) ビジュアルフィット法による線形の原価関数は Y=$10,000/月+($7×患者日)
ビジュアルフィット法 (続き6) 良い点・悪い点 ・良い点 ・ 全てのデータを利用できる ・ 簡単に行える ビジュアルフィット法 (続き6) 良い点・悪い点 ・良い点 ・ 全てのデータを利用できる ・ 簡単に行える ・ 最小自乗回帰が統計を用いて達成しようとすることの、よい手 始めとなる ・悪い点 ・ 直線の配置、固定費、変動費の測定が主観的 →実務ではあまり利用されない
最小自乗回帰法 統計を用いて全てのデータに原価関数をフィットさせることにより、 客観的に原価関数を測定すること 客観的に原価関数を測定すること 単純回帰 simple regression ・ 原価関数の測定にあたり、1つのコストドライバーを利用すること 多重回帰 multiple regression ・ 1つのコストに複数のコストドライバーを利用する分析
最小自乗回帰法 (続き) 回帰分析は ・ 他の原価測定手法よりも信頼性の高いコストドライバーを 測定する 最小自乗回帰法 (続き) 回帰分析は ・ 他の原価測定手法よりも信頼性の高いコストドライバーを 測定する ・ 原価見積の信頼性に関する重要な統計情報も得られる ↓ ・分析担当者は、原価尺度の信頼性を評価し、最善のコストドラ イバーを選択することができる
最小自乗回帰法 (続き) 決定係数R2 ・ R2が0の場合コストドライバーがコストを全く説明していない 最小自乗回帰法 (続き) 決定係数R2 ・ コストの変化のうち、どれだけがコストドライバーの変化によって 説明されるかを示す →実際のコストをデータに対する原価関数の適合度を評価する ため ・ コストドライバーをよく説明している場合ほどデータ点は直線に近 い 0<R2<1 ・ R2が0の場合コストドライバーがコストを全く説明していない ・ R2が1の場合コストドライバーがコストを完全に説明している
最小自乗回帰法 (例示) コストドライバーを患者日数とした場合
最小自乗回帰法 (例示) 第1ステップ ・ 考え得るコストドライバーのそれぞれに対してコストをプロットする なぜか? 最小自乗回帰法 (例示) 第1ステップ ・ 考え得るコストドライバーのそれぞれに対してコストをプロットする なぜか? 1:データが非線形の傾向であることが明らかになるかもしれない 2:「外れ値」の識別に役立つ(ストライキ期間や自然災害)
患者日数によって説明された施設メンテナンス部門費 最小自乗回帰法 (例示) 表計算ソフトウェアにより、以下の数値を導ける 患者日数によって説明された施設メンテナンス部門費 回帰アウトプット 定数 constant $9,329 Yの推定値の標準誤差 standard error of Y estimate $2,145,875 R2 0,9546625 観察数 No. of observations 12 自由度 degrees of freedom 10 X係数 X coefficient 6,9506726 係数の標準誤差 standard error of coefficient 0.478994
最小自乗回帰法 (例示) 固定費の値は、「定数constant」や「切片intercept」と呼ばれる 最小自乗回帰法 (例示) 固定費の値は、「定数constant」や「切片intercept」と呼ばれる →データより、固定費は$9,329/月 変動費の値は、「X係数」と呼ばれる →データより、患者日当たり$6.9506726
最小自乗回帰法 (例示) 線形の原価関数は 施設メンテナンス部門費=$9,329/月+$6,951×患者日 すなわち 最小自乗回帰法 (例示) 線形の原価関数は 施設メンテナンス部門費=$9,329/月+$6,951×患者日 すなわち Y=$9,329/月+$6,951×患者日 決定係数R2は0.955があらわす意味 ・ 患者日数が施設メンテナンス部門費を極めてよく説明している ・ 患者日数が施設メンテナンス部門費の変化の95.5%を説明
最小自乗回帰法 (例示2) コストドライバーを病室の部屋代にした場合
病院の部屋代によって説明された施設メンテナンス部門費 最小自乗回帰法 (例示2) 表計算ソフトウェアにより、以下の数値を導ける 病院の部屋代によって説明された施設メンテナンス部門費 回帰アウトプット 定数 constant -$8,627.01 Yの推定値の標準誤差 standard error of Y estimate $7,045,371 R2 0,511284 観察数 No. of observations 12 自由度 degrees of freedom 10 X係数 X coefficient 0.011939 係数の標準誤差 standard error of coefficient 0.003691
最小自乗回帰法 (例示2) R2の値が、0.511284より →病院の部屋代を利用した原価関数は、患者日数を利用した原価関 数ほどは施設メンテナンス部門費に適合していない
各アプローチの整理 では最後に、各アプローチによる原価関数を比較する 工学的分析 Y=10,000㌦+(5㌦×患者日数) 勘定科目分析 Y=10,000㌦+(5㌦×患者日数) 勘定科目分析 Y=9,673㌦+(7.5㌦×患者日数) 高低点法 Y=7,270㌦+(8.108㌦×患者日数) ビジュアルフィット法 Y=10,000㌦+(7㌦×患者日数) 最小二乗回帰法 Y=9,329㌦+(6.951㌦×患者日数) マネージャーは、どのアプローチによって測定された原価関数を信頼すべきなのであろうか?
考察~勘定科目分析と回帰分析の比較 各方法間の結果の違いを検討する 勘定科目分析と回帰分析を用いて、正常操業圏の境界に近い1,000患者日と5,000患者日における、施設メンテナンス費総額を予測してみることにする
予測結果
結論 低い患者日水準ではどちらもほぼ同じ原価予測額となるが、高い患者日水準になるにしたがって、予測額の差は増大する マネージャーは、どちらの予測額を信頼するであろうか? 回帰分析による原価測定値は、統計的分析という基礎があることから、おそらく他の方法よりも信頼性が高い 従って、回帰分析による原価関数を基にした原価予測額の方を、信頼するであろう