2011 行動分析学特論(5) 問題行動への対処(1)消去、罰、分化強化 2011 行動分析学特論(5) 問題行動への対処(1)消去、罰、分化強化 HP:「望月昭のホームページ」 http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~mochi/ ブログ: 「対人援助学のすすめ」 http://d.hatena.ne.jp/marumo55/
問題行動への対処 1)罰、消去、NCR: 当該行動を減らす --------------------------------------------------- 他の行動を分化強化 2)DRO、DRI : 3)DRA→ Positive Behavior Support (PBS) 好ましい行動に「置き換えて」増やす ----------------------------------------------------- ・4)文脈変換!! 問題行動から離れろ! 応用行動分析の金科玉条に徹すると・・・
1)消去と罰 Lovaas & Simmonms (1969)
ロバースによる状況・背景説明 自傷ケースに対するトリートメントの多くは「薬物療法」と「心理セラピー」(interpersonal therapy)、時にはそれに「電気ショックセラピー」が組み合わされることがあった。しかし、それらの効果は実証されていない。おそらく悪化させている場合もあるのではないか? 先行した我々の事例(Lovaasら, 1965)では自傷行動は、社会的注意(atttension)で強化される学習された社会的行動であることを示唆している(p.143)。
ロバースによる罰や消去を使った理由説明: 嫌悪刺激の使用も消去(無視)も倫理的問題がある。問題行動とは相容れない行動を構築する事が最も望ましい。しかし対象児が治療後に戻る州立病院では、望ましい行動を維持する環境ではない(人手もない)。そもそも、そうした環境が、自傷行動を維持していると思われる。 であれば、可能な選択肢は、「無視」による消去手続きか「強い嫌悪刺激」による行動抑制となる。
対象児: 3名ともに自傷の最悪のケース。 John(8歳、IQ=24):無発語、便コネ(食)、異食 2歳から自傷、拳でこめかみや額を打つ。悪化して7歳で入院。入院中、腕と脚を拘束。 鎮静剤投与も効果なし。UCLAに入院した時点では、蹴る、叫ぶなどの行動あり。拘束時に落ち着くようになるが、なくなると再開。
自傷に対する消去手続き 90分の間「消去手続き」 →先行刺激(大人)が存在しないので一般的な意味での「消去」とはやや異なる
John :行動が停止するまで9000回の自傷あり。 Gregg:反応は比較的少ないが時間がかかる。 消去は、Johnのように比較的短時間で行動を減少させる事例少ない。 また多くのケースで、場面間で効果は般化しない。 深刻な事態に陥る可能性あり:嫌悪刺激による「罰」が適当と思われる(p.147)。
John: ●ふたつの場所でトリートメント(5分と10分) 罰セッション(消去セッションと並行して) John: ●ふたつの場所でトリートメント(5分と10分) ●電気ショック:1秒間の電気ショックを自傷に随伴させる。 ●ショックは、全セッションのうち4日間のみ。 計12回施行 ●従属変数:2カ所(各5分と10分)での ・自傷の回数(Hitting self) ・参加成人から逃げる行動(Avoiding) ・泣き声を出す行動(whining)
●10セッションで、「消去室」では消去しているのに、ここではまだ出ている(消去は般化していない)。 ●30セッションの後は自傷が出ない。ショックなしでも出なくなる。 1)罰の執行者がいないと当初は効果がなかった(弁別していく)。セッション30から訓練者3がショックを与えたら、他の大人でも行動減る 2)ショックを与えると大人からの回避行動やむずかる行動も減った(その場面での他の行動も抑制する)。 3)以降、場面が違うと般化はない。ただし数回のショックで減じることができた。
ロバースの例は正の罰(行動に刺激呈示) 他に、 ●レスポンスコスト(罰金) トークンなどを使って、(望ましい行動には呈示、 )望ましくない行動には一定量を奪ってしまう。 ●タイムアウト: 強化刺激(正の強化刺激)の機会を一定時間与えなくする:行動の機会を停止する。(隔離など) ●過剰修正: トイレを汚す → トイレ全体を清掃させる
分化強化(Differential Reinforcement)の方法 2)分化強化によるもの 分化強化(Differential Reinforcement)の方法 ●分化強化:特定の行動を強化し、別の行動は消去する手続き ●問題行動に対して、 1)それが一定時間生じなかったら強化 →Differential Reinforcement of O rate (other behavior): DRO 2)その行動とは「相容れない」行動を分化強化 →Differential Reinforcement of Incompatible Behavior
DRO, DRI
1.分化強化(正の強化を使う) 2.消去 3.罰 実践の際に推奨される問題行動対処の順番 DRI, DRO, DRA(次回紹介) レスポンスコスト タイムアウト 正の罰
機能分析にもとづく対応 罰,DRI,DROは,当該の問題行動が何で強化されているか(機能)は問題にされてこなかった. 消去手続きは,当該の強化刺激を除去する方法 強化刺激は除去せずに,それで適応的行動を形成する. 当該の問題行動に対する強化操作は停止し,同時に,その行動と同じ機能を持った適応的行動を強化(DRA)する
どんな機能による分類をするか? Carr and Wilder (1998):「社会」と「自動」強化 正の社会的強化:注目や事物の出現など 負の社会的強化:課題からの逃避など 正の自動強化:問題行動による感覚的刺激など 負の自動強化:(問題行動によって)不快な身体刺激が緩和される
質問紙の例(1)) 「入門 問題行動の機能的アセスメントと介入」 (Carr & Wilder, 1998: 園山繁樹訳)二瓶社
Durandによる分類(コミュニケーションとしての表現) 要求:事物の呈示や行為実現による正の強化 「ほしい,やりたい」 注目:注目などの社会的強化による強化 「みてみて,かまって」 逃避:課題や場面からの負の強化 「いやだ,したくない」 感覚:身体的感覚などによる強化 平澤・藤原(1997)を参照
質問紙の例(2) 平澤ら(1996) Durand (1990)を参照 して作成されたもの
課題逃避の例(平澤・藤原,1997)
DRA:「問題行動」と機能的に「等価」な(強化の内容が重複すると思われる)行動を成立させる。 →問題点はどこにあるか? 現環境の下で“自傷”によって得られる強化は それほど尊重する必要があるかどうか? DRAを優先させるか? 環境豊穣化あるいは正の強化で維持される行動の選択肢の拡大の操作を優先させるか?