パブリック・マネジメント 戦略行政への理論と実践

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パブリック・マネジメント 戦略行政への理論と実践 第2章 行政経営の時代へ 総合政策学部3年 菅野谷純 環境情報学部4年 鳥海希世子

「行政管理」→「行政経営」 米国行政学の産んだ政策科学的アプローチ     「行政管理」→「行政経営」 米国行政学の産んだ政策科学的アプローチ マネジメント(経営)とは? 一般的なマネジメントの機能 戦略 Strategy 内部管理 Managing Internal Components 外部マネジメント Managing External Constituencies

戦略 Strategy ① 組織の目標およびプライオリティづけを 確立すること 目標達成のための執行計画を策定 すること  ① 組織の目標およびプライオリティづけを     確立すること 目標達成のための執行計画を策定    すること “伝統的な行政管理システム”には戦略は不要 だった

内部管理 Managing Internal Components ①    組織編成と職員配置 ②    人事監督・人事管理システム ③ 業績のコントロール プロセス重視から「業績志向のマネジメント」 への転換

外部マネジメント Managing External Constituencies  ①    外部の業務単位への対応  ②    独立機関への対応 ③ メディアや大衆への対応 従来は政治家の仕事→住民参画の開放的な行政管理が求められている

2.伝統的な政策科学の栄光と挫折 政策科学:限られた資源配分をより効果的なものとするための政策の立案・決定に関わる意思決定プロセスの合理化を重視する       伝統的な政策科学のアプローチ ①    厚生経済学 ②    公共選択論 ③    社会構造論 ④    情報処理論 ⑤ 政治哲学

しかし、一般的な政策分析に活用されるのは 厚生経済学を中心としたミクロ経済学 その第一のステップ:「社会的厚生関数」の構築 →個々人の享受する純便益あるいは効用をなんらかの形で集計したもの →個々人への分配に関する価値判断の基準は?   ↓ 第一の基準「パレート基準」 ※現実には適用できない 「ヒックス・カルドア基準」 分配と個々人の経済厚生のウェイトづけの問題を回避

「ヒックス・カルドア基準」   ある政策案を実行するとで、パレート基準を満たすように経済厚生を増大させる個人からそれを減少させる個人へなんらかの形で保証が可能であれば、そのような政策案は採用されるべき  この考え方に立つ代表的な分析手法    「費用・便益分析」

所得・資産の再分配過程 第一のアプローチ:  経済効率の達成を目的とし費用・便益分析を基本に政策案の順位付けを行ない、その後に政治過程で他の非経済的目的を考慮した修正がなされればよい   第ニのアプローチ:  経済効率と所得分配とで別個のプログラムとして政策案を考慮し、それぞれが実現すればよい

本質的な課題 政策科学が目指した「限られた資源の配分をより効果的に実施するための意思決定プロセス」は、現実には有効に機能しなかった。  政策科学が目指した「限られた資源の配分をより効果的に実施するための意思決定プロセス」は、現実には有効に機能しなかった。 ① 政策代替案同士の純便益の比較でも「便益の対象範囲」「数量化あるいは計測不可能な便益」に基準がない ② 政策案同士での価値の対立やトレード・オフ関係にあるようなものを評価する基準がない

連邦政府改革の政策科学のアプローチは本来の意思決定プロセスの改善という本来の目的を十分に果たしえないまま各々の改革が命脈を閉じている   連邦政府改革の政策科学のアプローチは本来の意思決定プロセスの改善という本来の目的を十分に果たしえないまま各々の改革が命脈を閉じている その要因  ① 行政のプリンシパルである議会の改革の中に取り込むことができなかった  ②  プログラム評価において意思決定の改善に必ずしも寄与しなかった  意思決定プロセスの改善のためには   部分均衡:個々の政策領域ごとのプログラム評価   一般均衡:政策領域間でのプログラム評価の比較考量  が必要

同時に純便益の厳格な定量化は、プリンシパルである議会や国民・住民へのアカウンタビリティの確保という観点から、二つの課題に直面 ①厚生経済学的アプローチの行政現場への適用は、行政運営のビジョンの具体化にあまり寄与しない ②マネジメント・サイクル(Plan-Do-See)からみた事後評価の意味が希薄   米国政策科学の行政現場への適用はマネジメントという 観点からは内部管理型にとどまっているとも言える。 抜本的なパラダイムの転換はニュー・パブリック・ マネジメント論(以下NPM論)の登場を待つ必要があった。

NPM論の理論的背景 「経済学」と「経営学」 「公共選択論」「プリンシパル・エイジェント論」 政策科学のアプローチで多用された 「費用・便益分析」にかわって 「公共選択論」「プリンシパル・エイジェント論」

3.ニュー・パブリック・マネジメントの時代へ 伝統的な行政管理システムの二つの理論「官僚制論」「政治と行政の二分 論」の実体面からの崩壊+先進国経済の長期にわたる停滞 このような先進国の経済停滞を契機にNPMへの転換が一気に加速 ①政府活動の効率化・活性化  長期にわたる経済の停滞、経済の成熟化に伴う政府サービスのニーズの増大・多様化に適切に対応することが求められた  ②新保守主義を掲げる政権の登場  「大きな政府」から「小さな政府」「民営化・規制緩和」の推進へ

NPMのさまざまな要素 ① 専門的なマネジメントシステムの確立 ② 業績についての明確な基準と測定 ③ アウトプットのコントロールをより重視  ①    専門的なマネジメントシステムの確立  ②    業績についての明確な基準と測定  ③    アウトプットのコントロールをより重視  ④    政策の企画・立案部門と執行部門の分離  ⑤    市場メカニズムの活用  ⑥    民間企業のマネジメント慣行の強調  ⑦  経営資源の効率的な使用

行政管理から行政経営へ (p.29図2-1) 行政管理システム 行政経営システム 理論的基礎 統制の手段 組織形態 組織運営 統制の基準 1.官僚制度 2.政治と行政の二分論 1.経済学 2.経営学 統制の手段 法令・規則 業績/評価 組織形態 明確なヒエラルキー 自立的な業績評価の単位である 小規模な組織での「契約による マネジメント」 組織運営 単一の職務に特化した分業 サービス供給の効率化の ための柔軟な組織運営 統制の基準 官治主義 顧客主義 市場のメカニズム の活用 例外的な活用 広義の民営化・市場化テスト、内部 市場化など契約型システムの広範 な適用

「ニュー・マネジリアリズム」 業績・計画・予算のリンケージ (p.31 図2-2) 戦略計画 個々の業績目標 中期予算分配 各期の予算 業績測定・評価 実施

NPM論の考え方 住民の属性を行政サービスの「顧客」と捉える 行政の責務を「顧客」のニーズを反映した行政運営を行なうことにおく そのために市場調査を活かし「住民のニーズ」を直接意思決定プロセスに反映させる 政策の効果は業績/成果をデータによって議会・住民から用意に監視しうるシステムを作る 民主的な意思決定プロセスを前提とした 「セカンドベスト」的なアプローチ

NPMによる議会・行政・住民 行政:戦略計画の具体案を作り、達成するための具体的な 施策・事業をリンクさせる 提出     施策・事業をリンクさせる 提出 議会:基本政策のビジョン・プライオリティの判断、手段の有効性     についての評価を行なう。政策の実行状況は具体的目標     を数値化する(ベンチマーク) 監視・評価 住民