計算力学技術者2級 (熱流体力学分野の解析技術者) 認定試験対策講習会 -1章 計算力学のための数学の基礎- 計算力学技術者2級 (熱流体力学分野の解析技術者) 認定試験対策講習会 -1章 計算力学のための数学の基礎-
(1章の代表的なキーワード) 偏微分方程式 初期値問題 境界値問題 テイラー展開 ベクトル・テンソル解析 座標変換 ガウスの定理 フーリエ級数
問1-1 偏微分方程式 キーワード:偏微分方程式、双曲型、移流方程式
問1-1 解説 この偏微分方程式は,流体力学では移流方程式とよばれます. がこの式を満足することはよく知られており,その解は,時刻 における での値 は,初期状態における での値 に等しいことを示しています(関数の形 は変化しない!). つまり,あらゆる分布(関数の形 に依存しない)が速度 で 方向に移動することを 表しています.従って答えは①です. なお,波動方程式と呼ばれる は,2階の偏微分方程式の分類に 従えば,双曲型の代表例として知られています. この波動方程式を因数分解すれば, となることから, 波動方程式(=双曲型)は もしくは となり, 移流方程式は双曲型の性質を有していることがわかります.
問1-1 解説 :移流方程式 :初期値 とすれば、 したがって 確かに は与えられた偏微分方程式の解になっている。 では、 の意味は??
初期値 に対して、 後の分布は になっている。 の意味。 初期値 に対して、 後の分布は になっている。 となっているだけなのであらたに座標を とおくと、分布は全く同じになる。 ただし原点の位置が、 から に移動していく(分布が等速 で右に移動していく)。 正解:① ~ポイント~ 高見、河村「偏微分方程式の差分解法」より ・移流方程式の形と解の性質については覚えておきましょう。(その場で偏微分方程式の解を 求めるのは不可能に近いです。) ・ の時は、どうなりますか? なので、移動方向が右から左になります。
問1-2 偏微分方程式 キーワード:偏微分方程式、放物型、拡散方程式
問1-2 解説 この偏微分方程式は,拡散方程式とよばれ,放物型の微分方程式です. 熱流体でも,分子運動(分子同士の衝突)による運動量の拡散,熱の拡散の効果は多くの場合,この形で現されます.乱流の渦運動も拡散効果をもちますが,その場合には拡散係数は乱流場の様子を表す変数となります. 右辺は関数 に対する2階微係数に正の定数 がかかっていることから,上に凸であれば負の値,下に凸であれば正の値となる(関数 の時間変化 に対して). 即ち,関数が上に凸であればその場所の値を減らし,下に凸であればその場所の値を増やす効果があることから,変化を緩和する,即ち分布を平滑化する方向に作用することが直感的にわかります.
また,総量の時間変化は, であるから,領域の境界での関数の勾配 だけで決まります. 即ち,境界での関数の勾配がゼロであれば,その総量は時間的に変化しない.即ち,拡散効果そのものには総量を変える効果はないことを意味します.なお,拡散係数と勾配の積は,拡散流束(フラックス)とよばれ,単位面積・単位時間あたりの流量を表しています.
・下に凸の場合、その点での量はどんどん増えていく(時間変化正)。 ・上に凸の場合、その点での量はどんどん減っていく(時間変化負)。 :拡散方程式 上に凸 下に凸 二階微分は正 二階微分は負 ・下に凸の場合、その点での量はどんどん増えていく(時間変化正)。 ・上に凸の場合、その点での量はどんどん減っていく(時間変化負)。 時間の経過とともに 分布はどんどん平滑化していく。 (特徴その1)
・拡散方程式の形と解の性質についても覚えておきましょう。 総量の時間変化。 正解:② 総量の時間変化はゼロ。 (特徴その2) 高見、河村「偏微分方程式の差分解法」より ~ポイント~ ・拡散方程式の形と解の性質についても覚えておきましょう。 ・ の時は、どうなりますか? なので、どんどんとんがっていきます(局在化、数値解析的には不安定)。
問1-3 偏微分方程式 キーワード:偏微分方程式、放物型、拡散方程式、初期値問題、境界値問題
問1-3 解説 1-1,1-2と同様,偏微分方程式論の基本的な知識を問うています. 熱流体の場の方程式は連立偏微分方程式であることを認識しておきましょう. 2階の偏微分方程式は,双曲型・放物型・楕円型に分類され,情報が伝播する「特性線」がそれぞれ異なる性質を持っています. この結果,どの型に属するかによって,解析の際に与えるべき境界条件は異なります. ~ポイント~ ・熱流体で出てくる三つの偏微分方程式(移流方程式、拡散方程式、ポアソン方程式)の型は覚えておきましょう
問1-3 解説 二階の偏微分方程式の分類 :双曲型 :放物型 :楕円型 熱流体でよく出てくる偏微分方程式 ・双曲型 (波動方程式) もしくは 問1-3 解説 二階の偏微分方程式の分類 :双曲型 :放物型 :楕円型 熱流体でよく出てくる偏微分方程式 ・双曲型 (波動方程式) もしくは 初期値(与える波の形)が重要になります。 (移流方程式) ・放物型 (拡散方程式) 初期値、境界値の両方が重要になります。 非圧縮性流体の圧力解法で しばしば出てきます! ・楕円型 (ポアソン方程式、ラプラス方程式) 境界値のみが重要になります(境界での条件が決まれば内部の値は決まる)。 正解:①
問1-4 マクローリン展開(微分・積分) キーワード:マクローリン展開,テイラー展開
問1-4 解説 テイラー展開は,有限差分法などで,ある場所(もしくは時間)での物理量の微分値を,空間(もしくは時間)を離散的に表した離散点のデータで近似する手法を導出したり,手法そのものを数理的に解析したりするために有効な手法です.マクローリン展開はテイラー展開を原点周りで展開したもの. 覚えてください マクローリン展開の公式 x=0 付近拡大図 正解:② ~ポイント~ ・テイラー展開(マクローリン展開)の式は最低限覚えると共に、 初等関数の微分もできるようにしておきましょう。
問1-5 ベクトル・テンソル解析 キーワード:ベクトル、外積、線形代数
外積.順番を変えると,符号が変わる. 外積の順番を変えると,符号が変わる.
問1-5 解説 外積の定義 二つのベクトルが作る平行四辺形の面積に等しく、方向は二つのベクトルのなす面に垂直(右ねじの方向) 正解:③ 問1-5 解説 外積の定義 二つのベクトルが作る平行四辺形の面積に等しく、方向は二つのベクトルのなす面に垂直(右ねじの方向) 正解:③ ~ポイント~ ・内積、外積の定義は抑えておきましょう。 ・ベクトルの内積はスカラー量(0階のテンソル) ・ベクトルの外積はベクトル量(1階のテンソル) ・ベクトルのテンソル積は2階のテンソル
問1-6 線形代数(テンソル解析) キーワード:テンソル、固有値、不変量
問1-6 解説 固有値を求め,固有ベクトル,対角化をする一連の手順は,熱流体系の方程式における特性の方向を抽出して様々な数値計算法を導入する上で大変重要です.また,不変量は,応力などの計算結果から,テンソルの性質を特徴づける数値としてしばしば用いられます. :固有ベクトル を満たす :固有値 :特性方程式 (でなければ固有ベクトルがゼロになる) :直交行列 直交行列による変換(直交変換) を考える。 行列 に対する特性方程式は、 と を代入すれば、 したがって 行列Aに対して直交変換した行列Bは、行列Aと同じ固有値を持つ。 正解:②
問1-6 解説 直交変換とは? 直交変換に対する不変量。 問1-6 解説 直交変換とは? 線形写像(行列で表される変換) において、任意のベクトルに対する内積が保存される変換。 従って 変換に際して長さと角度が保存される。 回転変換。 座標変換の狭義の意味として、座標変換=直交変換とする教科書もあるようなので注意! 直交変換に対する不変量。 スカラー不変量: スカラー量は変換に対していつも不変 ベクトル不変量: 内積 http://www.imel1.kuis.kyoto-u.ac.jp/education/DIP/WEBPAGE_APPENDIX/a3/node5.html (2階)テンソル不変量:
問1-7 ベクトル・テンソル解析 キーワード:ベクトル解析、ナブラ演算子、発散、勾配
ここで,流れとともに密度が変化しないことを仮定すると, 問1-7 解説 として二次元で確かめてみましょう。 より スカラー量 正解:③ ~ポイント~ ・与えられたベクトルとスカラーの演算式から成分が計算できるようにしておきましょう。 この微分は,スカラー(温度や濃度といった)の輸送方程式の移流項の展開に用いられる重要な式です.例えば,質量保存則を表す流体の連続の式は,以下のように表される. (左辺2項目が,密度に対する移流項) ここで,③の関係を用いると, となる. ここで,流れとともに密度が変化しないことを仮定すると, となり,非圧縮性流体の連続の式 が得られます.
問1-8 座標変換 キーワード:座標変換、円筒座標系
二次元のナブラ演算子の2通り書き方を知っていれば簡単 単位ベクトルどうしの内積 x q y r
問1-8 解説 (チェーンルール)
チェーンルールの式まで導出できたとして, を求める別の方法
問1-8 解説 を固定して のみ変化したときの の変化 を固定して のみ変化したときの の変化
問1-8 解説 符号だけを確認すればよい 直感的にオカシイ ~ポイント~ ・チェーンルールを利用できるか? ・デカルト座標と極座標の関係を理解しているか? ・ 等を求めることができるか?
問1-9 ガウスの定理 キーワード:ガウスの定理
問1-9 解説 発散は,二次元デカルト座標では と表される.矩形領域 で考えれば, ガウスの(発散)定理 領域内のわき出し(発散)の総量(体積積分)は、界面からの流出の総和に等しい 発散は,二次元デカルト座標では と表される.矩形領域 で考えれば, より, は,単位体積あたりの 方向への流出(右辺第1項)と流入(右辺第2項)の差を表していることがわかる.したがって, は単位体積あたりの湧き出しを示します. 一方,内積 は,ベクトル の単位ベクトル の射影であり,表面に直交する成分を表す.したがって,その表面積分は,表面からの流出の総和となります. 境界面
スカラーがベクトルに一致することはあり得ない 内部のセルでの流出の総和は 境界からの流出の総和に等しい スカラーがベクトルに一致することはあり得ない 正解:③ ~ポイント~ ・ガウスの発散定理とその物理的意味は熱流体ではしばしば出てきます。覚えておきましょう。
問1-10ベクトル・テンソル解析 キーワード:クロネッカーのデルタ、エディントンのイプシロン、総和規約
問1-10 解説 総和規約:同じ添え字が二回繰り返したら、次元数だけ和をとる。 ① ② ③ デルタには添え字を交換する効果があります! ④ 問1-10 解説 総和規約:同じ添え字が二回繰り返したら、次元数だけ和をとる。 ① ② ③ デルタには添え字を交換する効果があります! ④ 正解:④ ~ポイント~ ・クロネッカーのデルタ、エディントンのイプシロンの定義と総和規約の約束を覚えておいて下さい。あとはひたすら計算(ただし本当はもっと深い意味あり)。
問1-11フーリエ級数展開 キーワード:フーリエ級数,フーリエ変換,直交関数系
問1-11 解説(1) フーリエ級数:区間 で定義された関数 を,以下のように様々な波長の三角関数の和(級数)として 問1-11 解説(1) フーリエ級数:区間 で定義された関数 を,以下のように様々な波長の三角関数の和(級数)として 表わす方法.(nを適当なところできれば,元の関数の近似になります) 余弦関数(偶関数:y軸対称) 正弦関数(奇関数:原点回転対称) このとき,三角関数の各係数は, ただし ただし
問1-11 解説(2) の場合は,奇関数(原点に対して回転対称)だから,余弦の係数 は全てゼロ 正解:① 簡単のために とすれば, ただし 問1-11 解説(2) の場合は,奇関数(原点に対して回転対称)だから,余弦の係数 は全てゼロ 正解:① 簡単のために とすれば, ただし ~ポイント~ (1)三角関数の係数の求め方は覚えておくべき(ですが,試験中に計算するのは大変ですね.. (2)f(x)が偶関数(y軸対称)なら,正弦関数の係数は全てゼロ,奇関数なら,余弦関数の係数は全てゼロ (3)nを低い次数から段々大きくしていくと,もとの関数に近づいていきます(つまり,特殊な関数を除けば大抵の場合,係数はnを大きくとると小さくなっていきます.(2)と(3)のポイントだけでこの問題はとけちゃいますね.(笑)
Navier-Stokes 方程式(x方向、非圧縮) 一次元化 線形化 移流方程式 拡散方程式 数値計算法の基礎を学ぶための重要な方程式
Navier-Stokes 方程式(x方向、非圧縮) 数学 物理モデル 数値計算プログラム (四則演算)