高校物理の現場で実践した アクティブラーニング・ ILDs 授業の報 告 同志社高, 向陽高 A, 桃山高 B, 福知山高 C, 平安女学院高 D, 香川大教育 E, 京教大物理 F, 京都工繊大 G 古結尚, 山崎敏昭, 足立昭, 酒谷貴史 A, 山口道明 B, 倉内邦行 C, 岩間徹 D, 笠潤平 E, 谷口和成 F, 村田隆紀 F, 内村浩 G 10/08/09 @関大 100 周年記念会館
はじめに アドバンシング物理研究会 アクティブラーニングのカリキュラム・教材開発 アメリカ「物理教育研究」の教材に着目 (2006) Real Time 物理, Interactive Lecture Demonstrations(ILDs) 実験書の形式 予想 → 討論 → 実験 → 結果の分析 概念的理解を調査する方法の開発 Force and Motion Conceptual Evaluation (FMCE) → 説得力のある調査結果 ILDs に注目 講義形式で演示実験を行う 予想を出し合い,討論を行う
はじめに ILDs の進め方 個人で予想し,予想シートに 記録 ↓ 討論 班で討論した後,予想をまと める ↓ 演示実験 結果シートに記録 運動学2「台車の運動」 演示実験6 台車は運動検知器から遠ざかる 向きに一定の力を受け続けている。右図の座 標軸に、台車が運動検知器に向かってポンと 押されて(そして放された)後の台車の速度 -時間グラフと加速度-時間グラフの予想を スケッチしなさい。台車が検知器に向かって 動きながら減速し,瞬間的に止まり,それか ら検知器から遠ざかりながら加速していくと きの速度と加速度をスケッチしなさい。
アドバンシング物理研究会 での取り組み 2009 年 ILDs 公開講座を実施 → 誤概念の克服に役立つ 2010 年高校の授業で実践 討論の方法 討論による認識の変化 授業への取り入れ方 素朴概念(誤概念) 運動の向きに力がはたらく はじめに 上昇 中 最高 点 下降 中 ゼロゼロ
概要 実践校: 4 校 私立 A1, A2 高校 3 単位,48 名 ×8 クラス 府立 B 高校 3 単位,17 名 (I 類 ),18 名 (II 類 ) 府立 C 高校 4 単位,17 名 ×1 クラス 府立 D 高校 3.5 単位,26 名 ×2 クラス 導入した ILDs 物理 I 力学授業に取り入れる 運動学 1 「人の運動」 運動学 2 「台車の運動」 ニュートンの第 1 & 2 法則 ニュートンの第 3 法則
討論の方法 個人で予想し、予想シートに記録 ↓ 討論 班で討論した後、予想をまとめる ↓ 演示実験(センサを用いてリアルタイムに表示) 結果シートに記録 各校での方法 A1 高校カラーカードで選択, 生徒による討論中心 A2 高校教師が討論の結果を黒板にまとめる B 高校討論中に教師が回って意見をまとめる C 高校討論の結果を発言させる
討論の方法 A1 高校
討論の方法 A2 高校
討論の方法 B 高校
討論の方法 C 高校
ILDs の効果 運動学 1 「人の運動」位置, 速度グラフ 班で討論した後の予想はほとんど正解 運動学 2 「台車の運動」位置, 速度, 加速度グラ フ 班での討論を重ねることにより, 加速度グラフの正解が増える 演示実験 6 (扇風機付き台車) 正解多数, 誤答 5 人 ( 転向点 0) → 正解 7 班,誤答 3 班 演示実験 8 (ボールの投げ上げ) 正解 28 人, 誤答 11 人 ( 正負逆 ) → 正解 11 班, 誤答 1 班
ILDs の効果 ニュートンの第 1 & 2 法則 討論後の予想が, 力と速度グラフが同じになる班がある 誤答 8 班 /12 班, 正解: 2 班 /12 班 実験の設定を把握するのに 時間がかかり,十分討論できない 生徒がいる (A 高校 ) 前回と同じ誤答をする (A 高校 ) ニュートンの第 3 法則 実験を重ねることにより, 作用と反作用の大きさが等しいと予想できる
授業への取り入れ方 A1 高校 (3 単位 ) 1プレテスト 2有効数字,ベクトル(1次元の向 き・正負を教えた) 3 ILD 運動学 1 4有効数字,物理量 5位置,速度,合成 6相対速度,グラフ 7加速度① 8 ILD 運動学 2 ① 9 ILD 運動学 2 ② 10加速度② 11重力加速度,放物運動 12力,フックの法則 13 力の合成・分解,力のつりあい, 作用・反作用 14復習,運動の法則 (ILD 運動の法則 ) 15第 1 法則,第 2 法則 16重力と質量 17第 1 法則,第 2 法則② 18摩擦,摩擦角,動摩擦 19 ILD ニュートンの第 1&2 法則① 20 ILD ニュートンの第 1&2 法則② 21 ILD ニュートンの第 3 法則 22摩擦残り,空気抵抗 23圧力,大気圧,浮力 24剛体の力の合成・分解 25剛体の力の合成・分解② 26ポストテスト 27 力のモーメント 28 問題演習
授業への取り入れ方 A2 高校 (3 単位 ) 1「はじめに」 2 プレテスト 3有効数字 4速度 ベクトル① 5 ② 6 ③ 速度の正負、 x-t グラフについての説 明を授業で行う。 7 ILD 運動学 1 8相対速度 等速直線運動 9 加速度 加速度の定義を学習。一直線上の運 動で正方向を定めた場合で、加速度 が正や負となるいくつかのケースの 実例を示す授業を行う。 10 ILD 運動学 2 11等加速度直線運動① 12 ② 13 ③ 14 力のつり合い 15 作用・反作用の法則 16 慣性の法則 運動の第二法則(距離センサー、 台車、ばねはかりによる演示実験) 17 重力と質量 18 運動方程式(張力,2 物体の運動, 摩擦力, 斜面) ① 19 ② 摩擦がはたらく場合の運動方程式の説明を授 業で行う。 20 ILD ニュートンの第 1&2 法則 21 空気抵抗 圧力 浮力① 22 ② 23 力のモーメント 重心① 24 ② 25 ILD ニュートンの第 3 法則 26 大きさのある物体のつり合い 27 ポストテスト 28 練習問題
授業への取り入れ方 B 高校 (3 単位 ) 1 物理学の導入、 FMCE プレテスト 2 力の定義, ベクトルの合成・分解, 力のつ り合い① 3 ② 4 ③ 5 ④ 6 作用・反作用、フックの法則① 7 ② 8 ③ 9 速さと速度、平均の速度、速度の合成・ 分解、相対速度、等速直線運動① 10 ② 11 ③ 12 ④ 13 ILD 運動学 1 14 中間テスト演習 15 中間テスト解説 16 加速度の定義、平均と瞬間の加速度、 等加速度直線運動、負の加速度① 17加速度の定義、平均と瞬間の加速 度、等加速度直線運動、負の加速度② 18 ③ 19 自由落下、鉛直投射① 20 ② 21 ③ 22 ④ 23慣性の法則、運動の法則、質量と 重力① 24 ② 25 ③ 26 運動方程式の応用① 27 ② 28期末テスト演習 29 ILD 運動学 2 ① 30 ILD 運動学 2 ② 31 ILD ニュートンの第 1&2 法則 32 FMCE ポストテスト
授業への取り入れ方 C 高校 (4 単位 ) 1ガイダンス 距離セン サーを使ったデモ 2等速直線運動 3 FMCE プレテスト( 15 分) 平均の速さ 4瞬間の速さ、速度、速 度の合成 5相対速度(平面含む) 6 ILD 運動学 1 7加速度 8等加速度直線運動 9 ILD 運動学 2 ① 10 ILD 運動学 2 ② 11 生徒実験 加速度 の測定 12 有効数字、実験の まとめ 13 自由落下、鉛直投 射 14 鉛直投射(練習問 題) 15 水平投射 16 斜方投射 17 モンキーハンティン グの演示実験 18 水平投射、斜方投射 の練習問題 19練習問題 20 テスト返却 いろいろ な力 21 力の合成 22 力の分解、力のつり 合い 23 生徒実験 力のつり あい 24 作用・反作用 25 圧力、気体の圧力、 水圧 26 慣性の法則 27 運動の第2法則 ILD を行う前に教科書 の運動の法則にいてグ ラフを用いて説明した。 (力、質量、加速度の関係につ いて説明した。) 28 ILD ニュートンの第 1&2 法則① 29 ILD ニュートンの第 1&2 法則② 30 ILD ニュートンの第 1&2 法則③ 31 ILD のまとめ 運動の 第 2 法則 32重さと質量 33力を及ぼしあう 2 物体 の運動 34 静止摩擦力, 動摩擦力, 斜面上の摩擦力 35 ILD ニュートンの第 3 法 則① 36 ILD ニュートンの第 3 法 則② 37生徒実験 運動方程式 38練習問題 39テスト返却 FMCE ポ ストテスト
まとめ ILDs の取り入れについて 討論により生徒の認識が深まった →ILDs を取り入れることは効果がある 詳細については, FMCE の分析が必要 今後の課題 各学校にあった討論,授業のすすめ方の分析と改 善 通常授業の時間をどう置き換えるかの工夫( ILDs とプレ,ポストテストで6~8時間必要) ILDs 授業だけでなく, 力学授業全体の中で, セン サーの導入や討論による概念定着をはかることを 検討 ILDs の内容をさらに定着させるため,授業だけで なくホームワークや試験も含め一貫した展開を検 討