アメリカの人的資源管理の実 際 2014 年 7 月22日 人事労務管理論A(第 14 回 目) LT1011 教 室 LT1012 教 室
市場原理主義と規制緩和 市場競争の激化 競争が社会を発展させる? 競争のない社会は堕落する? 規制緩和 競争原理を阻害する規制は廃止 「労働ビッグバン」(労働法の規制緩和 ! ) 参 : ロナルド・ドーア『金融が乗っ取る世界経済」中 公新書 日米の人事労務の変化については ジャコ-ビィの 『日本の人事部・アメリカの人事部』東洋経済、 2005 年が参考になります。 2
労働ビッグバン(規制緩和)の経 過 年 月 内 容 1985 年 6 月労働者派遣法の成立 1987 年 9 月労基法改正(変形労働時間制拡大、フレックスタイム制、専門 業務型最長労働制) 1993 年 6 月労基法改正( 1 年単位の変形労働時間制、週 40 時間労働制) 1996 年 6 月労働者派遣法改正(対象業務 16 から 26 業務に拡大) 1997 年 6 月労基法改正(女子保護規定の撤廃、専門裁量制の対象業務拡 大) 1998 年 9 月労基法改正(企画業務型裁量制、 1 年単位の変形労働時間制要件 緩和、有期雇用期間の上限を 3 年へ) 1999 年 6 月労働者派遣法改正(原則自由化ネガティブリスト方式へ) 2003 年 6 月労基法改正(企画業務型裁量制の要件緩和) 派遣法改正(製造業派遣解禁、 3 年ルールへ) 2006 年 12 月労働政策審議会、ホワイトカラー・エグゼンプション制度導入 を答申 3
何よりも市場競争力!?? 市場競争力とは何か 商品(製品・サービス)の質 × 価格 競争力の規定要因 企業外要因 → 内外の経済情勢、国家産業政 策 企業内要因 → 経営戦略、経営管理 生産システム 人事労務システム 4
合言葉はフレキシビリティ 規制緩和の真のねらいは フレキシビリティとは何か 市場動向(外部環境の変化)への適応能 力 フレキシビリティ(柔軟性)の確保 5
アトキンソン・モデル 機能的フレキシビリ ティ 数量的フレキシビリ ティ 財務的フレキシビリ ティ 6
7 三つのフレキシビリティ 数量的なフレキシビリティの確保 従業員の数を柔軟に 機能的なフレキシビリティの確保 従業員の役割を柔軟に 従業員の働き方を柔軟に 金銭的なフレキシビリティの確保 賃金(人件費)を柔軟に
8 近年の人事労務の合言葉は フレキシビリティ flexibility フレキシビリティとは何か その語源は「木々は風を受けてたわんでもすぐ 元の位置に戻る」という自然現象に由来してい る だが 現在いわれているフレキシビリティはもっぱら 人を たわめる力としてのみ働いている。 フレキシビリティとは、一度たわんでも元通りになるということ、 試練に耐えること、そして形を復元すること、この両面の能力をいう Richard Sennett 『それでも新資本主義についていくか』ダイヤモンド社 より
9 アメリカの人的資源管理の実際①: 仕事基準からヒト基準への改 革 9 仕事に人をあてがう → 仕事基準に採用 → 個人の人柄や能力を重視する 仕事給 → 従業員の働きぶりや能力で賃金決定 人事考課査定の導入 仕事中心からヒト中心へ
10 人的資源の賃金処遇管理 賃金制度の変更 賃金決定基準が 具体的には 職務給( a rate for the job )から 範囲職務給(人事査定の導入)へ 技能給・知識給 コンピテンシー給
新しい賃金制度(アメリカの場 合) 技能給 ( Skill-based Pay, SBP ) 知識給 ( Pay for Knowledge, PFK ) 業績給 ( Pay for Performance, PFP ) コンピテンシー給 ( Competency based Pay, CBP ) 11
12 アメリカの人的資源管理の実際②: 長期雇用への努力 12 仕事がなくなったら解雇 → 転職を通した昇進 → 短期的雇用 → 産業別組合 →
13 アメリカの人的資源管理の実際③: 能力開発・企業内教育の重視 能力重視 コンピテンシー(実力) 各人の成果 ( 結果)だけでなく実力を評価 また行動のプロセスも重視 企業内教育重視 自己責任で能力向上 → エンプロイヤビリティ employability 失業回避のために、多様な能力獲得を推奨
14 現代アメリカのHRMの意味 コストから資源へ 雇用をコストと捉えてきたこれまでの考え方を改 め ・従業員教育に投資(人材育成) ・向上した能力を有効に活用 教育投資の費用以上の回収が可能 経営資源として人間 ( 従業員 ) つまり「人」は投資しても採算がとれる重要な経 営資源(つまり人的資源)であると捉える。
15 日本の人事労務管理は?? アメリカの日本化?? 日本のアメリカ化?? 成果主義賃金 長期雇用の制限 派遣など雇用形態の多様化 ( 短期雇用 ) 日本の人事労務の現実は? 人事労務管理論 B (秋学期)の 課題