欧州諸国における最近の税制改革 2007年5月30日. 1.ドイツ 2.フランス 3.オランダ 1.ドイツ マクロ経済、財政状況 メルケル大連立政権の税制改革 付加価値税の引上げ等 法人税改革 金融所得への源泉分離課税の導入.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 経済学-第 12 回 年金① 2008 年 6 月 27 日. 2 社会保険における年金 日本の公的年金制度  現行の制度体系  負担と給付の現状 (1) 保険料 ( 率 ) (2) 国庫負担 (3) 給付額 (4) 支給開始年齢.
Advertisements

平成18年度税制改正の概 要. 交際費にかかわる改正点 ① 1人当たり5,000円以下の飲食費が交際費から除 外 1人当たり5,000円以下の飲食費が、交際費から除外され、損金に 算入でき るようになりました。ここでいう飲食費とは、得意先等社外の関係者の 接待に際 しての飲食等に要する費用をいいます。
年金改革シミュレーション. 年金改革における主な問題点 世代間不公平 国民年金の空洞化 第三号被保険者の問題.
1 環境経済論環境経済論 第 13 回目 市場は地球環境を救えるか その 4 : 排出量取引. 2 Goods 課税による Bads 減税 (環境税の未来)
1 財政-第 11 講 4. 租税理論と税制改革 (5) 2008 年 5 月 20 日 第 1 限.
三面等価の原則 生産面からみたGDP =支出面からみたGD P =分配面からみたGD P. [ 備考 ] 内閣府経済社会総合研究所「 SNA ・1統計資料・国民経済計算確報・平成14年度確報(平成16年4月19日)・計数票・第1部 フロー編 1.統合勘定( 1 )国内総生産と総支出勘定、及び、 4.
利用者負担の更なる軽減 【障害児のいる世帯】. 1 障害児のいる世帯の利用者負担の見直しについて ○ 障害児のいる世帯の負担軽減措置について、保護者など家庭の負担が大きいといった事情に 配慮 し、次の措置を講じる。(平成19年度実施) ① 1割負担の上限額の引下げ(現行2分の1 → 4分の1)(通所施設・在宅サービス利用児.
年末調整 ~ 概念と業務と COMPANY ~. 納税の義務 所得に応じた税金を国に支払う義務があります。 「確定申告」とは、1年分の自分の収入や経費から、 所得や税金の計算をして申告することです。 なぜ年末調整? 確定申告は、1年間の所得税をまとめて支払うことになり、 納税者にとって、負担が大きいため、
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
1 経済学-第 6 回 所得税③+住民税 2008 年 5 月 16 日. 2 日本の所得税をめぐる議論 ( 続き )  確定申告と源泉徴収  所得控除 ( 給与所得控除 ) 住民税 ( 個人 ) 課税対象 課税プロセス-均等割と所得割 所得控除 「ふるさと納税」制度 納付税額計算の具体例.
1 所得税①  所得の種類  総合課税と分離課税  確定申告と源泉徴収  課税プロセス ( 給与所得者の場合 )  所得控除.
1 経済学-第 4 回 所得税① 2008 年 5 月 2 日. 2 所得の種類 確定申告と源泉徴収 課税プロセス ( 給与所得者の場合 ) 所得控除.
2005/2/23 長野県経営者協会 1 これからの税財政・社会保障 と 企業の対応 2005 年 2 月 23 日 日本経団連 藤原清明.
平成 27 年 10 月 21 日 柏市土木部 下水道経営課 柏市下水道事業経営委員会 ( 第 7 回)資料.
政権交代は、政策変化・制度改 革につながるか? 奥井克美ゼミナール 岩山 寛 大川 啓介 大原浩 平 呉之昊 辻 貴之 松本 明 奥井克美ゼミナール 岩山 寛 大川 啓介 大原浩 平 呉之昊 辻 貴之 松本 明.
US Corporate Sector 九州大学ビジネススクール 村藤 功 2014 年 10 月 27 日.
1 財政-第 22 講 6. 社会保障財政 (3) 2008 年 6 月 24 日 第 2 限. 2 公的年金③  今後の課題-公的年金制度全般に関して-  将来の給付水準見通し  厚生年金と共済年金の一元化  社会保険方式から税方式への移行  制度上の問題点  未納・未加入問題.
1 経済学-第 13 回 年金② 2008 年 7 月 4 日. 2 日本の公的年金制度 ( 続 )  今後の課題-公的年金制度全般に関して-  将来の給付水準見通し  社会保険方式から税方式への移行  制度上の問題点  国民年金保険料未納問題.
平成 23 年度税制改正における 中小企業関連税制の結果概要 平成 22 年 12 月 中小企業庁.
1 財政-第 9 講 4. 租税理論と税制改革 (3) 2008 年 5 月 13 日 第 1 限.
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved.1 所得控除 課税所得=収入-控除 – 控除の例 基礎控除 給与所得控除 配偶者控除、配偶者特別控除 その他.
1 経済学-第 5 回 所得税② 2008 年 5 月 9 日. 2 所得控除 ( 続き )  配偶者特別控除  勤労学生控除 日本の所得税をめぐる議論  確定申告と源泉徴収  所得控除 納付税額計算の具体例.
最近の税制改正について 08bc134k 畑 優花 /17. 「 2011 年度税制改正」を創設するために、 ここ数カ月で様々な提案がなされている。 たばこ税 ペット税 環境税 エコカー減税 法人税減税 論点証券優遇税制 今回の発表.
1 経済学-第 9 回 医療保険① 2008 年 6 月 6 日. 2 日本の公的医療保険  制度の目的  制度体系  給付と負担.
三万円支給の是非 肯定派. 三万円支給と は?? 年金生活者等支援臨時福祉給付金 一億総活躍社会の実現に向けた、賃金引上 げの恩恵が及びにくい低年金受給者への支 援であり、給付による景気活性化の効果を 期待するもの 65歳以上の低所得者や65歳未満の障害 者基礎年金と遺族基礎年金の受給者合計1 250万人に3万円を給付する.
~国民経済的な視点から見た社会保障~ 2000/6/14 木下 良太
大震災後の日本経済再生のビジョンと財源問題
制 度 設 計 の 変 更 案 平成18年 2 月 建設コンサルタンツ厚生年金基金.
 公的年金・定年  引き上げの是非 小瀬村  柏嶋 阿部  藤田.
最低賃金1000円の是非.
実現可能性を考慮した法人税制・ 個人資本所得税制の改革
公共経済学 23. 法人所得課税.
第1章 国民所得勘定.
法人に対する課税 財政学(財政学B) 第3回 畑農鋭矢.
消費税10%導入の是非                    肯定派 大岸・福田・山田.
第6章 税金と財政の あり方を考える.
アジアの特区との比較 ■アジアの経済特区内での税制優遇措置 ■法人税実効税率の比較 国 ・ 特 区 中国 韓国 マレーシア アラブ
(間税会は消費税のあり方を考える会です) 平成24年1月30日 北沢間税会
社会保障論講義 5章「社会保障制度の積立方式への移行」医療、介護編
年金・定年引き上げの是非 否定派 棚倉 彩香 林 和輝 西山 夏穂 水田 大介.
(出所)小峰隆夫(2003)『最新日本経済入門[第2版]』、日本評論社、p.186。
国際収支 2007年6月1日.
『非製造業を中心とした生産性向上促進施策』 ~労働力不足の時代を迎えて~
国際課税をめぐる課題 2007年7月9日.
京都・神戸のみならず国内外拠点との差別化が難しい
法人に対する課税 財政学B(財政学) 第4回 畑農鋭矢.
スペイン財政支援の是非 <否定派> 田中・棚倉・川村・石塚.
東京財団上席研究員 中央大学法科大学院教授 森信茂樹
法人税引き下げの是非 否定派 工藤・山下・神谷・蔵内.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
通所施設・在宅サービス利用者の負担軽減措置の拡充について
平成29年 4,5,6月度税法説明会のご案内 (税制改正事項も合わせて説明)
経済学-第11回 介護保険 2008年6月20日.
国際貿易の外観.
都道府県も国民健康保険制度を担うことになりました
経済学-第7回 住民税+消費税① 2008年5月23日.
日本の経常収支黒字  → 外国に失業輸出? 高齢化の進展 → 日本の国内貯蓄超過の減少         → 日本の経常収支黒字は減少へ.
平成29年 2,3月度税法説明会のご案内 法人税等 消費税 源泉所得税 開催日時 研修項目 会 場 講 師 2月10日(金)
平成30年 2,3月度税法説明会のご案内 法人税等 消費税 源泉所得税 開催日時 研修項目 会 場 講 師 2月8日(木)
公共経済学 23. 法人所得課税.
○ 特別対策等による利用者負担の軽減措置については、 21年4月以降も継続して実施。 ※ 延長年限等については検討中
財政-第12講 4.租税理論と税制改革(6) 2008年5月20日 第2限
経済学-第8回 消費税② 2008年5月30日.
財政-第10講 4.租税理論と税制改革(4) 2008年5月13日 第2限
全国介護保険担当部(局)長会議資料 ~介護保険制度改正の検討状況等について~
今までにないコスト合理化や収益拡大を目指す東電改革
経済学-第3回 租税体系 2008年4月25日.
事例Ⅳ 企業価値計算 企業価値の評価方法 分類 概要 方法 詳細 インカム アプローチ
特集 『豊かなモビリティ社会』=「誰もが安全で自由な移動を享受できる社会」 ■政策1 「サポートカー限定免許」の創設
公共経済学 23. 法人所得課税.
Presentation transcript:

欧州諸国における最近の税制改革 2007年5月30日

1.ドイツ 2.フランス 3.オランダ

1.ドイツ マクロ経済、財政状況 メルケル大連立政権の税制改革 付加価値税の引上げ等 法人税改革 金融所得への源泉分離課税の導入

ドイツ:マクロ経済、財政状況

2005年9月:連邦議会議員選挙、11月:連立合意  キリスト教民主同盟のメルケル党首を首相に、二大政党を 含む大連立政権が成立。  2002年から2005年までEUの求める財政赤字の基 準値を超過しており、財政健全化がメルケル政権の急務の 課題。  税制については、 ・2007年1月:付加価値税の引上げ(16 → 1 9%) 所得税の最高税率の引上げ(42 → 45%) ・2008年1月以降:法人税制改革 法人実効税率引下げ、課税ベースの拡大、 金融所得への源泉分離課税の導入 等に合意。 メルケル大連立政権の税制改革

付加価値税の引上げ等 2007 年 1 月 背景:マーストリヒト条約に基づく財政赤字3%基準の遵守、財政健全化の 要請 ・付加価値税率の引上げ( 16 % →19 %)【増収額 3.4 兆円】 → 増収分の 2/3 は財政再建に、 1/3 は失業保険料の引下げ に充当 ・所得税の最高税率の引上げ( 42 % →45 %)【増収額 0.2 兆円】 ①財政再建のための増税項目として付加価値税が選択された理由 ・税率が他の EU 諸国に比べて低かった(EU加盟国平均は約19%) ・輸出品免税であり、ドイツ製品の国際競争力に影響を及ぼさない ・薄く広く負担を求め、特定のグループに負担を負わせる税より理解が 得やすい ②付加価値税引上げの影響 ・ 2007 年の成長は減速すると見られるが、駆け込み需要の反動は一時 的なものにとどまり、同時に行う失業保険料の引下げも勘案すると、付加 価値税引上げの影響は軽微と見られる。 ・中長期的には、財政健全化がシグナルとなって国民のマインドが上昇 するなど経済にプラスの効果が生まれると見られる。

法人税改革 2008 年 1 月(予定:現在法案審議中) 背景: ドイツ国内で利益を上げながら海外へ所得を移転する企業への対応 雇用創出、賃金上昇、所得税・社会保険料の増収の期待 ・法人実効税率の引下げ(約 39 % →30 %) ・課税ベースの拡大等によりネット減収額を抑制(減収額の 6 分の 5 を補填) 主要な増減収項目の見積り: 増収項目減収項目 営業税の損金算入の否認 国内課税基礎の強化による増収 定率償却制度の廃止 移転価格税制の強化 支払利子費用の損金算入の制限 企業買収規則の厳格化 有価証券を利用した租税回避の制限 等 法人税率の引下げ( 25→15 %) 営業税率の課税指数の引下げ 所得税における営業税控除率の引上 げ 人的企業に対する所得税率の軽減 等 【改革全体の減収額】 (億ユー ロ)

金融所得への源泉分離課税の導入 2009 年 1 月(予定:法人税改革法案の一部として審議中) 背景:金融商品の形を変えることによる課税逃れへの対応 ・利子、配当、株式譲渡益について、25%の源泉分離課税 ①株式譲渡益課税についての「収益に課税するが譲渡益には課税しない」 という伝統的な原則を完全に放棄。 ②配当への課税については、法人税との二重課税の調整はもはや考慮する 必要がないとの考えにより、調整措置は講じない。(法人税を引き下げる ため、法人税と合わせた負担は軽減される)

2.フランス マクロ経済、財政状況 国際競争力の強化と社会保障財源 その他税制上の課題

フランス:マクロ経済、財政状況

国際競争力の強化と社会保障財源 サルコジ新大統領の選挙中の提案 背景:欧州統合に伴い、仏企業の国際競争力の強化が必要 高齢化に伴い社会保障支出の伸びが予見される中、中長期的に 安定的な財源確保が必要であるが、一般社会税 (注) の負担は既に 高く 、 更なる引上げは困難 ・社会保険料の企業負担分の引下げ ・代替の社会保障財源として、付加価値税率 (19.6%)の引上げ (注)社会保障目的の個人所得課税。1991年に税率1.2%で導入され たが、その後段階的に税率が引き上げられ、現在では給与所得等につい ては7.5%(その他関連諸税も合わせると8%)。所得の水準によら ず定率。

その他税制上の課題 (いずれも、実現可能性は不明) 一般社会税の所得税との統合 ・課税ベースの調整(一般社会税の課税ベースは所得税よ り広範) ・所得税への源泉徴収制度の導入 法人税の引下げ ・法人実効税率(33.33%)の引下げ 富裕税の引下げ タックス・シールド (注) の拡大 ・上限の引下げ(所得の6割 → 5割) ・対象税目に、一般社会税を追加 (注)所得税、富裕税等の合計の納税額に上限を設ける制度

3.オランダ マクロ経済、財政状況 2001年改革①ボックス・タックス の導入 2001年改革②諸控除の改革 2007年法人税改革

オランダ:マクロ経済、財政状況

2001年改革①ボックス・タックス の導入 背景:住宅ローン利子控除等による課税ベースの浸食、高い所得税 の最高税率(60%) ・富裕税による高所得者の国外移住等が問 題となっていた。 ・勤労性所得と資産性所得を分離して課税 ・勤労及び事業所得の最高税率の引き下げ(ボックス 1) ・富裕税に代わるものとして、資産からの収益率を一 定(4%)とみなし、資産価格の1.2%を税額とす る制度を導入(ボックス3) ボックス 1 勤労及び事業、居住用住宅からの所得( %~ 52 %) ボックス 2 株式・出資金の大口所有者の持分所得( 25 %) ボックス 3 資産からのみなし収益( 30 %)

2001年改革②諸控除の改革 背景:所得税の税率を引き下げる(33.9~60% → 32.35 ~52%)に際して、全体としての減収額を抑制するため、低所 得者に配慮した形の控除の見直しにより、増収をはかる必要が あった ・基礎控除等の人的控除(所得控除)を税額控除に変 更 ・基礎税額控除の他に、児童税額控除や勤労税額控除 等の税額控除を創設 (注)各種税額控除の合計額が、算出税額(社会保険料を含む) を上回る場合、その差額を給付する仕組みにはなっていない。

2007年法人税改革 背景:投資受入れ国として、他のEU諸国との競争のため、法人 税を引き下げる必要 税率の引下げ等の負担軽減と課税ベースの拡大 ・ 法人税率の引下げ(29.6% → 25. 5%) ・ 配当の源泉税率の引下げ(25% → 15%) ・ グループ利子ボックス、特許ボックスを創設 し、 それぞれ5%、10%の税率を適用する。 ・ 資本参加免税制度の適用条件を緩和 ・ 欠損金の繰越し・繰戻しの期間を制限 (参考)所得税が課税される自営業者についても、所得税のボッ クス1の課税ベースを利益の9割とすることで、法人税の引下 げにあわせて軽減。