マクロ経済学の基礎 1. マクロ経済の循環 1. 貯蓄の無い経済 2. 貯蓄・投資の存在する経済 3. 政府の存在・開放経済 2. 重要なマクロ変数 1.GDP ,失業率,物価 3. マクロ経済の経験的事実.

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第8章 貯蓄,投資と金融システ ム 1.アメリカ経済における金融機関と市場 ( ↑ 日本経済でもほぼ同じ) 金融システムは、ある人の貯蓄と別の人の投資 を結びつける。投資の例として、 起業のための設備投資 住宅を購入する 金融システムは、金融市場と金融仲介機関の2 つのカテゴリーに分けられる 1 8.
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国民所得統計 生産の境界の二重性 サービスとは 居住者概念 国民所得勘定の主な集計量. 慣行上の生産の境界 (市場生産と若干の 自己勘定生産) 帰属家賃 自給農業 NPO の有給労働 政府活動 生産の境界の二重性 主婦の家事労働 本来の生産の境界 ボランテイア活動 マイカーの 運転 睡眠 運動 自己向上.
国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
1 II マクロ経済学のデータ. 2 第5章 国民所得の測定 マクロ経済学とは 国内総生産 = GDP ( Gross Domestic Product ) – 社会の経済的福祉を測定する尺度の1つ ミクロ経済学とマクロ経済学の違いについては、 pp. 40 – 41 も参照.
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
貨幣について. 講義概要 貨幣の概念 名目と実質貨幣ストック 貨幣に対する需要 政府による金融政策.
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
第9章 国民経済計算 ー 経済統計 ー.
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
経済と株価ー講義② 企業活動と付加価値①・・・GDP上の考察 ・マクロ経済学上の付加価値 ・GDP統計の相互関係 ・GDP統計とは①~③
<ポイント> まずは、マクロ経済学の統計用語に慣れること!
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
労働市場マクロ班.
入門 計量経済学 第02回 ―本日の講義― ・マクロ経済理論(消費関数を中心として) ・経済データの取得(分析準備) ・消費関数の推定
マクロ経済学初級I 第6回.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月16日
第1章 国民所得勘定.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
国民経済計算 System of National Accounts
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰.
市場の効率性と政府の介入.
経済学入門 13 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年7月26日
国際経済の基礎10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月6日
<キーワード> 生産関数、労働、資本 限界生産物
イントロダクション.
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
7: 新古典派マクロ経済学 合理的期待学派とリアル・ビジネス・サイクル理論
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
短期均衡モデル(3) AD-ASモデル ケインジアン・モデルにおける物価水準の決定 AD曲線 AS曲線 AD-ASモデル
豊かさとは? 経済学B 第2回 畑農鋭矢.
GDPに関連した概念.
国民経済計算(SNA)とは 国際連合が示す基準に従って、世界各国が比較可能な形で、それぞれの経済の毎年の循環の姿を、体系的に明らかにすることを目的としたもの。 日本では、内閣府経済社会総合研究所   国民経済計算部が、年1回   「国民経済計算年報」を発行.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年7月20日
III 長期の実物経済.
第10章 失業と自然失業率 失業率はマクロ経済学においてGDP(5章)、インフレ率(6章)と並び重要な指標 各国の失業率(2012年、%)
硬直価格マネタリー・アプローチ MBA国際金融2016.
第4回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
政府の勘定 プライマリー・バランス ドーマー条件
マクロ経済学 II 第10章 久松佳彰.
マクロ経済学初級I 第4回.
マクロ経済学初級I 第5回講義.
中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
第4章 投資関数.
国際経済学10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年1月18日
III 長期の実物経済.
国際貿易の外観.
動学的一般均衡モデルについて 2012年11月9日 蓮見 亮.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月9日
第10回講義 文、法 経済学 白井義昌.
V. 開放経済のマクロ経済学.
VI 短期の経済変動.
V. 開放経済のマクロ経済学.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
第5回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
マクロ経済学体系のフローチャート 財 市 場 (IS曲線) IS・LM モデル 総需要 曲 線 所 得 と 物価水準 の 決 定 インフレと
7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓
循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow 家 計 企 業 (価格メカニズム) 市場機構 が働く p p 消費財市場 y
第6章 IS-LMモデル.
第9章 国民経済計算 ー 経済統計 ー.
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
第3回講義 文、法 経済学.
第6回講義 文、法 経済学 白井義昌.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
マクロ経済学初級I 第12回 今学期のまとめ.
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マクロ経済学の基礎 1. マクロ経済の循環 1. 貯蓄の無い経済 2. 貯蓄・投資の存在する経済 3. 政府の存在・開放経済 2. 重要なマクロ変数 1.GDP ,失業率,物価 3. マクロ経済の経験的事実

マクロ経済の循環 貯蓄の無い経済

生産=分配所得 Y = wL+rK 生産=支出 Y = C Y : 生産量 (GDP) , C : 消費 L :労働, K : 資本, w : 賃金率, r : 利子率 生産関数 Y=F(K,L)

マクロ経済の循環 貯蓄のある経済

生産=分配所得 Y=wL+rK 生産=支出 (財市場の均衡) Y=C+I 貯蓄の定義 S=Y–C 貸付資金市場の均衡 S=I

記号一覧 C 消費 consumption I 投資 investment G 政府支出 government expenditure Y 産出量 (output) , GDP NX 純輸出 net export – EX 輸出 export IM 輸入 import NFI 対外純投資 net foreign investment L 労働 ( 投入量 ) labor input K 資本 ( 投入量 ) capital input

マクロ経済学で学ぶこと 消費や貯蓄,投資はどう決まるのか 財市場,生産要素市場で需要と供給を一 致させるメカニズムは 市場がうまく機能しなかったらどうなる のか – 失業の存在,財の売れ残りの存在 経済政策の役割は?効果は? 財政政策,金融政策の効果 経済成長 時間の推移とともに経済はどう動くのか 経済成長の源泉は

政府の存在 生産=分配所得 Y=wL+rK 生産=支出(財市場の均衡条件) Y=C+I+G 国民貯蓄 S=Y–C–G 民間貯蓄 S P =Y–T–C 公的貯蓄 S G =T–G 国民貯蓄 S=S P +S G =Y–C–G 貸付資金市場の均衡条件 S=I

問題 公的貯蓄と民間貯蓄は,それぞれが無関 係に決まっているとしよう。財政赤字の 拡大は,公的貯蓄を減らし,国民貯蓄を 減少させる。このとき,国内投資はどう なるだろうか。 貯蓄主体と投資主体は異なるのに,なぜ 一国全体では,貯蓄と投資が一致するの だろうか(閉鎖経済の場合)。

開放経済 生産=分配所得 Y=wL+rK 財市場の均衡 Y=C+I+G+NX NX : 純輸出 (= 輸出 – 輸入) 純輸出=対外純資産の増分 (対外純投資: NFI ) 貸付資金市場の均衡 S=I+NFI

重要なマクロ変数 GDP 国内総生産 (gross domestic product) 失業率 物価 フロー変数とストック変数 経済成長率 インフレ率

GDP 国内総生産 Gross Domestic Product ある一定期間内に生産された最終生産物の価値 の合計 GDP の計算方法 Y=p 1 q 1 + p 2 q 2 + …… + p n q n 最終生産物を市場価格でウェイト付けして合計 する 市場価格でのウェイトの意味 消費者の評価(限界便益)を表している 政府サービス 市場取引が存在しない  生産コストで評価

中間生産物の取り扱い 製粉業者 農家 パン屋 最終消費者 小麦 100 万円 小麦粉 150 万円 パン 200 万円 付加価値( Value Added) = 産出額-原材料の購入費 (企業が生産・サービス活動によって新たに生みだした価値) 農家 =100 万円 製粉業者 =150–100=50 万円 パン屋 =200–50=50 万円 各生産段階での付加価値の合計 = =200= 最終生産物の価値

グロスとネット GDP Gross Domestic Product 資本減耗の推定が困難なため,これを控除しないグロ スの所得(粗所得)を計上 NDP (国内純生産 Net Domestic Product ) NDP=GDP – 資本減耗 資本減耗: 一定期間資本を使用することによる 資本の目減り分(減耗分)

市場取引が存在しない財・サービ ス 政府サービス 生産コストで評価 帰属家賃 持ち家からの居住サービスは推計 家事労働,農家の自家消費 推定が困難 家事労働は GDP に反映されていないが,農家の自家消費は推計 されて反映されている 公害,環境破壊 推定が困難

国内概念と国民概念 GDP 国内で生産された最終生産物の価値 Gross Domestic Product GNP 国民が生産した最終生産物の価値 Gross National Product GNI 国民総所得 Gross National Income – GNP に代わる概念 93SNA で採用 – 市場価格表示の国民所得 – 要素費用表示の国民所得

実質 GDP と名目 GDP 実質 GDP – ある基準年の価格で評価した GDP Y t =p 1 0 q 1 t + p 2 0 q 2 t + ….. + p n 0 q n t 名目 GDP – 各時点での価格で評価した GDP PY t =p 1 t q 1 t +p 2 t q 2 t + ….. + p n t q n t p i t 時点 t における第 i 財の価格 q i t 時点 t における第 i 財の数量

フロー変数とストック変数 フロー : 流量 ストック : 水位 GDP はフロー概念 資産残高,国債残高などはストック概念

失業率 完全失業率 = 完全失業者数 / 労働力人口 – 15 歳以上人口 = 労働力人口 + 非労働力人口 労働力人口 = 就業者 + 完全失業者 : 働く意欲のある者 非労働力人口: 学生,家事従事者,病弱者等 完全失業者:月末日に終わる 1 週間中に収入を伴う仕事を 1 時 間以上しなかった者のうち, 「就業が可能で,これを希望し, かつ,求職活動をした場合 国によって失業率の定義は異なる 就業意欲をなくし,求職活動をしない場合には完全失業者に 区分されない フィリップス曲線 – インフレ率と失業率の負の相関関係(短期的な関係) – 1970 年代のスタグフレーション  フィリップス曲線の理論的基 礎の研究  期待の重要性,自然失業率仮説(垂直な長期フィリッ プス曲線 )

失業の存在理由 摩擦的失業 非自発的失業(ケインズ的失業) ニュー・ケインジアンの説明 – 情報の非対称性に伴う労働市場の失敗 – 賃金の硬直性(効率賃金など)

物価水準 代表的な指標 – 消費者物価指数( CPI ) – GDP デフレータ 物価指数 – ラスパイレス指数(基準時の支出シェアのウェ イト) – パーシェ指数(比較時点の支出シェアのウェイ ト)

消費者物価指数の問題点 固定的ウェイトに伴う問題 – 新製品が CPI に反映されない – 古い製品がウェイトに含まれる(ワープロ専用機) 同じ財とは品質の向上(パソコンなど) 真のインフレ率よりも高めに出る – ある財が値上がり消費者の選択は値上がりしな かった財にシフト(代替効果) – 本当はもっとデフレだった(日本の場合)

GDP デフレータ GDP デフレータ=名目 GDP/ 実質 GDP Implicit deflator 名目 GDP と実質 GDP の比から計算される

実質と名目 実質経済成長率=実質 GDP の成長率 =名目経済成長率 – インフレ率 名目経済成長率=名目 GDP の成長率 実質利子率 = 名目利子率 – インフレ率 フィッシャー方程式 – インフレが予想される時,実質利子率がほぼ 一定に保たれるように,名目利子率が調整さ れる