ジャーナリズム論 第 12 回 現代日本のジャーナリズムの問題点 2 担当：野原仁

リークにもとづく不確実な情報 意図的に取材源が流す不確実な情報を、 裏取り取材をしないままタレ流すことが 日常的に行われている＝誤報の危険性 意図的に取材源が流す不確実な情報を、 裏取り取材をしないままタレ流すことが 日常的に行われている＝誤報の危険性 松本サリン事件などでもわかるように、 人権侵害にもつながる可能性 松本サリン事件などでもわかるように、 人権侵害にもつながる可能性

人権侵害とは？ 名誉毀損・プライバシーの侵害・ 不法侵入など、法律で認められて いるさまざまな権利を犯すこと 名誉毀損・プライバシーの侵害・ 不法侵入など、法律で認められて いるさまざまな権利を犯すこと 法的には許されても倫理的に許さ れないものは厳密には含まれない 法的には許されても倫理的に許さ れないものは厳密には含まれない

取材による人権侵害 住居への不法侵入 住居への不法侵入 無断撮影 無断撮影 集団過熱取材（メディアスクラム） 集団過熱取材（メディアスクラム） パパラッチ；取材対象をしつこく追 い回し、無断撮影・不法侵入も辞さ ないストーカー的取材 パパラッチ；取材対象をしつこく追 い回し、無断撮影・不法侵入も辞さ ないストーカー的取材 被害者家族への執拗な取材 被害者家族への執拗な取材

報道による人権侵害 名誉毀損・侮辱 名誉毀損・侮辱 プライバシーの侵害 プライバシーの侵害 肖像権の侵害 肖像権の侵害 差別表現 差別表現 誤報による精神的被害 誤報による精神的被害

人権侵害報道の原因 過度の商業主義 → 正確さよりも視聴者・読 者に「ウケて」、視聴率・部数が増えるこ とが重要 過度の商業主義 → 正確さよりも視聴者・読 者に「ウケて」、視聴率・部数が増えるこ とが重要 記者教育の不徹底 → 大学時代にジャーナリ ズムを学んだ記者はわずか 記者教育の不徹底 → 大学時代にジャーナリ ズムを学んだ記者はわずか 記者クラブ制度 → 官庁・企業が発表したこ とが記事のベースになりやすい 記者クラブ制度 → 官庁・企業が発表したこ とが記事のベースになりやすい 視聴者・読者の姿勢 → より刺激的な記事を 求める 視聴者・読者の姿勢 → より刺激的な記事を 求める

犯罪報道による人権侵害の原因 えん罪 えん罪 警察の秘密主義 警察の秘密主義 メディアと警察との癒着 メディアと警察との癒着 裏付け取材の軽視 裏付け取材の軽視 速報性・スクープの重視 速報性・スクープの重視 など

ここまでのおさらい ジャーナリズムの取材・報道により さまざまな人権侵害が起きている ジャーナリズムの取材・報道により さまざまな人権侵害が起きている 人権侵害報道の原因には、過度の商 業主義・記者教育の不徹底・記者ク ラブ制度・視聴者の姿勢、などがあ る 人権侵害報道の原因には、過度の商 業主義・記者教育の不徹底・記者ク ラブ制度・視聴者の姿勢、などがあ る

テレビ・メディアの特性 強い視覚伝達力 強い視覚伝達力 速報性＆時間の問題がつねにつきま とう 速報性＆時間の問題がつねにつきま とう マルチメディア性 マルチメディア性 受け手は受動的になりがち 受け手は受動的になりがち 親しみやすい 親しみやすい

テレビ・ジャーナリズムの特徴 映像第一主義 映像第一主義 非論評性とすりこみ性 非論評性とすりこみ性 ソフト・ニュース化 ソフト・ニュース化 Nowism （ナウイズム） Nowism （ナウイズム） センセーショナリズム センセーショナリズム おもしろくなければテレビじゃない !? おもしろくなければテレビじゃない !?

映像第一主義 映像がないニュースは取り上げられにく い 映像がないニュースは取り上げられにく い 刺激の強い映像はニュースになりやすい 刺激の強い映像はニュースになりやすい 刺激の強い映像は繰り返し使われやすい 刺激の強い映像は繰り返し使われやすい イメージ操作が簡単にできる イメージ操作が簡単にできる

非論評性とすり込み性 新聞の社説・コラムにあたるものがほ とんどない＝事実は伝えるが、評価は しない 新聞の社説・コラムにあたるものがほ とんどない＝事実は伝えるが、評価は しない 評価に関するコメントはしないが、映 像の使い方・編集・ＢＧＭなどで、特 定のイメージを与えることは可能 （例；オウム真理教・北朝鮮・田中真 紀子、 … ） 評価に関するコメントはしないが、映 像の使い方・編集・ＢＧＭなどで、特 定のイメージを与えることは可能 （例；オウム真理教・北朝鮮・田中真 紀子、 … ）

ソフト・ニュース化 「わかりやすい」ニュースが好まれ、 「わかりにくい」ニュースは敬遠されが ち 「わかりやすい」ニュースが好まれ、 「わかりにくい」ニュースは敬遠されが ち 「グルメ・ファッション・旅行・生活の 知恵」など、ソフトなニュースが好まれ、 「政治・経済」など、ハードなニュース は敬遠されがち 「グルメ・ファッション・旅行・生活の 知恵」など、ソフトなニュースが好まれ、 「政治・経済」など、ハードなニュース は敬遠されがち

Nowism （ナウイズム） 速報性という特徴を生かそうとするため、 「いま（ now ）」の「新しい」話題を最優 先する傾向にある 速報性という特徴を生かそうとするため、 「いま（ now ）」の「新しい」話題を最優 先する傾向にある 「いま（ now ）」の「新しい」話題を常に 追い求めるため、過去のことをかえりみ ない 「いま（ now ）」の「新しい」話題を常に 追い求めるため、過去のことをかえりみ ない ひとつのネタに集中しがちである ひとつのネタに集中しがちである

センセーショナリズム 視聴者により刺激を与えようと、できご とをセンセーショナルに取り上げる傾向 が強い（とくにワイドショー） 視聴者により刺激を与えようと、できご とをセンセーショナルに取り上げる傾向 が強い（とくにワイドショー） 人物に焦点をあてて人間関係などを興味 本位で描く傾向が強い 人物に焦点をあてて人間関係などを興味 本位で描く傾向が強い

おもしろイズム 見て「おもしろい」ような演出をしがち である 見て「おもしろい」ような演出をしがち である 見て「おもしろい」ネタでないと取り上 げられにくい 見て「おもしろい」ネタでないと取り上 げられにくい 「おもしろい」＝「視聴者がアタマを使 わず、笑える」と考えがちである 「おもしろい」＝「視聴者がアタマを使 わず、笑える」と考えがちである

ニュースの制作過程 週１回（金曜日）；次の週の取材・放送 予定についてミーティング 週１回（金曜日）；次の週の取材・放送 予定についてミーティング 朝；その日の取材・放送の確認 朝；その日の取材・放送の確認 夕方；再確認 夕方；再確認 ニュース終了後；翌日の取材・放送予定 についてのミーティング ニュース終了後；翌日の取材・放送予定 についてのミーティング

ＮＨＫのニュースの特徴 発表ネタがほとんど 発表ネタがほとんど 評価についてのコメントはほとん どしない 評価についてのコメントはほとん どしない 政治的に対立している問題はでき るだけ扱わない 政治的に対立している問題はでき るだけ扱わない 政府・自民党・財界に不利になる ような問題はできるだけ扱わない 政府・自民党・財界に不利になる ような問題はできるだけ扱わない

『報道ステーション』の特徴 ソフト・ニュースが多い ソフト・ニュースが多い トークなども多く、「ニュース・ ショー」の色合いが濃い トークなども多く、「ニュース・ ショー」の色合いが濃い 古館伊知郎キャスターのコメントが 多い 古館伊知郎キャスターのコメントが 多い 企画ネタが多い 企画ネタが多い

ニュース・キャスターの役割 番組進行 番組進行 ゲストとのトーク ゲストとのトーク ニュースについてのコメント ニュースについてのコメント 注意！キャスターが自分の一存で 勝手にコメントすることはほとん どないぞ！ 注意！キャスターが自分の一存で 勝手にコメントすることはほとん どないぞ！

ワイドショーをどう考える？ ワイドショーの視聴者＝専業主 婦・高齢者の女性が圧倒的に多い ワイドショーの視聴者＝専業主 婦・高齢者の女性が圧倒的に多い 政治や経済などのニュースを、こ うした人びとにわかりやすく伝え ている側面もある 政治や経済などのニュースを、こ うした人びとにわかりやすく伝え ている側面もある センセーショナリズム センセーショナリズム いい加減なコメンテーターたち いい加減なコメンテーターたち