ポジティブリスト制施行に向けた 食品中の残留農薬多成分一斉分析法

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絶縁用保護具などの規定について 絶縁用保護具などは、「厚生労働大臣が定める規格に適合したものでなければ、譲渡または貸与してはなら ない」と労働安全衛生法第42条に定められています。また、同44条には「絶縁用保護具などの製造者ま たは輸入者は絶縁用保護具などの型式毎に検定を受けなければならない」と定めています。つまり、絶縁用.
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ポジティブリスト制施行に向けた 食品中の残留農薬多成分一斉分析法 兵庫県立健康環境科学研究センター 健康科学部 秋山由美

わが国における残留農薬の法規制 食品用農薬(世界で約700種) 食品衛生法 基準設定農薬 (229種) 国内登録農薬 (約350種) 残留農薬基準(食品衛生法)  厚生労働省が設定。流通している食品を取り締まるための基準。 登録保留基準(農薬取締法)  環境省が設定。農薬登録時の審査のための基準。

ポジティブリスト制の概要 [対象物質] 農薬、飼料添加物、動物用医薬品 [対象物質]   農薬、飼料添加物、動物用医薬品 人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量(いわゆる一律基準値)を超えて残留する食品(加工食品も含む)は、原則として流通が禁止される。 ただし、残留基準(暫定基準を含む)が定められている場合については、この限りでない。 一律基準値:諸外国の設定状況(0.01~0.1ppm)を参考にして、検討中 暫定基準:コーデックス基準、登録保留基準、諸外国の基準を参考にして、  第1次案が公表され(2003年10月28日) 、意見を募集中。    農薬427種、動物用医薬品203種、両方に用いられるもの30種、    合計660種に暫定基準値が設定されている。

食品衛生法における残留農薬の規制状況 (現行制度) 農薬毎に限定された農産物にのみ 残留基準が設定 (ポジティブリスト制施行後) すべての食品に現行の残留基準、暫定基準あるいは一律基準値のいずれかが適用される すべての食品中において「不検出」とする農薬        (現行基準+暫定基準) 現行基準と一律基準値が適用される農薬 現行基準、暫定基準と一律基準値が適用される農薬 暫定基準と一律基準値が適用される農薬 一律基準値のみが適用される農薬 5種 57種 167種 285種 その他 現行229 合計 514

GC/MSによる多成分一斉分析の対象とした農薬数

Total Ion Chromatogram (TIC) of Pesticides Monitored by GC/MS with Scan Mode

Ion Chromatograms Printed Automatically According to the Original Macro Program

多成分一斉分析へのLC/MSの導入

試験溶液の調製法 <LukeⅡ法(FDA)> <CDFA法> <秋山法> アセトン抽出 アセトニトリル抽出 アセトニトリル抽出 ODS精製 ジクロロメタン転溶 塩析 塩析 PSA精製 QMA+NH2精製 (SAX+PSA) NH2精製 GC-FPD GC-ELCD GC/MS分析 HPLC分析 GC/MS分析

固相抽出法(SPE)に用いられる陰イオン交換樹脂 弱塩基性陰イオン交換樹脂 PSA エチレンジアミン-N-プロピル NH2 アミノプロピル 一級二級 アミン 一級 アミン 強塩基性陰イオン交換樹脂 SAX QMA トリメチルアミノプロピル 四級 アミン

Elution Pattern of Pesticides from PSA and NH2 Cartridge TIC for Sample Extract before and after Purification with Anion-exchange Cartridge SAX, PSA, NH2 (2) (1) (3) (4) Elution Pattern of Pesticides from PSA and NH2 Cartridge Fig. 2. Total-ion chromatograms for sample extract before(1) and after purification with ion-exchange mini-column SAX(2),PSA(3),NH2(4)

Sample Preparation Method for Multi-pesticide Residue Analysis

N-トリハロメチルチオ系殺菌剤 1,2,3,6-Tetrahydrophthalimide N’,N’-Dimethyl-N-phenylsulfonyldiamide

農薬分解物・代謝物の添加回収実験

多成分一斉分析法と告示分析法の比較 -10検体、163農薬を対象- 多成分一斉分析法と告示分析法の比較 -10検体、163農薬を対象- 秋山法 告示法 通知法(GPC法) 試験法数 163農薬→ 1試験法 70試験法 約120農薬→ 試験溶液数 1検体につき 1 70 5 分析機器 GC/MS GC-FPD,NPD,ECD HPLC-UV,FL(ポストカラム) (確認) GC/MS,LC/MS HPLC-FL (ポストカラム) (確認) GC/MS 所要日数 3日 200日 5日 溶媒使用量 1 L 400 L 6 L

農産物中の残留農薬実態(2002-2003年度)

検出頻度の高い農薬 (2002-2003年度) 国産農産物 アセタミプリド(虫) ペルメトリン(虫) キャプタン(菌) アセフェート(虫) イプロジオン(菌) クレソキシムメチル(菌) ブロモプロピラート(虫) 輸入農産物 イマザリル(菌) チアベンダゾール(菌) クロルピリホス(虫) シペルメトリン(虫) オルトフェニルフェノール(菌) メタミドホス(虫) イプロジオン(菌)

複数農薬の検出例

複数農薬の検出例

複数農薬の検出例

残留農薬モニタリングの国際比較 兵庫県 米国FDA EU 日本(厚労省) 検出率 58% 40% 30% 0.70% *2 違反率 0.4% (1995-2001) (2000) (1996-2001) (1999) 検出率 58% 40% 30% 0.70% *2 違反率 0.4% 2.6% *1 2-7% *1 0.02% *2 *1:米国及びEUではポジティブリスト制を導入し、基準のない農薬が 検出された場合にも違反となる国が多い。 *2:厚労省の統計は検査の検体数ではなく、検査項目総数(検体数× 検査項目)に対する率としている。

資料「食品に関するリスクコミュニケーション(残留農薬について)」 農産物中の農薬の監視 資料「食品に関するリスクコミュニケーション(残留農薬について)」 (農林水産省 消費・安全局)より

残留農薬の多成分一斉分析法の展望 (まとめにかえて) 残留農薬の多成分一斉分析法の展望        (まとめにかえて) アセトニトリル抽出 ポジティブリスト制に 対応したリスク管理 ODSミニカラム精製 塩析 PSAミニカラム精製 ENVI-Carb ミニカラム精製 GC/MS(SCAN)分析 LC/MS(SCAN)分析 (約350農薬) (約100農薬)