植物プランクトン動態に及ぼす地球温暖化効果: 基礎的実験研究
背景説明Ⅰ:プランクトン増殖率と水温
背景説明Ⅱ:ユーグレナ 和名 ミドリムシ 中国名 美眼虫 一細胞が一個体 幅 約10ミクロン (1ミリの百分の一) 背景説明Ⅱ:ユーグレナ 和名 ミドリムシ 中国名 美眼虫
ユーグレナ運動(すじりもじり運動) 緑: 葉緑体 オレンジ:眼点 ひげ: 鞭毛 ユーグレナ運動(すじりもじり運動) 緑: 葉緑体 オレンジ:眼点 ひげ: 鞭毛
課題 ユーグレナの増殖率に及ぼす水温と光強度の影響 方法 水温: 17~31℃各種 光源: 白色蛍光灯 光強度: 真光層の最上層~最下層(約1%)~ さらにその下層(約0.1%) ユーグレナが増殖できる領域をアカで示しました。太線が実測で、細線が推測です。 真光層を優に超える領域で増殖できることが分かります。 この意味でユーグレナは、好日的でも好陰的でもあるオポチュニストといえます このスライド:約20秒 ここまで5分弱
培養している様子
増殖の記録 経過時間 縦軸は1cc当りの細胞数を対数表示 横軸は培養の経過時間 指数成長(ネズミ算的に増加)しているとき、このグラフでは直線となる 一本の直線が個々の培養を表す 直線の傾きは増殖率を表す 経過時間
増殖率の光強度依存性 水温によって違うのか? 真光層の最下層 室内
増殖率の水温依存性 光強度によって違うのか? ←光の強さ ←可塑性指数
結論 ①増殖率の光強度依存性の基本パターンはどの水温でも同じ ②増殖率は弱光を除き25゚Cで最適となる ③増殖率の水温依存性は弱光ほど弱い 下層へ分布するほど温暖化の影響は弱い 上層へ分布するほど温暖化の影響は強い
以上、 学長裁量経費による 研究成果の報告でした 以上、 学長裁量経費による 研究成果の報告でした 本課題の意義、学問的背景、ユーグレナを用いた理由など多くを説明省略したこと、お詫び申し上げます
おまけ(お詫びのしるし) 先ほどの結論: ③増殖率の水温依存性は弱光ほど弱い 下層へ分布するほど温暖化の影響は弱い 下層へ分布するほど温暖化の影響は弱い 上層へ分布するほど温暖化の影響は強い ⇒では、ユーグレナはどこに分布するのか? ユーグレナには空間定位能力がある 重力走性、化学走性、光走性、光驚動など
進化的利益は増殖率μを最高にする強光域で得られる 一方、定説ではユーグレナは極端な弱光域(図の青線)へ定位する ⇒大いなるパラドックス 増殖率最高域 真光層 負の光走性 室内 光走性のセットポイント(SP):光走性の正負が逆転する光強度 正の光走性
突然だったので、 最初は強光にびっくりしたけれど、、、 本当は好きかも? 17時間後
原始生物ユーグレナが示す 「ためらい」行動 or 二歩前進一歩後退
42時間の振舞い(43秒に圧縮したタイムラプス動画) (約1時間の振舞いを1秒の動画で表す) 42時間の振舞い(43秒に圧縮したタイムラプス動画) (約1時間の振舞いを1秒の動画で表す)
大きく後退したら、 二歩前進、一歩後退しながら最前線へ (全般的傾向)びっくりして最初は逃げるが、前進しながら 光走性セットポイント(SP)を増して、増殖率をあげる 二歩前進一歩後退を繰り返しながら、徐々に 光走性セットポイント(SP)を増加させる メカニズムは全くの未知 正の光走性 負の光走性
細胞は成長してから分裂する 仮説1 光傾度 成長期=光合成による細胞成分の倍加⇒DNA複製 成長期 時間の流れ 分裂期 成長期 分裂期 SPの減少により後退 成長期 SPの増大により前進 光傾度
強光順応➜光走性SPの直線的増加 +自発的リズム(強光暴露・分裂サイクル独立性) 強光順応➜光走性SPの直線的増加 +自発的リズム(強光暴露・分裂サイクル独立性) 仮説2 強光順応➜SPの直線的増加 時間の流れ SP減少相 SP増加相 光傾度
「挑戦」行動 仮説3 光傾度 ①強光によるSP増加には感応期と不応期がある ②感応期:SPを増加させつつ前進 ③不応期:SPを超える暴走(慣性の法則)と、 負の光走性による後退 「挑戦」的前進: 急には止まれない?(overshoot) 暫定SP(>確定SP)への前進? (正の光走性) 負の光走性 挑戦 SP2獲得 SP2 負の光走性 訓練目標値 時間の流れ 挑戦 SP1獲得 (暫定SP1) SP1 光傾度
集団的振舞いとしての光定位 Ⅱ 80-min behavior in 32-s movie (2.5 min per 1 s; x150) 60 120 400 400 1500 120 400 60 120
Halogen lamp (4700K) 45-h behavior in 27-s movie (1 Halogen lamp (4700K) 45-h behavior in 27-s movie (1.7 h per 1 s; x 6000) 2000 300 2 微弱光領域を設定してみた(画面下側50 mm を黒画用紙で被覆)
集団的振舞いとしての光定位 Ⅰ 45-h behavior in 112-s movie (12 min per 1 s; x 720)
± sign of phototaxis Hӓder (1987)’s conclusion based on (Diehn 1973a, b; Colombetti et al. 1982; Hӓder et al. 1981): ± sign of phototaxis changes at ~1.4 W m-2 (≈ 6 µmol m-2 s-1 ≈ 450 lx) 光応答運動については一世紀近くの研究史があり、文献を調べてみた。 光走性について、先行研究を総括してHaderは、正の光走性と負の光走性はだいたい・・・で別れるとした。 正の光走性 負の光走性 以下、本口演で、光強度単位を「まいくろ」と略称する
背景説明Ⅰ:プランクトン増殖率と水温・光強度 地球生態系の純一次生産力 陸上植物全体と植物プランクトン全体で互角 植物プランクトンの増殖率を決めるもの ①生物種固有の特性 ②物理的環境要因 養分、水温、光強度(明るさなど) 環境変化が起きると変わるもの ①水圏生態系の純一次生産力 ②水圏生態系の植物プランクトン組成 ③ ①+②⇒食物網の中身
反射的応答:単一(同系統)の処理回路 ためらい、迷いは知的応答を示唆する 原始的なユーグレナ(単一細胞)内に 対立的な処理回路と どちらを優先させるか決める計算回路 To be or not to be, that is the problem ただし、優柔不断に何もしない、ということはない