東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学准教授 熊野 宏昭

Slides:



Advertisements
Similar presentations
高次脳機能障害について 藤本大樹. 目次 1 .高次脳機能障害とは 1-1 .高次の活動・低次の活動 1-2 .高次脳機能障害の主な症状 .記憶障害 .注意障害 .持続性注意障害 .容量性注意障害 .選択性注意障害
Advertisements

第8章 心の病気 生徒の心の問題に対処するために (1) 道案内  なぜ教育心理学を学ぶのか 1  効果的な授業をするために 2記憶 3学習 4動機づけ  生徒を正しく評価するために 5評価  生徒の心を理解するために 6性格 7性格検査  生徒の心の問題に対処するために 9治療 10.
ストレス・トラウマの反応について 岩手県教育委員会いわて子どものこころのサポートチーム. はじめに この授業ではストレス・トラウマ反応につ いて理解し、心とからだの回復力を高める こと(セルフケア)と対処法について学習 します。 「心とからだの健康観察」を使い、セルフ チェックしながら、学習を深めます。
カウンセリングナースによる 新しい治療システム -ストレスケア病棟での治療体験と カウンセリングナースの導入- 福岡県大牟田市 不知火病院 院長 徳永雄一郎.
11-2 知っておくと役立つ、 糖尿病治療の関連用語 一次予防、二次予防、三次予 防 1.1. インスリン依存状態 インスリン非依存状態 2.2. インスリン分泌 3.3. 境界型 4.4. グルカゴン 5.5. ケトアシドーシス、ケトン体 6.6. 膵島、ランゲルハンス島 7.7. 糖代謝 8.8.
神経発育と精神疾病 趙春傑 東南大学基礎医学院教授.
発達障害と統合失調の類似性 原因を求めれば発達障害が増える
統合失調症ABC 監修 : 国際医療福祉大学 教授 上島 国利 すまいるナビゲーター ブックレットシリーズ No.1
心理的ストレスに対する心臓血管反応 ー認知的評価の導入ー 社会精神生理学への招待 日本大学大学院理工学研究科 山田クリス孝介
第12回: 心の病気とその治療 臨床心理学と精神医学.
糖尿病の成因と病期 1型糖尿病 2型糖尿病 ・右向きの矢印は糖代謝の悪化、左向きの矢印は糖代謝の改善を表しています
脳の活動部位の探求 (脳科学の方法).
体重減少 ◎食欲があるのに体重が減る ⇒糖尿病、甲状腺機能亢進症、吸収不良症候群などを疑う ◎食欲がなくて体重が減る ⇒その他の疾患を疑う
体重増加 短期間で 急に太った いつもと同じ食生活をしているのに… 定期的に運動をしているのに…
全身倦怠感 全身倦怠感はさまざまな病気にみられます 疲れやすい… だるい…
失神.
動悸にはこんな種類があります 心臓の動きが 考えられる病気 動悸とは、心臓の動き(心拍)がいつもと違って不快に感じることをいいます。
飲酒による人体への影響 市村 将 参考・引用文献:Yahoo!ニュース 未成年の飲酒問題
順序立った判読の仕方.
I gA腎症と診断された患者さんおよびご家族の皆様へ
磁気治療機器が、線維筋痛症患者の痛みを抑制 できるかどうかを検討する。 同時に機器の安全性を検討する。
心身の相関とストレス.
ホスピス外来における STAS-Jを活用した看護の実際
骨格筋のインスリン抵抗性が肥満の引き金 1 参考 最近、エール大学のグループは、骨格筋のインスリン抵抗性がメタボリック症候群を引き起こす最初のステップであることを報告した。BMIが22-24の男性をインスリン感受性度で2グループに分け、食事(55%炭水化物、10%蛋白質、35%脂肪)を摂取してから、筋肉のグリコーゲン量をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べたところ、インスリン感受性群に比べて、抵抗性群ではグリコーゲン生成が61%減少していた。肝臓のグリコーゲン量は2群間で有意差はみられなかった。しかし、肝臓の
1. 病気になると血糖値が 高くなりやすくなります 2. 最も注意が必要なのは 糖尿病の「急性合併症」 3. シックデイの対応
甲状腺疾患 カイエー薬局 グループ発行 健康シリーズ 女性に多い 最近、テレビでも放送されましたが、いくつもの病院を
ギャンブルと脳と心理 2班 新川正明 名和田晃則 武山貢 毛利健人
臨死体験 Near-Death Experience
本邦における「障害」の射程と 身体障害者手帳をめぐる問題
覚醒性の神経伝達物質 (カテコールアミン)
平成27年度 埼玉県障害者 虐待防止・権利擁護研修
かゆみが血液透析患者のQOLに与える影響の検討 ~SF-36v2を使用して~
不眠の症状は4タイプあります 入眠障害 寝つきが悪い ぐっすり眠れない 中途覚醒 夜中に目が覚めてしまい その後なかなか眠れない 早朝覚醒
自律神経の研究成果 神経生理 平山正昭.
高血圧 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 二次性高血圧を除外 合併症 臓器障害 を評価 危険因子 生活習慣の改善
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
脳血管障害 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 緊急処置 一般検査 画像検査 治療 診断
糖尿病 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 検査 診断 治療
糖質摂取が及ぼす運動中の 反応時間への影響
女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造
神戸大学医学部附属病院 リエゾン精神専門看護師 古城門 靖子
大脳辺縁系.
独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター認知症疾患医療センター 川島 佳苗
介護予防サービス・支援計画表 記入のポイント.
14.心身の相関とストレス 写真)ストレスで悩む男性 素材集-ストレス 「メンタルクリニック桜坂」 写真)「メンタルクリニック桜坂」より.
Stress 1 [5min] Rest 1 Stress 2 [1imn] Rest 3 [3min] Rest 2
 クリティカルケア領域に             おける家族看護     ICU入室中の患者家族の      ニードに対する積極的介入について              先端侵襲緩和ケア看護学                    古賀 雄二 
2007年10月14日 精神腫瘍学都道府県指導者研修会 家族ケア・遺族ケア 埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 大西秀樹.
すずかけの木通信 12月号 睡眠時無呼吸症候群 について
軽度発達障害の理解 中枢神経系における脳の機能障害である。 → 脳の発達の遅れ
1. 神経は全身に 張り巡らされている 2. 神経障害の主な症状 3. 神経障害の治療法 4. 症状をやわらげるアイデアと
学習目標 1.急性期の意識障害患者の生命危機を回避するための看護がわかる. 2.慢性期の意識障害患者の回復に向けた看護がわかる. 3.片麻痺患者のADL獲得に向けた看護がわかる. 4.失行・失認の患者が生活に適応するための看護がわかる. 5.失語症の患者のコミュニケーション方法の確立に向けた看護がわかる.
「糖尿病」ってどんな病気?? ★キーワードは・・・「インスリン」!!!
4.生活習慣病と日常の生活行動 PET/CT検査の画像 素材集-生活習慣病 「がん治療の総合情報センターAMIY」 PET/CT検査の画像
井澤修平 早稲田大学大学院人間科学研究科 日本学術振興会特別研究員
埼玉医科大学国際医療センター核医学 松田博史
健診におけるLDLコレステロールと HDLコレステロールの測定意義について~高感度CRP値との関係からの再考察~
血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~
健診における携帯心電計使用 の有効性の検討
◆3.0T MRIを導入 ◆世界初、画像を信号を全てデジタル化 3.0T MRI検査開始のお知らせ 大生病院のMRI装置が新しくなりました。
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
1.
経過のまとめ 家族歴、基礎疾患のない14歳女性 筋力低下、嚥下障害を主訴としてDM発症 DMは、皮膚症状と筋生検にて確定診断
我が国の自殺死亡の推移 率を実数で見ると: 出典:警察庁「自殺の概要」
子どもの性格は生まれつき? ー性格の決定因と発達ー
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
1. 糖尿病の合併症としての 性機能障害 2. 性機能障害と糖尿病治療 3. 性機能障害、とくにEDの 原因について 4.
1. ご高齢の糖尿病患者さんと 若い人との違いはなに? 2. ご高齢の糖尿病患者さんの 治療上の注意点 3. ご高齢の糖尿病患者さんの
不安感情の要因 高木 翔平.
誰も言わなかったが、実は誰もが知っている
Presentation transcript:

東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学准教授 熊野 宏昭 パニック障害の原因 東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学准教授 熊野 宏昭

パニック障害とは 特別なきっかけもなく、突然、動悸、呼吸困難、胸痛、めまい、吐き気など多彩な身体症状が出現し、激しい不安に襲われるといった発作を繰り返す病気。 発作は10分以内にピークに達し、通常数分~数十分程度で自然とおさまるため、救急で受診したとしても、病院に着く頃には症状が消失しており、そのまま帰されることが多い。 身体的な精査をしても、どこも異常なところは発見されず、自律神経失調症、心臓神経症、過呼吸症候群、上室性頻脈、狭心症、メニエ-ル症候群、過敏性腸症候群、などと診断されていることが多い。

パニック発作の症状  ● 心臓がドキドキする  ● 汗をかく  ● 身体や手足の震え  ● 呼吸が速くなる、息苦しい  ● 息が詰まる  ● 胸の痛みまたは不快感  ● 吐き気、腹部のいやな感じ  ● めまい、頭が軽くなる、ふらつき  ● 非現実感、自分が自分でない感じ  ● 常軌を逸する、狂うという心配  ● 死ぬのではないかと恐れる  ● しびれやうずき感  ● 寒気または、ほてり

診断基準 予期しないパニック発作が繰り返し起こる。 少なくともどれか1回の発作の後1ヶ月以上、以下のうちの1つ以上が続いていたこと。 また発作が起こるのではないかという心配。 発作やその結果が持つ意味についての心配(例:心臓病なのではないか、気が狂うのではないか)。 発作と関連した行動の大きな変化(例:仕事をやめる)。 薬物の影響や身体疾患では説明できない。 他の精神疾患では説明できない。

パニック障害の発症・維持要因 脳の機能障害に起因する内因性不安 少なくとも、認知や行動の病気という側面もある 1960年頃に、イミプラミン(代表的な抗うつ薬)が発作を抑えることが発見されたことが研究の出発点。 橋の青斑核(中枢神経系のノルアドレナリンの分泌核)の興奮性亢進、中脳の縫線核(中枢神経系のセロトニンの分泌核)の機能不全、GABAA-ベンゾジアゼピン受容体の結合低下。 少なくとも、認知や行動の病気という側面もある ストレスや過労が発症に先立つことが多い 不安と思考の悪循環による発作の習慣化 予期不安による日常的な不安・緊張の高まり 回避行動としての広場恐怖の進展と、日常の不安・緊張のさらなる高まり つまり、心の病気というよりも脳の病気という考え

心理・身体的ストレス 個人内要因 回避行動 不安に伴う身体症状 破局的思考 パニック発作 予期不安 扁桃体・海馬の興奮性亢進 不安・緊張の高さ 回避行動 不安に伴う身体症状 破局的思考 パニック発作 予期不安

パニック障害はどこまで脳の病気か?

パニック障害の神経解剖学的仮説 Gorman et al, 2000より改変引用 前頭前野・帯状回 海馬 島 扁桃体 感覚視床 孤束核 内臓性 求心性線維 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 下垂体 副腎皮質 交感神経系 呼吸数 防御反応 覚醒亢進

パニック障害の脳画像研究 パニック障害をどの程度「脳の病気」と見なせるかを調べるために、以下のような脳画像研究が行われている 非発作安静時の機能の異常を検討したもの ポジトロンCT(PET)、脳波のLORETTA解析 健常者との間で構造の異常を検討したもの MRI 課題遂行時の特徴を検討したもの 機能性MRI、赤外線スペクトロスコピー(NIRS)

非発作安静時の脳内糖代謝の検討 研究の目的 方法 脳のエネルギー消費量を知ることができる画像検査(ポジトロンCT=PET)を用いて、非発作安静時の脳機能の特徴を検討する。 方法 非発作安静時のパニック障害患者と健常者を対象に、18F-FDGを静脈内投与し、高解像度3次元PET装置にて脳内糖代謝を測定。 治療前パニック障害患者12例と、正常統制群22例の群間比較を施行。

結果 患者群での代謝亢進領域 (Sakai, Kumano, et al, 2005)

考察 非発作安静時の治療前パニック障害群の 脳内糖代謝亢進領域 前頭前野・帯状回 島 海馬 感覚視床 孤束核 扁桃体 海馬 中脳水道 周囲灰白質 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

情動喚起語に対する血流増加も大きい (van den Heuvel et al, 2005) 右扁桃体・海馬で、パニック障害のみで有意な血流増加が認められた Co:コントロール、PD:パニック障害、OCD:強迫性障害、HC:心気症 (van den Heuvel et al, 2005)

ほかの脳部位の働きは?

左前頭葉にも容積減少がある (一卵性双生児不一致例のMRI) (岡崎ほか,2004) 関心領域 体積・容積 (mm3) 絶対差異    兄(患者)        弟         (%) 全 脳 1461.5 1502.56 -2.80 左大脳半球 564.37 594.30 -5.30 右大脳半球 568.36 592.34 -4.22 左前頭葉 204.88 226.19 -10.40 右前頭葉 222.25 234.50 -5.51 左側頭葉 88.26 90.17 -2.16 右側頭葉 91.22 99.19 -8.74 左海 馬 3.18 3.54 -11.32 右海 馬 2.72 3.30 -21.32 小 脳 149.81 156.35 -4.37 左側脳室体部 2.54 2.52 0.79 右側脳室体部 2.44 2.45 -0.41 第三脳室 0.35 0.36 -2.86 左側脳室下角 0.29 0.31 -6.90 右側脳室下角 0.54 0.21 61.11 関心領域    体積・容積 (mm3)      絶対差異    兄(患者)        弟         (%) 全 脳 1461.5 1502.56 -2.80 左大脳半球 564.37 594.30 -5.30 右大脳半球 568.36 592.34 -4.22 左前頭葉 204.88 226.19 -10.40 右前頭葉 222.25 234.50 -5.51 左側頭葉 88.26 90.17 -2.16 右側頭葉 91.22 99.19 -8.74 左海 馬 3.18 3.54 -11.32 右海 馬 2.72 3.30 -21.32 小 脳 149.81 156.35 -4.37 左側脳室体部 2.54 2.52 0.79 右側脳室体部 2.44 2.45 -0.41 第三脳室 0.35 0.36 -2.86 左側脳室下角 0.29 0.31 -6.90 右側脳室下角 0.54 0.21 61.11 一卵性双生児不一致例1組のMRI ・兄が19歳で発症し、20歳の時に撮像した一卵性双生児のMRIの比較。 ・いくつかの脳部位に関心領域を設定して、体積・容積に差異があるかどうかを検討。 ・罹患児で非罹患児よりも右海馬の容積が20%以上、左海馬と左前頭葉の容積が10%以上小さく、右側脳室下角の容積が60%以上大きかった。 ・PET検査によって機能異常が示された「恐怖ネットワーク」と直接的な関連を持つ海馬や前頭前野に、構造的異常が認められる可能性を示唆。 (岡崎ほか,2004)

脳波発生源でも左前頭葉の機能は低下傾向 (未服薬・安静時の患者と健常者18名ずつ) Delta band Theta band 従来の方法であるパワー値の比較で有意差のあったDelta, Theta, Beta1帯域について、LORETA解析し2394ボクセルごとにT検定をおこなった結果、Delta帯域とTheta帯域で有意差を認める部位がありました。 スライドにDeltaおよびTheta帯域の有意差のあった部位をしめします。 まずDelta帯域についての結果ですが、右 Limbic Lobe のUncus周辺そして左前頭葉で電流密度がPD患者で有意に高値を示しました。この結果は、右側頭部および左前頭部における機能的な障害を示唆していると考えられます。 また、Theta powerについても、両側頭頂葉で有意差を認めました。 t value (長澤ほか,2006)

発作を繰り返すことで前頭葉機能が低下 (語流暢課題による前頭葉の血流増加) R L (岡崎ほか,2006) カラーレンジ (mM・㎜) 計測までの1ヶ月間にパニック発作を経験しなかった群19名 (男性9名・女性10名) 計測までの1ヶ月間にパニック発作を1回以上経験した群13名 (男性5名・女性8名) R L (岡崎ほか,2006)

まとめ:非発作時に異常が示唆された部位 前頭前野・帯状回 海馬 前頭前野・帯状回 島 感覚視床 孤束核 扁桃体 海馬 中脳水道 周囲灰白質 左>右 発作により悪化 前頭前野・帯状回 島 感覚視床 孤束核 扁桃体 海馬 中脳水道 周囲灰白質 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 今回の結果で、亢進の認めた部位を赤く示します。脳幹部の神経核の同定までは困難ですが、亢進の認めた背側延髄に孤束核が含まれます。 扁桃体、及び、その入力系が亢進していることが分かります。 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

脳の病気ならば薬が効くはず (SSRIの作用メカニズムの仮説) 前頭前野・帯状回 島 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 扁桃体 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 縫線核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

糖代謝亢進領域の薬物療法による変化 (患者5名、健常者16名の比較) 投与前 投与後 扁桃体 (5例中2~3例がプラセボであるため予備的結果である) (佐藤・西川ほか,2006)

脳の病気と「心」との関わり

実は、認知行動療法のみでもよくなる (認知行動療法の作用メカニズムの仮説) 前頭前野・帯状回 海馬 前頭前野・帯状回 島 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 傍小脳脚核 扁桃体 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

認知行動療法前後での脳内糖代謝の変化を検討 対象と方法 非発作安静時の研究と同じ14人のパニック障害患者。 約6か月のCBT前後の非発作安静時に18F-FDGを静脈内投与し、高解像度3次元PET装置にて脳内糖代謝を測定。 CBT前後の群内比較をSPM99を用いて施行。 脳内各部位の糖代謝とPDSS及びパニック発作の頻度との間で、治療前後の変化率同士の順位相関を求めた。 治療前後別に、脳内各部位の糖代謝同士の相関が高い部位を検出。

CBT治療の概略 病気についての知識を持つ(心理教育) エクスポージャーを繰り返す ・恐怖場面(回避している場面)に直面する 認知の修正 ・パニック障害とは ・不安時の症状 ・不安の経過 ・エクスポージャーの原理 など エクスポージャーを繰り返す ・恐怖場面(回避している場面)に直面する ・その際の不安レベルを断続的にモニター ・パニック発作に対しても同じ方法で対処 認知の修正 広場恐怖、予期不安の改善 パニック発作の改善

The Panic Disorder Severity Scale (n = 12) CBT治療の効果 The Panic Disorder Severity Scale (n = 12) 2 4 6 8 10 12 14 16 18 PDSS CBT前 CBT後

結果 治療後に代謝低下したのみならず増加した部位も 結果  治療後に代謝低下したのみならず増加した部位も (Sakai, Kumano, et al, 2006)

左BA9との正相関部位の、治療前後での変化 (Sakai, Kumano, et al, 2006)

右BA10との正相関部位の、治療前後での変化 (Sakai, Kumano, et al, 2006)

考察 心が変われば脳も変わる 海馬 帯状回 前頭前野 前頭前野・帯状回 島 室傍核 外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 傍小脳脚核 扁桃体 縫線核 前頭前野・帯状回 島 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 傍小脳脚核 扁桃体 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

前頭前野背内側の役割

パニック障害以外の画像研究 マインドフルネス瞑想の場合 1: 島、2: BA9/10、3: 体性感覚野、4: 聴覚野の皮質厚みが増加 瞑想群と対照群で、BA9/10の厚みと 年齢との関連に有意差あり (Lazar, 2005)

エクスポージャ治療は何を実現しているのか エクスポージャ実施時の留意点 避けない(心を閉じない)だけでなく、呑み込まれない(同一化しない)ようにすることが重要。 感情(不安・落込み・怒り・欲・混乱など)を、定期的に(3~5分おきに)点数化して記録する。 身体感覚(呼吸に伴う身体の動き、足の裏の感覚など)に注意を向ける。 目に見える風景、聞こえてくる音、風がそよぐ感じなどに注意を向ける。 始まりがあり、ピークがあって、いずれは消えていくことが分かれば、手放すことができる。 つまり、私的出来事(思考、感情、身体感覚、記憶など)を、ありのままに観察する力を養っている。

エクスポージャ中の不安感の推移

ご清聴ありがとうございました