中央大学大学院博士課程 盧 貞 蘭 jlanjp@ybb.ne.jp -韓国と日本の合併の特徴の比較-        中央大学大学院博士課程               盧 貞 蘭             jlanjp@ybb.ne.jp.

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中央大学大学院博士課程 盧 貞 蘭 jlanjp@ybb.ne.jp -韓国と日本の合併の特徴の比較-        中央大学大学院博士課程               盧 貞 蘭             jlanjp@ybb.ne.jp

問題意識 的な支配構造である所有と経営の未分離が挙げられ、 通貨危機以後政策的に所有と経営の分離に取り組ん できている。   韓国の通貨危機原因の一つとして、韓国企業の典型 的な支配構造である所有と経営の未分離が挙げられ、 通貨危機以後政策的に所有と経営の分離に取り組ん できている。  そこで、企業支配構造が企業合併の成果にどのよう な影響を及ぼしているかについて日本の企業合併と 比較検討する。 ①合併企業の所有と経営の分離と未分離によって合併成果に差異はあるのか? ②持分率の変化によって合併成果は変化するのか? ③合併成果を高める最適持分率は存在するのか?

韓国のM&A の特徴及び背景 1980年代までのM&Aの特徴 ① 政府主導の下 ⇒不健全企業整理・産業合理化 ⇒吸収合併 ① 政府主導の下  ⇒不健全企業整理・産業合理化  ⇒吸収合併 ② 自由競争によるM&Aは殆どない ③ 1980年代後半からIN-OUT型合併が活発化 1990年代からのM&Aの特徴 ① 系列企業間の合併より非系列企業間の合併の増加 ② 存続する為の合併     ③ 金融機関の合併 ④ M&Aを通して新グループの登場 ⑤ 財務構造改善の為の合併 1980年代までのM&Aの背景 ① 政府主導の政策的決定による企業結合で政府の不健全企業整理や産業合理化過程で企業合併を推進 ② 投資機会が豊かで企業成長速度が早く、合併を通じる競争力向上の必要性がない ③ 私企業形態で大株主が安定的な持分率を確保 ④ 購買者主の市場 ⑥ 証券市場の未成熟による株式の未分散 1990年代からのM&Aの背景 ① 外国人投資家へ証券市場の開放 ② 金融危機に陥り、IMF基金の導入 ③ IT産業の発達

日本のM&A の特徴及び背景 1980年代までのM&Aの特徴 1990年代からのM&Aの特徴 1980年代までのM&Aの背景 ① 行政主導の産業政策の下  ⇒産業再編、構造調整  ⇒吸収合併 ② 旧財閥企業間で事業のコントロールが行われ、グループ内で調整 ③ メインバンク主導の合併 ④ IN-OUT型合併の増加 1990年代からのM&Aの特徴 ① 株式交換や持株会社などの手段を使ったM&Aの増加 ② 事業継承に関連するM&Aの増加 ③ 合併を通して新しい企業集団の登場 1980年代までのM&Aの背景 ① メインバンク制度 ② 護送船団方式     ③ 終身雇用制度 ④ 外国人投資自由化 ⑤ 国際貿易自由化 1990年代からのM&A背景 ① 規制緩和・メインバンク制度の崩壊 ② M&A法制の整備 ③ ディスクロージャー ④ IT革命 ⑤ 金融ビック版

韓国の手段別M&Aの推移 資料:公正取引委員会 『公正取引年報』 1981年~2003年 各年号より作成。

日本の手段別M&Aの推移 (注)買収は株式の過半数の取得,資本参加は株式の20~50%の取得,出資拡大は20%以下の株式を保有する企業に対する株式保有割合の50%以下までの引上げ。 (資料)「マール」より作成

韓国の系列別合併の推移 注:1.系列とは系列関係に有る企業 2.非系列とは系列関係にない企業   2.非系列とは系列関係にない企業 資料:公正取引委員会 『公正取引年報』 1981年~2003年 各年号より作成

日本の系列別合併の推移 注:1.系列とは系列関係に有る企業   2.非系列とは系列関係にない企業 資料:「マール」より作成

韓国・日本企業の所有構造の特徴 日本の所有構造 韓国の所有構造 ① 高い株式分散度 ① 低い株式分散度 ② 低い経営者持株比率 ① 高い株式分散度 ② 低い経営者持株比率 ③ 高い金融機関・事業法人の株式保有比率 ④ 高い外国人持分比率  韓国の所有構造 ① 低い株式分散度 ② 高い経営者持株比率 ③ 低い金融機関・   一般法人の株式保有率 ④ 低い外国人持分比率

韓国の株式保有構造の推移 個人 機関投資家 政府管理企業 一般法人 外国人 注:政府管理企業とは国有企業のことである。 資料:公正取引委員会 『公正取引年報』 1981年~2003年 各年号より作成。

実証分析の方法 1.Brown and Warner(1980,1985)市場モデル(Market Model)を使用。 2.サンプル企業の異常収益率(AR:Abnomal Returns)を測定。 3.estimation periodは合併公示日前-249日から-100日間、event periodは-10日~+10日間。 4.サンプル企業の日次株式収益率、市場全体の日次株式収益率を調査。

実証分析の為に持分率別4つのGroupに分類した理由 ① 10%の基準は、韓国証券取引法において大株主又は主要大株主を10%以上所有する株主と規定している為。 ② 20%の基準は、公正取引法、有価証券上場規定等において他企業が発行した株式の1/5を取得する場合、経済企画院長官かまたは取引所に申告するようなっている為 。 ③ 40%の基準は、商法において企業の親子関係を規定する基準として安定した経営権を確保するだけでなく、私企業的な性格が強い為。

資料収集 韓国の合併企業 ① 本実証分析の測定期間中に合併企業の株価収益率と大株主10人の所有持分が確認できる合併企業   韓国の合併企業 ① 本実証分析の測定期間中に合併企業の株価収益率と大株主10人の所有持分が確認できる合併企業 ② 事件日を合併発表日ではなく証券取引所に合併公示日を行った日を選定 ③ 合併公示日は証券取引所の証券市場誌より収集 ④ 日次株式収益率、市場全体の収益率は証券研究院発行の株式収益率資料を用いて配込の日次株式収益率を計算 ⑤ 大株主10人の持分率は上場会社協議会の上場会社Databaseより調査   日本の合併企業 ① 本実証分析の測定期間中に合併企業の株価収益率と大株主10人の所有持分が確認できる合併企業 ② 事件日を合併公示日に選定 ③ 公示日は株式会社レコフの「マール」より収集 ④ 日次株式収益率、市場全体の収益率は東洋経済新報社の株価CD-ROMの日次株式価の資料を用いて配当込の日次株式収益率を計算 ⑤ 大株主10人の持分率は東洋経済新報社の会社四季報の3・6・9・12月号より調査

サンプル企業選定 〔韓国・日本の合併企業のサンプル〕 ① 韓国の合併の場合は証券取引所証券市場誌に合併の公示があった上場企業  ① 韓国の合併の場合は証券取引所証券市場誌に合併の公示があった上場企業  ② 日本の合併の場合は新聞紙上で合併が合併の公示があった上場企業  ③ 合併企業を対象に1997年から2003年の間に合併公示のあった上場企業  ④ 合併公示前に合併企業が被合併企業の株式を既に100%保有した場合除外  ⑤ 合併企業・被合併企業が金融機関の場合を除外  ⑥ 選定した合併企業中本実証分析の目的に必要な測定期間である合併公示10日前と合併公示10日後の期間に異なる合併の公示を公示するか実際合併が行われた企業は除外

サンプル合併企業の詳細 韓国合併企業 1.吸収合併 2.株式交換 3.系列間の合併が多い 4.IN-IN合併 5.救済目的の合併が多い 日本の合併企業 1.吸収合併 2.株式交換 3.非系列間の合併が多い 4.IN-IN合併 5.競争力強化の為の合併が多い

韓国・日本のサンプル合併企業の累積異常収益率(CAR):1997-2003 韓国全サンプル:89社、日本の全サンプル:32社

韓国のサンプル合併企業の持分率別Groupの累積異常収益率(CAR):1997-2003 全サンプル:分析に用いった全企業(89社)、Group1:20%以下(15社)、Group2:20%以上30%以下(25社) Group3:30%以上40%以下(18社)、Group4:40%以上(32社)、

日本のサンプル合併企業の持分率別Groupの累積異常収益率(CAR):1997-2002 全サンプル:分析に用いった全企業(32社)、Group1:なし、Group2:20%以上30%以下(5社) Group3:30%以上40%以下(20社)、Group4:40%以上(7社)

韓国・日本のサンプル合併企業の持分率別Groupの累積異常収益率(CAR):1997-2003 全サンプル:分析に用いった全企業(89社)、Group1:20%以下(15社)、Group2:20%以上30%以下(25社) Group3:30%以上40%以下(18社)、Group4:40%以上(32社)。 全サンプル:分析に用いった全企業(32社)、Group1:なし、Group2:20%以上30%以下(5社) Group3:30%以上40%以下(20社)、Group4:40%以上(7社)。

実証分析結果(1) 韓国と日本の全サンプルのCARの比較 全てのウィンドウにおいて、韓国<日本 持分率別GroupのCARの比較  全てのウィンドウにおいて、韓国<日本 持分率別GroupのCARの比較 1.(-10、+10):  韓国Group3>Group4>Group1>Group2  日本Group3>Group4>Group2 2.(-10,0): 韓国Group3>Group1 > Group2 > Group4  日本Group3 > Group2 > Group > 4 3.(0、+10):  韓国Group4>Group1 > Group2 > Group3  日本Group3 > Group4 >Group2

実証分析結果(2) ①合併企業の所有と経営の分離と未分離によって合併成果に差異はあるのか? ⇒所有と経営が分離の日本:負(-) ⇒所有と経営が未分離の韓国:負(-) ②持分率の変化によって合併成果は変化するのか? ⇒韓国:持分率によってかなり変化 ⇒日本:持分率によってあまり変化無し ③合併成果を高める最適持分率は存在するのか?  *合併以前の合併成果 ⇒韓国:30%以上40%以下の持分率 ⇒日本: 30%以上40%以下の持分率  *合併以後の合併成果 ⇒韓国:40%以上の持分率

今回の実証分析の問題点 1.合併企業の成果を分析しているが、被合併企業の成果については分析を行っていない。 2.持分率別Groupを4つに分け分析を行っているが、最適な持分率を求めるには持分率の幅が大きい。 3.持分率別のサンプル数にばらつきがある。