予算配分支援ツール機能に着目した行政評価システムの導入効果

Slides:



Advertisements
Similar presentations
@SHIGAKEN Gyoseishoshikai Network Information System ○ 滋賀会運営や意志決定の迅速化・情報の同時共有等の向上に努める。 以上の命題を具現化するため、滋賀会として、 ・各事業のコストダウン、電子会議の活用や受益者負担の採用 ・内部講師の登用による負担軽減、
Advertisements

第5回 大阪府・大阪市特別区設置 協議会資料 ( ) 資料2 1大阪都構想を実現することで 大阪がどう変わるのか 2事務事業のコスト検証について 大阪維新の会 大阪府議会議員団 大阪維新の会 大阪市会議員団.
当社の 「品質マネジメントシステム」(QMS)の 今後の運用について
第4章 ABC/ABMと原価情報 原価計算・原価低減の新技法 1.ABCとは何か 2.ABCの有効性 3.ABMとは何か 4.ABMの有効性.
2013年度 香川県介護職員定着支援業務 教育体系策定ワークシート 【解説】
教育の情報化に関する手引のポイント 平成21年6月 平成21年度情報教育担当者研修
岩手県立大学公共政策研究コース「政策評価研究」
企業における母性健康管理体制の現状と課題についてお話いたします。
~ 顧客満足は顧客から。 「リーダーシップ」はGDL多面評価で!~
大分県教育庁佐伯教育事務所 学校改革担当指導主事 有田千香
ノーマライゼーションかしわプラン策定に向けた基礎調査について
赤井伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科 教授
■日時 平成22年7月16日(金) ■講師 特定非営利活動法人 政策21 理事長 鎌田 徳幸
SCMとトヨタ生産方式を比較する 再編 ∞Infinity
桑 名 市    市議会定例会[12月] 提出議案の概要について.
平成24年度国立大学法人等若手職員勉強会 分科会2 全体会発表
2012年度活動報告&ビジョン会議 2013年度戦略案&ビジョン策定 松原広美&竹内尚人
電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ(工程表)
大谷経営労務管理事務所のISO9001認証取得について
【資料3】 条例検討会議について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
【資料5】 条例の基本的な方向性について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
~民間との協働による地域の活性化に向けた仕組みづくり~
スペイン財政支援の是非 <否定派> 田中・棚倉・川村・石塚.
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の概要
マーケティング計画.
第三章 会社のグループを形成する.
フランスの年金調整会議 年金調整会議は、2000年に創設された。常設の団体であり、メンバーは国会議員、経営者・労働組合の代表、専門家、国の代表である。その主たる目的は、フランスの年金制度を監視すること、年金に関連する公的政策への勧告をすることであり、専門的知識と全ての参加者による協議に基づいている。
中小企業の発展と管理会計 ~戦略とBSCに焦点を当てて~ 発表者:商学部3回生 萬徳貴久.
アンケート調査結果よりわかった主なポイント・協議会での委員の意見
COBIT 5 エグゼクティブ・サマリー.
スポーツ経営学 第4回目 スポーツ経営学の特徴.
制度論検討の視点 資料2-2 1 自治体構造 ○大都市制度を考えるに際して、特別市のような広域自治体と基礎自治体の機能をあわせ持ったものを
管理的側面 管理者に必要な経営知識 経営学の基本 ①マネジメントと組織.
計画の制度化 = 交通サ-ビス向上に資する ハ-ド施策とソフト施策の(最適)組み合わせ
千葉市行政改革推進指針 概要版 平成27年3月 千 葉 市.
技術参照モデルとシステム要件定義 に関する学習システム
第70回全国連合小学校長会 研究協議会北海道大会 第61回北海道小学校長会 教育研究函館大会
小山健太(総合政策学部4年) 松本健太郎(総合政策学部4年)
平成30年8月 府中地区ケアマネジマント モデル 有地.
平成19年度青年部会「第2回~第4回研修会」(人材育成研修会)実施計画書
組織論による特色ある カリキュラムの理論と実際 第11回 特色あるカリキュラムづくりの理論と実際 兵庫教育大学大学院 教授
4.新たな価値を生み出す市政改革 52.
3 4.具体的な改革の取組み (1)事業重点化(組み換え)の推進 ①成果重視による事業選択 項目名 取組内容 担当部局・室 取組み実績 備考
~ 情シスが仕掛ける業務改革:BPMの手順とポイント~
     6  総合区政会議           地域自治区・地域協議会.
最先端ICT都市の実現に向け、「ICTの徹底活用」と「ICTの適正利用」を基本に取組をすすめます
私立大学情報教育協会 研修運営委員長 南 雄三
総合政策学部3年 鋤先麻美 環境情報学部3年 生田目啓
エコアクション21で企業価値を高めることができます
資料2 分権型教育行政について.
大阪府域における太陽光発電施設の地域との共生を推進する体制<大阪モデル>(案)
資料10-1 エコアクション21  事業概要.
経営計画策定の心得.
資料2-1 地球温暖化対策実行計画の改定について 1 地球温暖化対策実行計画の改定の必要性について 3
「水俣市の取り組み」に対する意見発表 ○鈴木慎也 構成 〒 福岡市城南区七隈 福岡大学工学部社会デザイン工学科
総務省の各部局について説明します 行政 管理局 行政 評価局 統計局 自治 行政局 自治 財政局 自治 税務局 消防庁
千葉市行政改革推進指針(案) 概要版 平成27年○月 千葉市.
資料3 誰もが親しめる 市民スポーツの充実 佐賀市教育委員会 スポーツ振興課.
地方創生に向けた自治体SDGs推進事業 平成30年度予算案5億円(平成30年度からの新規事業) 実施期間:平成30年度~(新規)
知識の開発や活用を評価に役立てる 評価システムが知識を行動に変えるのを助けている企業がある。 ↓原理は???
『パブリック・マネジメント』第9章 外部マネジメントの重要性 佐藤建仁 田中清隆.
自治体の構造改革への道 総合政策3年 高橋 理志 大平 貴久.
パブリック・マネージメント 戦略行政への理論と実践
東京・愛知ヒアリングまとめ(事務局 6.11,14) 資料2 【課 題】 項 目 大阪(府・市) 東京(都・特別区) 愛知(県・名古屋市)
平成31年度 みどりの基金を活用して実施する事業(案)
CSR 5 すぅ.
自殺対策基本法(振り返り) 資料4 基本理念(第2条)
内部統制とは何か.
目標 … 自律的で創造性を発揮する行財政運営体制の確立
長野大学における科研費等の運営・管理について
Presentation transcript:

予算配分支援ツール機能に着目した行政評価システムの導入効果 2002/2/14  予算配分支援ツール機能に着目した行政評価システムの導入効果 東京工業大学  小山 岳則   坂野 達郎

環境変化に対応し、目的手段合理的な目的志向型行財政運営 日本における従来型行財政運営の破綻 総合計画が目的手段体系に基づく行財政運営ツール 右肩上がりの経済成長時代 従来型の行財政運営 1950’s~ 行政活動の効果の測定への取り組み始まる 予算枠が拡大する中では、話題になるが定着せず 経済の低成長、急激な環境変化 環境変化に対応し、目的手段合理的な目的志向型行財政運営 破綻

(ニュー・パブリック・マネジメントの流れ) 地域のガバナンスのツールとしての行政評価 目的志向型行財政運営の必要性 (ニュー・パブリック・マネジメントの流れ) 地方分権の推進 地域の経営能力向上(ガバナンス)が必要 情報公開 外部コントロールツール 宮城県、川崎市など 市民参加 行政評価 横須賀市 地方自治体の 1つのマネジメントツールとして注目が集まる 内部マネジメントツール 三重県、静岡県、長浜市など

多くの自治体は予算・総合計画との連動がない 行政評価が機能不全に陥る原因 深刻な財政危機を背景に、行政評価は自治体の事業削減ツールとして注目を集めている 行政評価を導入すれば、すぐに事務事業の削減ができるという期待(2000,自治省) しかし、 多くの自治体は予算・総合計画との連動がない 自治体の期待と現実の間に大きなギャップ 目的手段体系に基づく行財政運営のツールとして機能していない

継続的に職員の意識を高めてゆくには、権限委譲を中核とするシステム改革により職員の日常業務を改善し、負担を軽減する必要がある 行政評価が機能不全に陥る原因 行政評価導入 職員の負担増加 職員の不満の増大 (2000,梅田)  継続的に職員の意識を高めてゆくには、権限委譲を中核とするシステム改革により職員の日常業務を改善し、負担を軽減する必要がある

行政評価の自治体内部マネジメントにおける効果 事務事業レベルの評価 事業の効率的執行 職員によるTQM的な日常業務の改善運動の促進ツール (1998,北大路) 評価と権限委譲などを伴うシステム改革 顧客満足 施策・事務事業レベルの評価 目的志向型行財政運営の経営資源配分ツール メリハリある予算編成 (2001,星野) 総合計画・予算・組織との連動

目的志向型行財政運営において、行政評価がもたらしている効果の実態(職員の業務改善、予算配分の支援ツール機能)を明らかにする 研究の目的 目的志向型行財政運営において、行政評価がもたらしている効果の実態(職員の業務改善、予算配分の支援ツール機能)を明らかにする 行政評価が目的志向型の行財政運営ツールとして機能するための要因を、特に庁内分権に着目して明らかにし、今後の行政改革のための知見を得る

行政評価導入による職員の業務執行態度の検証

アンケート調査のサンプリング 昨年度の湯下研究 部門、役職、行政評価への関与の程度が意識の浸透に影響 各県を比較するため、三重県調査と部門・課・役職を対応させ、同じ手法でサンプリング

アンケート調査の結果 行政評価の導入は、特に執行部門の職員、役職の高い職員と評価システムの仕組づくりに関与した職員に目的志向の浸透をもたらす。  目的志向     三重県、静岡県に特に浸透  顧客志向     三重県執行部門に特に浸透  コスト意識    宮城県に特に浸透  行政評価を導入している3県は、それぞれ評価システムの特徴が意識の浸透にも出ている。  三重県の意識の浸透が進んでいる。

各導入県の特徴  三重県では権限委譲の推進により、評価を予算編成に連動させている。  前述した本研究の、権限委譲の促進による目的志向型へ向けた行政改革モデルに近い形の取り組みを行っている。 三重県の評価システムの予算編成への影響に着目し事例研究を行う

三重県の改革運動 〜生活者起点の行政運営〜 三重県の改革運動 〜生活者起点の行政運営〜 評価システム 生活者起点の行政運営 意識・風土改革 システム改革  ・さわやか運動     ・率先実行       ・政策開発研修センター 政策主導に向けた取り組み  ・マトリックス予算  ・前年度事業の成果の確認と検証  ・組織改革 庁内分権の推進  ・予算節約制度    ・事務的経費の総額配分 ・包括的財源配分

三重県の予算に関する制度改革 予算節約制度・・・予算節減額の1/2を財源として各部局が自主的に新規事業を創設できる。    職員の効率的な予算執行の促進がねらい 前年度事業の成果の確認と検証・・・春に評価表を基に、政策的視点で前年度事業の成果を確認する。    早い時期の議論より、思いきった事業の見直しが  ねらい 予算の包括的配分方式・・・各部局に施策別に予算を一括配分する。春の議論で成果が確認された事業については、予算調整課は秋の予算調整で査定を行わない。    各部局主導のメリハリのついた予算編成がねらい

インタビュー調査の概要 一連の改革運動によって ・評価システムはマネジメントツールとして機能しているか ・評価システムは職員の業務改善に役立っているか

職員の作業負担の軽減に結びついているケースがみられた コスト削減意識を持つようになったという回答はなかった 予算節約制度による職員の負担の軽減 予算を使い切るための苦労が減った ・予算の使いきりなど無駄な労力が減った(研修センター職員) ・無駄な努力をしなくてよくなったのがメ リットである(松阪県民局職員) ・国補事業は別なので、あまり変化はない(農林水産職員)  職員の作業負担の軽減に結びついているケースがみられた  コスト削減意識を持つようになったという回答はなかった

目的志向が浸透しつつあるが、部局間での差がある 前年度事業の成果の確認と検証による目的志向の浸透 政策的視点での議論が増えた 予算見積書は使わず、評価表のみで議論する(予算課職員) 予算の費目レベルでの議論が減った(研修、環境、農林水産課職員) 見積書の方が事業がわかりやすく、議論でも使用する(企画課職員) 成果指標の妥当性の議論が増えた 成果指標対策チームを設置し、指標の改善に取り組む(環境課職員) 情報公開があるので分かりやすい指標を意識する(農林水産課職員) 指標の目標値には特に根拠はない(研修、農林水産課職員) 目的志向が浸透しつつあるが、部局間での差がある

予算編成において、作業負担の軽減につながり、楽になったという共通意見がみられた 一部で目的志向型の予算編成が実現しつつある事がうかがえた 予算の包括的配分方式による職員の負担の軽減 予算調整課による査定事業が減った 予算調整で全体の事業の約8割が審議なし(企画課職員) 予算調整課との議論が減少した(研修、環境、農林水産課職員) 部局内のめりはりの効いた予算編成が可能となった 事業がスクラップしやすくなった(環境課職員) 部内の重点配分がしやすくなった(環境課職員)  予算編成において、作業負担の軽減につながり、楽になったという共通意見がみられた  一部で目的志向型の予算編成が実現しつつある事がうかがえた

評価と予算が連動し、評価システムが予算編成支援ツールとして機能しつつある 権限委譲による評価と予算の連動  前年度事業の 成果の確認と検証 評価システムをベースとした目的志向型予算編成の拡大 従来型財政主導の予算編成 部局に配分された施策別配分額の 流用の権限委譲 政策レベルの権限委譲 予算調整の権限委譲 従来型予算編成の縮小 包括的配分方式 評価と予算が連動し、評価システムが予算編成支援ツールとして機能しつつある

評価技術の向上、目的志向型運営制度の成熟 三重県での評価と庁内分権の道のり 目的志向型 運営制度の拡大 庁内分権の促進 マトリックス予算 事務事業評価システム 予算節約制度 平成8年 平成9年 事務的経費の総額配分 平成10年 財政会議の設置 行政システム改革 平成11年 スプリング・レビュー 平成12年 前年度事業の成果の 確認と検証 平成13年 包括的配分方式 評価技術の向上、目的志向型運営制度の成熟 職員のモチベーションの向上

与えられた権限と評価による 政策体系に基づいた 自主的マネジメント 三重県における目的志向型に向かった評価と分権の好循環 評価システム 評価技術の向上 与えられた権限と評価による 政策体系に基づいた 自主的マネジメント 評価に真剣に取り組む 予算・組織・人事権限の庁内分権 評価結果の信頼の向上 三重県では目的志向型行財政運営に向かった評価機能向上と庁内分権推進のサイクルが動き出している

行政評価の導入は目的志向の浸透をもたらす。特に、執行部門の職員、役職の高い職員、評価の仕組や指標づくりに関与した職員の意識が高い。 結論 行政評価の導入は目的志向の浸透をもたらす。特に、執行部門の職員、役職の高い職員、評価の仕組や指標づくりに関与した職員の意識が高い。 このような目的志向型行財政運営を実現する職員の意識啓発効果を継続的な改革に結びつけるには、評価システムと権限委譲をセットで行うという三重県の手法が1つのモデルになりうると考えられる。

課題 他の行政評価導入自治体において予算と評価の連動については検証していない。権限委譲が行われない中での実態も明らかにする必要がある。 三重県では来年度に、目的手段体系に沿った組織再編も行われる。また、施策の成果目標を議会の議決事項とすることも決まり、評価による外部統制の仕組の構築も始まった。今後、これらの取り組みがどのように組織に定着してゆくか追跡してゆく必要がある。 今回は、組織の内部統制の仕組について検証したが、外部統制の仕組についても研究を進めてゆく必要がある。